世界を魅了する「盆栽」の魅力とは?初心者向けに鑑賞法から育て方を解説

2019.07.22

盆栽は、日本で生まれた伝統的な園芸です。狭く限られた環境の中で、樹木のいきいきとした姿を表現できる盆栽は、いまや世界中で人気を集めています。盆栽の種類や楽しみ方を知り、育て方や手入れ方法について理解を深めましょう。

盆栽の基礎知識

盆栽とはどのようなものなのか、盆栽を鑑賞する際のポイントなども併せて解説します。

盆栽とは

盆栽とは、植物を鉢に植え、仕立てた植物の美しさを鑑賞する、日本の伝統的な芸術です。枝ぶり・葉姿・幹の肌感・根張り・鉢といった部分的なものや、それらの姿全体、さらに背景の自然や風景が鑑賞の対象となります。

盆栽はよく鉢植えと比較されます。例えば、花を鉢植えにした場合、その花は自然に大きくなり、自然に咲いた花をそのまま鑑賞することがほとんどでしょう。

成長を支えるために助けることはあっても、見せ方を考えて矯正をすることはほとんどありません。

一方で、盆栽は植物を育て鑑賞する楽しさ以上に、植物をどのように見せるか『仕立て』をすることにも楽しさを求めます。

自然の風景にある世界観を、鉢と植物を用いて表現したものが盆栽であるともいえるでしょう。

どこに注目して鑑賞するか

盆栽は、『盆』が鉢、『裁』が樹を指し、両方が評価の対象となります。盆栽を鑑賞するポイントは以下の通りです。

根張り

土をつかむような力強さや、八方へまんべんなく広がる様子が評価されます

立ち上がり

根元から最初の枝までの幹を指し、くびれが少なく太いほど良いとされます。松の場合は、長年重ねられた層による幹の肌が魅力のひとつとなります

枝打ち

より大きな枝がバランス良く配置されているかが評価されます。正面から見て左右非対称の美しさを求められることもあります。

季節ごとに変化する色や、樹木の種類ごとに異なる葉の形状を鑑賞します。

形や模様、大きさ、骨董価値の高さが評価の対象となります。

自然美と人工美

盆栽は、植物の姿を借りて、その背景にある自然や風景を感じるものであり、鉢の中に広大な自然を映し出すものでもあります。

思い描いた風景や過去の懐かしい風景を鉢に再現し、好きな時に鑑賞できる身近な存在となり得るのです。

『自然美』と『人工美』の調和が魅力的な盆栽は、目線を木の高さの中間あたりまで下げ、正面を定めて鑑賞することが重要です。樹の種類により特徴が異なるため、見るべきポイントもしっかりとおさえておきましょう。

盆栽の種類

盆栽に使われる樹種には様々な種類があります。どのようなものがあるか見ていきましょう。

松は『盆栽らしさ』を出しやすい魅力的な樹種で、仕立てるまでの工程も比較的容易なため人気です。盆栽に使われる松には、主に下のような種類があります。

五葉松

『縁起の良い木』として知られる樹種です。うまく育てられれば風格が増し、年間を通して青々とした葉を楽しめます。水やりなどの管理がしやすく、盆栽初心者に向いた樹種です。

黒松

『松盆栽の王者』とも呼ばれる、松の中でも代表的な樹種です。半日陰でも育つ特性を持つため、昼間に日当たりを確保することが難しい場合でも育てやすい特徴があります。

トド松

松らしい形状をしていない、すらっとした姿が特徴的な樹種です。他の松と異なり、直射日光や暑さを嫌う特性を持つため、どんな場所でも育てやすい特徴を持ちます。

桜の盆栽は花を楽しむ花物盆栽に分類されます。花が一斉に咲く様を鑑賞するタイプと、1~2輪の花を愛でながら品位と清楚さの美を求めるタイプがあります。

桜には数多くの樹種がありますが、主に盆栽で使われるのは『富士桜』という樹種です。富士桜は、桜の中でも野山に自生する山桜に分類される品種です。

桜は切り口が腐りやすいため、他の樹種と比べ盆栽として育てるには難しい樹種とされています。しかし、初心者でも基本的な育て方ができれば、花や新緑を通年で楽しむことが可能です。

葉物や実物

葉物を使った盆栽は雑木盆栽ともいわれ、葉の美しさや枝先のこまやかさを観賞する盆栽のスタイルです。春の芽吹き、夏の緑葉、秋の黄・紅葉、冬の裸樹の美しさといった、四季の変化が楽しめます。

特に紅葉が美しいケヤキは雑木盆栽の代表格とされ、初心者にも比較的育てやすい樹種です。

実のなる樹を使った実物盆栽も、いろいろな楽しみ方ができる盆栽のスタイルです。樹を育て鑑賞する以外に、秋から冬の間についた実を食べることもできます。

『実がなる』ことが『成果が表れる』ことに通じるため、縁起のよいものとして贈り物にも向いた盆栽です。姫りんご・さくらんぼ・ブルーベリーなどの樹種が人気になっています。

盆栽の育て方

盆栽に使う植物の基本的な育て方や注意するポイントを確認しましょう。

必要な道具

盆栽を始めるために最低限揃えておきたい道具を紹介します。

  • 盆栽ばさみ:切れ味が悪いと、剪定する際に枝を傷つけやすいため、切れ味の良いものを選びましょう
  • へら付きピンセット:盆栽に生えた雑草を取り除いたり、土をならしたりする際に必要です
  • やっとこ:針金を巻き付ける際に使います。ペンチでの代用も可能です
  • 針金・針金切り:針金かけの作業で使います
  • 竹箸:針金かけの作業で使います
  • じょうろ:盆栽にやさしく水をかける際に使います
  • 鉢底ネット:盆栽を植え替える際に使います。金属製のものは根を傷つけやすいため、自然素材のものを選びましょう
  • 土入れ:盆栽を植え替える際に使います

盆栽鉢選びのポイント

盆栽鉢を選ぶ際は、ある程度、水を貯めておけるように、小さすぎないサイズの鉢を選びましょう。小さすぎる鉢は水やりの回数が増えるため手間がかかりやすく、逆に大きすぎる鉢は重くなりやすく、置き場所に悩む可能性もあります。

植物の根が成長するためには、鉢の中に十分な温度も必要です。素焼きの鉢や焼締めの鉢は、どちらも熱の吸水性が良く盆栽に向いた素材の鉢といえます。

盆栽鉢は機能性だけでなく、見た目にもこだわりましょう。樹形全体の大きさに比べ、やや小さめの鉢を選べば、盆栽全体のバランスが取れて美しい見た目になります。

植物の見頃をイメージし、その時期に映えるデザインの鉢を選ぶことも、見た目を良くするうえで重要です。

置き場所

植物を育てる盆栽は、置き場所にも気を配る必要があります。基本的には屋外の日なたで管理し、日差しが強い場合はすだれなどで遮光したり、雪や寒波の影響を受けそうな日は室内へ避難させたりしましょう。

地面に直置きせず、風通しを良くしたり害虫を防いだりするために、60cmほどの高さがある台などの上に置いて管理するのがおすすめです。

育てる植物に関しても、自生する場所や生育の特徴などを個別にしっかりと確認することで、より細かい管理ができるようになります。

盆栽の手入れの仕方

植物を長期間育てるという意味で、盆栽の手入れはとても重要です。主な管理方法や注意すべきポイントを確認しましょう。

水やり

『水やり3年』という言葉があるように、植物ごとの適切なタイミングを見極めるのには時間がかかります。植物を毎日じっくりと観察し、土が乾いた頃にゆっくりたっぷりと水を与えましょう。

水やりは季節ごとのポイントをおさえることも重要です。寒暖の影響を受けにくい春と秋は、1日1~2回、鉢底から水が流れ出るくらい、まんべんなく水を与えましょう。

夏は水が乾きやすいため、1日2~3回水やりが必要になります。最低でも朝と夕方に、たっぷりと水をかけましょう。

逆に、冬は2日に1回程度でも大丈夫です。昼間の暖かい時間帯に行いましょう。

水やりで重要なことは、1回の水やりでたっぷりと水をかけることです。土の状態だけでなく、植物の生育状況もチェックしながら、適切な量とタイミングを判断できるようになるのが理想です。

剪定

樹形を美しく保つためには、こまめな剪定作業が必要となります。幹に対して見栄えの悪い枝を『忌み枝(いみえだ)』と呼び、忌み枝を元から切る作業が剪定の基本です。

初心者でも判断しやすい、主な忌み枝を以下に紹介します。

  • 下向き枝:枝から下に向けて出ている枝
  • 幹切り枝:盆栽を正面から見た際に幹を横切る枝
  • 突き出し枝:盆栽を正面から見た際に鑑賞者に向けて飛び出している枝
  • 逆さ枝:枝が伸びる方向と逆向きに生えている枝

毎日世話を続けていれば、違和感のある枝が分かるようになります。まずは基本の忌み枝を少しずつ覚えていくようにしましょう。

また、枝を切る際に傷をつけないよう、剪定ばさみは必ず切れ味の良いものを使うのが大切です。

針金かけ

針金かけは、盆栽を見栄え良く形作るために重要な作業のひとつです。枝に針金を巻きつけることで、樹形を理想の形に近づけたり、忌み枝を矯正したりできます。

針金かけに必要な道具は、針金・針金切り・やっとこです。やっとこはペンチでも代用できます。一般的に、針金は銅線を使いますが、慣れないうちはアルミ製の2~3mmの針金が、曲げやすいためおすすめです。

針金の太さは枝ごとに変える場合もありますが、巻きつけたうえで枝が動かない太さであれば、十分な強度を持つ針金だと判断できます。

針金を巻きつける際は、基本的に下から上に向かって、太い枝からかけていきます。松柏類は、晩秋から冬の期間に行い、雑木類は植物によってかける時期を決めていきましょう。

肥料の効果的な使用法

植物を育てる盆栽においては、適切な施肥も重要なポイントです。肥料の選び方や施肥の方法を解説します。

肥料の成分

数多くの種類が存在する栄養素の中でも、植物が成長するために欠かせない『肥料の三要素』と呼ばれるものが、チッ素(N)・リン(P)・カリウム(K)です。

チッ素は葉や茎、リンは花や実、カリウムは根の生育を主に促し、それぞれが植物の発育に重要な役割を担います。

早春の施肥には、木の成長を促すためにも、窒素含有量の割合が大きい肥料が有効です。

また、夏場の施肥には、三要素のバランスが良い肥料を使い、秋の施肥では冬に備えて木を強く育てるため、リンとカリウムの割合が大きい肥料を与えるとよいでしょう。

梅や桜、実物などへの施肥には、花や実の成長を促進するリンの含有量が多い肥料が有効です。

肥料の種類

盆栽に利用できる肥料には、天然由来の有機肥料と化学肥料の2種類があります。

有機肥料は油粕や米ぬかなどの植物由来のものと、骨粉や鶏糞など動物由来のものに分類されます。自然にやさしい肥料ですが緩効性のものが多く、肥料の効果を得るまで時間がかかることがデメリットです。

化学肥料は水に溶けやすく速効性が高いため、肥料の効果をすぐに得たい場合に有効です。

これまで盆栽では化学肥料が敬遠される傾向がありましたが、有機物を配合した有機化学合成肥料が開発されてからは、使い勝手の良さもあり広く使用され始めています。

また、肥料には固形・顆粒のものと液体のものがあります。有機肥料と化学肥料に関かかわらず、液体の方が浸透しやすく速効性が高いのが特徴です。

施肥の方法

施肥の量や頻度は、使用する肥料の説明書きに記載されている内容をよく読み、参考にしましょう。固形肥料なら土の上に置くタイプや埋めるタイプなどがあり、液体肥料なら水で薄めて水やりをする要領で施肥を行います。

基本的に、肥料は少なすぎる状態より多すぎる状態の方が、植物にとって悪い影響を与えやすくなります。

例えば、チッ素分が多すぎる状態は『チッ素過多』と呼ばれ、植物の発育自体に悪影響を与えるだけでなく、害虫が集まりやすい状況も作り出す可能性があるのです。

肥料は水と違い、不足した状態になっても、追肥を行えば植物は比較的すぐに元気な状態に戻ります。

剪定のポイントを学ぼう

全体の見栄えを良くしたり、植物の発育を促進したりするために、剪定は盆栽において大事な作業です。樹木を剪定する際のポイントを解説します。

盆栽の樹形

盆栽の樹形は様々な種類があり、それぞれの形は自然界における樹木の状況と密接に関係しています。必ずしも任意の形状にとらわれる必要はありませんが、基本形を理解することは盆栽の創作におけるひとつの指標となるでしょう。

盆栽の樹形で最もポピュラーなものが『直幹』です。幹が根元からまっすぐ上に伸び、全体的に根元から樹冠に向かって細くなる形状です。自然界の樹木にもよく見られる樹形になります。

『模様木』も盆栽で多く見られる樹形です。幹が『S』の字型にうねり、枝分かれが発生するごとにターンしつつ、上に向かって成長します。いわゆる『盆栽らしい』樹形です。

他にもいろいろな樹形の基本形が存在するため、育てる樹木にマッチした樹形を選べるようになることが重要です。

剪定の主な種類

剪定とは枝を切ることをいいます。樹木の種類や樹齢、季節などにより、目的や方法が異なります。剪定の主な目的は、樹形の作成や維持、風通しや日当たりの改善などが挙げられます。

枝を根元から切り取る剪定が『間引き剪定』です。主に樹形を作る際に使われる方法で、忌み枝や不要枝を剪定したり、新梢の間引きや枝抜きも間引き剪定に入ります。

枝を途中から切る剪定が『切り返し剪定』です。残された枝の部分に勢いを与え、葉や枝を増やす効果が期待できるでしょう。

その他、大きな枝を剪定し、樹形を大きく変える効果も期待できる『切り込み剪定』という方法もあります。

根も剪定が必要

剪定は地上部の枝や葉だけでなく、根にも行われます。盆栽全体の調和を保つために、根の剪定はとても重要です。

樹形を乱すような勢いのある枝が出てきた場合、根にも直根や走り根が出てくることが多く、その際に地上部の強い根のみ剪定しても、すぐに同じような根が出てきます。そこで、植え替えに合わせて地下部を剪定することで、全体的な樹勢を整えることが可能となります。

また、盆栽の鑑賞において重要な根張りを良くするためにも、根を剪定する必要があります。若木の段階から根を整理し、自然な根張りを作るように心がけることが大事です。

植え替えの時期や手順

根詰まりにより枯れることを防ぐために、盆栽は定期的な植え替えが必要です。植え替えに適したタイミングや手順を解説します。

必要な道具

植え替え時に必要となる主な道具は以下の通りです。

  • 鉢:植え替え前の鉢を参考に、サイズの変更が必要なら適したサイズの鉢を選びましょう
  • 剪定ばさみ:植え替え時に行う根の剪定に使います
  • 針金・針金切り:用土を入れるまで鉢と樹木を固定するために使います
  • 土入れ・ふるい:用土を鉢に入れる際に使います

時期や頻度

植え替え作業は、芽が動き出す前の初春が最適です。この時期なら、樹木は成長した枝や葉を維持する必要がないため、ダメージを最小限におさえられるうえに、根の修復も早まります。

植え替えの頻度は、急成長している樹木なら1~2年に1回、成熟した樹木なら3~5年に1回程度がよいでしょう。植え替えの適期である初春ごとに、盆栽全体の状態をしっかりと確認し、植え替えの必要があるかどうか検討する必要があります。

植え替えの手順

植え替えのおおまかな手順は以下の通りです。

  1. 鉢から樹木を抜く
  2. 割りばしなどを使って、根に付いた土をできるだけ落とす
  3. 必要なら剪定ばさみで根の剪定を行う
  4. 鉢に用土を軽く敷き詰め、樹木を入れて針金で固定する
  5. 用土を入れ、押し付けない程度に鉢全体に用土をならす
  6. たっぷりと水をかける

基本を押さえて育ててみよう

盆栽は、鉢に植えた植物に手を入れて鑑賞するための、伝統的なガーデニング技法です。使う植物には様々な種類があり、季節ごとに変化する様子で楽しめます。

必要な道具を揃え、育て方や手入れ方法を覚えれば、基本的なポイントをおさえるだけで初心者でも盆栽を作ることが可能ですので、ぜひ挑戦してみてください。

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