バイオリン演奏における弓の重要性。弓の基礎知識や扱いについて紹介

2018.10.01

バイオリンを演奏するなら、『弓選び』にもこだわりましょう。自分のバイオリンとの相性が良い、高品質な弓を選ぶためのポイントを紹介します。また、弓の正しい取り扱い方法やメンテナンスについてもあわせて解説します。

弓の基礎知識

バイオリンがあっても、弓がなければ演奏はできません。そして、バイオリンの弓ならば何でも良いというものではないのです。

まずは、弓についての基礎知識を学んでいきましょう。

木材やカーボンなど種類がある

バイオリン弓には下記のような素材が使われます。

  • フェルナンブコ材:硬くて密度が高くよくしなる
  • ブラジルウッド材:強度はフェルナンブコより劣るが低価格で人気
  • カーボン:人工の炭素繊維で軽くて丈夫

『フェルナンブコ』はブラジルウッドの1つです。そのなかでも、特に弓に適した性質の木材が使用されているものをフェルナンブコと呼び、他のブラジルウッドとは区別されています。

しかし、現在は原料不足により価格が高騰しており、入手が難しい状態です。

『ブラジルウッド』は見た目がフェルナンブコにそっくりですが、クオリティでは劣ります。また、取り扱いのしやすさが魅力のカーボンも、しなやかさではフェルナンブコに大きな差があるといえるでしょう。

最近では、芯がカーボンで、周りは木で作られた『インナーカーボン』の弓も登場し、操作性や耐久性、音質的にも優れていることから注目を集めています。

弓の各部の名称

バイオリンの弓の各部の主な名称は、次の通りです。

  • 棹:スティックとも呼ばれる、木などでできた部分
  • 毛:弓毛のことで、160~180本もの馬のしっぽの毛を脱色したもので作られている
  • ネジ(スクリュー):回すと毛の張りを調整できるネジ
  • フロッグ(毛箱):毛を巻き込んで張りの調整をする部分。棹とともにスライドする
  • サムグリップ:指の滑り止めの役目をする
  • チップ:弓の先端を保護するもので、牛骨や象牙、プラスチックなど

松脂によって音が出る

バイオリンの弓毛部分に欠かせないのが『松脂』です。松脂とは、松の木の樹脂を固めて作られたもので、黄色や黒色が一般的です。粘着性があり、こすりつけると白い粉が出ます。

新品のツルツルの弓のまま演奏しても、音は出せません。弓毛にまんべんなく松脂を塗ると、弓毛の表面に松脂の粒子が付着して無数の凸凹ができます。こうして抵抗を与えることで、弓と弦が十分にこすれ合うようになり、美しい音を響かせるのです。

始めて使う時は、時間をかけて何十往復もたっぷりと塗りこみます。2回目以降は、2往復程度で大丈夫です。松脂は、音そのものに大きく影響するうえ、1度購入すると通常10年以上はもつと言われているので、良質なものを選びましょう。

バイオリンも弓も値段はさまざま

バイオリン本体は値段がピンキリで、数万円で購入できる安価な量産品もあれば、有名メーカーのものや名工が手掛けた数千万円以上するものも珍しくありません。

世界最高峰のバイオリンと称される『ストラディバリウス』は数億円で取引されており、過去には12億円の値がついたものもありました。

また、弓も本体同様に値段の幅が広く、数千円のものから数千万円のものまでさまざまです。

バイオリン初心者は8~50万円程度のバイオリンを使っている人が多く、その場合の最も適した弓の価格は5~50万円程度です。バイオリン本体との相性を優先して決めるのが良いでしょう。

バイオリンと弓の構えの知識

バイオリンの演奏は立ち方ひとつで、音色に大きな違いが出ると言われています。また、変なクセがついてしまうと、演奏者の体にも負担がかかってしまいます。正しい構えの基本と、弓の持ち方の基本について知っておきましょう。

バイオリンの構えの基本

鏡を見て、いろいろな角度から確認しながら構えを作っていきましょう。

  1. 両足を肩幅に開いて立ち、右足のつま先をやや外側に開き、重心は軽く左足にかける
  2. 左肩甲骨の下あたりにバイオリンを当てる
  3. バイオリンの肩の部分に左手を添えて、バイオリンを左あごで軽く挟む
  4. 左手をネック部分に移動させて、正しい持ち方を確認する

弓の持ち方の基本

次に、弓の持ち方をマスターしましょう。最初は何も持たず、鉛筆のような軽いもので練習し、最後に弓へと持ち替えるとわかりやすいです。

  1. 肘を曲げた状態で、右手首から下だけをだらんと脱力する
  2. 親指の第一関節を軽く曲げて中指に近づける。指でつまむようにする
  3. その形の右手で弓を持つ

選び方のポイント

どんなに優れたバイオリンを使っていても、使う弓が合っていなければ、気品高い音を生み出すことは難しくなります。

弓選びには自分に合った重さ・サイズはもちろん、定期メンテナンスも含めて、使い続けていける価格かどうかも含めてチェックしておくことが大切です。

楽に演奏できる重さか

バイオリンを使って演奏する曲には長いものも多く、右手が疲れてしまわない重さの弓を選ぶことが必要です。

バイオリンの弓の重さは一般的に60g程度のものが多いといわれていますが、体の小さい人や手の小さい人は、さらにそれよりも軽量タイプのものを選ぶと良いでしょう。

また、弓自体の重さだけではなく『どこに重心がかかっているのか』を確認します。実際に手にした時に持ちやすく、重心のバランスが取れていると感じられる弓を選びましょう。

サイズが合っているか

バイオリンの弓の長さの平均は73~74.5cmと言われていますが、自分が使いやすい弓の長さのものを使うのが一番です。自分の身長や腕の長さを基準にして、長めか短めを選ぶようにしましょう。

選び方がよくわからないときは、バイオリンの先生に相談したり、楽器店で専門のスタッフにアドバイスをもらったりしながら、実際に持ってみてしっくりくるものを選んでください。

値段も考慮する

バイオリンの弓の値段はピンキリですが、高価な弓にはそれだけ優れた素材が使われており、音色も操作性も良いものです。

つまり『演奏技術をより良く見せたい、聴かせたい』のであれば、その分高額な弓を選んだ方が良いということです。

バイオリンを先に購入し、そのバイオリンに見合った弓を選ぶことが前提になりますので、バランスからいうとバイオリンの価格の何倍もする弓を選ぶ人は少ないでしょう。

100万円のバイオリンならば50万円の弓と言った具合で選びますが、初心者の場合は5~8万円のバイオリンを購入する人が多く、そのバイオリンに見合う弓を選ぶということでOKです。

合うものがわからない場合には、低価格すぎるものではなく、弓とセットで7~8万円台のものを選ぶと良いでしょう。

弓の買い替えについて

バイオリンの弓は、100年以上前のものがいまだに良い状態で使われているも場合もあるほど、『手入れ次第によっては長く使い続けられることができるもの』です。

弓が消耗してしまわないように注意して扱うことが大切ですが、季節の乾燥や使用状況によっては、買い替えしたほうが良い場合もあります。

レベルやバイオリンに合わせた買い替え

バイオリンの本体以上に、その音色や使用感に影響をおよぼす弓は、使う人のレベルや使う頻度、演奏する場面によって買い替えが必要です。

初心者用のバイオリンは、価格を安く販売するため『お試しの使い捨て用』と言っても過言ではない、低質の弓が付属されていることが多くあります。バイオリンを弾き続けていくなら、弓は付属のものではなく、買い替えることがおすすめです。

また、オーケストラに参加する時と自宅で練習する時、屋外で演奏する時など場面や季節によって、弓を使い分けるためにサブの弓として買い換えるという演奏者もいます。

弓の消耗は抑えることが可能

自分のレベルやバイオリンに合うお気に入りの弓は、消耗をできるだけ抑えて、長く使い続けていきたいものです。

そのためには、人間の体と同じように定期的に点検し、メンテンナンスを行いましょう。何かトラブルや問題が起きていても、早期発見できれば適切に対処し、改善する可能性が高まるからです。

頻度は、少なくとも半年に一度は行うようにしましょう。定期点検以外でも、気になる点や不調を感じたら、都度早めに購入した楽器店などに相談することが大切です。

弓のメンテナンスや管理

バイオリンの弓はとてもデリケートな道具であり、音色にも大きく影響します。そのため、こまめなメンテナンスもかかせません。管理しておく場所や温度などの環境にも注意が必要です。

日常の手入れ

バイオリンの弓を良い状態に保つためには、日常の手入れを欠かさないことが大切です。弓毛には松脂を使うため、『弓の棹の部分』には手からの汗や皮脂と松脂からの油も付着しています。

放置しておくと木材部分や金属部分の劣化につながってしまいます。使い終わったら専用のクロスや柔らかい布を使用し、棹を優しくふき取っておきましょう。

また、『弓の裏側に付着した松脂』も演奏後に毎回、柔らかい布を使って丁寧にふき取ります。手入れ不足で松脂が白く固まってしまった場合には、専用クリーナーを使えば落とすことができます。クリーナーを弓毛に付けないように気を付けましょう。

演奏時以外は弓毛を緩める

演奏する時にスクリューを回し調整して、弓毛を張って演奏するのがバイオリンの弓ですが、使っていないときも弓毛を張り詰めた状態にしていると、棹が反ってしまいます。

また、そのままケースに入れて持ち歩くと振動などで棹の部分に負担がかかり、ポキッと折れてしまうこともあります。

演奏時以外に弓毛を緩めておくことによって、弓をストレスから解放し、弓毛だけでなく棹の反りや先端部分への負担を軽減できます。

保管についても気を遣おう

バイオリンの弓は、保管している環境によって影響を受けます。特に、弓毛は湿度によって長さが変わりやすく、寒くて空気が乾燥しやすい冬には短く縮み、暑くて湿気が多い梅雨時期から夏にかけては伸びるという特徴があります。

温度や湿度を意識して適切な環境で管理することが大切ですが、1年を通して完璧な環境にバイオリンの弓を保管しておくことは難しいものです。メンテナンスの際にプロにチェックしてもらい、その都度調整するようにしましょう。

毛替えと修理

バイオリンの弓のメンテナンスとして欠かせないのが、『弓毛の毛替え』です。弓の構造の中で、外環境からの影響をもっとも受けやすい部分だからです。

ほかにも破損しやすい先端部分や弓全体の反りなどについても、状態によっては修理が必要になってくることがあるので、具体的に紹介します。

毛替えとは

バイオリンを毎日は演奏しないという人でも、弓毛は半年から1年ほどで毛替えをしてメンテナンスを行いましょう。プロは2~3ヵ月で毛替えしていると言われています。

次のような状態のときは、早いうちに毛替えが必要です。

  • 弓毛が伸び切っている
  • 弓毛の黒ずみ、黄ばみが目立つ
  • 弓毛が減ってきた
  • 前回の弓毛交換から1年以上が経過している

なお1万円以下などの、かなり低価格のセットとしてバイオリンと共に入っている弓の場合は、注意が必要です。

価格を安く抑えるために、付属品にすぎないレベルの弓が入っていることが多く、使い捨てと考えて差し支えないものが多いからです。

その場合は毛替えをするのではなく、弓そのものを早い時期に買い替えすることがおすすめです。

棹の先端折れ

スクリューを過度にまわして、弓毛をピンと張り過ぎてしまったときや、誤って弓を落としてしまったときなどに、棹の先端が折れてしまうことがあります。バイオリンの弓の構造上、もっとも起こりやすいトラブルの1つと言われています。

棹の細くなっている部分が折れてしまった場合には修理が難しいものですが、厚みのある先端部分の折れは、購入店やメーカーで修理をしてくれることも多いので問い合わせてみましょう。

反り直しとは

バイオリンの弓も長年使っていると、弓毛を張るために左右から曲げられて行ったときのクセが付いていきます。弓毛を緩ませたり、しばらく休ませておいたりすることで反りが改善されることもあります。

しかし、どうしてもそれでも状態が改善されない場合『反り直し』という、熱を加えてゆっくりと弓を曲げていく作業を行うと改称されるケースがあります。

このメンテナンス方法は、バイオリンの弓にとっては荒療治的な方法と言えます。反り返しを行うことによって音色が変化してしまう場合や、弓の質によってはすぐに形状が元の状態に戻る場合もあることを理解したうえで行ってください。

初心者におすすめの弓

バイオリン初心者でも練習用に付属している弓ではなく、自分に合ったサイズや重さの良質な弓を新たに入手して、演奏の腕磨きをしましょう。

使いやすくて、価格も比較的リーズナブルなバイオリン弓を厳選しました。

杉藤バイオリン弓 No.300

1899年創業の老舗メーカーである杉藤楽弓社は、その名の通り楽器に使われる弓だけを一筋に作り続けてきました。

杉藤バイオリン弓No.300は、バイオリン初心者にこそ使って欲しいという、高級素材フェルナンブコから作られているバイオリン弓です。10日間じっくり試してから購入できる『杉藤試奏』システムもあります。

  • 商品名:杉藤バイオリン弓 No.300
  • 価格:32,400円(税込)
  • Amazon:商品ページ

ヤマハ カーボン弓 CBB101

木製に続いて注目度の高い、カーボン素材から作られたバイオリン弓です。木製よりも丈夫で、毛の張り心地のよさや、なにより軽量で扱いやすいのが特徴です。コスパの良いバイオリン弓をお探しなら試してみてください。

シンプルでスタイリッシュなすっきりとした見た目で、初心者からプロの人、サブのバイオリン弓としてもおすすめです。

  • 商品名:ヤマハバイオリン用カーボン弓CBB101
  • 価格:33,133円(税込)
  • Amazon:商品ページ

カルロジョルダーノ BV-101

入手しやすい木材であるブラジルウッド材の中から、良質なものだけを選んで作られたバイオリン弓です。

見た目にスタンダードなこのバイオリン弓は、職人の手によって丁寧な検品と調整が行われているので安心です。

とても安価ではありますが、4/4~1/16までという豊富なサイズ展開をしています。そのためサイズアウトするペースの早い、子どもの習い事用としても多く使われている人気のメーカーです。

  • 商品名:カルロジョルダーノBV-101
  • 価格:6,048円(税込)
  • Amazon:商品ページ

バイオリン演奏は弓のウェイトも大きい

バイオリンの弓をどんなものにするかで、バイオリンが奏でる音色は大きく変わります。初心者でまだお試し用の弓を使っている人は、早めに弓を買い替えることをおすすめします。それだけでレベルアップした音に聞こえることでしょう。

バイオリンの弓は、骨董品のような価値のあるものを除けば、素材の価格がそのまま質に反映されるため、良質な弓になればなるほど値段は高くなります。

まずは店頭で実物に触れて、できれば試奏してみましょう。その際には普段使っているバイオリンを持参することを忘れないでくださいね。

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