平安時代に生まれた伝統工芸「瀬戸焼」の歴史や魅力を解説

2019.07.14

焼き物には陶器と磁器の2種類が混在します。古典的な壺から花瓶・皿まで種類が豊富な瀬戸焼は愛知県瀬戸市を発祥とする伝統工芸です。では瀬戸焼は実際にどのようなものがあるのでしょうか。基礎知識からおすすめの商品まで、瀬戸焼の魅力を紹介します。

瀬戸焼の基礎知識

日本における焼き物の歴史は古く、縄文土器・弥生土器という古代の焼き物も見つかっているほどです。現在も焼き物の産地として有名な瀬戸地方で焼き物が盛んになったのは11世紀頃である平安時代後期と考えられます。

瀬戸焼は、美濃焼・有田焼と並ぶ『日本3大焼き物』の一つです。瀬戸焼には特徴はどのようなものなのか、まずは基礎知識を見ていきましょう。

瀬戸焼の特徴

瀬戸焼は、民芸品の素朴さを持った模様から優雅な染付まで種類・模様が豊富な焼き物です。なぜ多種多様な表現が可能なのでしょうか。それは、瀬戸市内の採掘場から、『良質な陶土・陶石』がたくさん出土しているからです。

その中でも石英分を豊富に含んでいる赤津蛙目(あかづがいろ)粘土が陶器の主原料となっています。また、陶磁器の主原料には形状を変えやすい本山木節(もとやまきぶし)粘土を利用します。

そして瀬戸焼のもう一つの特徴として挙げられるのが、海外での評価が高いことです。これは1873年にオーストリア・ウイーンで開催された万国博覧会に出展されたことがきっかけで、その後の博覧会でも高い評価を得たからです。

その後、海外からの注文が増え『セト・ノベルティ』(ノベルティとは陶磁器製の置物や装飾品の総称)として人気を博すようになりました。特に戦後直後は、日本の陶磁器輸出のほとんどが瀬戸焼が占めていたほどです。

六古窯の一つ

日本において昔から存在している陶磁器窯のうち、以下の条件を満たしている窯は六つあります。

  • 平安末期~安土桃山時代の『中世』から約900年以上の歴史がある
  • 現在も生産が続いている

この条件を満たしている信楽・備前・丹波・越前・瀬戸・常滑の六つの窯を『六古窯』と呼んでいます。

六古窯は、中国大陸からもたらされた製陶技術から生まれた比較的新しい近世からの窯と区別され、日本で生まれて日本で育まれたメイド・イン・ジャパンの焼き物とされています。

瀬戸焼の歴史

土をこねて形を整え焼き上げる。焼き物の歴史は縄文時代から始まっていますが、高い技術を持った専門職である職人たちが窯業生産をスタートさせたのは、古墳時代に中国大陸から伝わった須恵器(すえき)が先駆けといわれています。

そして、5世紀には瀬戸市がある東海地方で猿投窯(さなげよう)という本格的な窯業がスタートし、全国各地へ拡大していきました。

平安時代から室町時代

東海地方では猿投窯が発展していきましたが、瀬戸市においては遅くとも11世紀初頭に『灰釉(かいゆう)陶器』を焼いた窯が見つかっています。この跡は瀬戸市南部の幡山地区に分布しているので、瀬戸焼の起源は幡山地区と考えられているのです。

その後、平安時代後期に日宋貿易が始まり、青磁や白磁といった優れた陶磁器類が大量に輸入されるようになりました。

当時の消費者は上級階層であったため、生産者は彼らの需要に合わせていかなければなりません。

東海地方の陶磁器の生産者達は上級階層の日用品として、釉薬(うわぐすり)を使用しない無釉の『山茶碗(やまぢゃわん)』を生産するようになりました。

瀬戸の窯業にも同様の変化が見られ、山茶碗専用の窯が瀬戸の窯全体の約半数を占めるほどまで盛んに生産が行われました。当然ながら生産量も増え、この状況は室町時代中期頃まで続いたと考えられています。

江戸時代から明治

江戸時代に入ってからの瀬戸窯業は、活性化が図られました。1610年に初代尾張藩主である徳川義直が離散していた瀬戸の職人たちを呼び戻し、藩のご用窯として重宝しました。

その中で産まれたのが、これまでの大窯による生産ではなく大量生産に向いている『連房式登窯』(れんぼうしきのぼりがま)です。この窯の登場により、瀬戸焼はより一層盛んに生産されるようになりました。

しかしながら、江戸時代初期に九州の肥前で磁器の生産が始まると、一気に日本全国に販路を拡大し普及しました。そのため、瀬戸焼の販路は縮小していくことになります。

明治維新が起こってからは、富国強兵のスローガンのもと、明治政府は日本国内の陶磁器産業の振興に注力しました。

1873年にウィーンで開催された万国博覧会への参加をきっかけに、アメリカ・フィラデルフィアの万国博覧会、フランス・パリの万国博覧会にも瀬戸焼が出展され人気を博しました。

大正、昭和時代から現代

1914年に始まった第一次世界大戦により、これまで陶磁器の生産地であったドイツ・イギリス・フランスが戦争のために生産をストップすることを余儀なくされてしまいます。そこで需要が高まったのが、日本製の陶磁器です。

当時、ヨーロッパ・アメリカで親しまれていたのはドイツ製の精巧なノベルティでした。その代わりとして、同じく精巧だった瀬戸焼が『セト・ノベルティ』として注目されるようになりました。

しかし、1929年の世界恐慌から始まる『十五年戦争』の時代では、陶磁器産業は軍需優先による影響をもろに受けることになってしまいます。物資・燃料が十分に用意できなくなったことから、生産は大きく縮小してしまうのです。

その中で瀬戸焼を後世に残すために、伝統的技術の保存と同時に、軍需用に重宝された石炭ではなく皮木を活用して、日用品としての陶磁器や金属製品の代用品の生産に着手し、苦しい時代を乗り越えていきました。

瀬戸焼の代表的な釉薬

瀬戸焼は、1000年近い歴史を持つ焼き物です。瀬戸は、中世期では唯一釉薬を使用した陶器を生産していた地域でもあります。そのため、さまざまな釉薬が瀬戸焼に使用され、その表現が豊かになりました。

では、瀬戸焼ではどのような釉薬が使用されるのでしょうか。

灰釉と志野釉

まずは灰釉です。これは、植物を燃やしてできた灰を使用した釉薬で、瀬戸焼の生産が始まったときからの伝統的な釉薬です。瀬戸焼以外の焼き物でもよく使われることから、すべての釉薬の基本となっています。

灰の中に含まれる不純物が影響して色調が変わることがありますが、一般的には酸化焼成をすると淡い黄緑色で、還元焼成(酸素が少ない状態で焼いていくこと)をすると淡い青色になります。

その中でも御深井釉(おふけいゆう)と呼ばれる灰釉は、江戸時代に尾張の徳川家の御庭焼として名古屋城にある御深井丸で焼かれていた陶器に使用されていたものです。

また志野釉(しのゆう)とは、長石を多く含んだ釉薬で光沢がある白色に発色するのが特徴です。この釉薬は、16世紀末期に美濃に移り住んだ瀬戸の職人が開発したといわれています。

鉄釉と青磁釉

鉄釉とは、酸化鉄を使用した釉薬です。瀬戸焼で初めて使用されたのは13世紀末期で、『古瀬戸』と呼ばれる陶器に使われました。含まれる鉄の分量で黄褐色から黒色まで色彩はさまざまです。

また青磁釉とは、微量の酸化鉄の影響で青色・緑色に発色する釉薬です。瀬戸焼では19世紀初期に磁器の製造が始まってから使用されました。特に明治時代以降によく使用されるようになり、クロム青磁も良く使用されるのが特徴です。

黄瀬戸釉と織部釉

黄瀬戸釉(きぜとゆう)とは、ごく微量の鉄分が影響して黄褐色に発色する釉薬です。志野釉と同じく、美濃に移り住んだ瀬戸の職人が16世紀末に開発しました。

また織部釉とは、酸化銅の影響で緑色に発色する釉薬です。茶道の大家である千利休の弟子である古田織部が好んだことでこの名前で呼ばれるようになりました。

装飾方法もさまざま

瀬戸焼は使用する釉薬の種類が多いだけでなく、装飾方法もさまざまです。

焼き物の装飾というと、顔料を使って色や模様を描く『絵付』が代表的です。その他にも、模様を彫ったり貼ったりする加工方法や、釉薬によって変化をつける方法などを組み合わせて、表情豊かな焼き物ができ上がります。

器の表面への装飾

代表的な器の表面への装飾を見ていきましょう。

  • 印花…文様を彫り付けた印材を使って、乾燥前の素地に文様を施す方法で、鎌倉時代の古瀬戸に良く見られます。
  • 画花(かっか)…素地にカンナやヘラを使って文様を刻みこむ方法で沈み彫りと呼ばれることもあります。
  • 貼花(ちょうか)…素地土と同じ粘土を使って文様を貼りつける方法です。
  • 浮かし(浮彫り)…器面を掘って模様を浮き立たせる方法です。
  • 櫛描(くしがき)…櫛のような歯状の道具を使って文様を施す方法です。
  • 象嵌(ぞうがん)…彫り込みに素地土とは別の土をはめ込む方法です。

釉薬によって生まれる装飾

次に、代表的な釉薬を使った装飾です。

  • 化粧(刷毛目)…素地土の上に白泥などを塗る方法です。
  • 掻き落し…素地の上に素地土とは別の土を塗り、表面を削り素地の色を出す方法です。
  • 貼花(ちょうか)…掛け分け、流し掛けとも呼ばれる方法で、発色の違う釉薬を複数使用して模様を作り出します。
  • ぼかし(吹き墨)…刷毛や霧吹きを活用して濃淡を出す方法です。
  • イッチン…筒を使って粘性の高い顔料を盛るように活用する方法で盛り上げ手と呼ぶこともあります。

器の形そのものによる装飾

さらに、器の形そのものを活用した装飾の代表例を見てきます。

  • 輪花(稜花)…器の縁の部分に一定間隔・連続的にくぼみをつけるなどして花弁状にする方法です。
  • 面取り(ヘラ目)…球面の器の表面を削り多面体に仕上げる方法です。
  • 沓形…器の縁から胴にかけて楕円形のように歪みをつける方法です。
  • 透かし…器の表面の一部をくり抜く方法です。

伝統工芸品に指定されている瀬戸焼

瀬戸焼は、伝統的工芸品の一つに数えられます。昔からの伝統的な技術を活用し、自然の材料で手作りされたものは、現代でも親しまれています。

この工芸品と呼ばれるものは、日本全国で1000近くありますが、そのほとんどが中小企業で個人事業で製造されています。

そのため、1974年に日本政府は『伝統的工芸品産業の振興に関する法律』を制定して、工芸品の保護・育成を国策として行っています。

伝統工芸品の定義

『伝統的工芸品産業の振興に関する法律』において、伝統的工芸品は以下のような要件が必要とされています。

  • 主に日常生活で使用されるもの
  • 製造過程の主要部分が手で作られているもの
  • 伝統的技術・技法を使って製造しているもの
  • 伝統的に使用されてきた原材料を使っているもの
  • 一定のある地域が産地となっているもの

2017年11月現在、経済産業大臣が指定する伝統的工芸品は全国に230品目ほどです。瀬戸では『赤津焼』と『瀬戸染付焼』が指定されています。

瀬戸市赤津地区で作られる赤津焼

赤津焼は、瀬戸市の東端にある赤津地区が発祥の焼き物です。1924年に当時の瀬戸町と合併されるまでは、赤津村だった地域で1000年を超える歴史を誇る焼き物を生産してきました。

その伝統は今も受け継がれ、多彩な釉薬を使った表情豊かな色彩が特徴です。

赤津七釉と呼ばれる『灰釉・鉄釉・古瀬戸釉・黄瀬戸釉・志野釉・織部釉・御深井釉』の7種類の釉薬を使うだけでなく、12種類に及ぶ装飾技法を組み合わせて独自の装飾を生み出します。

現在では、茶道具・華道具だけでなく、懐石食器や湯のみ、コーヒーカップなども製造されています。

絵画のようにきれいな瀬戸染付焼

江戸時代の陶工である加藤民吉が、九州で磁器の製造法を修業した後、故郷である瀬戸に戻りその技術を伝えました。

そこで発展したのは、瀬戸地方特有の柔らかい味わいを持った磁器です。この磁器は『瀬戸染付焼』と呼ばれ、日本画のような華麗な文様が特徴となっています。

山・川といった自然や野鳥・草花が写実的かつ繊細に描かれ、その趣は他の産地の磁器とは一線を画した独特の世界を作り出しています。

おすすめの瀬戸焼窯元

長い歴史を持つ瀬戸焼ですが、現在もさまざまな窯元で生産が続いています。では、ここからはおすすめの瀬戸焼の窯元を紹介しましょう。

700店以上の食器が並ぶmake me day

愛知県名古屋市の繁華街・栄にある『make me day』には、オーナーがデザインする食器の他、全国から集めた約700点の商品が揃っています。店舗の2階ではワークショップも行っていて、窯業体験ができます。

  • 店舗名:make my day 名古屋本店
  • 住所:愛知県名古屋市中区錦3-6-5 コインズビル1F
  • 電話番号:052-684-6682
  • アクセス:地下鉄久屋大通駅徒歩3分
  • 営業時間:11:00-20:00(水曜日定休)
  • 公式HP

窯元の共同体として発足したやきもの工房 炎

瀬戸市にある『やきもの工房・炎』は、窯元の共同体として発足しました。複数の窯元がお互いの技術を競いながら陶磁器を製作していますが、今後も多くの窯元に参加してもらう予定だそうです。

瀬戸市は世界的に見ても類のない陶業地のため、日本の食文化の名脇役である『器』を中心に販売しています。

  • 店舗名:やきもの工房 炎
  • 住所:愛知県瀬戸市上品野町327
  • 電話番号:0561-41-0527
  • 公式HP

250年続く老舗の瀬戸本業窯

瀬戸市にある250年続く老舗の『瀬戸本業窯』は「焼き物は使った分だけ大切になる」というコンセプトのもと、日常的に使用する食器を製造しています。

土作りも釉薬作りまですべて行い、1300度近い高温で焼いた丈夫な食器がたくさん揃っています。

  • 店舗名:瀬戸本業窯
  • 住所:愛知県瀬戸市東町1-6
  • 電話番号:0561-84-7123
  • 公式HP

通販で買えるおしゃれな瀬戸焼

窯元に訪れて実際に手にとって見るのもおつなものですが、最近では、瀬戸焼も通販でも気軽に購入できるようになりました。

どのようなものがあるのか、実際の商品を紹介します。

素朴さが魅力のぬくもりカフェ 土物一服碗

ころころとした丸みが特徴のお椀で、ごはんやスープだけでなくサラダやスイーツにも使えそうな仕上がりとなっています。手の中にすっぽりと収まる安定感も特徴です。

可愛らしいデザインが特徴で、女性や子供にも使いやすいデザインになっています。食卓にちょっとした彩りを加えるのに利用してみてはいかがでしょうか。

  • 商品名: ぬくもりカフェの土物一服碗
  • 価格:637円(税込)
  • 楽天:商品ページ

華やかで上品な撫松庵 瀬戸焼 カップ

美しい模様が印象的な瀬戸焼のカップです。着物のブランド『撫松庵』とのコラボから生まれたことから、着物の持つ日本らしい伝統的な美しさを持っています。

「アガバンサス」「カラー」「フヨウと猫」「リリー」といった種類があり、落ち着いた色合いは夜に使用するのにぴったりです。

  • 商品名:撫松庵 瀬戸焼 カップ
  • 価格:1620円(税込)
  • Amazon:商品ページ

食卓が鮮やかになる瀬戸焼浮花飯椀

かわいさ抜群の浮花模様があしらわれたお椀です。活力を表現した黄色と落ち着きのある織部が個性的で、食卓の中でも異彩を放ちそうです。

女性へのプレゼントにも最適で、軽いのも魅力となっています。和風の食卓を華やかにしてくれる逸品は、ご家庭でも使いやすいのが特徴と言えるでしょう。

  • 商品名:瀬戸焼浮花飯椀
  • 価格:745円(税込)
  • 楽天:商品ページ

瀬戸焼の食器を使ってみよう

このように、瀬戸焼は豊富な種類があるので自分の好みの商品を探す時間も楽しくなりそうです。陶器も磁器も楽しめる瀬戸焼の中から、自分らしい焼き物を見つけ出してください。

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