実は、いつも使っている食器の多くが『美濃焼』って知ってた?

2019.07.08

縄文土器からはじまり、現代まで受け継がれてきた陶器は、日本人の心を引きつけます。代表的な陶磁器である『美濃焼』もその一つで、その美しさは多くの人を魅了し続けてきました。そこで、産地や特徴、その歴史などに触れ、美濃焼の魅力に迫ります。

美濃焼とは?

日本には、各地によって異なるさまざまな焼き物文化が存在します。そのどれもが特徴を持ち、それぞれの美しさをかもし出しています。

有名な陶磁器といえば、何を思い浮かべるでしょうか?『美濃焼』は、そのような問いに、必ずといっていいほど名が上がるものです。美濃焼について、見てみましょう。

さまざまな様式を持つ焼き物

一口に美濃焼といっても、その種類は一つではありません。『織部』『志野』『黄瀬戸』など、生産されるエリアの名称で名前がついているものも多く、いくつもの種類があります。

このように、美濃焼は焼き物の産地である九谷焼や有田焼・京焼・備前焼などのように、一つの様式を持つのではなく、美濃(東美濃地方)で焼かれた陶磁器とすることが最も適した表現でしょう。

『様式がないことが様式』とされる美濃焼の特徴を説明すると、自由さや多彩さだともいえます。自由な発想で創造されたことで、発展とともに高い芸術性を備えたのです。

普段利用する食器の多くが美濃焼

現在、日本で使われている陶磁器において美濃焼は、食器類の生産量が約60%という全国シェアを誇っています。最も幅広く日本人の家庭に親しまれている焼き物といえるでしょう。

美濃焼が日本全国で親しまれるようになった最も大きな理由に、東濃エリアで製品の細分化が進んだことがあります。そのことで、エリアごとに製法の専門化がなされ、それぞれが高い技術を磨いていきました。

美濃焼は、自由な作風で芸術性を高めてきた一方で、陶磁器としての実用性も忘れてはいません。このバランスが、各地の人々の暮らしをしっかりと支える焼き物として、高い評価を得ているのです。

美濃焼の主な種類

多彩な様式に支えられてきた美濃焼には、たくさんの種類があります。その主な種類について解説しましょう。

17世紀初頭に生まれた織部

16世紀の終わりから17世紀のはじめ、美濃にある連房式登り窯(れんぼうしきのぼりがま)で焼かれた斬新な焼き物が『織部』の発祥です。

慶長の時代、天下一の茶の湯宗匠であった古田織部正重然(ふるたおりべのかみしげなり)の名に由来しています。

古田は、千利休の後を継いで秀吉の茶頭をつとめた大名茶人でもありました。古田の作風から端を発する織部の特徴は、ざっくりとした味わいの斬新なデザインです。

『織部釉』と呼ばれる深緑の緑釉を用いることで生まれる独特の落ち着きは、特に高い人気を博します。作風や手法の違いにより絵織部赤織部・黒織部・絵織部・伊賀織部・志野織部といった種類があります。

素朴な雰囲気の黄瀬戸

素朴な雰囲気を持つ『黄瀬戸』は、桃山時代に美濃で作られはじめた焼き物です。瀬戸が発祥と考えられていためこの名がつきましたが、古陶が発見され美濃地方で焼かれていたことが判明しました。

深い山柿色に、緑色を部分的に配し、花や線などのシンプルな模様をあしらった作風が特徴的です。一見寂しげな雰囲気を漂わせますが、艶やかさも合わせて感じさせてくれる焼き物です。

鉢や向付(むこうづけ)といった食器類にはじまり、花入や香炉などもあります。黄瀬戸の特徴をなす緑色は、陶磁器に使用するのは珍しい鉱物である胆礬(たんぱん)を使用することで生まれています。

黒が特徴的な瀬戸黒

桃山時代に美濃の大窯で焼かれたことが『黒瀬戸』のはじまりです。黄瀬戸と同様に、瀬戸で焼かれたと考えられていましたが、昭和に入り、数々の古陶が発掘され、美濃が発祥であることがわかっています。

さまざまな食器を創出する黄瀬戸にたいして、茶碗のみを作ってきました。黒瀬戸の最大の特徴である漆黒は、窯の中から引き出して急冷する『引き出し黒』と呼ばれる製法によるものです。

瀬戸黒の中でも、器の形の歪み具合で2種類に分けられます。極端に歪んだ形を『織部黒(おりべぐろ)』、黒を基調として一部に白窓をしつらえ絵付けしたもの『黒織部(くろおりべ)』と区別します。

桃山時代を代表する志野

茶人・志野宗信(しのそうしん)が焼かせたのがはじまりとされている『志野』は、桃山時代を代表する焼き物です。きめ細やか細孔や貫入が大きな見どころとなっています。

白く柔らかな釉薬である志野釉がふんだんに使われ、その下からのぞくほんのりとした薄紅色の美しさが、志野の魅力です。白を基調とした陶器は、日本では志野が初めてのものになります。

手法の違いで絵志野・無地志野・赤志野・鼠志野・練込み志野などに分けられているのも特徴です。

美濃焼の産地による特徴

美濃焼は、産出されるエリアによって、それぞれ特徴が異なります。美しい美濃焼を生み出す三つの地域について見ていきましょう。

伝統が受け継がれる多治見エリア

現在でも、とても多くの窯元があるエリアが『多治見市』です。『盃といえば市之倉』『徳利なら高田』というように、焼き物のスタイルに市内各地域の特性が反映されています。

茶の湯が流行した桃山時代には、美濃地域内で特色ある焼き物が数多く作られるようになり、斬新な色や形・文様の茶器が生まれます。その代表が、千利休の弟子・古田織部正重然も好んだ織部焼です。

その織部焼の作風を最も色濃く受け継いできたのが、多治見市です。古田織部の精神を宿したまちづくりをすすめ、市内には『本町』『市ノ倉』『たかた・おなだ』の三つのオリベストリートがあります。

200を超える窯元がある土岐エリア

『土岐市』は、日本有数の焼き物の産地として知られているエリアです。現在でも、実に200を超える窯元によって、国内の陶磁器製品の多くを生産しています。

歴史と伝統に裏打ちされた技法で、古くから伝わる工芸品にはじまり現代的なテーブルウェアに至るまで、個性あふれる陶磁器が数多く作られています。

また、陶芸の魅力を普及する取り組みも盛んです。中には工房を一般に公開し、陶器作り体験ができる窯元もあり、直接見て・触れて・情報に触れる環境が整っています。

新しい感覚が融合した瑞浪エリア

7世紀にまでさかのぼる焼きもの文化の歴史に支えられている地域が『瑞浪市』です。長い歴史の中で育まれた技術は、現在に至るまで多様な器を創出する原動力になっています。

1000年以上の古い歴史を持つ瑞浪ならではの焼き物といえば『みずなみ焼』でしょう。伝統を守りつつ、常に若いデザイナーによる新しい感覚を取り入れ、古今・和洋が融和する独創的なデザインを生んでいます。

そのような風土で培われた瑞浪の焼き物は、とても高い技術力を誇っています。そのクオリティを背景に、国際的な品評会などに出展し、世界的な評価を得る焼き物へと知名度を広げています。

美濃焼の歴史

長い伝統に支えられている美濃焼ですが、これまでどのような歴史を重ねてきたのでしょうか。美濃焼の足取りをたどります。

古墳時代から室町時代

美濃焼のベースとなったのは、『須恵器(すえき)』と呼ばれる焼き物といわれています。それまでの土器とは異なり硬質の焼き物で、岐阜県東濃地方において、古墳時代後期から奈良時代にかけて作られました。

平安時代に入り、『灰釉陶器(かいゆうとうき)』と呼ばれる、釉薬をかけた焼き物が誕生します。このことで、貴族や寺社を中心として、食器や貯蔵容器などが全国各地へと流通しました。

ときが鎌倉時代に移ると、その技法も多様化します。灰釉陶器に代わり、釉薬をかけない『山茶碗(やまぢゃわん)』が登場します。コストを省いたことで、一気に庶民の生活に浸透していきました。

そして、この山茶碗は、室町時代を通して焼かれるようになったのです。

戦国時代から江戸時代

戦国時代になると、地上式の大窯が発案され、生産性が大きく向上しました。釉薬の発達も、量産を後押しします。器の全面に釉薬がかけられた皿類や天目茶碗・調理具すり鉢などが全国的に流通しました。

安土桃山時代になり、『瀬戸黒』『黄瀬戸』『志野』が登場します。現代にまで通じるこれらの焼き物は、当時盛んだった茶道の道具として、武将や町衆を中心に親しまれました。

江戸時代になると、窯がさらに進化を遂げます。九州から連房式登窯の導入によって、江戸初期から中期にかけては『織部』『御深井(おふけ)』といった茶道具が武家や大衆に大流行しました。

江戸時代も後期になると、陶器より硬くて白い『磁器』が登場します。瀬戸や美濃では、蛙目粘土(がいろめねんど)に長石や珪石(けいせき)を混ぜた土で、染付磁器の生産が盛んになっていきます。

明治時代から現代

明治時代には、型紙摺絵(すりえ)や銅版転写などの技術の発達で、同じ絵付けの製品の大量生産が可能になりました。その一方で、優れた陶工達による作品が海外で高い評価を受け、美濃焼の輸出へつながっています。

その後、第一次世界大戦に突入すると、世界の市場を獲得して好況を迎えた事で、生産量が急増するのです。そして、近代的な石炭窯の開発や電動ろくろの使用が、生産量をさらに拡大させました。

その流れを守る美濃焼は、現代では、陶磁器生産量は全国一のシェアを誇ります。また、伝統と歴史を受け継ぐ陶芸作家の活動拠点ともなっているのです。

美濃焼をもっと知れる博物館

美濃焼には、歴史を宿した工芸品としての価値をはじめ、美術的な側面など、さまざまな価値があります。そして、美濃地域には、美濃焼を対象とする博物館も存在します。

多治見市美濃焼ミュージアム

『多治見市美濃焼ミュージアム』は、1300にもおよぶ美濃焼の歴史や、志野・織部など桃山陶についてなどが学べる博物館です。各時代の器約150点と、美濃を代表する陶芸家の作品約50点を展示しています。

桃山時代に実際に作られた貴重な陶片に直接触れられます。また、人間国宝が創作した茶碗で抹茶を味わうなど、さまざまな角度で美濃焼に親しめる施設です。

また美術館を併設した『セラミックパークMINO』や、作陶施設の『ヴォイス工房』とも隣接しています。ゆったりと一日を過ごせるエリアです。

  • 施設名:多治見市美濃焼ミュージアム
  • 住所:岐阜県多治見市東町1-9-27
  • 電話番号:0572-23-1191
  • 開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12/28~1/3)
  • 公式HP

土岐市美濃陶磁歴史館

岐阜県土岐市泉町にある『土岐市美濃陶磁歴史館』も、数々の銘品に出会える博物館です。美濃桃山陶の名品を焼いた窯として知られる国指定史跡元屋敷窯跡からの出土品を中心に展示されています。

また、常設展示以外の志野・織部などの陶磁器を展示した年1回の特別展や年4回の企画展も開催しており、常に美濃焼の魅力に触れられます。加えて、陶芸の体験イベントなどもあるので、親子で楽しめるでしょう。

  • 施設名:土岐市美濃陶磁歴史館
  • 住所:岐阜県土岐市泉町久尻1263
  • 電話番号:0572-55-1245
  • 開館時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)
  • 休館日:月曜(祝日の場合は火曜)、休日の翌日、年末年始
  • 公式HP

瑞浪市陶磁資料館

「焼き物の作り方は?」「陶器と磁器の違いって?」「焼き物の模様はどのように付けられているの?」といって美濃焼に関する疑問にわかりやすく答えてくれる、そんな博物館が『瑞浪市陶磁資料館』です。

古代から現代までの各時代の美濃焼の数々や、明治以降に陶磁器の生産に使用された道具や機械なども展示されており、美濃焼のすべてを知ることができる施設です。

年に数回の企画展や特別展、さらに作陶や絵付けなどの体験教室も実施しています。

  • 施設名:瑞浪市陶磁資料館
  • 住所:岐阜県瑞浪市明世町山野内1-6
  • 電話番号:0572-67-2506
  • 開館時間:9:00~17:15(入館は16:45まで)
  • 休館日:月曜日・祝日の翌日・年末年始、臨時休館あり
  • 公式HP

美濃焼の有名なブランド

美濃焼は、産地によっていろいろな種類がありますが、近年はブランド化も進んでいます。有名な美濃焼のブランドについて説明しましょう。

無地で使いやすいmiyama

岐阜県瑞浪市にある『株式会社深山』が運営する深山食器店のブランドが『miyama』です。無地が基調の作風で、シンプルで使いやすい器が多いため人気を得ています。

『白磁』と呼ばれる素材を大切にした素朴で温かい雰囲気が、安心感を与えてくれるでしょう。白磁の特性を生かしながら、いつの時代の暮らしにも安心して使えるようにと作られています。

新進気鋭のデザイナーたちが、意欲的に新製品の開発に取り組んでいます。地域の美濃焼新作展では最優秀賞を連続して受賞、2004年度にはグッドデザイン賞も受賞しています。

株式会社 深山|雑貨から業務用まで扱う岐阜の食器メーカーです

モダンでおしゃれなSAKUZAN

あくまでも美しさにこだわり続けるのは、『SAKUZAN』です。窯元の作山窯によるブランドで、美濃焼の伝統を高い技術で継承し続けています。

美濃焼の歴史を守りながら、一方で現代の感覚をしなやかに取り入れ、それぞれの完成を融和させた作風です。色合いや形・模様に至るまで、ぬくもりのある使い心地を与えてくれるブランドでしょう。

SAKUZANの素晴らしさは、器の美しさのみにとどまりません。料理を盛りつけたときに、新たな感覚をもたらす機能美もあわせ持っている点が、多くの家庭に支持されている理由なのです。

SAKUZAN|美濃焼のうつわ 作山窯

コラボで生まれたブランド瑞々

白磁器作りで有名な『小田陶器』とデザイン性に優れた美濃焼を産出する『深山』そしてデザイナーの小野里奈氏の3者がによるコラボレーションで誕生したブランドが『瑞々(みずみず)』です。

青磁と飴色を軸とした2色展開で、和・洋・中と幅広いジャンルに対応します。「控えめだけれど、主役がみずみずしく映えるように」との思いが込められたブランド名です。

シンプルなフォルムでありながら、角の取り方やリムのラインなどの細かい点にも意識が行き届いており、繊細で可愛らしい印象を与えてくれます。

瑞々(ミズミズ)深山食器店-白磁の窯元miyamaで作る暮らしの道具の器

おすすめのおしゃれな美濃焼の食器

美濃焼の魅力は、日常生活で実際に使ってみると、より深く感じられることでしょう。そこで、おしゃれな美濃焼の食器を厳選して紹介します。

SAKUZAN Stripe マグカップ ターコイズ

高い機能美を備えた作風のSAKUZANからは、『SAKUZAN Stripe マグカップ ターコイズ』をおすすめします。色・形・デザインが相まって、落ち着きを感じさせてくれるマグカップです。

「ひとと暮らしを『もの』でつなぐ」をコンセプトとして生まれたブランド『SAKUZAN』のマグカップは、伝統にこだわりながらも、現代の生活の中で安心感を得られる素朴さをたたえています。

  • 商品名:SAKUZAN Stripe マグカップ ターコイズ
  • 価格:1728円(税込)
  • Amazon:商品ページ

みのる陶器 内外茶碗 6柄セット

伝統的な落ち着いた陶磁器から、動物の可愛らしいイラストを配した器まで、幅広いラインナップで美濃焼を家庭に届ける企業が『みのる陶器』です。同社から『みのる陶器 内外茶碗 6柄セット』を紹介します。

本商品は線唐草・細十草・濃絵花の青と赤・花の海の青と赤の6柄と、バリエーションに富んだ茶碗となっています。気分に合わせて茶碗を選んだり、お気に入りの茶碗を家族それぞれで自分用にしたりと、食卓を彩るセットです。

  • 商品名:みのる陶器 内外茶碗 6柄セット
  • 価格:1944円(税込)
  • Amazon:商品ページ

美濃民芸シリーズ

民芸和食器の代表である小鹿田焼(おんたやき)の『かんな削り』の柄を、美濃焼の手法で再現した『美濃民芸シリーズ』を紹介しましょう。

穏やかな色合いが、和の食卓にぴったりです。使い込むほどに生活に馴染む小鹿焼の素晴らしさは、いつまでも使い続けられる器です。

和食のみならず、オリエンタルな雰囲気をはじめ多国籍の料理にもマッチする対応力も魅力といえます。

  • 商品名:美濃民芸シリーズ カレー皿
  • 価格:680円(税込)
  • Amazon:商品ページ

美濃焼は身近にある食器

伝統と歴史のある陶磁器と聞くと、どこか特別な食器のような印象を抱くこともあります。

しかし、美濃焼は高いシェア率を持つほど、国内で最も使われている焼き物で、1300年以上の歴史を持つ美濃焼は、今もなお日本人の暮らしを支え続けています。

そんな美濃焼の魅力に触れて、生活に取り入れることで彩りを加えてみてはいかがでしょうか。

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