和紙ってどんなもの?和紙の原料や種類、作り方などを知ろう

2019.08.04

和紙は、品質の高さから、国際的にも高い評価を得ている伝統工芸品です。国内外における文化財の修復にも使われ、優れた耐久力と保存性が注目されています。ユネスコの無形文化遺産にも登録された和紙の、概要や作り方などを紹介します。

和紙について知ろう

和紙とは何なのか、まずは基礎的なことから知っていきましょう。

和紙とは

「和紙とは何なのか」という問いに対しては明確な定義がなく、和紙作りに携わる人たちの間でも解釈が異なります。

一般的には、中国から伝わった製紙法が、日本の風土に適した原材料と製法を用いたものに変化した、日本古来の伝統的な製法で作られた紙のことを、『和紙』といいます。

原料の特徴をいかした『流れ漉き』(ながれすき)という日本独自の技術と、強く柔らかな独特の風合いや高い保存性が、和紙の持つ主な特徴です。

和紙の定義としては、「洋紙と異なる製法で作られた紙」「手漉き製法のみで作られた紙」「原料が三椏(みつまた)や楮(こうぞ)などに限定された紙」など、さまざまな解釈が存在します。

和紙と洋紙の違い

『洋紙』とは、木材パルプ・木綿・亜麻などを原料とした、表面が平滑で材質にムラのない紙のことをいいます。新聞紙・画用紙・コピー用紙などは、洋紙の典型例です。

洋紙と和紙の違いは原材料にあります。洋紙は主に広葉樹や針葉樹などの木材繊維を使用し、和紙は主に楮・雁皮(がんぴ)・三椏などの靭皮繊維(じんぴせんい)を使用します。

洋紙の製法は明治以降に導入され、和紙に比べ、機械により安価で大量に製造することが可能になりました。以後、洋紙は近代化と共に、生活の中で大量に消費されていきます。

ふすま・障子などの住宅用や、傘・書道などの実用品に使われることの多い和紙は、洋紙に押され、活躍の場が縮小傾向にあります。しかし、目新しさや懐かしさを感じる素材として、特に若年層の間で、和紙の価値が近年見直されてきています。

和紙と不職布の違い

不織布は繊維を糸状にして作られる布とは違い、繊維を加工せずにそのまま作られる紙と同じ製造過程で作られるため、布ではなく紙と同じ分類に属します。

紙の中でも大きく分けて、植物繊維のみを用いて作られたものが紙、それ以外の合成繊維や金属繊維を混ぜて作られているものが不織布です。

不織布の製造方法は、大きく分けると『湿式』と『乾式』の二つです。『湿式』での製法は、機械で和紙を作る製法と似ているため、使用される原料によっては不織布と和紙の区別が付けにくい製品もあります。

和紙の原料

和紙に使われる原料について解説します。

楮(こうぞ)

楮はクワ科の落葉低木で、成木は3メートル程まで成長し、栽培が簡単で成長が早いうえ大量に作れるため、古くから日本で最も多く使われている和紙原料です。

繊維が太くて長く強靭なことから、書画用紙・版画用紙・本・障子紙・傘紙・提灯紙などに多く使われています。ものを書いたり生活用品として使われたりする和紙のほとんどは、楮を原料とした和紙です。

日本国内での楮生産量が激減したことや、それによる国内産楮の価格が高騰したことにより、一般的に機械漉き和紙で用いられる楮はタイ産です。品質と量が安定しているため、機械漉き和紙メーカーではよく使われています。

雁皮(がんぴ)

雁皮はジンチョウゲ科の落葉低木で、成木は2メートル余りにまで育ちます。光沢があり繊維が短く、和紙に適した原料ですが、成育が遅く栽培も困難なため、自生している雁皮を生剥ぎにして使用します。

雁皮が使われ始めた頃は、楮の補助原料として楮に混ぜて使われていました。その後、トロロアオイから取れるトロロを加えはじめてから、独立した原料として使われています。

以前まで、雁皮は謄写版用紙の原料として大量に使用されていましたが、複写機が普及してからはほとんど使われなくなりました。

現在は、生産量が少なく希少価値の高い高級和紙として使われています。高級な書道用紙や、金箔などを製造するときの箔打紙、襖の下貼り用の間似合紙などに使われることが多い和紙です。

三椏(みつまた)

三椏はジンチョウゲ科の落葉低木で、成木は2メートル余りになります。枝が三つに分かれることから『みつまた』の名が付けられました。

三椏の繊維は楮に比べ光沢があり、薄いオレンジ色をしています。江戸時代頃から原料に使われるようになり、徳川家康がまだ将軍になる前に、伊豆で三椏の紙漉きをすすめたとされる史料も残されています。

三椏の和紙で最も有名なものは『お札』です。三椏和紙は印刷適性に優れているため、契約生産者から『局納みつまた』として印刷局に納入され、世界一の品質といわれる日本銀行券の原料として使用されます。

その他、金糸銀糸用紙・箔合紙・証券用紙・賞状用紙・かな用書道用紙・美術工芸紙などに使用されています。

その他

今から約1400年前、中国から紙漉きが伝えられた頃は、麻が和紙の原料でした。その後、楮が使われ始めると徐々に使われなくなりましたが、現在でも日本画用紙に使われることがあります。

稲や竹なども古くは和紙の原料に使われていましたが、繊維を取り出しにくいうえ紙質に劣ることから、次第に姿を消しました。

他にも、パルプ・麦・バナナ・桑・杉・ヒノキ・葛などが、原料として使われることがあります。これらはそのまま使わず、楮や三椏と混ぜて使用するのが一般的です。

また、和紙はリサイクルできるため、使い古された古紙も原料になります。

地域による主な和紙の種類

日本全国に広がる産地から有名な地域を紹介し、それぞれの特徴を解説します。

石州和紙

『石州和紙』は、主に島根県の石見地方で生産される伝統工芸品で、ユネスコの無形文化遺産に登録されています。飛鳥時代の歌人である柿本人麻呂が、8世紀に紙漉き技術を伝えたことが、石州和紙の起源とされています。

石州和紙は良質な楮が採れる地の利を生かして作られてきました。楮の薄皮を削る際に甘皮を残すことにより、強度を増すという独自の製法が採用されています。

昔から非常に強靭な和紙として知られ、商人が石州和紙で作られた帳簿を、火災の際に井戸に投げ込んで保存したというエピソードが残っているほどです。

石州和紙の製造過程で余分なものをできるだけ除去し、ほとんど繊維で作られたものは『みざらし』と呼ばれ、最高品質の和紙とされています。

美濃和紙

『美濃和紙』は、主に岐阜県美濃市で生産される伝統工芸品です。光を当てると美しい輝きを放つ特徴を持ち、『越前和紙』『土佐和紙』とならび、日本三大和紙の一つとしても有名です。ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

8世紀初頭には既に作られていた記録が残っており、正倉院に現存する日本で最も古い紙も美濃和紙です。

江戸時代に入ると、障子紙として利用され始めたため生産量も増え、『美濃判』と呼ばれる代表的な和紙になりました。

美濃和紙の中でも、重要無形文化財指定の決まった材料や道具を使い、認められた一部の職人が漉いたものは、『本美濃紙』と呼ばれます。

上品な色合いと、薄くても布のように丈夫で陽の光に透かしたときの優雅な美しさから、本美濃紙は江戸時代以来最高級の障子紙として高く評価されています。

越前和紙

『越前和紙』は、主に福井県越前市で生産される伝統工芸品です。『美濃和紙』『土佐和紙』とならび、日本三大和紙の一つとしても知られています。高品質な和紙として定評があり、多種多様な製品が生産されています。

越前和紙は6世紀頃から作られ始め、室町時代には公家などの公用紙として用いられていました。江戸時代には日本一の紙と認められ、『御上天下一』の印を押されるほどの高級和紙として扱われています。

製造過程で原料の繊維を丁寧に洗い、不純物を取り除くため、虫が寄り付きにくいといわれています。

横山大観などの日本画家にも好まれた和紙で、最近ではピカソやレンブラントといった世界的な画家にも使用された可能性が指摘されています。

土佐和紙

『土佐和紙』は、主に高知県で生産される伝統工芸品です。『越前和紙』『美濃和紙』とならび、日本三大和紙の一つとしても有名です。薄くて強いことが特徴的で、手漉き和紙として世界一薄い、厚さ0.02mmの和紙も土佐で作られています。

平安時代に書かれた『延喜式』に献上品として土佐和紙の名が登場することから、当時すでに和紙の産地が形成されていたと考えられています。

江戸時代には『土佐七色紙』が徳川幕府に献上され、明治時代中期には全国一の生産規模となりました。

高級な書道用紙として知られる「清帳紙(せいちょうし)」にも見られるように、天日乾燥で仕上げられた白くふっくらとした紙肌が特徴です。

和紙の保存について

和紙の保存性と、保存する際のポイントを解説します。

和紙の保存性

『和紙は1000年もつ』といわれるように、和紙には基本的に高い保存性があります。日本で最も古い和紙は正倉院に保管されている戸籍用紙で、1300年以上も前に漉かれたものです。

実際に全ての和紙がそれだけの長い年月保存できるわけではありませんが、良質な和紙であればあるほど、和紙の耐久力は高まります。

長持ちする和紙に共通する特徴は以下の通りです。

  • 化学薬品が一切使われず、繊維が傷んでいない
  • パルプなどを使用せず、100%の原料で漉いている
  • 国内で生産された原料を使用している

例えば、文化財の修復で使用する様な和紙は、高い耐久性が求められます。そのため「いつ・どこで・誰が・どのような原料を使って・どのように処理して漉いたか」を記録として残し、その記録は必要な時に入手できるよう扱われます。

保存のポイント

和紙の保存性は、和紙自体の耐久力と併せて、保存方法にも左右されます。和紙は湿気・水気・紫外線により劣化が進みやすくなるため、より良い環境で保存することが重要です。

和紙の劣化をおさえる保存方法として、箱に入れる方法が推奨されています。箱に入れることで紫外線の元となる光を遮断でき、湿度やほこりの影響を受けにくくする効果が期待できます。

より保存性を高めるため、酸化による劣化をおさえられる脱酸素材を入れるとなおよいでしょう。

和紙を箱で保存する方法に関しては、『目通し・風通し』と呼ばれる伝統的な手入れ方法があります。定期的に蓋を開け、虫食いを確認したり風を通し湿気を逃がしたりする、昔ながらの保存の極意です。

和紙の作り方の種類

和紙の作り方には、手漉きと機械漉きの2種類があります。それぞれについて理解を深めましょう。

手漉き

和紙の製造といえば、人が木製の道具を揺らす『手漉き』作業の場面を思い浮かべる人も多いでしょう。明治時代に機械漉きが始まるまで、日本の和紙作りは全て手漉きで行われていました。

手漉きでは、何度も前後や左右に揺り動かすことにより、何層にも繊維が絡み、強度が上がります。また、楮などの長い繊維だけを使った紙も作ることが可能です。

主原料には、楮や三椏など伝統的な木の表皮の繊維が使われることが多く、機械漉きに比べ手間がかかるため価格も高くなります。少量発注や特注に向く製造方法ともいえます。

機械漉き

明治時代に洋紙が普及し始めた頃から和紙の生産量が減少したため、和紙の生産力を高めるために登場した製造方法が『機械漉き』です。

基本的にはパルプを主原料とし他の原料を混ぜ、一度に多くの和紙を均一の規格で製造することが可能なため、手漉きの和紙に比べ価格は低くなります。障子紙や書道用紙、半紙などで、消費量の多い商品は、ほとんどが機械漉きです。

しかし、機械漉きの和紙が手漉きの和紙に比べ、全て品質が落ちるわけではありません。例えば、長持ちすることが求められる修復の現場では、楮を用いた機械抄きの土佐和紙が評価されています。

作り方のポイント

和紙を製造する際に重要とされるポイントを2点解説します。

水質

和紙の製造には大量の水が必要になります。さらに、原料を水にさらして洗う工程や流し漉きでは、水がより良質であることが重要です。

例えば、水道水で和紙を作ろうとした場合、水道水に含まれる塩素により、数年後には紙が赤く変色する可能性があるといわれています。

和紙作りに最も適した水の種類は、カルシウムやマグネシウムの含有量が少ない『軟水』です。日本の天然水は軟水が多く、全国各地で高品質な和紙作りを可能にした要因の一つには、井戸水や湧き水との相性の良さが挙げられます。

流れ漉きという日本独自の技術

中国から和紙の製法が伝わった当時は、『溜め漉き』という技法が用いられていました。しかし、日本では『流れ漉き』という独自の製法が奈良時代に編み出され、その後全国に浸透していきます。

流れ漉きは、『ねり』と呼ばれる粘度の高い液を原料と混ぜ合わせ、揺り動かすことで繊維同士を絡みやすくする手法です。

流れ漉きにより、薄くても丈夫な和紙に仕上がりやすくなるため、現在も日本での手漉きは流れ漉きが主流となっています。

和紙の主な製品

和紙製品として知っておきたい特徴的なものを3点紹介します。

和紙テープ

ペンキなどを塗る際にペンキがはみ出すのを防ぐため、塗装箇所の周囲に貼る『マスキングテープ』と呼ばれる資材があります。このマスキングテープを和紙で作った『和紙テープ』が、国内外で最近人気です。

和紙テープは、薄い割に強度も強く粘着力もあり、はがす際もきれいにはがせます。ビニールやゴム製のテープと異なり、手で簡単に切れる使い勝手の良さも特徴です。

元々は日本の企業で開発され、現在では海外でも『WASHI TAPE』として広く知られています。シンプルなものからカラフルでデザイン性の高いものまで、種類が豊富なことも魅力です。

名刺

最近のビジネスシーンでは、デザインなどに趣向を凝らした名刺を目にする機会も多いでしょう。様変わりする名刺の中には、素材に着目し和紙で作られた名刺も増えています。

和紙名刺は、一枚ずつ繊維の紋様に違いを持たせられるため、様々な表情が楽しめます。ビジネス用途としてはもちろん、普段使いのおしゃれな名刺としても使えるでしょう。

海外の人への贈り物や退職者への記念品として、最近では和紙名刺をプレゼントするケースも増えています。

和紙畳

近年、リビングに畳コーナーを設ける人が増えていますが、リビングに敷く畳として、『和紙畳』が評判を呼んでいます。

和紙畳は、い草の畳に比べ、カビやダニに強く、床暖房に対応するため置き畳としても使えます。耐久性があり、手入れも簡単です。

また、和紙畳はい草の畳に比べ値段が高価ですが、和紙畳は長持ちしやすいため、メンテナンス費用などを考慮すれば和紙畳の方がお得といえるでしょう。

和紙について理解して使ってみよう

和紙は、日本独自の原料や製法で作られた紙です。優れた強度や保存性から、国内外で高い評価を受ける伝統工芸品でもあります。

和紙の歴史や作り方を理解し、和紙で製造された様々な製品に触れ、和紙の魅力を堪能しましょう。

その他のテーマ

ART

CULTURE

CRAFT

FOOD

TIME