映画がヒットすると興行収入とセットで語られる機会が多いですが、興行収入とは具体的にどのような収入のことを指すのでしょうか。興行収入の意味を学びながら、これまでに日本で公開された映画の興行成績を振り返りましょう。
映画好きならやっぱり気になる興行収入
映画を観るとき、できれば話題になっている映画や面白い映画を観たいと考える人は多いでしょう。その映画に人気があるかどうかを知る、一つの目安になるものが興行収入です。興行収入の意味をチェックしましょう。
そもそも興行収入とは?
劇場へ足を運んだ客が、映画を観るために劇場に支払った料金の合計が興行収入です。
映画は映画製作会社が作りますが、映画を作っただけでは多くの人に観てもらえません。映画製作会社は、配給会社を通じて劇場で映画を公開してもらえるように依頼します。
劇場側は客から料金をもらって映画を観せます。興行収入は、劇場に足を運んだ人の数と直結しているため、数字が大きければそれだけ多くの人に観られた映画といえるのです。
興行収入10億円以上がヒットの基準
日本でヒットした映画の具体的な興行収入の目安は10億円です。興行収入が10億円を超えると、一般社団法人日本映画製作者連盟の興行収入10億円以上番組に名前を連ねられます。
一般社団法人日本映画製作者連盟は、松竹・東宝・東映・KADOKAWAといった日本の大手配給会社4社で構成された団体です。
一般社団法人日本映画製作者連盟の公式ホームページでは、大手4社の配給会社を通じて日本で上映された映画のデータベースを提供しています。
ただし、いくら興行成績がよくてもすべての映画が実際の儲けにつながっているかというと、そうではありません。興行が成功しているかどうかを知るには、表面には出てこない数字を考える必要があります。
興行収入が多いのに赤字ということもある
興行収入が多い映画はそれだけ話題になり、多くの人が観た映画と考えられます。しかし、どんなにたくさんの人が料金を支払って観たとしても、それだけでは映画の成功にはなりません。
興行成績がよいにもかかわらず、赤字に陥ってしまう原因をチェックしましょう。
興行収入と配給収入、製作会社収入の関係
映画制作会社が制作した映画の『放映権』を配給会社が買い取り、劇場は興行収入の中から配給会社に手数料を支払って映画を公開します。
この仕組みの中で『配給収入』は劇場側が得た興行収入の中から、配給会社に支払った額を指します。配給収入の割合は一定ではなく、作品によってまちまちです。興行収入の50%の場合もあれば、70%の場合もあります。
配給会社の仕事とは
配給会社の仕事は、買い付けた映画を劇場に提供することです。人気の映画監督や俳優が出演する映画は、制作前から目を付けて買い付けることも珍しくありません。
映画の予告編や映画を宣伝するためのポスター作りなども配給会社が担っています。単に映画を買い付けるだけでなく、どのような宣伝業務をするかが配給会社の腕の見せどころです。
製作会社収入が製作費を下回れば赤字
映画製作会社の収入は、興行収入から配給会社に支払った手数料や宣伝費を除いた額です。
たとえ興行収入が10億円以上であったとしても、制作費が収入を上回る場合は完全な赤字となってしまいます。DVDやキャラクターグッズなどの売り上げを加えて、ようやく黒字になるケースもあるでしょう。
興行収入だけを見ると大ヒットしているように感じられても、制作費の金額がわからなければ映画制作会社の収益はわかりません。
興行収入だけでなく、どれくらい制作費がかかっているのかという点にも注目して映画をチェックすると、一味違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。
2018年国内の興行収入ランキング上位は?
2018年に日本で公開された映画の中から、洋画・邦画別に興行収入が高かった映画をまとめました。
話題をさらったボヘミアン・ラプソディ
洋画部門では、ロックバンド『クイーン』のボーカルを務めたフレディ・マーキュリーの伝記的映画『ボヘミアン・ラプソディ』が第1位にランクインしています。
2018年11月に公開され、2019年5月には日本での興行収入が130億円を突破しました。日本だけでなく世界的に大ヒットしており、1000億円以上の世界興行収入をたたき出しています。
普段、洋楽を聴かない人でもテレビCMなどで1度は耳にしたことがあるであろう、クイーンの名曲を織り交ぜた映画です。
制作費は約56億円といわれており、映画として文句なく大成功を収めたといえるでしょう。映画のヒットとともにクイーンのCDの売り上げが伸びたことでも話題を呼びました。
邦画トップは人気ドラマの劇場版
フジテレビ系列で放映され人気医療ドラマ『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』が興行収入93億円を突破し、邦画部門の第1位にランクインしています。
コード・ブルーシリーズは救急医療の現場を題材としたドラマです。2008年に初めて放映された後、好評を受け2010年には第2シーズンが制作されています。
2017年には7年のときを経て第3シーズンをスタートさせ、ドラマ放映終了後に映画化が発表されました。10年来のファンが数多く劇場へ足を運んだことが映画のヒットにつながったと考えられるでしょう。
やっぱり名探偵は強かった
邦画部門の第2位には『劇場版名探偵コナン ゼロの執行人(しっこうにん)』がランクインしています。
名探偵コナンシリーズは日本国外の劇場でも公開され、全世界興行収入は110億円と大ヒットを記録しています。
人気アニメの劇場版は子ども時代から連続して観ている人や、世代を超えて親子で劇場へ足を運ぶ人もいるため、多くの興行収入をたたき出したと考えられます。
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日本国内の歴代映画興行収入ランキング上位作品
平成に日本で公開された映画の中から、とくに興行収入が高かった作品を邦画・洋画別に紹介します。
千と千尋の神隠しを筆頭にジブリが強い
日本国内の興行収入が桁外れに多い映画が、スタジオジブリの作品です。
2001年に公開された『千と千尋の神隠し』は308億円、2004年に公開された『ハウルの動く城』は196億円と、平成に公開された映画の中でトップクラスの興行収入を誇ります。
ジブリを筆頭にアニメ映画の人気は高く、2018年の興行収入10億円以上番組の邦画部門のトップ3の中にアニメ作品が二つランクインしています。
洋画はタイタニックやハリポタシリーズ
洋画部門では、実際にあった豪華客船転覆事故を題材にした映画『タイタニック』が、興行収入262億円を記録しています。
また、イギリスのファンタジー小説をもとにした、ハリー・ポッターシリーズの人気も根強く1作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』は203億円、2作目の『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は173億円の興行収入がありました。
主題歌も話題になったアナと雪の女王
日本のアニメだけでなく、ディズニー映画も注目すべきジャンルのひとつです。2014年に公開されたアナと雪の女王の興行収入は255億円と、平成に日本で公開された映画の興行収入ランキング第3位にランクインしています。
主人公エルサが劇中で歌う『レット・イット・ゴー』が大ヒットしたことでも知られており、映画のオリジナルサウンドトラックは日本で年間98万枚を売り上げ、2014年の年間アルバムセールス部門で第2位にランクインしました。
全世界でみた興行収入ランキングは?
これまで日本の興行収入の例を挙げてきましたが、世界的にはどのような映画が上位にランキングしているのでしょうか。世界的な興行収入が上位の映画を紹介します。
堂々の1位は2009年のアバター
2009年に公開された『アバター』は、全世界で27億ドル以上の世界興行収入を記録しました。2019年5月の時点で、世界歴代興行収入第1位に君臨しています。
アバターの監督・脚本・制作を手掛けたジェームズ・キャメロンは、世界歴代興行収入第3位を記録している『タイタニック』の監督としても知られます。
3Dを駆使した映像美が話題を呼び、日本での興行収入は156億円とトップクラスの数字を記録しました。
破竹の勢いを誇るアベンジャーズシリーズ
『アベンジャーズ/エンドゲーム』が世界興行収入26億ドルを突破しており、世界歴代興行収入第1位のアバターに迫る勢いです。
アベンジャーズシリーズはそれぞれ違った個性を持つアメコミのヒーローたちが集まり、手強い敵と対峙するストーリーです。本作はシリーズの完結編という位置づけになっています。
日本では若年層を中心に人気が高まっていますが、映画の世界的な大ヒットを受けこれまでアメコミヒーローのファンではなかった世代にも影響を与えそうです。
スターウォーズやジュラシックワールドも
日本での人気が高いスターウォーズシリーズや、ジュラシックシリーズも世界的なヒットを記録している映画です。
2015年に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は、世界歴代興行収入20億ドルで、第4位にランキングしています。
同じく2015年公開の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は、第6位となっており世界興行収入は16億ドルでした。
どちらもシリーズの知名度や人気が高く、新作が登場するたび話題を集めています。
興味がある作品はこの機会にチェック
劇場に訪れた人が支払った料金が興行収入であることを知ると、映画の人気や話題性の高さを判断する材料にできるでしょう。
どのような映画が好みかは人それぞれですが、面白さの一つの目安にできることは確かです。
興行収入ランキングの上位となっている映画をチェックしたことがない人は、この機会に観賞してはいかがでしょうか。