『プラトン』の哲学を5分で解説。イデア論の概要と意味とは?

2019.07.16

プラトンのイデア論は、一見するとヘンテコな考え方に思えます。しかしイデア論をとおして彼が何を目指したのか、その全体像を知れば、イデア論もよりわかりやすくなります。この記事ではプラトンの中期作品をもとに、彼の目的に迫ります。

プラトンの考え方の変化

まずプラトンとはどんな人物なのか、そして初期から中期にかけてプラトンの考えがどう変わっていったのか見てみましょう。

古代ギリシア哲学の巨人プラトン

プラトン(前429年頃-前347年)は紀元前4世紀に活躍した哲学者です。古代ギリシアのアテネに生まれ、ソクラテスの弟子となり、ソクラテス死後には各地を遍歴して知見を深めるかたわら、アテネ郊外にアカデメイア学園をつくり若者の教育にも当たりました。

またプラトンはたくさんの本を書き、自らの考えを残しました。現存する30余りの作品はほとんどが師ソクラテスを主人公にした対話形式ですが、そこに見られる思想のちがいから大きく「初期」「中期」「後期」に分けられます。

真理探求の行き詰まりを乗り越えたい

プラトンの問題意識は師ソクラテスと同じく、真理を追求するための方法・目的にありました。プラトンの初期作品には、問答によって真理を求め、そして自分の無知をわきまえることの大切さを示すソクラテスの姿が描かれています。

しかしここで描かれるソクラテスの問答はいつも、行き詰まって終わりました。なぜならソクラテス自身も真理が何であるか知らないからです。

じゃあ何かを知ろうとすることも無駄なのか?そんな懐疑主義を打ち消して、哲学を励ますために、プラトンは「イデア」と「魂」を持ち出してくるのです。

「洞窟の比喩」で語られるイデアとは

プラトンの中期作品はイデア論が中心となります。ところでイデアとはそもそも何なのでしょう。

完全なものは、見ていないけれど思い描ける

例えば「直線」と言われたら、わたしたちはそのイメージを思い描けます。一方で、わたしたちは完璧な直線を一度も見たことがありません。ぴんと張った糸も、まっすぐに伸びる線路も、定規でさえ、わずかな歪みがあるからです。

完全な直線がないにも関わらず、直線とは何かを皆が同じようにイメージできる。これはなぜかというと、直線の原型があるからだとプラトンは言います。この「原型」のことをイデアと呼びます。「本質」「もととなる相」と言ってもいいでしょう。

イデアのほうが真実だ

プラトンはイデアこそ真実の存在で、現実とはイデアが様々な形で表れたものにすぎないと考えました。これを説明したのが、有名な「洞窟の比喩」です。

洞窟の奥にむかって縛られている囚人がいるとします。彼の背後では、木や石で作られたいろんな模型が掲げられていて、洞窟入口から明かりが差し込んでいます。すると囚人は、洞窟の壁に映る影絵しか見ることができません。

わたしたちが認識する現実とはこの影絵のようなものだと、プラトンは言うのです。

プラトンにとっての哲学とは

では、現実世界に生きるわたしたちには、物事の本質・原型を知るすべはないのでしょうか。いや、あるとプラトンは言います。それを可能にするのが「不死の魂」です。

輪廻転生する魂はイデアを想起する

人は死んでも魂は死なない、また魂は千年周期で輪廻転生するとプラトンは語ります。そして魂はかつて天上界でイデアそのものを見ている、しかし地上に落ちて肉体を得たらそれを忘れていると説きます。

わたしたちがぴんと張った糸を見て「直線」を思い描けるのはなぜか、魂が直線のイデアを思い出すからです。美しい花をきっかけに「美」の概念を持つのも、美のイデアを想い起こすからです。こうした魂の想起説によって、イデアは不可知ではないとプラトンは主張したのでした。

真理を探究し、魂を浄化することが哲学

イデアを知るすべがあるなら、どのように探求したらいいのか。肉体的感覚を離れて、純粋な思考のみによって可能だとプラトンは続けます。そしてこうした実践を繰り返して、善とは何か・徳とは何かに迫ることが、魂の浄化(カタルシス)にもつながると説きました。

この姿勢を、プラトンは「知を愛すること」、つまりフィロソフィアと呼びました。プラトンにとって哲学とは、生き方そのものだったのです。イデアを求める哲学者として生きよう、これがイデア論にあるプラトンの主張でした。

プラトンの言いたかったこととは

以上プラトンのイデア論と、その目指したところを見てきました。「イデア」や「不死の魂」だけを取り出すと、たしかにプラトンの哲学は現代のわたしたちには奇妙に思えます。

しかし彼の哲学が生き方そのものであったとすれば、また見方もちがってきます。イデアや魂を想定することで、「人間よ、真理を追い求めることをやめるな」とプラトンは言いたかったのです。アカデメイア学園の創設もこうした目的に沿ったものでした。

プラトンの想いに応え、やがてこの学園からアリストテレスが現れますが、これはまた別の記事で見ていくことにしましょう。

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