歴史能力検定は、学校で学習する歴史の知識を中心に、国内外の色々な事柄や歴史的背景などについて、幅広く学べる検定試験です。取得すれば入試や検定試験の科目免除にも役立ちます。歴史能力検定の概要や活用法などを解説します。
歴史能力検定の基礎知識
歴史能力検定とはどんな試験なのか、基本的な知識を確認しましょう。
歴史能力検定とは
『歴史能力検定』は、歴史能力検定協会が実施する歴史の検定です。学校で勉強する歴史の知識を中心に、国内外で起こっている様々な出来事の歴史的背景などについて幅広く出題されます。名称を省略し『歴検』とも呼ばれる試験です。
歴史能力検定に合格すると、他の定められた試験における科目免除を受けられます。また、歴史そのものに対する理解を深められるため、入試対策に役立てることも可能です。
さらに、歴史能力検定に向けて歴史を学習することで、私たちが歩む道について考える判断力や洞察力を養うことも期待されています。世の中の多くのことが歴史を土台に作られていると考えれば、歴史を深く学ぶこと自体に意味を見出せるともいえるでしょう。
各級の内容やレベル
歴史能力検定の試験問題は、1~5級までのレベルに分かれています。それぞれの内容は、5級が歴史入門、4級が歴史の基本、準3級が日本史、1~3級が日本史・世界史です。1~3級は、日本史と世界史それぞれ別の試験となります。
各級のレベルは以下のようになっています。
5級 | 小学校過程で学習する基本的な日本史の問題が出題されます。全て3肢択一問題で出題数は40問です。 |
4級 | 中学校修了までに学習する、日本史と世界史の常識問題が出題されます。全て4肢択一問題で出題数は50問です。 |
準3級 | 中学校で学習する日本史の基本問題に加え、それにとらわれない範囲からも出題されます。世界史の科目はありません。全て4肢択一問題で出題数は50問です。 |
3級 | 高校で学習する基礎的な歴史の知識が問われます。全て4肢択一問題で出題数は50問です。 |
2級 | テーマは高校で学ぶ程度のものですが、比較的難易度が高い知識が要求されます。記述問題も出題されます。4肢択一問題と記述問題で構成され、出題数は50問です。 |
1級 | 学校での学習範囲にとらわれず、広範囲から出題されます。4肢択一問題と記述・論述問題で構成され、出題数は30問です。 |
試験概要
歴史能力検定の試験概要について解説します。
試験会場と日程
試験会場は、北海道から沖縄まで、全国の主要都市30会場が割り当てられます。希望会場が満員の場合は、同地区内の他会場へ変更になることがあります。また、同一地区内に複数の会場がある場合は、希望の会場を選べません。
実施日程は年1回、毎年11月下旬に行われます。申込締切日は例年10月中旬頃です。試験開始時刻は、10:00・11:30・13:00・14:30と四つの時間帯に分かれ、受験級や科目により異なります。
試験時間が重複する科目の併願はできません。一度に複数の級を受験したい場合は、申し込み前に試験時間を確認する必要があります。試験時間が重ならない科目を複数受験することは可能です。
受験料と申込方法
受験料は級ごとに異なります。それぞれの受験料(税込)は以下の通りです。
1級 | 7800円 |
2級 | 6800円 |
3級 | 4900円 |
準3級 | 3900円 |
4級 | 3000円 |
5級 | 2800円 |
申込方法は、インターネットと郵送の2種類です。インターネットで申し込む場合は、必要事項を入力し、クレジットカードで受験料を決済する流れになります。
郵送で申し込む場合は、専用の願書に必要事項を記入し、郵便局で受験料を支払う流れです。受験料の支払と同時に受験の申し込みも完了となります。
郵便局に備え付けてある『郵便払込取扱票』では申し込みできません。一部書店の店頭に設置されている申し込み専用の願書を利用しましょう。専用願書が入手できない場合は、歴史能力検定の公式HPから請求し取り寄せることが可能です。
(日販検定ポータルサイト「検定、受け付けてます」より)
合格基準と合格率
合格基準はそれぞれ正解率60%が目安となりますが、試験ごとに変動があります。
合格率は、5級が80~90%、4級と準3級が70~80%、3級が40~50%、2級が30~40%、1級が20%前後です。それぞれ年度ごとに10%ほどの変動があります。1~3級の日本史と世界史に関しては、級が同じであればそれぞれ難易度の差はないと考えてよいでしょう。
5級から準3級までは合格率が高く、3級から1級までは合格率が低い傾向にあります。級が上がるにつれて受験料も高くなり、2級では記述問題、1級では記述と論述問題が加わるため、自分のレベルを見極めて受験する級を選ぶことが重要といえます。
団体受験について
歴史能力検定は、学校・学習塾・企業などの団体が、受験者を取りまとめて団体単位で受験の申し込みをすることが可能です。団体受験の場合は、公開会場と準会場のどちらかを試験会場として選択する必要があります。
公開試験会場での受験は、他の一般受験者と同じ、協会が運営する会場で受験することになります。試験監督は協会運営側が行い、申込人数にも制限がありません。
対して、準会場での受験は、申込責任者が定めた会場での受験になります。試験監督は団体責任者が行い、申込人数は5名以上と制限があり、試験問題などの資材も団体責任者宛に送付されます。
歴史能力検定の使い道
歴史能力検定資格の活用方法を紹介します。
高等学校卒業程度認定試験の科目免除
文部科学省が実施する『高等学校卒業程度認定試験』は『高卒認定試験』または『高認』とも呼ばれ、「高等学校卒業と同等以上の学力があること」を国が認定する試験です。毎年2万5000人前後の人が受験しています。
歴史能力検定2級以上の合格者は、高認の受験科目である『日本史B』『世界史B』が免除になります。例えば、日本史の場合、歴史能力検定の『日本史1級』または『日本史2級』の合格者は、高認の『日本史B』の受験が免除され、世界史の場合も同様です。
高認の受験前に歴史能力検定の合格を知らせる際は、合格証明書の提出が必須です。高認の受験願書内にある免除申請欄にチェックを入れ、出願の際に合格証明書の原本を同封する必要があります。
全国通訳案内士試験の科目免除
観光庁長官が実施する国家試験『全国通訳案内士試験』は『通訳ガイド試験』とも呼ばれ、報酬を受けて外国人に付き添い、外国語を用いて旅行に関する案内をする『全国通訳案内士』になるための試験です。
全国通訳案内士は、語学力だけでなく、日本地理や日本史、産業・経済・政治および文化に関する一般常識、さらに通訳案内の実務など幅広い知識が求められます。取得レベルはなく、合否のみで判定される資格試験です。
歴史能力検定『日本史1級』または『日本史2級』の合格者は、全国通訳案内士試験の筆記試験科目である『日本歴史』が免除されます。
入試等における評価
大学・短期大学・高等学校によっては、入学試験の際に歴史能力検定の資格取得者を評価の対象や参考にしているところもあります。AOや推薦での入試の際に、出願条件として定められていたり、点数加算の対象となったりしているケースが多いようです。
評価対象となる取得級は、指定がない場合と3級以上の取得が条件である場合に分かれます。また、卒業に必要な単位の補填として、通常の授業の代わりに歴史能力検定を認定している学校もあります。
評価の方法は、学校や学年、年度により異なります。はっきりと分からない場合は、受験を希望する学校へ詳細を問い合わせるとよいでしょう。
合格証明書発行の手続き
入試や資格試験、就職などで、歴史能力検定の合格を証明する必要がある場合は、協会事務局へ『合格証明書』の発行申請をすれば別途発行できます。発行申請は協会HPのメールフォームから行うか、電話で行うことが可能です。
合格証明書の発行費用は1部あたり1000円です。発行料の支払い方法は、インターネット経由のクレジット決済か、郵便払込取扱票での払い込みのどちらかを選択できます。
決済完了後、インターネット決済の場合は10日以内、郵便払込取扱票での決済の場合は3週間以内に、合格証明書が郵送されます。申請から到着まで時間がかかる場合があるため、早めの申請を意識する必要があるでしょう。
歴史能力検定の勉強方法
歴史能力検定の受験にあたり、効率の良い勉強法を解説します。
過去問で傾向を掴む
歴史能力検定を効率よく勉強するポイントは、過去問をしっかりとやりこんで、出題傾向のクセを把握することです。過去問での出題傾向が年度により大きく異なることはないため、学習にかけるべきウェイトを把握でき、無駄な学習を極力省略することが可能です。
テキストは最初に一度だけ読み込む程度に留め、あとはひたすら過去問を解きながら解答にも目を通し、該当範囲をテキストでも確認するという勉強法が効果的です。過去問で何度も出題される範囲ほど知識の層が厚くなるという形を作り出せます。
また、過去問を何度も解くことで出題の形式にも慣れるため、いざ本番で試験用紙を目の前にしても慌てずに済みます。
一問一答の勉強法
誰しも歴史の勉強で通る『一問一答』を正しく効率よく使うことで、合格点にもより早く到達できます。
まずは1週目で何も見ず単元ごとに解き、間違えた箇所にチェックを入れておきましょう。2週目はチェックを入れた問題のみ解いていき、通史でも再確認します。3週目以降もこれを繰り返し、チェックがなくなるまでひたすら繰り返しましょう。
解答を思い出せた問題を何度も解くことは自己満足に過ぎません。忘れないよう定期的にチェックすることも大事ですが、まずは全く思い出せなかった問題を無くすことが重要です。
テキストの選び方
歴史能力検定の学習に効果的なテキストの選び方を解説します。
基本テキストは変えない
歴史能力検定のテキストを選ぶにあたり、級別にテキストを変えないようにすることがポイントです。利用するテキストを数多く用意するのではなく、メインとなるテキストを1冊に絞り、そのテキストで重点的に学習するようにしましょう。
歴史の勉強は暗記が主になるため、できるだけ広い範囲をカバーしようとしていろんなテキストに手を出してしまいがちです。しかし、本当に重要なことは暗記すべき範囲をカバーすることではなく、暗記すべきことをしっかりと暗記することに他なりません。
多くの範囲を網羅する1冊のテキスト内容をしっかり暗記すれば、級に関わらず及第点を獲得できる可能性は大いに高まります。違うテキストに目移りすることなく、学習用として決めたテキストを使いこなすようにしましょう。
歴史能力検定にチャレンジしてみよう
歴史能力検定は歴史に関する知識の定着力を測る試験です。級ごとにレベルが分かれ、現在の実力を試せます。入試や資格試験の科目免除などにも活用できる資格です。