和菓子の美しい見た目と上品な甘さは、古くから日本人に愛され続けています。また、洋菓子に比べると油分が少なく、ヘルシーなお菓子としても注目されており、手土産としても大人気です。幅広い年代に親しまれる和菓子の魅力や、おすすめのお店を紹介します。
繊細で美しい日本の和菓子
和菓子は、和菓子職人によって丁寧に作られた、繊細で美しい日本を代表するスイーツの1つです。あっさりとした上品な甘さは、抹茶などと相性がよく、古くから日本人のお茶請けとして食されていました。
そんな和菓子は、一体どのように誕生したのでしょうか。ここでは、和菓子の歴史をはじめ、ケーキやクッキーなどの洋菓子との違いについて解説します。
和菓子の歴史
和菓子という言葉の起源は、弥生時代に間食として食べられていた木の実や果物です。この頃は、食べ物が豊富になかったため、人々は木の実や果物を食べて空腹を満たしていました。
果物の『果』と種子の『子』の字を合わせて『菓子』と呼ばれるようになり、平安時代には、朝廷へ献上されていました。のちに、遣唐使によって唐から、米・小麦・大豆などの穀物を加工した唐菓子が日本へ伝わります。
鎌倉時代には、茶の湯の発展とともに、上流階級の間では和菓子がお茶請けとして出されるようになります。
江戸時代に入ると砂糖の輸入量が増え、和菓子は庶民にまで広がり、京都では現代の和菓子のような美しく繊細な京菓子が作られるようになりました。
洋菓子との違い
大正時代末期に西洋文化が広まるにつれ、洋菓子が日本に入ってきたことで、和菓子・洋菓子と区別されて呼ばれるようになりました。和菓子と洋菓子の違いは、主に下記の4点が挙げられます。
- 原料
- 味
- 作り方
- 見た目
和菓子は、主に小豆や餅粉などを原料とし、あっさりとした甘さで、味のバリエーションは控えめです。
洋菓子は小麦粉・卵以外に、バター・生クリームなどの乳製品が多く使われ、しっかりとした甘さで味のバリエーションが豊富にあります。
作り方は、蒸す・煮る・練るなど多くの手作業で作る和菓子に対し、洋菓子はミキサーなどの道具やオーブンを使って作ります。
和菓子は、季節の花・動物などをモチーフとし、ほとんどが同じ大きさで丸い形をしています。種類が豊富な洋菓子は、形も見た目も種類によってさまざまです。
和菓子の種類は大きく分けて3つ
和菓子には、製品に含まれる水分量によって、下記の3種類に分けられます。
- 生菓子
- 半生菓子
- 干菓子
ここでは、これらの3種類の和菓子についてそれぞれ解説します。
生菓子
生菓子は、水分含入量が30%以上の菓子のことです。大福・おはぎ・練り切り・ようかん・水ようかんなどがあります。
また、生菓子の中でも、大きく分けると朝生菓子(並生菓子)と上生菓子の2つに分けられます。
朝生菓子とは大福や草餅など、基本的にその日のうちに食べる生菓子の種類で、時間が経つと固くなり、おいしさが損なわれていきます。日常の茶菓子として使われているほとんどの生菓子が、この朝生菓子の種類です。
上生菓子は高価な生菓子のことで、季節の花・鳥などをモチーフとした職人技が楽しめる練り切りなどが挙げられます。作ってから2~3日ほどの間は、おいしく食べられます。
半生菓子
半生菓子は、生菓子と干菓子の中間に位置し、水分量を少なくし砂糖漬けにするなどして、生菓子よりも長く日持ちするように作られています。
生菓子のように法令で規定はありませんが、一般的に10~30%の水分含有量のお菓子のことを半生菓子と呼びます。
半生菓子には、主に下記の6種類に分けられます。
- あん菓子(石衣など)
- おか菓子(最中・鹿の子など)
- 焼き菓子(平なべもの:茶通 / オーブンもの:桃山など)
- 流し菓子(ようかんなど)
- 練り菓子(ぎゅうひなど)
- 砂糖漬け菓子(甘納豆など)
同じようかんでも、練りがしっかりとしたようかんは半生菓子の分類になります。
干菓子
干菓子は、水分含有量が10%以下のお菓子のことです。生菓子・半生菓子・干菓子の3種類の中で最も水分量が少なく日持ちします。
干菓子には、下記の8種類があります。
- 打ち菓子(懐中しるこなど)
- 押し菓子(しおがま・むらさめなど)
- 掛け菓子(ひなあられ・おこしなど)
- 焼き菓子(丸ボーロなど)
- あめ菓子(有平糖など)
- 揚げ菓子(かりんとうなど)
- 豆菓子(おのろけ豆・炒り豆など)
- 米菓子(あられ・せんべいなど)
日持ちすることから、茶の湯・供物としてもよく用いられます。
人気の和菓子ランキング上位の和菓子は?
和菓子には、いろいろな種類がありますが、その中でも人気の和菓子はどんなものがあるのでしょうか。ここでは、人気が高い和菓子を紹介します。
大福
定番の和菓子の1つである大福は、餡を餅で包んだ和菓子です。大福には、豆大福・塩大福・草大福などいろいろな種類があります。また、最近の大福には、苺などのフルーツが入ったタイプもあり、大福の甘みとフルーツの酸味が絶妙と人気です。
大福は餅を使っているため、しっかりとお腹にたまることもあり、女性だけでなく男性からも人気があります。
どら焼き
どら焼きは、小麦粉・卵・砂糖を使って作られたスポンジに、小豆の餡を挟んだ和菓子です。どら焼きは、丸い形がどら(銅鑼)に似ていることから、名付けられたといわれています。
また、関西地方では、奈良県にある三笠山に形が似ていることから、三笠まんじゅう・三笠焼きなどと呼ばれています。
甘くてふんわりとしたスポンジと、上品な甘さの小豆餡の相性は抜群です。
みたらし団子
みたらし団子は、串焼き団子に砂糖醤油のくず餡をかけた和菓子です。京都の下鴨神社の境内にある、御手洗池の水泡から名付けられたといわれています。
関西地方のみたらし団子は、通常1串に5個の焼き団子が刺さっていますが、関東地方の焼き団子は、1串に4個と少し違いがあります。
醤油の塩辛さと砂糖の甘さがマッチしたとろっとした餡を、シンプルな味わいの焼き団子に絡めることで、程よい味わいに仕上がっているのが特徴です。
ようかん
和菓子の中でも、棹物(さおもの)菓子であるようかんは、練りようかん・水ようかん・蒸しようかんの3種類があります。餡に砂糖・寒天を入れて煮詰めて固めたものが練りようかんです。
また、練りようかんよりも水分量を含み、柔らかく作られたものが水ようかん、小豆のこし粉と小麦粉に、葛粉と砂糖を混ぜてよく練って蒸して作ったものが蒸しようかんです。
餡の種類も小豆だけでなく、抹茶・サツマイモ・白インゲン豆など、いろいろな種類があり、栗が入ったものも人気があります。
和菓子にはどんな飲み物が合う?
あっさりとした甘さと、美しい見た目の和菓子は、どんな飲み物が合うのでしょうか。一般的に、和菓子は口の中に甘さが残りやすいため、さっぱりとした甘くない飲み物との相性がよいとされています。
こう聞くと、「和菓子といえばお茶しかない!」という印象を持つ人が多くいますが、実は和菓子はいろいろな飲み物と相性がよいのです。色々試して自分好みの組み合わせを見つけてみるとよいでしょう。
ここでは、和菓子に合う飲み物を紹介します。
相性がよいのはやっぱりお茶
和菓子の甘さは、緑茶や抹茶などの渋みや苦味との相性がよいため、和菓子とお茶の組み合わせは定番です。
そもそも和菓子は、茶の湯とともに発展を遂げています。現代でも茶道では、お茶請け=和菓子というほどに、お茶と和菓子の相性は抜群です。
茶道での和菓子は、抹茶が点てられる前に出され、和菓子を食べた後に抹茶が出されます。口の中に残る和菓子の甘さと抹茶の苦さが合わさることで、抹茶の苦さを軽減してくれるからです。
日常であれば、あまり抹茶を点てる機会はありませんが、抹茶と和菓子の組み合わせを体験してみるのもよいでしょう。
薄めのコーヒーもおすすめ
和菓子は、薄めのコーヒーともよく合います。和菓子の上品な甘さは、コーヒーの風味を邪魔しないため、コーヒーも和菓子もどちらの味わいも楽しめます。
また、最近では、和菓子とコーヒーを提供するカフェも増えています。酸味と苦みがあまり強くない薄めのコーヒーは、小豆餡を使った和菓子や、落雁などの干菓子といった和菓子全般との相性がよいのでおすすめです。
お酒が好きな人は日本酒と
お酒が好きな人は、日本のお酒である日本酒と和菓子を組み合わせてみるのもよいでしょう。
辛口の日本酒には、練り切りや大福などがよく合います。きりっとした日本酒の味わいが、餡の濃厚な甘さによってマイルドになるためです。
また、甘みとコクがあるにごり酒と、あられなどの少し塩気が効いた和菓子を合わせると、口の中で甘じょっぱさが広がります。
海外でもあの有名和菓子店の味が楽しめる
繊細で美しい和菓子は、日本だけでなく海外でも注目されており、海外に出店している和菓子店もあります。
海外在住・海外旅行などで訪れた日本人だけでなく、現地の人にも日本を代表する菓子として浸透しつつあります。
ここでは、海外に出店している2つの有名和菓子店を紹介します。
アメリカのニューヨークにも進出源吉兆庵
全国各地に店舗を展開する『源吉兆庵』は、アメリカのニューヨークをはじめ、シンガポール・イギリスのロンドンなど、世界8カ国で40店舗を出店している和菓子店です。
高級住宅街で高級店が並ぶことでも知られる、マディソンアベニューにあるニューヨークのマディソン店は、日本らしい外観と接客で、地元ニューヨーカーたちに人気があります。
- 店舗名:源吉兆庵 ニューヨーク マディソン店
- 住所:509 MADISON AVENUE, NEW YORK, NY10022 U.S.A.
- 電話番号:1-212-489-3747
- 営業時間:日~木曜日 10:00~19:30、金・土曜日 10:00~20:00
- 定休日:なし
- 公式HP
パリにも店舗がある、とらや
室町時代に京都で創業した『とらや』は、その伝統を現在まで守り続ける老舗の高級和菓子店です。和菓子を通して日本文化を世界に広めるために、1980年フランスのパリに出店します。
2015年には、世界的に有名な建築家であるDGTの田根剛氏によって店舗をリニューアルし、とらやの代表的な商品の1つであるようかん『夜の梅』をイメージしたテーブルなど、随所にとらやらしさと日本らしさがちりばめられています。
パリ店では定番商品のほか、ここでしか買えない限定商品などが販売されているほか、店内には、和菓子でティータイムを楽しめる喫茶スペースが併設されています。
- 店舗名:とらや
- 住所:10, rue Saint-Florentin, 75001, Paris, FRANCE
- 電話番号:01-42-60-13-00
- 営業時間:10:30〜19:00
- 定休日:日曜日、フランスの祝祭日
- 公式HP
手土産にも最適な老舗和菓子屋3選
年配の方や、大切な人の家を訪れる際の手土産に迷ったら、上品なセンスが光る和菓子を持っていきましょう。
和菓子は、老若男女問わず喜ばれるお菓子です。和菓子についてまだよく知らない人でも、「この和菓子店のものを持っていけば間違いない!」という老舗和菓子屋を紹介します。
御菓子老舗塩瀬総本家
室町時代に創業し、660年の歴史を誇る『御菓子老舗塩瀬総本家』は、織田信長・明智光秀・豊臣秀吉などの武将にも愛された和菓子屋です。
大納言の小豆餡を、すりおろした大和芋が入った薄い皮で包み、丁寧に蒸し上げた『志ほせ饅頭』は、甘さを控えめにした上品な味わいだと定評があります。
また、塩瀬総本家の最中『袖ヶ浦最中』は、皮と餡が別々になっており、食べる直前に皮に餡を挟んで食べるため、いつでもパリパリとした食感の出来立ての最中の味が楽しめます。
京菓匠笹屋伊織
江戸時代に創業した『京菓匠笹屋伊織』は、毎月20~22日の3日間のみ販売するどら焼きが有名な和菓子屋です。
笹屋伊織のどら焼きは、通常の丸い形をしたどら焼きではなく、銅鑼(どら)の上で焼いた薄皮に、棒状のこし餡をのせて巻いたものを、竹の皮でくるんだ棒状の珍しい形をしています。
江戸時代から伝わる、手間ひまかかる伝統的な製法を守り続けているため、現在でも販売日数が3日間だけとなっています。
江戸風御菓子司長門
創業300余年の老舗『江戸風御菓子司長門』は、ふんわりと柔らかい生地に、たっぷりときな粉をかけた『久寿もち』や、さっぱりとした味わいの小豆を使用した蒸しようかん『切羊羹』で知られる和菓子屋です。
どちらも保存料などを使用せずに作られているので、素材本来の風味・味を安心して楽しめます。
また、四季折々の彩りを見せる生菓子・半生菓子は、見た目がとても美しく上品な甘さなことから、手土産として選ぶ人も多くいます。
人気和菓子はオンラインショップで簡単購入
人気の和菓子は、夕方には売り切れてしまうこともあります。せっかく訪れても、売り切れで購入できないことがないよう、人気の和菓子はオンラインショップで購入しましょう。
オンラインショップであれば、外出する必要もなく自宅で簡単に購入できます。
不破福寿堂の鹿の子餅
富山県にある『不破福寿堂の鹿の子餅』は、第22回全国菓子大博覧会名誉総裁賞受領した和菓子です。
富山県産のもち米を使って作られた餅生地は、マシュマロのようにふんわりとしており、モチモチとした滑らかな食感が楽しめます。
また、餅生地の中には、程よい甘さの蜜漬け金時豆が入っており、あっさりとした甘さに仕上がっています。
柴田のモナカ
『柴田のモナカ』は、透明感のある薄紫色の餡が特徴的です。北海道産の厳選された小豆のみを使用して作られています。
火加減・煮込み時間などをしっかりと見極めながら、じっくりと丁寧に作られた餡は、通常の餡よりも透明感があり、綺麗な薄紫色に仕上がっています。
軽く焼き上げた最中の皮は、くちどけが良い反面、湿気や温度変化に弱いので常温で保存しましょう。
上品ですっきりとした甘さと小豆の風味で、何個でも食べられると好評です。
くり屋南陽軒の栗きんとん
『くり屋南陽軒の栗きんとん』は、国産の栗と砂糖だけを使って作られています。原料となる栗は、厳選された最高級の栗のみを使用し、余計なものを一切使用せずに作られているので、栗本来の風味を楽しめます。
栗を半分に割り、中から栗の実を取り出す作業や不純物のチェック、形作りや個装など、全ての工程が手作業によって行われるため、時間と手間がかかった贅沢な栗きんとんです。
また、栗きんとんを大福に包んだ『栗きんとん生クリーム大福』も人気があります。
和菓子をもっと身近に感じよう
和菓子には長い間培われてきた伝統と歴史があり、幅広い年代に喜ばれるお菓子です。最近では、海外でも和菓子が知られるようになってきており、現地の人も和菓子に親しむ機会が増えています。
和菓子には、さまざまな種類があるので、好みの和菓子を見つけて楽しみましょう。