神秘的なブルーが魅力。『フェルメール』の謎多き生涯と代表作を解説

2019.08.06

レンブラント、ルーベンスらと並びバロック期を代表するヨハネス・フェルメール(1632年~1675年)は、オランダの画家です。フェルメール・ブルーといわれる鮮やかなブルーが特徴の、彼の代表作や人物についてご紹介します。

謎の多い画家フェルメールについて

世界的に有名なフェルメールの作品ですが、実はフェルメール自身に関する資料はほとんど残っておらず、現存する作品数もわずか30点あまり。そのため彼の生涯について詳しいことはあまりわかっておらず、謎の多い画家といわれています。

画家としてデビュー

オランダの西部にある運河と壁に囲まれた「デルフト」という小都市で、フェルメールは誕生しました。

父はパブ(居酒屋)と宿屋を営むかたわら、画商も生業としていたという記録があります。当時の社会情勢からして、子供を画家にするにはとてもお金がかかったため、裕福な家に生まれたのではないかといわれていますが、一方で彼の父には借金があったとの記録もあり、詳しいことはわかっていません。

20歳のときに結婚し、画家としてのキャリアを歩み始めます。しかし、いったい誰のもとで画家としての修業を積んだのかも不明であり、彼の画家としての出自には謎が多く残されています。

女性を主人公にした室内風俗画

当初は聖書のワンシーンなどを描く物語画家として出発しましたが、かなり早い段階で庶民を描く風俗画家へと転向しました。

当時はオランダがスペインから独立を果たした「オランダ独立戦争」が集結して間もなく、社会が不安定な時代。同時に商業が勃興して庶民が力をつけた時代でもあり、そうした背景もあってヨーロッパの人々の関心は宗教画よりも風俗画へと移っていきました。

そんな追い風をうけながら、フェルメールは主に女性を主人公にした室内風俗画をメインに、制作活動に取り組みました。

フェルメール作品の特徴

フェルメールは寡作ながら、後の芸術家たちに大きな影響を与えました。フェルメールの作品の特徴は、光を巧みに使った描写と卓越した構図、そして「フェルメールブルー」と称される鮮やかな青の配色にあります。

窓から差し込む光と立体的な構図

フェルメールの作品を観ると、窓が描かれた作品が多いことに気が付きます。オランダ人にとって窓はとても大切なもの。オランダは1年を通してあまり天候がよくないため、窓を大きく開いて光を採り入れる必要があるためです。

フェルメールは、窓から差し込む光の描写を巧みに用い、室内に奥行き感を表現し、そこにメインのモチーフである人物を配置することで、立体的でリアリティのある庶民の生活を鮮やかに描き出しました。そのため、彼の作品はしばしば「今にも動き出しそうな」などと表現されるほど、見事なライブ感に満ち溢れています。

吸い込まれるような「フェルメールブルー」

さらに、フェルメールの特徴として、通称「フェルメールブルー」と呼ばれる鮮やかな青色の使い方が挙げられます。

フェルメールの有名な絵画の多くに使われる「フェルメールブルー」は、当時金よりも貴重であったといわれる天然のラピスラズリを使った超高級絵の具が使用されています。まさしく宝石のような輝きを放つ美しい青には、なにか神秘的な感動を覚えます。

また、そのフェルメールブルーを引き立てる配色も見事です。有名な『牛乳を注ぐ女』や『真珠の耳飾りの少女』では、深い青色と補色関係にある「黄色」が巧みに配置されています。青色と対極にある黄色をうまく使うことで、吸い込まれるような「フェルメールブルー」の鮮やかさが際立っているのです。

フェルメールの代表作

前述のとおり、フェルメールは非常に寡作な画家でした。20年間にわたる画家生活にもかかわらず、手掛けた作品はわずか50点ほどといわれています。そのなかでも現存している作品は、たった30数点しかありません。

それだけに、どの作品も希少価値が高く有名なものばかりです。ここからはそんなフェルメールの代表作をご紹介していきます。

各作品の解説下のリンクより、実際の作品を確認することができますので、ぜひ確認しながら解説を読んでみてくださいね。

『デルフトの眺望』1660年~1661年頃

デルフトは、先ほど述べたようにフェルメールの生まれ故郷。彼は生涯のほとんどをこのデルフトで過ごしました。

デルフトとはオランダ語で「濠を掘る」という意味の言葉。その名の通り市街の至るところに運河が走っていたそうで、そんなデルフトの美しい眺望を描いた作品です。

『失われた時を求めて』の作者マルセル・プルーストが「世界で最も美しい絵」と評し絶賛したことでも有名。現在ではオランダのマウリッツハイス美術館に所蔵されています。

デルフトの眺望|マウリッツハイス美術館

『音楽の稽古』1662年~1665年ころ

楽器を演奏する女性のモチーフはフェルメールが好んだところであり、何作も取り上げています。背を向けて演奏する女性と音楽教師がメインに描かれていますが、特徴的なのはその構図。

メインモチーフの人物たちは右側にかなり小さめに描かれているのに対し、大きく取られた床の面積と、人物たちを隠すように右下に配置されたテーブルの存在感が目を引きます。一見不自然な構図ですが、そのために、まるで登場人物をどこかに隠れながら覗き見ているようなリアリティを生んでいます。

優れた構図を得意としたフェルメールの特徴をよく表した名作といえるでしょう。こちらはバッキンガム宮殿 王室コレクションに所蔵されています。

音楽の稽古|バッキンガム宮殿 王室コレクション

『窓辺で水差しを持つ女』1662年~1665年頃

水盤に映り込むテーブルクロス、窓に手をかけ柔らかな陽射しが身につけた女性の頭巾の白を輝かせています。日常を描くフェルメールの中でも洗練されたイメージのある作品です。ニューヨーク・メトロポリタン美術館に所蔵されています。

窓辺で水差しを持つ女|ニューヨーク メトロポリタン美術館

『真珠の耳飾りの少女』1665年ころ

「青いターバンの少女」または「ターバンを巻いた少女」とよばれることもあり、フェルメールの作品の中で最も有名な作品といっていいでしょう。その有名さやモチーフとしての共通点、そして微かに微笑んでいるように見えることから「オランダのモナリザ」という異名で呼ばれることもあります。

背景は深い黒ですが、大粒の真珠に光が当たり、立体感が生まれています。印象的なブルーのターバンにまず目が留まり、徐々に絵画全体へと目線が移っていくような印象です。この少女のモデルが誰なのかについては様々な説がありますが、真相は不明のままです。現在ではマウリッツハイス美術館に所蔵されています。

真珠の耳飾りの少女|マウリッツハイス美術館

『窓辺で手紙を読む女』1657年頃

窓から入る光で輝く女性の顔。女性が手にしている手紙には何が書かれているのでしょうか。

近年のX線検査によって、キューピッドやワイングラスが塗りつぶされていることが判明し、恋人からのラブレターだということがわかってきました。そういわれてみればどことなく恋する乙女のような横顔に見えてきますね。こちらの作品はドイツのアルテ・マイスター美術館に所蔵されています。

窓辺で手紙を読む女|アルテ・マイスター美術館

『牛乳を注ぐ女』1658年~1660年ころ

ふくよかな女性が身に付けているエプロンの鮮やかなブルー。先述の「フェルメール・ブルー」と呼ばれる高価なウルトラマリンが一番多く使用されている作品といわれています。

テーブルの上にあるパンに窓から明るい光が差し込んでいます。固くなったパンを食べるために牛乳を容器に注いでパン・プディングを作ろうとしている女性を描いているといわれており、まさに庶民の日常を描くフェルメールの集大成的な作品といえます。こちらはオランダのアムステルダム国立美術館に所蔵されています。

牛乳を注ぐ女|Google Culture

フェルメール・ブルーに魅せられて

30数作品といわれるフェルメールの作品は希少価値が大変高く、盗難事件が多いことでも知られています。あのサルバトール・ダリもフェルメールを大絶賛していたなど、寡作ながらも後世への影響は多大。

「フェルメール・ブルー」とよばれる鮮やかなブルーをはじめ、巧みな描写と構図でリアリティのある庶民の日常を描いた作品の数々は、思わず引き込まれるような美しさに満ちています。チャンスがあったら是非、鑑賞してみてください。

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