温泉を極める。知っておきたい基礎知識とともに主な温泉を紹介

2018.09.19

温泉といえば日本人はもちろん、外国人観光客にも人気な日本の観光スポットです。泉質や入浴における注意点、地熱発電など温泉の基本的な知識について紹介します。日本3名泉の他、楽しめる温泉地も合わせて見ていきましょう。

温泉の定義

世界的に見ても日本は温泉に恵まれている国です。一定の場所だけでなく全国に温泉地があるので、旅行や観光の定番スポットとなっています。まずは、温泉がどういったものなのか『温泉の定義』を知っておきましょう。

温泉とは

温泉と呼ばれるにはある条件が必要です。温泉には『温泉法』という法律があり、地中から湧き出た温水・鉱水・水蒸気・ガスのことで、温度や物質が含まれるものとされています。

ただ地中から湧き出ただけでは温泉になりません。『湧出した温度が25℃以上あれば温泉』です。また、25℃未満だったとしても定められた物質が含まれるのであれば温泉になります。

その為、湧き出たのが湯ではなく水蒸気やガスであっても、温度と含まれている物質が規定以上含まれているのであれば温泉となるのです。

療養泉とは

『療養泉』とは、温泉の中でも療養効果のある成分が含まれる温泉のことです。環境省が定めた『鉱泉分析法指針』によって掲げられている成分のうち、1つが含まれていることが条件になります。

物質名 含有量(1kg中)
溶存物質(ガス性のものを除く) 総量1000mg以上
遊離二酸化炭(CO2) 1000mg以上
総鉄イオン(Fe2++Fe3+) 20mg以上
水素イオン(H+) 1mg以上
よう化物イオン(I–) 10mg以上
総硫黄(S)〔HS–+S2O32-+H2Sに対応するもの〕 2mg以上
ラドン(Rn) 30(百億分の1キュリー単位)以上

温度は温泉と一緒で摂氏25度以上です。温泉も療養泉も基本条件は、一定の温度があるか、規定の物質が含まれているかになっています。

主な泉質

温泉は含まれている成分や色、匂い、味、肌触りなど各地の温泉で特徴があります。いわゆる『泉質』と呼ばれており、聞いたことある人も多いでしょう。

泉質とは

温泉の泉質に含まれている成分や含有量はさまざまで、その特徴によって以下の10種類の泉質に分類することができます。温泉の効能効果の説明欄などに書かれている場合があります。

  • 単純温泉
  • 塩化物泉
  • 炭酸水素塩泉
  • 硫酸塩泉
  • 二酸化炭素泉
  • 含鉄泉
  • 酸性泉
  • 含よう素泉
  • 硫黄泉
  • 放射能泉

また、成分の含有量などが基準値に満たない場合は、泉質名は付きません。その時は、『温泉法上の温泉』『温泉法第2条に該当する温泉』というように記載されます。

今回は、主な泉質である単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉の3つを紹介します。

単純温泉

『単純温泉』は、温泉水1kgの中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1000mg未満で、温泉が湧き出た際に25℃以上の泉質をいいます。

このうち液性(pH)が8.5以上ある温泉が『アルカリ性単純温泉』と呼ばれています。

アルカリ性単純温泉は、日本に数多く存在しており、お肌がすべすべになるという特徴があります。自律神経不安定症、不眠症、うつ状態にも効果的です。

塩化物泉

『塩化物泉』は、温泉水1kgの中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1000mg以上含まれており、陰イオンの主成分が塩化物イオンの泉質のことです。

こちらも日本でポピュラーな泉質で、塩分が主成分なので飲むと少し塩辛いのが特徴です。切り傷や末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症に効果的となっています。

また、飲むことで萎縮性胃炎、便秘に良いとされています。温泉地によっては飲むことを勧められるかもしれません。

炭酸水素塩泉

『炭酸水素塩泉』は、温泉水1kgの中に溶存物質量(ガス性のものを除く)が1000mg以上含まれており、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンの温泉を言います。

陽イオンの主成分によっては、ナトリウム・カルシウム・マグネシウムー炭酸水素塩泉の3つに分類されます。また、カルシウムー炭酸水素塩泉からは、石灰質の温泉沈殿物や析出物が生成される場合もあるようです。

切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症に良いとされており、飲むと胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風に効果的です。

入浴における注意点

温泉には、入浴の際に気をつけなければならないことがあります。よく温泉旅館や施設で注意書きとして貼られています。これは決して温泉を経営している側が独自に考えたものでありません。

昭和29年に厚生省が策定したもので、後に環境省が一般社団法人日本温泉気候物理医学会と一緒に定めたものです。安心して安全に温泉を楽しむためのものなので、ぜひしっかりと目を通しておいてください。

入浴方法

入浴方法には個人で差はありますが、心肺機能が低下している人や高血圧、心臓病の人は気をつけてください。例えば、心肺機能が低下している人は、『半身浴や部分浴』が望ましいです。

また、高齢者や心臓病、高血圧症、過去に脳卒中を経験した人は、42℃以上の温泉は避けるようにしましょう。これらの人は1日当たりの入浴回数は1~2回くらいが良いです。慣れてきたら2~3回と増やしても構いません。

入浴時間は温泉の温度にもよりますが、大体3~10分程度を目安に入浴してください。慣れてきたら15~20分程度までなら延長しても良いでしょう。

入浴前

温泉に入る前にも気を付けることはたくさんあります。注意しないとケガや事故に繋がります。自分だけでなく周りの人にも迷惑をかけてしまうので、以下のことには気を付けましょう。

  • 入浴前の飲酒や食事は避ける
  • 運動直後は30分程度体を休める
  • 高齢者や子供の1人での入浴は避ける
  • 温泉に浸かる前に体を洗う
  • 入浴前に水分補給を行う

いたって基本的なことです。お酒を飲んで入浴するとヨロヨロと滑って頭をぶつけたりしたら大変です。それに、高齢者や子供の1人での入浴は何が起こるか分からないのでなるべく避けてください。

温泉は公共の場なので、汚い体のまま浴槽に浸かるのはマナー違反です。かけ湯で綺麗に体を洗って浴槽に入るようにしてください。

入浴中や入浴後

入浴中はタオルを浴槽に入れないようにしましょう。浴槽で泳ぐ行為もマナー違反です。また、浴槽に入るときや入浴中、出る時は『静かにゆっくりと行動する』のがマナーとなっています。

浴槽の中では手足をゆっくり動かす程度が望ましいです。あまりバシャバシャすると周りの人にも迷惑がかかります。万が一、入浴中にめまいが生じたい際は、近くの人に助けを求めましょう。

入浴後は、温泉成分を残すために、温水で洗い流さずにタオルで水分をふき取ってください。せっかくの温泉成分が勿体ないです。水分補給も忘れないようにしましょう。

湯あたりしたら3日~1週間前後ほど気分不快、不眠、消化器症状などが発生する場合があります。温泉の入浴を中止して回復するのを待つのがおすすめです。

適応症と禁忌症

温泉の療養泉には、『適応症』と『禁忌症』という症状が発生することがあります。この2つの症状がどのようなものなのか見ていきましょう。

温泉療養とは

温泉療養とは、『療養泉に入浴して症状や苦痛を和らげたり、健康促進を図ったりすること』です。医療ではないので、特定の病気に効果的だったり、すぐに効果があらわれるというものではありません。

あくまで、時間をかけて改善効果を得るということです。温泉施設に行くと、温泉で得られる効用効能が記載されています。温泉に入る際はぜひチェックしてみてください。

温泉療養で効果をあらわす症状

温泉療養で効果をあらわす症状のことを『適応症』と言います。よく温泉の壁に記載されているものです。適応症には、全泉質共通の『一般的適応症』と泉質で違う『泉質別適応症』があります。

一般的適応症は、温泉全般に見られる適応症のことで以下の症状があります。

  • 神経痛、五十肩、打撲、捻挫
  • 高コレステロール血症、痔の痛み
  • 自律神経不安定症
  • 疲労回復、健康増進

泉質別適応症は、泉質に含まれている成分によって得られる効果が違うので泉質別に症状が分かれているものです。

泉質別適応症 浴用 飲用
単純温泉 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
塩化物泉 切り傷、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症 萎縮性胃炎、便秘
炭酸水素塩泉 切り傷、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症 胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、糖尿病、痛風

これらはほんの一部です。温泉療養では、まだまだたくさんの適応症が得られます。

禁忌症について

禁忌症とは、『1回の入浴で体に悪影響を及ぼす可能性がある病気や病態』のことです。これには『一般的禁忌症』『泉質別禁忌症』『含有成分別禁忌症』の3つがあります。

一般的禁忌症は全ての温泉に共通する症状です。熱や風邪を引いていたり、動くとすぐに息切れするような重い心臓・肺・肝臓の病気を持っていたり、目に見える出血をしていたりすると症状が悪化する恐れがあります。

また、泉質が酸性泉や硫黄泉の場合、皮膚がただれる可能性があるので皮膚が敏感な人は避けるべきでしょう。そして含有成分別禁忌症は以下の通りです。

成分 1日の飲用許容量 症状
ナトリウムイオン 1,200mg/A×1000ml 腎不全、心不全、肝硬変、虚血性心疾患、高血圧など
カリウムイオン 900mg/A×1000ml 腎不全、副腎皮質機能低下症
マグネシウムイオン 300mg/A×1000ml 下痢、腎不全
よう化物イオン 0.1mg/A×1000ml 甲状腺機能亢進症

有成分別禁忌症については、温泉の飲泉場に記載されているのでしっかりと確認しておいてください。

一度は行ってみたい日本3名泉

温泉大国である日本には『有馬温泉』『草津温泉』『下呂温泉』の日本3名泉があります。これら3つの温泉は、日本の温泉の中でも名湯の中の名湯です。

草津温泉

日本一の湧出量を誇るのが群馬県にある『草津温泉』です。毎分32300リットルほど湧き出ている泉質は殺菌力が高いのが特徴で、名物の『湯畑』を勢いよく流れ出ています。

また、草津温泉といえば『湯もみ』も必見です。伝統的な衣装を来た女性が歌を歌いながら湯もみを行います。古くから湯治文化を現代に伝える貴重な温泉地です。

草津温泉ポータルサイト

下呂温泉

源泉をそのまま流していることで有名な岐阜県の『下呂温泉』です。泉質はアルカリ性単純温泉で、ほのかに香りが漂いまろやかなお湯が特徴的となっています。

84℃で湧き出ており、源泉を消毒なしでそのまま使用しているので、本当の温泉が味わえると評判が高いです。下呂大橋周辺の河原にある『噴泉地』や日帰りでも楽しめる『湯めぐり手形』も楽しんでください。

下呂温泉 旅館協同組合公式サイト

有馬温泉

日本3名泉の中で最も古いのが兵庫県にある『有馬温泉』です。日本最古の温泉とも言われており、『濁り湯の金泉』と『透明な銀泉』の二色の温泉は多くの成分が含まれています。

風情ある温泉街はこぢんまりとしており、散策しやすいのがポイントです。お洒落なカフェやお土産屋さんが多く、女性旅にも人気のある温泉スポットとなっています。

有馬温泉観光協会公式サイト

楽しめる温泉は他にも

もちろん日本の温泉は、日本3名泉だけではありません。他にも楽しめる温泉はたくさんあります。

大涌谷の黒い温泉卵が有名な箱根

1200年の歴史を持つ『箱根温泉』は観光地としてとても有名です。気持ちの良い温泉と美味しい料理屋さんが立ち並び、自然豊かで日々の疲れを癒すには最適な温泉地となっています。

箱根各地に温泉を送っている『大涌谷』の黒い温泉卵も有名です。普通の生卵が地熱と火山ガスから出る鉄分と硫化水素が反応して真っ黒の温泉卵が出来上がります。

箱根に入ったらぜひ食べてみてください。

箱根湯本観光協会【公式】観光・温泉・ホテル・旅館ガイド

温泉に入る猿が大人気 地獄谷野猿公苑

長野県の北部に位置する『地獄谷野猿公苑』は、世界中から注目される温泉スポットとなっています。その理由は、温泉に入る猿が見られるのはここだけとなっているからです。

もちろん人間も温泉に入ることが可能です。川岸に設けられた露天風呂は、力強く流れる川を見ながら入浴することができます。基本的に混浴ですが、女性用露天風呂も用意されています。

外で入浴するのは恥ずかしいという人には内風呂もあるので安心してください。露天風呂には稀に猿が入っていることもあるようです。

地獄谷野猿公苑|ようこそ、ニホンザルの世界へ

東京にも天然温泉はある

温泉といえば、都会から離れた場所にあるというイメージがありますが、東京にも天然温泉が楽しめる温泉はあります。気軽に温泉が利用できるので都内住まいの人にはかなり重宝されています。

東京板橋区にある『前野原温泉 さやの湯』は、都内でも貴重な源泉かけ流しの温泉です。敷地内の源泉井戸から流れでる湯には、疲労回復、神経痛や冷え性に効果的です。

  • 店舗名:前野原温泉 さやの湯
  • 住所:東京都板橋区前野町3-41-1
  • 電話番号:03-5916-3826
  • 営業時間:10:00~25:00
  • 定休日:年中無休
  • 公式サイト

あきる野市にある『秋川渓谷 瀬音の湯』は、大自然に囲まれており、秋川渓谷に広がる風景を眺めながら温泉を楽しむことができます。アルカリ度がとても高いので美肌の湯として女性に人気です。

  • 店舗名:秋川渓谷 瀬音の湯
  • 住所:東京都あきる野市乙津565
  • 電話番号:042-595-2614
  • 営業時間:10:00~22:00
  • 定休日:年中無休
  • 公式サイト

カリフォルニアにも温泉が

あまりイメージできないですが、実はアメリカのカリフォルニアにも温泉があります。雰囲気は日本の温泉とは少し違いますが、硫黄温泉や泥温泉、ソルト風呂、ミネラル風呂など種類も豊富です。

カリフォルニアの温泉は基本的に水着着用で、混浴となっています。ゆっくりと入浴したい日本人には少し周りに気をつかうかもしれませんが、貴重な温泉は現地の日本人に大変重宝されているのだそうです。

知っておきたい温泉と地熱発電のこと

太陽光発電や風力発電が主流の日本ですが、近年では温泉を活用した『地熱発電』が徐々に考えられています。

世界で3番目に地熱資源を持っているのが日本なのです。温泉と地熱発電は果たして正解なのか、少しここで触れておきます。

温泉は有限

温泉は無限ではありません。次から次へと湧き出るイメージが強いかと思います。それは『何千年もの間、自然が作り上げた力』なのです。もし、地熱発電でこの力を吸い取ってしまったらどうなると思いますか?

政府は『温泉と地熱発電が共存できる』と発表しています。しかし、実際には『地熱発電で温泉が枯渇した』という事例は存在します。地熱発電でエネルギーを得るためには自然を削らなければなりません。

それは温泉が湧き出る環境を変化させることになります。今まですべての条件が揃っていた環境が崩れていくと温泉にも影響します。温泉は無限ではないということを忘れてはいけません。

地熱発電のリスク

地熱発電にはさまざまなリスクが存在します。第1に『掘ってみなければ分からない』というリスクがあります。現に、長野県にある中の湯温泉旅館周辺では地熱発電の建設が進められていました。

しかし、勢いよく蒸気が出ていたのは最初だけで、すぐに蒸気は出なくなり作業が止まっている状態です。どんどん穴を掘ってしまうと費用もかかってしまいますし、中断しなければならないリスクもあります。

また、温泉を引き上げる際や、地中に温泉を戻す際のリスクも考慮しなければなりません。『振動で災害を引き起こす可能性』があるからです。それに補償範囲も大まかにしか決まっていないのも気になります。

温泉と地熱発電は並び立たない?

温泉は自然環境が変わるとその全てが変わってきます。日本でも有数の温泉地である熊本を襲った地震の影響で、温泉が出なくなったところはたくさんあります。

温泉が地熱発電の影響は受けないと言い切れません。現在建設されている地熱発電所では、稼働開始後の発電量は減少しつつあります。湧き出る蒸気や熱水の温度も低下しているようです。

これは『地熱発電が吸い取るエネルギー量と、自然が補充するエネルギー量が比例していない』ということです。

このように自然環境を変えるかもしれない地熱発電と温泉は共生できないという声が多いのもわかります。

理解を深めることでより温泉を楽しもう

温泉は私たちの宝ともいえる日本の文化です。しかし、その資源は有限でいつか温泉が無くなってしまう可能性があることを理解しておいてください。

温泉がどのようなものか、温泉をこれからどうしていくのかは私たち次第だということです。これらを理解して自然に感謝し、ゆっくりと温泉に浸かってみると、いつもと違った温泉体験になるかもしれません。

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