ルアーフィッシングには、ルアーとよばれる疑似餌が必要です。ルアーには多くの形状があり、魚の大きさや深さなどによって使い分けなければなりません。海釣りや川釣りで、初心者が最初に買っておくべきルアーと狙える魚の種類を紹介します。
ルアーフィッシングの基本
海水・淡水を問わず、多くの釣り人を夢中にさせているのが『ルアーフィッシング』です。釣りで頻繁に耳にする『ルアー』とは一体何でしょうか?
ルアーを使う目的や種類を解説します。
そもそもルアーとは?
『ルアー(lure)』は魚の餌の代わりになる模型(疑似餌)を指し、ルアーを使って釣りをすることが『ルアーフィッシング』です。
「なぜ本物の餌ではなくルアーを使うのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。ルアーはポリ塩化ビニールや金属などで成型した小魚または虫(ワーム)の単なる模型なので、ただ待っているだけでは魚は釣れません。
生き餌より多くの『テクニック』や『判断力』を要する難易度のあるゲームだからこそ、釣り上げたときの喜びが大きく、面白さや魅力にはまっていくといえるでしょう。そのほかにも、ルアーならではのメリットはたくさんあります。
- 繰り返し使えて経済的
- 腐食しないので管理が楽
- 精巧なルアーは生き餌をしのぐこともある
- 釣りのテクニックが磨かれる
ルアーの種類は千差万別
釣り具店には、多種多様なルアーが並び、色々な種類の魚に対応しています。
素材は、プラスチック・金属・木材などの硬い素材でできた『ハードルアー』と、樹脂素材やポリ塩化ビニール製の『ソフトルアー』に分けられ、さらに、形状・色・素材・使い方によってより細かく分類できます。
たとえば、小魚全般のルアーは『ミノー』とよばれ、下あご部分に付いているリップ(唇)の形状で、『シャッド』『クランクベイト』『リップレスミノー』などに分けられるのです。
小刻みに動く『バイブレーション』、漁具の餌木を改造したエビ型の『ジグ』、鉛製オモリにタコベイトなどのラバーを取り付ける『インチク』、ひらひらと動く『スプーン』など、まだまだたくさんの種類があります。
釣りたい魚を決めてルアーを使い分けよう
餌の代わりであるルアーは、釣りたい魚を引きつけるものでなければなりません。そのため、狙う魚や釣法によってルアーを替える必要があります。ルアーを選ぶポイントは以下の通りです。
- レンジ(深さ)
- サイズ
- 色
『レンジ』とは深さのことを指します。魚はいつも同じレンジにいるとは限らず、表層・中層・深層のどこにいるかで選ぶルアーが変わっていきます。
水に対する比重の軽い順に、『トップフローター』『フローティング』『サスペンデッド』『シンキング』などのルアーがあります。
『サイズ』は対象魚の大きさに合わせて選びます。魚が普段食べている餌の大きさに合っていないと、食いつかない可能性があるので注意しましょう。
また、ターゲットが何色に引きつけられるかを考えるのも重要です。『色』はその日の天候や水質などを考慮して、臨機応変に選び分けましょう。
初心者におすすめの淡水魚とルアー
対象魚がそのエリアで何を餌にしているかを考えるのが重要です。数あるルアーの中でも、初心者におすすめの淡水魚とルアーをピックアップしました。
ブラックバス
『ブラックバス』はスズキ目・サンフィッシュ科の淡水魚で、春から秋にかけてが最盛期です。30~60cmの大きさに成長し、ミミズや生きた魚、ザリガニなどの甲殻類を餌としています。
ブラックバス釣りに使用するルアーは、ソフトルアーの『ワーム(虫)』です。音や波動が少なく、食い込みがよいというメリットがあります。ワームには以下のようなタイプがあります。
- ストレート:ミミズのようなストレートなボディのもの
- シャットテール:ストレートボディに小さな尻尾のもの
- パドル:平たいヒレが付いたもの
- クロー:ザリガニなどの甲殻類を模したもの
- カーリーテール:ミミズのようなボディに湾曲した尻尾のもの
- チューブ:クラゲのような尻尾が付いたもの
トラウト
『トラウト』はサケ目サケ科に属する魚全般を指し、『ニジマス』はトラウト釣りの代表格といえるでしょう。甲殻類・小魚・昆虫を餌とするので、使用するルアーは、金属製のものからソフトルアーまでさまざまです。
- スプーン:楕円形の金属にフックを付けたもの
- スピナー:金属製のプレートとカラービーズを直線の針がねに通したもの
- ミノー:小魚を模した型のもの
- クランクベイト:丸みを帯びた小魚型
トラウトは主に渓流・湖などの自然環境下(ネイティブ)と、管理釣り場(エリア)での釣りに分かれます。
管理釣り場では小型のルアーがおすすめですが、魚がルアー慣れしているケースが多いので工夫が必要です。ネイティブでは流れに負けない大きめのルアーが人気を集めています。
ナマズ、雷魚
『ナマズ』の釣り期は5~10月頃で、川の中・下流域や湖沼、水草の生い茂った泥沼などを好みます。日中は岩の陰に隠れていますが、夜になると餌となる小魚・甲殻類・カエルなどを探して泳ぎ回ります。
『雷魚』はスズキ目タイワンドジョウ科の魚で、ナマズと生息域がほぼ同じです。薄暗い時間帯や水が濁っている日に活発に活動し、小魚・甲殻類・カエルなどを捕食します。
ナマズや雷魚に使われるルアーは、ソフトルアーの『ワーム』が一般的です。一方で、波動や音を出して水面を動かす『バイブレーション』も多く活用されています。
沼底に住む魚は視覚がそれほど発達していない代わりに、ヒゲが非常に敏感で、水面の微妙な動きを捉えるためです。
初心者におすすめの海水魚とルアー
淡水と海水に住む魚では、ルアーを使い分けるのが基本です。海釣りで活躍する初心者向けのルアーと海水魚を紹介します。
シーバス
『シーバス』とは『スズキ』のことで、川釣りの定番である『ブラックバス』に似ていることからシーバスと名付けられました。30cm以下を『セイゴ』、60cm以下を『フッコ』、それ以上の大きなものを『スズキ』とよびます。
シーバスは他の魚を捕食する魚食性で、100cmを超える大物も少なくありません。ルアーは小魚の形をした『ミノー』での実績が高く、さまざまなタイプがあります。
- フローティングミノー:上層を狙う小魚型
- シンキングミノー:上層・中層を狙う小魚型
- シンキングペンシル:リップのない細長い棒状の小魚型・自然な動きが出るもの
- バイブレーション:波動の出るハードルアー
- ワーム:虫の形をしたソフトルアー
アジング
『アジ』をジグやワームで釣るスタイルを『アジング』といいます。アジは、堤防や磯近くを回遊する小型魚なので初心者に最適でしょう。
アジングの仕掛けは、ジグとオモリがセットになった『ジグヘッド』の先に、ソフトタイプの『ワーム』を突き刺すスタイルが一般的です。長さは2インチ(約5cm)前後が基準で、長ければ水中でのアピール力が高まり、短ければ、魚の食い込みがよくなります。
大物を狙うときは長めのワームを、小型をどんどん釣りたいときは、小さめのワームをセットしましょう。ストレートタイプのワームでは物足りないと感じる場合は、『カーリーテール』などがおすすめです。
ロックフィッシュ
『ロックフィッシュ(根魚)』は海中の岩礁や海藻の陰やテトラの中に生息している魚の総称です。カサゴ・ソイ・メバル・アイナメ・キジハタなど、小型から大型のものまでさまざまな魚がいます。
ソフトルアーを使用するなら、甲殻類に似せた『クロ―』やミミズのような『シャットテール』『カーリーテール』などがよいでしょう。
または、ソフトルアーにバレットシンカー(オモリ)とフックを組み合わせた『テキサスリグ』は根掛かりしにくいので海底の魚を狙うのに最適です。
ルアーのサイズは、メバルやカサゴなどの小型を狙う場合は1.5~2.5インチ前後、クロソイなどの大型の場合は、3~4インチ前後を目安としましょう。
ルアーの結び方
ルアーはフックやサルカンなどに結び付けて使用します。結び方が甘いと、ちょっとした根掛かりでも外れてしまうので注意が必要です。ルアーの定番の結び方を3つ紹介します。ちなみに、以下で出てくる『ノット』とは『結び目』のことです。
定番の付け方 ダブルクリンチノット
『ダブルクリンチノット』は、ルアーフィッシングでよく使われる定番の結び方です。
糸を金具の輪に2回通し、3~5回ほどねじったら、さらに輪に2回くぐらせます。糸は少し湿らせておき、それぞれの結び目をきつく、全体を引き締めるのがポイントです。
慣れれば素早く結べて便利ですが、他のノットよりも強度がやや緩いのがネックでしょう。
強度抜群の結び方 パロマーノット
『パロマーノット』もよく使用される定番の結び方で、結束力が強いのが特徴です。
まず、糸を2つ折りにした後、金具の輪(アイ)に通して、結びます。次に、2つ折りした側の糸に、結びたいものをくぐらせましょう。最後に全体を締め上げるようにし、余分な部分をカットして完成です。
ポイントは、2つ折りにした2本の糸をきちんと揃える点です。糸が途中でねじれたり、引っ張りに差が出たりすると強度が低下します。
プロも愛用 漁師結び
『漁師結び』は漁師やプロもよく使う強度の高いノットです。結び方はシンプルですが、さまざまな場面で使えるので、覚えておくと役に立ちます。
まず、糸を2つ折りにして輪にくぐらせた後、ループと元糸に端糸を数回巻きつけましょう。端糸の先端をループに通し、元糸と端糸の両端を持って締め込めば完成です。
ルアーの投げ方
ルアーを水面に向かって投げることを『キャスト』とよびます。初心者は、自分が狙った場所に的確にキャストできるように練習を積みましょう。飛距離を出すためのいくつかのポイントを解説します。
キャスト時のポイント
キャストでは、飛距離と着水する精度を向上させることが重要です。投げる前に、自分の『立ち位置』を確認しましょう。
立ち位置は、魚をとり込む場面までを想定し、場所的に余裕がある安全な場所を探すのが理想です。足場が悪いところや周囲に障害物のある場所を避けましょう。
キャスト時の『目線』は、目的地に真っすぐ向けるのが基本です。目線が定まらず、あごや肩が上下していると狙ったポイントに入りません。
キャストのグリップ
できるだけ少ない力と振り幅で狙った位置に投げ込むには、ロッドやリールの正しいグリップを学ぶ必要があります。
『ベイトリール』の場合は、ロッドのトリガーにかける指は1本(ワンフィンガー)です。2フィンガーよりも1フィンガーのほうが手首のスナップがきいて、精度の高いキャストができる上、サミングもしやすくなります。
『スピニングリール』の場合は、リールの足が中指と薬指の間から出るようにします。
スピニングリールはキャスト時に、糸切れやコブができる『ラインスラッグ』が起こりやすいですが、正しい持ち方をしていれば、糸の調整(フェザーリング)が行いやすく、さまざまなトラブルも迅速に対応できるでしょう。
基本の投げ方 オーバーヘッドキャスト
まずは基本の投げ方である『オーバーヘッドキャスト』で練習を行いましょう。まず、脇を締め、ロッドを正面・水平に構えます。剣道のように、前方に突き出す形です。
ここからロッドを後ろへ振り上げ、頭上を過ぎたあたりで動作を止めましょう。ロッドの曲がりの反発を利用し、ルアーを前に飛ばします。グリップエンドを胸に引きつけるようにするのがポイントです。
この後、人差し指にかけていた糸を離しますが、離すタイミングは、練習を繰り返して感覚で覚えるしかありません。
ルアーで魚が釣れないときのチェックポイント
生き餌を使う場合に比べて、ルアー釣りは難しいといわれています。テクニックや経験、判断力などにも大きく左右されますが、いつまでたっても釣れないときは、以下のチェックポイントを確認してみましょう。
魚がいる場所か再度確認する
一番の基本は、『魚がいる場所で釣りをする』ことです。たくさんの魚がいる『管理釣り場』であれば、初心者でもヒットする可能性は高くなり、逆に魚が少ない自然環境下では、ベテランでも難しくなります。
まずは、魚がいる場所かを確認し、ターゲットの習性を理解するところからはじめましょう。
キャスト数を増やす
魚がよく釣れている人は、キャスト数(ルアーを投げる回数)が多いです。魚がルアーの前を通らなければ釣れないので、ルアーを回収したら、すぐにキャストをしましょう。数をこなすことでヒットする確率は高くなります。
マシンガンのように次々とキャストするコツは、スピニングの『右投げ・左巻き』をマスターすることです。右手(利き手)でキャストした後、持ち変えることなく左手でリールを巻けば、効率がグッと上がります。
ルアーやライン、投げる方向などを変える
なかなか魚が釣れないときは、同じポイントばかり狙わず、投げる方向を変えてみましょう。
他の人が釣った後のポイントであれば、しばらくは魚が集まってこないかもしれません。試して駄目だったら、次々ポイントを変え、どんどんキャストすることが重要です。
また、対象魚にルアーが合っているかも確認しましょう。魚はさまざまなレンジを移動するので、それに合ったルアーを使わなければなりません。天候や時間帯によって変えてみるのもいいでしょう。
遠投に適した細くて軽い糸に変え、より広範囲を探るのも1つの方法です。
釣りたい魚の情報を集めよう
ベテランになると、どこにどんな魚がいるかが把握できるようになります。初心者のうちは、ターゲットの情報をたくさん集め、魚種ごとの習性に合った作戦を立てましょう。
情報収集の方法としては以下のようなものがあります。
- インターネットや本で調べる
- 釣り仲間やベテランに聞く
- 釣具店の店員に聞く
ルアーと合わせて使いたい便利アイテム
ルアーをより便利に、快適に使うためのアイテムを2つ紹介します。ルアーの購入時に、釣具店で一緒に買っておくとよいでしょう。
ルアーが増えてきたときの必需品 ルアーケース
釣り歴が長くなると、ルアーや釣り道具はどんどん増えていきます。バラバラになりやすい小物がきちんと整理できる便利なケースを用意しましょう。ルアーは、フックをむき出しにしてカバンに入れると危険なので、ケースは必須です。
ルアーケースは、ソルト用と淡水用など、釣り場ごとによって分けましょう。可動式の仕切りがあるものや両面収納ができるタイプだと、小さなケースでもスペースが無駄なく使えます。
ルアーの付け替えを効率化 スナップ
『スナップ』はルアー交換をスムーズにする金属のパーツで、開閉式のリング型をしています。ルアーと糸をつなぐ際、間にスナップを挟むことで、取り付けが簡単にできるようになるでしょう。
スナップがないとルアーを交換する際、いちいち糸を切ったり結んだりしなければなりません。糸を直接ルアーのアイに結ぶと、動きが不自然になるというデメリットもあります。
スナップはさまざまな種類があり、値段も安価です。使いやすいものをいくつか用意しておきましょう。
ルアー釣りに挑戦してみよう
ルアー釣りには、餌釣りにはない難しさがあります。釣れるようになるまでには、時間がかかるかもしれませんが、釣れたときの喜びはひとしおです。生き餌よりも管理しやすいなどのメリットもあり、技術を習得すれば、より気軽に釣りが楽しめます。
ルアーにはたくさんの種類があるので、まずは、対象魚が好むルアーはどれかを見つけるところからはじめましょう。釣れる魚の量は、キャスト数に比例することも忘れないようにしたいですね。