女性を美しく描く天才「谷崎潤一郎」。甘美な代表作を一挙紹介

2019.06.30

蜜も滴る甘美な世界。谷崎潤一郎作品はその死から半世紀たった現代においても、語り継がれるほど美しいものばかりです。この記事ではそんな近代文学を読み解いていく中で欠かせない人物である「谷崎潤一郎」の代表作を、ピックアップしてご紹介していきます。

近代文学の第一人者「谷崎潤一郎」

後発の作家たちから「大谷崎」と呼ばれていたことでも知られている谷崎潤一郎。ライバルの作家からも尊敬を集めた谷崎潤一郎とは、いったいどのような人物だったのでしょう?

女性をどこまでも美しく描く天才

谷崎潤一郎は日本の文学史の中でも、特に秀でた官能的表現力を持っていました。デビュー作品からその才能は遺憾無く発揮されており、当時の主流とは大きくかけ離れながらも、作品の濃密さや先見性を駆使した作風で人気作家たちの仲間入りを果たすことができました。

また当時は色濃かった男尊女卑の風潮を物ともせず、女性をメインに据えた作品を多く発表している点から、自分の文学的才能に圧倒的な自信があったことが伺えます。時代の流れに媚びず、描きたいものだけを高い完成度で発表し続けた姿勢も、現在の谷崎に対する評価の一因となっています。

谷崎流の愛が光る名作「春琴抄」

谷崎潤一郎は55年の作家人生の中で、膨大な数の作品を執筆しています。どれを読んでも外れない谷崎作品の中でも、最高傑作と言われているのが「春琴抄」です。

誰も入り込めない2人の関係を描く

春琴抄は1933年に発表された中編小説です。短編を手がけることが多かった谷崎にとって本作は、実験的な作品となっています。文体においても句読点などの使用を避け改行を一切行わないなど、実験的な要素が含まれていることで有名です。

ストーリーは、幼少の頃に失明しながらも、天才的な三味線奏者である春琴と彼女の付き人として働きながら師事している佐助の複雑な関係を軸に、2人の身の回りに起こる出来事を劇的に描いています。谷崎作品の中では、珍しい純愛作品です。

谷崎潤一郎の名作たち

ここからは春琴抄に負けず劣らずな人気を誇る谷崎の代表作品を、3つ厳選して紹介していきます。

痴人の愛

痴人の愛は1924年に発表された長編作品です。真面目に貯金をしながら生きていた男が、カフェで見かけた少女ナオミに一目惚れし、彼女との関係に溺れ破滅していく様を描いています

細雪

細雪は1936年に発表された作品です。大阪の名家を主な舞台に4姉妹の日常を描いています。本作の見所は何と言っても作品全てに使用されている船場言葉です。大阪の貴族方言とも呼ばれる専門的な言葉使いを、正確かつ上品に描きこなしています。なお本作の主人公である4姉妹は、それぞれ谷崎の妻を含む姉妹たちをモデルにしていることでも有名です。

刺青

刺青は1910年に発表された、谷崎潤一郎の処女作として有名な作品です。絶世の美女に最高の刺青を掘りたい願望を持っていた彫り師が、街で偶然見かけた美肌の少女を麻酔で眠らせて、刺青を施していく狂気的とも言えるエピソードを、美しく官能的に描いています。

甘美な名著たちはいつまでも

谷崎作品は一見過激に思える作品が多いですが、読み進めるうちにいつの間にかその甘美な世界に引き込まうのが魅力と言えます。谷崎作品を読んだことが無い方は、今回ご紹介した代表作からまず一冊読み進めてみてはいかがでしょうか。

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