数百年の歴史をもつ『有田焼』って?歴史や魅力を知って使ってみよう

2019.07.07

日本の焼き物として有名な有田焼ですが、その歴史や、実際にどんなものかなど深く知らない人も多いのではないでしょうか。有田焼を実際に使ったときにより楽しめるように、有田焼の概要や特徴などを解説していきます。

有田焼とは

まず、そもそも有田焼とはどのような焼き物なのかを知るところからはじめましょう。伊万里焼との違いや、その原料、芸術品としての価値などについて解説します。

有田焼と伊万里焼

有田焼と似ている焼き物に、伊万里焼というものがあります。実はこの両者、ルーツをたどると同じものだというのはご存知でしょうか。

有田焼は佐賀県有田町周辺の地域で焼かれた磁器の総称です。朝鮮半島の陶工たちが有田に定住し、陶器の製法に磨きをかけた末に、磁器として有田焼が生まれました。

その後どんどん発展を遂げた有田焼の技術は、17世紀後半になると芸術性の高さが国内外に知れ渡ります。

有田焼をオランダの東インド会社が買い付けた際の港が、伊万里だったのです。その結果、有田焼が伊万里焼と呼ばれるようになったといわれています。

有田焼の原料

有田焼の原料は、主に地元で採掘される粘土の鉱石である『泉山陶石』『天草陶石』です。この陶石は強度が高く、高温で焼き上げるとつやが生まれ、美しく焼きあがるという特徴があります。

他の土を配合しなくとも強度が保たれるので、透き通るような仕上がりになるのが有田焼ならではです。単独の陶石のみを使用して磁器を作れるのは、世界的にもこの『泉山陶石』『天草陶石』のみといわれています。

大皿や壺などかなりの値段がつくものも

有田焼は芸術品として作られてきた歴史があります。加えて強度も高いので、昔に作られたものも、その形を変えず存在している場合もあります。そのため、骨とう品として、非常に高級なものも存在しているのです。

18世紀前半に作られた大皿は鑑定額として120万円、後述する柿右衛門様式の壺は、なんと5億円という驚くほど高額な鑑定結果が出ています。

その分、偽物も多く作られていますから、骨とう市などで自己判断で購入せず、正式な窯元から購入するのがおすすめかもしれません。

有田焼の歴史

日本で初めて生まれた磁器である有田焼は、400年間に渡って食器や美術工芸品として陶器界の頂点に君臨し続けています。ここからは、有田焼が現在に至るまでたどってきた歴史の変遷を紐解いていきましょう。

江戸時代に製造が始まる

江戸時代初頭、朝鮮人の陶工が有田の泉山で陶石を発見しました。その陶石を使用して、有田焼の製造が始まります。伊万里焼との違いでも説明しましたが、この当時伊万里から輸出をされていた関係で、伊万里焼と呼ばれるようにもなりました。

このころ作られた有田焼が初期伊万里と呼ばれ、非常に高額な陶器です。素地が厚く染付のみが施された素朴な印象が特徴です。

色絵はその後、初代酒井田柿右衛門によって行われました。多彩色の絵付けは画期的なものとして賞賛され、こちらも非常に高額で取引されています。

幕末の不況と明治の躍進

幕末になると、一世を風靡した有田焼は慢性的な不況に悩まされました。1828年に有田地域を大火をきっかけとし、美濃や瀬戸での磁器生産が増加します。さらに海外貿易も衰退し、有田の磁器産業の優位性が大きく揺らいでいた時代です。

ですが明治になると、有田焼にとって非常に大きな転機が訪れます。それが、ヨーロッパを中心に盛んに開催された万国博覧会への出展でした。

1867年に開催されたパリ万博に有田焼が出展され、その美しさが大好評を得たのです。その後パリからヨーロッパ各地へと伝播し、有田焼は一躍世界の有田焼となりました。

大正以降

大正時代に入ると、芸術的な意味合いを持つ有田焼から、工業用製品や碍子といった日用品としての有田焼が生産されるようになります。会社で作るだけではなく、陶芸作家として独自の技術を開発し、個人で窯元となる人も現れました。

その結果、有田焼が芸術品としても日用品としても活用できる技術が作られるようになったのです。

1896年には磁器品評会の行事として陶器市場が開かれるようになり、現在の有田陶器市の原型となりました。

有田焼の特徴

有田焼の歴史は非常に深く、多くの波風と戦って現代まで受け継がれてきたことが分かったのではないでしょうか。それを踏まえて、有田焼にはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。

手触りの良い磁器

有田焼は磁器であることは前述のとおりです。磁気は、薄くて軽い仕上がりで華奢な印象を受けますが、陶器よりずっと割れにくい硬質な焼き物です。

他の焼き物に比べると薄く、軽くそしてなめらかな肌触りが有田焼の大きな魅力といえるでしょう。触り心地は他の陶器と比べても非常によく、有田焼のなめらかな肌触りを求めて購入する人が後を立たないと言われています。

分業制の製作工程

有田焼は、製作過程が分業制であることも特徴的です。成形、施釉、絵付、焼成と、各分野のいわばプロフェッショナルが集まって有田焼を作り上げているのです。

何かを一つ極めた人というのは、その分野に特化した技術を持ち、他とは比べ物にならない高いパフォーマンスを発揮します。鍛錬された技術によって、有田焼独特の芸術性の高い焼き物が生まれるのです。

現代では、伝統技術を生かしつつも新たなステージへ向かうため、まったく異なる分野のプロフェッショナルと提携している窯元も存在しています。

製作の流れ

まず、陶土で形を作る『成形』を行います。成形し乾燥させた素地をおよそ900度の低い温度で焼く『素焼き』がその次の工程です。これにより、割れにくさや絵付けのしやすさが上がります。

次に、『下絵付け(線書き)』です。焼くと藍色に発色する呉須(ごす)という絵の具を使って文様の線を描きます。

線描きで描かれた線の中を塗る『下絵付け(濃み)』まで行ったら、焼くと透明のガラス質になる釉薬をかけて、つや出しをする工程『施釉』に入ります。

その後はいよいよ『本焼成』です。1300度ほどの高温で焼き上げ、呉須のみの模様で完成となる染付けの場合は、ここですべての工程が完了です。

カラーを入れる場合は、ここからさらに藍色以外の絵の具を釉薬のガラス質の上に施す『上絵付け』、上絵を焼き付ける専用の窯で700〜800度の低温度で焼く『上絵焼成』を行って、ようやく完成となります。

有田焼の三様式

有田焼には様式が三つ存在しています。これらの様式は、すべて仕上がりがまったく異なるものです。窯元によって様式が異なりますから、自分がどの有田焼が好きか、どの有田焼を購入したいかの参考にしてください。

柿右衛門様式

『柿右衛門様式』は、1670年代にはじめて生まれた様式です。余白を強調しながら素地の色を生かし、赤色の絵付けを行った酒井田柿右衛門が生み出しました。

飾らない繊細な黒い線と、鮮やかな赤・緑・黄・青が映える格調高い様式です。絵柄は花鳥風月が左右対称に描かれているのが一般的で、この柿右衛門様式の磁器で江戸時代に作られたものは現在、骨董品として非常に高い価値を持っています。

鍋島藩窯様式

17世紀後半になると、『鍋島藩窯様式』と呼ばれる有田焼が台頭します。藩の管理のもとで作られた献上品的な意味合いが強い様式で、青みを帯びた地肌が澄んでいて美しく、くし高台が施されています。

鍋島青磁は自然の青翠色が映え、藍鍋島は藍色で図柄を精緻に描いた上品な印象を受けます。また、色鍋島は赤と青、緑が用いられており、こちらを主に贈答品としていたようです。

古伊万里様式

『古伊万里様式』は、藍色の素地に、金・赤・黄・緑色などで装飾する様式で、柿右衛門様式と鍋島様式以外に属する作品の事を指します。そのファンは国内にはもちろん、海外にも多くおり、現代のみならず歴史的にも深く親しまれてきました。

こちらの様式は柿右衛門様式同様、江戸時代に生まれ、絢爛豪華な模様を特徴としています。特に絵付けを終えた後、濃い染付と金色の模様(文様)を磁器の表面に焼き付けて仕上げる「金襴手(きんらんで)」が有名です。

有田焼の主な表現方法

有田焼には、表現方法がいくつか存在しています。それぞれに特徴がありますので、ここでは色の表現、絵付けの表現、模様の表現の三つに分けて解説していきます。

白磁などの色の表現

有田焼には、地の色の表現として、主に白と青の2種類の色があります。

白磁(はくじ)は地肌の白さを生かし、素地に透明の釉薬をかけて高火度で焼成した白い磁器のことです。有田焼にとっては最も古い色であり、基本となる色でもあります。

対して青磁(せいじ)は、白い素地の上に鉄分をわずかに含む淡青色の透明釉をかけ、青緑色に発色させたものです。翡翠の色のような美しい青色が象徴的で、鍋島藩窯様式に用いられています。

ほかにも、透明の釉薬に呉須を混ぜて瑠璃色に発色させた『瑠璃釉(るりゆう)』や、鉄分を含む釉薬によって茶色に発色させた『銹釉(さびゆう)』、酸化銅を含む釉薬を還元焼成して赤色に発色させた『辰砂(しんしゃ)』などがあります。

色絵などの絵付け

『色絵(いろえ)』とは、本焼きした素地の釉薬の上に赤・黄・緑・紫・金・銀など多彩な絵の具を用いて絵付けしたものをさします。本焼きよりも低い温度で焼成され、非常に彩り鮮やかな仕上がりとなるのです。

対して『染付(そめつけ)』は、呉須という藍色に発色する絵の具で模様を下絵付けしたあと、透明釉を掛けて焼いたものとなります。赤・緑・黄などの染付も作られていますが、色絵よりも素朴で、侘びさびを感じさせる仕上がりが特徴です。

陽刻など模様の表現

有田焼は、模様の表現も豊かです。『陽刻(ようこく)』とは、表面に凹凸をつけて模様を浮かび上がらせる表現手法です。『一珍(いっちん)』は陽刻に似ていますが、盛り上がりのある線を描く手法です。

『貫入(かんにゅう)』と呼ばれる手法も多く見られます。釉薬の表面に細かいヒビ模様が入った模様で、素地と釉薬の収縮率の違いによって生み出されます。

使い込むうちに独特の味わいを生む、まさに生きる陶器と呼べるでしょう。

有田焼の著名な窯元

ここからは、有田焼を製作している著名な3窯元を紹介します。どの窯元も比較するに劣らないすばらしいところばかりなので、有田に行った際にはぜひ訪れてみることをおすすめします。

そして、あなたにとって運命のひとつといえる陶器を探してみてください。

有田焼を代表する窯元の一つ柿右衛門窯

伝統的な手法を守り続けている、有田焼を代表する窯元が『柿右衛門窯』です。江戸時代に赤絵磁器を完成させた初代酒井田柿右衛門から、現代の第15代酒井田柿右衛門まで、約370年ものあいだ伝統が受け継がれ続けてきています。

窯元は茅葺の歴史を感じさせる建物が並ぶ有田町内にあります。手入れの行き届いた庭園や銘木は、どことなく歴史のにおいを感じさせるでしょう。柿右衛門様式は余白の美の陶器です。窯元の空間からも、そんな美しさを感じられるかもしれません。

ショップに展示場が併設されているので、そちらで名器を見るのもお勧めです。歴代の酒井田柿右衛門の代表作を展示した古陶磁参考館も観光してみてはいかがでしょうか。

  • 住所: 佐賀県西松浦郡有田町南山丁352
  • 電話番号: 0955-43-2267
  • 営業時間:年中無休 9:00~17:00 (ただし年末・年始は除く)
  • アクセス:車で波佐見有田I.Cから12分 鉄道でJR有田駅から車で7分
  • 公式サイト

モダンデザインも人気の深川製磁本店

深川製磁は1894年創業の窯元です。香蘭社初代社長・深川栄左衛門の次男である深川忠次が立ち上げ、1900年の巴里万国博覧会で最高名誉の金賞を受賞しました。

深川様式と呼ばれるパワーのあるヨーロッパのデザインと日本の緻密な模様が組み合わさったモダンなテイストが人気です。特に深川ブルーと呼ばれている、繊細ながら鮮やかな藍色のグラデーションが魅力的な窯元です。

  • 深川製磁 本店(FUKAGAWA-SEIJI 本店 ARITA)
  • 佐賀県西松浦郡有田町幸平1-1-8
  • TEL 0955-42-5215
  • 公式サイト

工房見学も可能な源右衛門窯

源右衛門窯は、三右衛門の中でももっとも革新的な窯元です。芸術性は重視しながらも、インテリア・アクセサリー・小物など、鮮やかな色使いで現代の暮らしを彩る品々を作り続けています。

昭和50年代に入ってからは、ティファニーと洋食器シリーズを共同制作するなど、海外の風をいち早く取り入れてきました。平日は工房が見られ、職人さんの息遣いや長く続いてきた歴史を深く感じることができます。

貴重な古伊万里をじかに見ることができる古伊万里資料館も必見ポイントです。

  • 住所:佐賀県西松浦郡有田町丸尾丙2726番地
  • 電話:0955-42-4164フリーダイヤル : 0120-88-4164
  • 営業時間:午前8:00~午後5:30(日曜 午前9:00~午後5:00)
  • 公式サイト

人気の有田焼

最後に紹介するのは、現代人の生活の中でも確かに息づいている人気の高い有田焼商品です。ひとつ持っておいて、大切なときや自分に語法日を上げたいときに使ってもいいですし、日常的に使い込んで、味わいを深めていくのもおすすめです。

マグカップや湯呑み

有田焼には、マグカップや湯のみもあります。マグカップは白磁のものだけではなく、ぐんとカジュアルな印象を受ける色絵のものや、モダンなデザインのものなど、たくさんの種類が多くの窯元から発売されています。

陶器は割れやすいですが、有田焼は丈夫で固い磁器なので、使い心地も快適です。手になじみやすいデザインやシンプルなフォルムがかわいらしく、持ち手の形に至るまで個性豊かに楽しめます。

有田焼の湯呑は高級湯呑の代名詞とも言われています。白磁をベースとして繊細なデザインが施された湯飲みは、改まった席にもよく似合うでしょう。

現代では、愛らしい丸型やタンブラー型などの湯呑もあり、若い世代からも人気が出ています。

お皿や茶碗

有田焼のお皿は実用品としてはもちろんのこと、芸術品としての高級絵皿は装飾品としても使用可能です。

素地のみのさっぱりとした白磁皿や、シンプルでポップなデザインの絵皿も作られているので、若い世代の日常使いももちろんできます。白い素地に映える色絵が施された茶碗は、結婚した夫婦への贈り物にもぴったりです。

花瓶

有田焼商品のなかで、高級感あふれるものから普段使いできるものまで、さらには美術品や調度品として使われることもある、もっとも使用用途が多いのが花瓶です。

白磁はもちろん、青磁や辰砂などの素材も多く出ています。絵柄が花瓶の全面に施された豪華絢爛なものは美術品としても価値が高く、花瓶としてそのまま使われることはまれなのだそうです。

理解が深まると見方も変わる

有田焼の概要や特徴などを知って使ってみることで、今までなんとなく見ていたり、なんとなく使っていた有田焼のイメージが変わったのではないでしょうか。

ぜひあなただけのたった一つの有田焼を見つけて、生涯の宝物にしてみてください。

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