文化人類学の面白さを簡単に解説!視点を変えて常識を変えてみよう

2019.07.22

地球上には、たくさんの人々が生きています。人種や言語、生活習慣が異なり、生きて行く環境も大きく違うでしょう。そんな『人間』について、文化を通して考察する学問が文化人類学です。その文化人類学を詳しく、わかりやすく解説します。

文化人類学とは?

書店で背表紙を眺めていると『文化人類学』に関する書物を目にすることがあります。なんとなく馴染みのある言葉ですが、どのような学問なのかよく理解していない人も多いのではないでしょうか。

文化人類学に触れることの一つの効果として、『自分の常識や暮らしぶりが、いかに限られたものであるのか』を知ることができます。文化人類学について、知識を深めていきましょう。

世界各地の文化を現地で学ぶ

地球上には、数十億もの人々が生きています。そして、各地域の環境は大きく異なります。寒い場所もあれば熱い地域もあるでしょう。また、昼が長いところや太陽があまり上らない場所もあります。

そのように、世界各地で異なる環境で暮らす人々が日常的に送っている文化的な活動について、実際にその社会や地域に入り、共に生活するなどして細かく調査し、研究する学問が文化人類学です。

調査・研究の対象は、伝統的な風習の中で生きる部族社会から、現代的な地域社会までと多岐に渡ります。この学問の特徴は、フィールドワーク(現地調査)を重視する点でしょう。

外に触れて自分たちの文化を見つめなおす

文化人類学の概要を見てみると、さまざまな国や地域以外の文化を学ぶことにあります。その一方で、研究者の自国文化も、調査・研究の対象とすることも重要です。

なぜなら、調査する対象の地域に入り、そこで研究を続けていくには、現地で触れる文化の特徴などを理解しなければなりません。そのためには、軸となる『文化観』をしっかりと持っていることが大切です。

文化という多様性があり多義的なものを考察するには、軸となる社会性を身につけておかなければなりません。文化人類学は、『外に触れて自分たちの文化を見つめなおすこと』でもあるのです。

民俗学や民族学との違い

文化人類学に触れていくと、『民俗学』や『民族学』などとの違いが気になることがあります。実際に、それぞれどのようなものなのでしょうか。

『民俗』はフォークロアと呼ばれます。フォークロアは、『民話』の意味も持っています。これらはほぼ同義として使用され、語り継がれた伝統文化や民間伝承を学ぶものが民俗学なのです。

次に『民族学』を見ていきます。『民族=エスニシティ』を人間の集団の形としてとらえ、個々の民族の伝統文化をはじめ、考え方や生き方全体を考察するものです。

個々の文化を学ぶものが民俗学であるならば、民族学は人々の生き方を学びます。そして、こうした各民族の文化を『横断的』に考察するのが文化人類学なのです。

文化人類学の面白さ

一見すると難しそうに感じられるかもしれない文化人類学ですが、実は一般の人々にとっても、とても楽しいものです。文化人類学には、どのような面白さがあるのでしょうか。

常識に囚われなくなる

限られた場所で長い間生活していると、常識や観念が固まってきてしまいます。そのような狭い世界観で世界各地の暮らしを見てみると、にわかには信じがたい風習を持つ地域も存在するのです。

凝り固まりかけた頭で外の文化に触れると、自分たちがいかに偏った常識に囚われて生きているのかがわかります。知らず知らずに、頭が固くなっていることを自覚できるのです。

このような発見や驚きが、文化人類学を学ぶ一つの意義でしょう。反対に、自分にとっての当たり前が、他の地域の人から見ると変わっていることもあります。常識から解放され、独創的な発想や思考につながるでしょう。

外の世界の楽しみ方が変わる

物事の見方や考え方が変化すると、旅行の楽しみ方も大きく変わるでしょう。なぜなら、現地の『人』を見るだけでも数々の発見や新鮮な驚きに出会えるからです。

大掛かりな設備のあるテーマパークなどに行かずとも、街をぶらぶらしたり、市場で買い物をする人々を眺めたりするだけで、さまざまなことに思いを巡らせることができます。

現地の人のほんの小さな行動に、自分との違いを見出すこともあるでしょう。文化人類学は、そのような視点を与えてくれるものなのです。

グローバルな力が身につく

外国を訪れると、つい「語学力がないと楽しめないのでは?」と考えてしまうこともあります。しかし、大切なことは、その場所の文化を理解することではないでしょうか。

ときには、受け入れがたい風習に出会うかもしれません。しかし、嫌悪感に囚われず、『なぜ?』を理解しながら社会観を広げることに文化人類学は役立つでしょう。

『グローバル』な力は、語学で意思疎通するだけでは身につきません。相手を深く理解することが大切です。

自国の文化との違いは、優劣ではなくいろいろな要因で生じたものだと知ることが、本当のグローバリズムではないでしょうか。

文化人類学者の活動

学問は、分野によって学び方・研究方法などが異なります。それぞれ独自の方法論を持っているものです。

文化人類学においては、どのような方法で調査・研究が進められるのでしょうか。文化人類学者の活動を見てみましょう。

現地を知るフィールドワーク

文化人類学者としての仕事は、主に二つの活動からなっています。一つは『フィールドワーク』、そしてもう一つは『書物や論文の執筆』です。まずはフィールドワークから見ていきます。

フィールドワークでは、調査・研究の対象としている人々の暮らしに入っていくことから始まります。そして、共に生活をし、言葉を交わしながら社会調査活動を進めていくことがフィールドワークです。

フィールドワークは、民俗学や社会学でも行われます。文化人類学特有の調査方法ではありません。しかし、文化人類学者は、社会学者と並んで、独自の活動をもって『探検から調査へ』と転換させてきました。

フィールドワークを専業としてきたのは、主に民族誌学者たちで、そこから得た独自の方法論を、文化人類学者たちが歴史的伝統とともに受け継いでいるのです。

記録を元に論文などを書く

フィールドワークなどで蓄積した記録を元に、民族誌などへの寄稿や論文の作成をすることも文化人類学者の活動です。それは、フィールドワークで得た映像やサウンドなども含みます。

このフィールドワークの記録を基にした書物や論文は、民族誌(エスノグラフィー)と呼ばれています。

民族誌は人間社会や文化について考えるための記述を中心とした書物で、人間や人間の集団を対象にした実地調査に基づく記録といえるでしょう。

フィールドワークの具体的な活動内容

文化人類学者にとって、重要な活動が『フィールドワーク』で、現地に赴き、その地域の人々と暮らしながら調査・研究を続けることです。

それでは、フィールドワークの具体的な内容とは、どのようなものなのでしょうか。文化人類学者の活動から探ります。

インタビューを行う

フィールドワークの中心的な活動に、『インタビュー』があります。現地の人にものを尋ねて調査・研究にあたることです。

人類学的なインタビューは、人類学者や人類学を学ぶ人たちが、調査協力者となる現地の人などに対して行います。自らの調査や研究に関するさまざまなことを、数多く聞くことが重要でしょう。

インタビューは通常、対面調査で実施します。ですが、インターネットやコミュニケーション技術の発達によって、電話やメール、ビデオ通話などでインタビューが行われることもあります。

インタビューの技法

文化人類学のインタビュー技法は4種類あり、内容は以下の通りです。

質問者によりあらかじめ決められている構造化された質問を、対話として続けながら、メモなどにより情報採集を行うものが『構造化インタビュー』といいます。

『半構造化インタビュー』とは、あらかじめ決めていた質問に対し、メモや録音機などを用いて情報を得る方法です。この技法は、倫理的な問題も含まれるので注意が必要になります。

構造化されていない質問を通して、対話と観察で情報を引き出す技法が『非構造化インタビュー』です。これは、『デプスインタビュー』と『民族誌的インタビュー』に分かれます。

『フォーカスグループインタビュー』とは、焦点化された集団(例:同じ職業の人々など)に集まってもらい、そのメンバー同士での対話から情報を得る技法です。

イベントに参加する参与観察

世界各地で暮らす集団には、その土地それぞれに儀式や行事があります。婚礼の儀や祭礼、宗教的儀式から偶発的に行われるものなど、さまざまです。

現地の人々が行ういろいろな儀式や行事に参加しつつ観察データを収集することを『参与観察(参加観察)』といいます。これも、極めて重要な方法です。

フィールドワーカー(研究者・調査者)には欠かせないものが参与観察ですが、そこで得られるデータは、調査者の経験知などの、形に残らないものです。

そこから形のあるデータとしてまとめますが、その方法は、録音・写真・ 動画・文書など、とても多様な形をとることになります。

文化人類学の歴史

文化人類学という学問は、いつごろから研究され始め、どのような経緯をたどってきたのでしょうか。文化人類学の歴史をたどります。

16世紀~19世紀前半までの文化人類学

16世紀には、すでに人類学としての研究は始まっていました。しかし、当時は『人間としての学問』としてまとめていくよりも、各民族についての知識の集積、つまり民族学としての研究といえます。

民族への探究が急速に広まったのは、18世紀後半です。その理由は、蒸気船の発明で、より早く遠くへと行けるようになったことでしょう。ディーゼルエンジンの発明は、それを加速させました。

当時の西洋では、資本主義の発達による富の奪取、つまり植民地化に関心が集まっていた中で、多様な民族との遭遇を重ね、『民族』『部族』という概念が生まれ、研究が深められていきました。

19世紀後半の文化人類学

ルイス・ヘンリー・モーガンは、19世紀のアメリカにおいて多くの功績を残した、偉大な人類学者で『アメリカ人類学の父』です。アメリカ先住民の理解者だったモーガンは、経済の分野でも活躍しました。

フリードリヒ・エンゲルスを通してマルクス主義理論に多大なる影響を与えた『進化主義人類学者』でもあります。さらに、一つの集団における親族構造の発達や進化について、初めて人類学的な理論で考察した人物です。

ダーウィンの『進化論』も、人類学に大きな影響をもたらしました。『神が人類を作った』という観念から解放された宗教界で、人類の進化の議論が持ち込まれます。このことも、人類学を大きく発展させました。

20世紀以降の文化人類学

近代から現代にかけての文化人類学の基礎は、マリノフスキーによって『西太平洋の遠洋航海者』が出版された時代に組み立てられたと考えられています。

加えて1910年代中頃までの、『現地語を学び、長期にフィールドワークをする』という基本的な人類学の方法論がベースとなっています。

そして、現代の文化人類学に至るまで脈々と続く民族誌が、他の自然科学の領域にも影響を与えるようになったのです。つまり文化人類学が学問としての影響力を持ち始めたということになるでしょう。

文化人類学を勉強する方法

「人類学により関心が強まったけれど、どのように勉強すればいいのだろう?」そう考えている人もいるでしょう。文化人類学の学習方法は、確かにあまり知られていません。

そこで、文化人類学を学ぶ方法について紹介します。ぜひトライしてみてはいかがでしょう。

まずは知識を深める

まずは、文化人類学について、知識を深めていきましょう。いろいろと複雑に考えることはひとまず置いておいて、手当たり次第に関連する書物を手にします。

専門書は高価なものが多いので、図書館に行き、文化人類学に関する本を借りることをおすすめします。また、インターネット上にも、文化人類学について触れたサイトが数多く見つかるでしょう。

博物館に足を運び、民族誌や文献、レポートなどをあたるのも一案です。とにかく数を求めて知識を吸収します。そうするうちに、次第に理解が深まり、あなたが目指す文化人類学者との出会いにつながるでしょう。

研究グループを作る

文化人類学の命題の一つに、多様な広がりを求めることがあります。文化人類学を研究するということは、人間の多様性に触れながら、知識や感覚の広がりを知ることです。

そのときに、同じ方向を向いている仲間の存在は、とても大切です。そのような仲間と研究グループなどを作ることは、とても有効でしょう。

場合によっては、あまりの多様性に考えや感情がまとまらず、心身共に披露することが文化人類学の研究ではあります。しかし、地道に共通点や普遍性を探るのが文化人類学です。

仲間と協調し歩調を合わせることは、文化人類学の研究とも通じます。グループの仲間は、いろいろな意味で支えとなるでしょう。

研究機関や学会を訪れる

がむしゃらに知識をため込み、仲間と学習を重ねることは、とても有効な手段です。しかし、専門的な学習方法を知ることも、合わせて大切になります。

そこで、文化人類学のスタンダードを理解するために、各地にある文化人類学の研究機関や教育学会などを訪ねてみるのもいいでしょう。調べてみると、そのような機関が見つかります。

人類文化学入門の本

独学で文化人類学への考察を深めることもできます。文化人類学にまつわる書物は、多数発行されています。入門編としてふさわしい3冊を紹介しましょう。

文化人類学の思考法

「当たり前や常識を疑う」言葉にすると簡単ですが、実践するのはとても難しいことでもあります。人はつい、自分の考える常識に囚われ過ぎてしまうものです。

しかし「子どもとや大人とは何か?」「なぜ人は戦うのか?」「貨幣価値はなぜ信用されるのか?」など、世の中を見つめ直そうとする場合、常識に縛られていては真の理解につながらないことが多々あります。

『常識や当たり前』から抜け出し、素直な疑問に正しい出口を作る方法が『文化人類学の思考法』には示されています。自由な発想で自分や世界とらえ直したい人必読の書です。

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文化人類学入門

『文化人類学入門』は、ハーバード大学大学院で学び、日本民族学会会長も務めた著者により、1979年に刊行されました。長きに渡って文化人類学の入門書をとして信頼を集めています。

文化人類学の基礎に触れながら、文化の進化から経済の成り立ちに至るまでへと進み『人間とは何か』について説明します。

人類の発展と文化との関係を膨大なデータにもとづき、わかりやすい語り口で読ませる内容は、多くの人から支持されており「入門書として読みやすく、興味深い」という声が集まっています。

文化人類学に関心を抱くすべての人に役立つでしょう。

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目からウロコの文化人類学入門

「人は色や音をどう見て・聞いているのか」「なぜ美しい風景は美しいのか」「なぜ美人は美人なのか」

興味をそそられる題材を、まさに目からウロコがはがれるように文化人類学の視点で語っています。

江戸川大学の社会学部現代社会学科名誉教授である筆者の斗鬼 正一氏は現地密着型のフィールドワークを通して目にした、多様で複雑な人間とその社会の魅力を発信しています。

そのため文化人類学をよりわかりやすく、楽しく伝えようと「一般の読者に、文化人類学を好きになってもらう」ことをテーマに、ユーモアを挟んだ解説が随所に盛り込まれています。

勉強するのは気が重いけど文化人類学を学びたい、そんな人に打ってつけの、楽しさあふれる入門書といえるでしょう。

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今までの常識を覆す文化人類学

文化人類学は、世界中に住む人々のそれぞれの文化を考察することを通して、人間を研究することで世界の広さを知り、自分が信じていた今までの常識を覆す力を持っています。

文化人類学を学ぶことでは、広い視野が備わり、新たな自分にも出会えるのではないでしょうか。

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