絵画に描かれた古今東西の春を楽しもう!春をテーマにした名画とは

2019.07.15

絵画の中に描かれた春は、同じ季節であっても画家によって異なる情景として表現されています。春をテーマにした代表作をチェックすれば、画家の想いやその一枚に込められた気持ちの違いを感じられるでしょう。作者の詳細と一緒に参考にしてみてください。

サンドロ・ボッティチェリ プリマヴェーラ

絵画の中の『春』を楽しめる画家として、まずは『サンドロ・ボッティチェリ』について紹介します。代表作の『プリマヴェーラ』の見どころも要チェックです。

サンドロ・ボッティチェリについて

15世紀、ルネサンス期のイタリアに生きたボッティチェリ(本名アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ)は、権力のある貴族や有力者から多くの製作依頼を受けるなど、有名画家としての人生を歩んでいました。

フィレンツェのメディチ家に注目されたことで、ローマ皇帝からの依頼を請け負い、システィーナ礼拝堂のフレスコ画を完成させたことなどが彼の功績です。

しかし、ボッティチェリが50歳前後には、メディチ家の衰退やドミニコ会の修道士らの弾圧から、貧困生活を送ったとされています。

その晩年には、宮廷画家にもなれずに貧困生活を送っていたとしても、彼が遺した素晴らしい作品の評価は、今なお高いものです。その代表作の一つは、春を描いた絵画として有名でもあります。

春の訪れを描いた代表作プリマヴェーラ

ボッティチェリの代表作として有名なのが、春の訪れを描いた『プリマヴェーラ』です。中央のヴィーナスを筆頭に、数々の女神が描かれたこの作品は、古代の神話をモチーフにしたという点で、当時としては画期的なものでした。

画面左では、手を繋いで輪を作っている三美神の「愛・貞節・美」が描かれ、右側では、大地の女神クロリスが西風の精ゼフェロスに吐息を吹きかけられ、花の女神フローラへと変身するシーンが描かれています。

絵の題材としてギリシア神話が扱われることがほとんどなかった時代に、神話を絵画に取り入れたボッティチェリの作品は、写実性から離れた細かい描写による表現によって、高く評価されています。

見どころを知ろう

プリマヴェーラの見どころを箇条書きにすると、下記のものが挙げられるでしょう。

  • 9人に擬人化された神々
  • 40種類以上の草花
  • 多色を用いた色彩
  • テンペラの白い地色が映えるように薄塗りを重ねて裏彩色のような効果
  • 金色の細かい表現に使われた本物の金

繊細な表現によって、フローラの変身やキューピッドが目隠しをして矢を射る姿など、多彩な様子が描かれています。そうした登場人物の姿だけでなく、草花が萌えだす春の訪れの情景も楽しんでみてください。

クロード・モネの2つのチューリップ畑

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した『クロード・モネ』は、幼少期より絵画の才能に溢れていました。そんなモネが生み出した作品と、その活躍を支えた妻の存在について紹介します。

クロード・モネについて

日本でも多くの人が注目する印象派を代表する画家、クロード・モネは、『光の画家』とも呼ばれているほど、光や影の表現が豊かなのが特徴です。

額縁前の特定の視点から見るだけで絵の全体を捉えやすく、とてもわかりやすい画風であると言えるでしょう。

25歳のころにはパリのサロンへ2作品を初出品し、入選を果たしたものの、30歳まで落選が続き、自殺未遂を図るまで落ち込んでいました。

しかし、37歳のときに結婚したのを機に、妻のカミーユに支えられ『ラ・ジャポネーズ(日本衣裳の女)』を始めとする画業で活躍を続けたのです。

愛妻家であったモネが、幸せに溢れた生活を垣間見せる妻や子をモデルにして描き上げたものや、気持ちのままに風景をとことん描き出したものまで、作品は多岐にわたります。ぜひチェックしてみてください。

ライデン近くのチューリップ畑

そんなモネの『ライデン近くのチューリップ畑』は、赤・緑・黄・紫・青など、色とりどりに描かれた春の芽吹きを感じさせる作品です。色合いがはっきりしているので、力強い印象を感じ取れることでしょう。

のどかな春の小川が描かれたこの作品は、モネがフランス大使館の書記官であるエストウールネル・ド・コンスタン男爵の招きでオランダに足を運んだ際に描かれました。

オランダのチューリップ畑

オランダに短い滞在をしたときに描かれたもう一つの作品が『オランダのチューリップ畑』です。

ライデンとハールレムの間のサセンハイム近郊で描かれたこの作品は、地平線まで咲き誇る畑に、風車とわずかな建物を描くことで、微細な変化を与えています。

色とりどりのチューリップを描くことで、その色彩と力強さを表現したこの作品は、油彩の特徴を存分に引き出したものです。その魅力を伝えるタッチにも注目してみてください。

葛飾北斎 桜花に富士図

老いてもなお製作意欲は衰えることなく、90年の生涯で多くの作品を残した『葛飾北斎(かつしか ほくさい)』も見逃せません。代表作と一緒にチェックしてみましょう。

葛飾北斎について

江戸時代後期に生きた葛飾北斎は、その好奇心に富む性格から、独学でさまざまなことを学び絵師人生へと歩んだ人でした。

幼少期から写生をして過ごし、手先が器用なことを活かして14歳には木彫り職人に弟子入りします。

19歳のときには役者絵士の勝川春章(かつかわ しゅんしょう)のもとに入門し、勝川春朗(かつかわ しゅんろう)と名前をもらい『細判役者絵』などによって浮世絵の世界に登場したのが、絵師としてのデビューと言っていいでしょう。

しかし、その好奇心によって師の模倣では物足りなさを感じ、狩野派や洋画など多くの知識を学んだことなどもあり、結果的に破門されていまいます。

ここから北斎は、森羅万象あらゆるものの真を描くことに執念を燃やし、多くの作品を世に残していくこととなりました。

淡い色合いが美しい一枚

北斎の作品の中でも、春にふさわしいのが淡い色合いを使い満開に咲き乱れる桜と富士山を描いた『桜花に富士図』です。

北斎の作品といえば、『凱風快晴』の力強い色彩を用いた富士山が印象に残りがちですが、桜花に富士図では対照的な柔らかで優美な線と透明感で、日本の春を描き出しています。

絵全体の柔らかな雰囲気は春を感じさせ、穏やかな気持ちを抱かせる一枚と言えるでしょう。上品な色彩と、空摺(からずり…強くこすって彫り跡の凹凸を出す木版画技法)の多用など、趣向を凝らした特注品として作られた一枚です。

日本人の心象風景とも言える、いつの時代も変わらない富士山と桜の美しさを堪能してみてください。

奥村土牛 醍醐

『奥村土牛(おくむら とぎゅう)』は、大器晩成とも言われるものの、戦後に現代日本画を代表する傑作を多く発表したことで知られています。その代表作では北斎と同じ桜を題材にしつつも、全く違う雰囲気を楽しめるでしょう。

奥村土牛について

土牛の作品の特徴は、日本画の顔料である胡粉(ごふん)などを、刷毛で100回200回と重ね塗りをして、微妙な色加減を出している点です。

土牛は、画家志望だった父親のもとで10代から絵画に親しみ育ちました。38歳に院展初入選と、比較的遅咲きながら、100歳を超えても制作に取り組み、多くの作品を遺しています。

写生や画品を重視する姿勢を貫き、作者の人間性は絵を通して伝わってくるという自らの言葉を体現する、温かみ溢れる作品が特徴的です。

近現代を代表する日本画家として愛されている奥村土牛が生み出した作品からは、地道に画業へ専心し続けた結果が生み出した結晶と言えるほどの、温かみと輝きが堪能できるでしょう。

醍醐寺の枝垂れ桜を描いた醍醐

醍醐寺の枝垂れ桜を描いた作品『醍醐』は、淡い色味の桜の花びらと力強い木の幹が描かれた作品です。

花びらは淡く透明な薄紅色をしており、何度も薄い色合いを重ねる技法によって、満開の桜の淡い印象を際立たせています。

細かい枝のタッチには力強い描写が用いられ、木の持つ生命力と人々を魅了する桜の妖艶さを一枚に収めた傑作です。一見の価値ありの作品でしょう。

描かれた古今東西の春を楽しもう

描かれた時代や画材による表現の違いもさることながら、画家たちは「春の喜び」を、それぞれの感性に従って画面に収めてきました。同じ春を感じながら、画家それぞれの表現の違いに目を向けてみるのも、鑑賞の楽しみの一つです。

紹介した作品以外にも、春を題材とした素晴らしい作品は数多くあります。画家が表現するさまざまな春の美しさを、体感してみてはいかがでしょうか。

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