怖い絵?名画「ラス・メニーナス」の謎について解説

2019.08.02

スペイン・マドリードにあるプラド美術館には、「まるで合わせ鏡をみているようだ」、と言われる名画「ラス・メニーナス」が収蔵されています。また、この絵は謎が多いことでも知られています。そこでこの記事では、ラス・メニーナスについてご紹介していきます。

ラスメニーナスの解説

17世紀スペインを代表する巨匠ディエゴ・ベラスケスの作品である「ラス・メニーナス」(女官たちの意味)は、1656年に制作されました。

318㎝ × 276㎝というかなり大きなキャンバスが使用されている大作です。この絵の舞台は、当時の王であったフェリペ4世のマドリード宮殿内にある一室です。そこに11人の人物(王と王妃、王女など)がいることになっており、そのほとんどがおしゃべりをしていたり動こうとしていたりと、何らかのアクションを起こしています。つまり、一連の動作のなかのほんの一瞬を描いている訳で、「スナップ写真のようだ」と称されることが多いようです。

革新的な技法が用いられたラス・メニーナス

ラス・メニーナスは、線遠近法を使用して奥行と立体感を表現している点や、構図自体が非常に複雑である点が特徴です。

これらを数学的に解析すると、ディエゴ・ベラスケスが綿密な計算をしていたことが分かるといいます。

完成当初から多くの学者によって解析されており、19世紀の画家トーマス・ローレンスはラス・メニーナスを「芸術の原理」と呼んでいます。

怖い絵として紹介されたラスメニーナス

名画として名高いラス・メニーナスですが、それを「怖い絵」と考える人もいます。それが翻訳家であり西洋文化史家でもある中野京子氏です。

中野京子氏は「怖い絵」というタイトルの著書を出版しており、そのなかでラス・メニーナスについて述べています。それによると、ラス・メニーナスの右下(犬のそば)に描かれた小人症の道化2人によって、当時の風習が分かるというのです。

道化から分かる当時の風習が怖い

中世ヨーロッパでは、超肥満体や高身長、黒人など、白人とは身体的特徴が異なる人を「慰み者」として扱う風習がありました。

慰み者は可愛いペットのように扱われていたので、それなりに贅沢な暮らしができていたようですが、人として扱われていなかったことに変わりはありません。

実際、ラス・メニーナスに描かれている2人の道化も、小人症のため背中が曲がっていますが、着ている衣服をみるとちゃんとしています。

このように、中世の貴族は人をペットやオモチャのように扱っていた訳ですが、それに何の疑問も感じない風習があったことに、「怖さがある」と中野京子氏は指摘しています。

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ラス・メニーナスの謎

様々な評価があるラス・メニーナスですが、その構図上、「謎がある」と考える学者も大勢います。

ラス・メニーナスの構図

ラス・メニーナスは画面中央に王女マルガリータが描かれており、その周りに侍女や道化、犬がいます。そして、本来絵の主人公であるべき王と王妃は、鏡の中に写った姿で描かれています。

このことから、王と王妃はこの絵の観覧者の視点、つまり画面の外にいると考えられます。(おそらく、王と王妃の肖像画を制作している風景をとらえたのでしょう)また、中央奥(最後方)には、キャンバスに向かって絵を描いている製作者ディエゴ・ベラスケス本人がいます。

「どうやって描いたのか?」が謎

ラス・メニーナスの構図はご紹介した通りですが、仮にこの絵の配置通りだったとすれば、ディエゴ・ベラスケスには王女たちの背中しか見えておらず、この絵を描くことができないはずです。一方、実物を見ながら描いたとすれば、王と同じ位置に立っていたことになりますが、それでは、自分自身は想像で描くしか手がありません。

また、主従関係から考えても、ディエゴ・ベラスケスが王と同じ位置に立つとは思えません。つまり、ラス・メニーナスを完成させるには、どこかに空想をいれなければならず、この絵に臨場感があることと矛盾してしまう訳です。

興味深い絵、ラス・メニーナス

ご紹介した通り、ラス・メニーナスには解析すべき点がいくつもあります。それ故に、現在でも「興味深い絵」とされています。特に「どうやって描いたのか」という点は、多くのが学者が頭を悩ませています。描かれていないもう一枚の鏡が存在するのか、はたまた、絵の大部分が想像で描かれたのか…

この製作上の謎が解けたとき、ラス・メニーナスの本当の価値が分かるのではないでしょうか。

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