『ヴィヴァルディ』の代表作。バロック後期の作曲家の謎多き生涯に迫る

2019.07.23

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678年~1741年)はバロック後期を代表する作曲家の一人であり、ヴァイオリニストとしても活躍した音楽家です。非常に多作な作曲家であったことでも知られており、500を超える協奏曲や多数のジャンルの曲があります。そんな彼の代表作や生い立ちなどを解説します。

ヴィヴァルディについて

バロック音楽とよばれる、17世紀から18世紀にかけて確立した音楽様式のうち、とくに後期にかけて活躍したヴィヴァルディ。イタリアを中心にヨーロッパ各地で活躍しました。

彼の作品は、死後しばらくの間世間から忘れ去られていましたが、20世紀に入り再評価の流れを受けました。そのため生前の彼の生涯については正確なことがあまり分かっておらず、謎の多い作曲家といわれています。

音楽院の教師

司祭であったヴィヴァルディは、25歳のとき、身寄りのない子供たちのための養育施設ピエタ養育院の付属音楽院でヴァイオリンの教師をし始めました。彼はヴァイオリニストや作曲家としてだけでなく、教師としても一流だったようで、ヴィヴァルディの指導で生徒たちは素晴らしい演奏をし、ピエタ養育院は有名になりました。

また、ヴィヴァルディ自身教師の活動と並行して様々な楽曲や協奏曲を出版しながら、作曲家としての名声を高めていきました。

オペラ作曲家として

35歳ころから、音楽教師としての仕事と並行し、オペラの世界へと足を踏み入れることとなります。

オペラ劇場の運営だけでなく、オペラを上演するための手配など、現在でいう支配人兼プロデューサーのような役割全てを担当することとなり、大変多忙な日々だったといわれています。そんな多忙な日々の中でも多作の作曲家らしく、いくつものオペラ作品の作曲をしながら、膨大な作品を残しました。

謎の多い晩年

ヴィヴァルディの晩年は、謎が多いとされています。生前から大人気の作曲家であり富を得たはずのヴィヴァルディは、何故か最後には無一文となり、ろくな葬儀も挙げることができず、ウィーンの共同墓地に埋葬されたといわれています。

たとえばゴッホのように、生前はほとんど認知されていなかった芸術家が貧窮するのは珍しいことではありませんが、ヴィヴァルディのような人気作曲家がなぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

これについては、一説には「ヴィヴァルディのパトロンであるカール6世が亡くなったため」と言われています。ヴィヴァルディが新作オペラ興行のためウィーンを訪れた矢先、カール6世が亡くなってしまいます。これをうけてウィーンの劇場は、1年もの間喪に服し、その間一切オペラの上演ができなくなりました。

オペラの準備で飛ぶようにお金が無くなっていく中、異国の地で滞在費もかさみ、にもかかわらずオペラは上演できず収入は一切なしという状況です。さすがのヴィヴァルディも所持金が無くなり、そのまま健康を害して亡くなってしまったということです。

いずれにせよ、大作曲家にしてはあまりに悲運な最期といえるでしょう。

ヴィヴァルディの代表作

ヴィヴァルディは作曲家としては速筆だったこともあり、驚くほどの膨大な作品の数々を残しました。その中でもヴィヴァルディの最大の代表作といえば、ヴァイオリン協奏曲『四季』でしょう。

以下では、協奏曲『四季』を詳しく解説していきます。ちなみに、作品名の後についているRVとは「リオム番号」と呼ばれるもので、デンマークの音楽学者ペーター・リオムによるヴィヴァルディの作品を整理した番号です。

ヴァイオリン協奏曲第1番『春』ホ長調 RV.269

『四季』の中でも『春』は特に人気が高く、クラシックに詳しくない方でも聴いたことがあるはずの名曲です。以下では、各楽章のソネットを参考にしながら、楽曲のイメージを添えています。

第1楽章:Allegro

明るくて活気に満ち溢れた曲調。小鳥たちがさえずり春を讃えている様子を描写しています。最も有名な旋律が登場する楽章です。

第2楽章:Largo e pianissimo sempre

ゆったりと、常に弱い音で演奏されます。のどかな牧草地で番犬と羊飼いが眠っている様子が感じ取れます。

第3楽章:Allegro pastorale

羊飼いが明るい青空の下で陽気に踊っている様子が目に浮かぶような楽しい曲です。

ヴァイオリン協奏曲第2番『夏』ト短調 RV.315

日本の『夏』は元気なイメージがありますが、ヴィヴァルディの『夏』は物悲しく切ない曲調です。

第1楽章:Allegro non molto

ギラギラとした暑いヴェネチアの夏。家畜も暑くてぐったりしています。カッコーやキジバトの鳴き声が聞こえてきます。そして、北風が吹き嵐がやってきて怯えています。

第2楽章:Adagio e piano-Presto e forte

ゆったりとした弱い音楽から次第に急速に力強い音楽になります。外では稲妻と雷鳴、家の中で蠅がブンブンと飛んでうるさい様子を表しています。

第3楽章:Presto

激しい夏の嵐で雹(ひょう)が降り、穀物を打撃します。そんな状況に落胆するような心情が描かれています。

ヴァイオリン協奏曲第3番『秋』ヘ長調 RV.293

日本の秋のイメージは枯れ葉が舞ってセンチメンタルなイメージですが、ヴィヴァルディの『秋』は収穫の喜びの音楽です。

第1楽章:Allegro

農民たちの収穫が終わり、豊作を祝ってワインを飲み喜び踊っている賑やかな音楽です。

第2楽章:Adagio molto

賑やかな祝宴が終わり、酔っぱらって眠りにつき静まりかえった様子を描いています。

第3楽章:Allegro

夜明けには犬を連れて狩りに出ます。必死に逃げる獲物を追う狩人。獲物を仕留めて喜ぶ様子が伝わってきます。

ヴァイオリン協奏曲第4番『冬』ヘ短調 RV.297

水の都といわれるヴェネチアの厳しい冬が音楽から伝わってきます。そして、春の訪れを心待ちにしている様子も感じ取れます。

第1楽章:Allegro non molto

厳しい冬。容赦ない冷たい風が吹き雪の中を寒さでガタガタと震えながら歩いている様子を描いています。

第2楽章:Largo

暖炉の前で、ゆったりと穏やかに過ごしている様子。優雅な旋律をヴァイオリンが美しく奏でます。

第3楽章:Allegro

凍った大地を慎重に歩いていますが、滑って転んでしまい、冷たい氷の上に叩きつけられます。

ヴェネチアの四季をイメージして

水の都ヴェネチアに生まれたヴィヴァルディ。ヴァイオリニストでもあったため、ヴァイオリン協奏曲は最も得意なジャンルでした。そんなヴィヴァルディの代表作といえば、なんといっても『四季』。ぜひ、現代にいたるまで聞き続けられるクラシックの名曲を、ヴェネチアの四季をイメージしながら聴いてみてください。

その他のテーマ

ART

CULTURE

CRAFT

FOOD

TIME