メトロポリタン美術館のフェルメール全5点。作品の意味や魅力とは

2019.06.21

現存する作品が33~36点のみと言われるフェルメールの作品のうち5点が、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されています。この記事では、それら5作品について紹介します。

フェルメールとは

ヨハネス・フェルメール(1632−1675)は、17世紀オランダ黄金時代を代表する画家で、デルフトの中産階級の室内を舞台に静謐さに満ちた独特の風俗画を描きました。

カメラ・オブスキュラという光学装置を利用した均整のとれた構図や、高級な顔料ラピスラズリを用いた美しい色彩が作る調和は、宝石のような美しさを生み出しています。

メトロポリタン美術館で見られるフェルメール作品

ここで紹介する5点の作品は、初期から晩年までのフェルメールの画業をたどることのできる優れたコレクションとなっています。

初期作「眠る女」(1656-57年頃)

部屋のなかでうたた寝をする女性を描いた1点。X線調査から画面には男性と犬が描かれていたことが判明し、視点の位置も複数にわたることから、まだ若い画家の苦心が伝わってきます。

背景の絵画「仮面を踏むキューピッド」は愛の裏切りを意味し、失恋の痛手からワインを飲んで酔っ払った女性を描いた絵であると解釈されています。

A Maid Asleep

円熟期の作品「窓辺で水差しを持つ女」(1662年頃)

窓辺で一人日常生活を営む女性を描いた、とてもフェルメールらしい作品。透明感のある白いヴェールや、念入りに磨かれた水差し、水盤に映り込むタペストリーなど、各部の質感が精緻に描き分けられていながら、全体を包み込む光の巧みな表現によって、時が止まったような調和が生み出されています。

Young Woman with a Water Pitcher

フェルメール展で来日「リュートを調弦する女」(1662-63年頃)

左から差し込む光のなかに描かれた女性の単身像は「水差しを持つ女」と共通した円熟期の特徴。発見時の保存状態が悪く、細部も不鮮明なため、今後の研究の進展が期待されています。

約129万人もの来場者を集めた2019年のフェルメール展で来日した9点のうちの1点です。

Young Woman with a Lute

習作に位置付けられる「少女の頭部」(1665−67年頃)

真っ黒な背景に素朴な笑みを浮かべる少女像は、より評価の高い作品「真珠の耳飾りの少女」同様に、注文によらない画家の習作と考えられています。

Study of a Young Woman

晩年の作品「信仰の寓意」(1670-72年頃)

様々なモチーフが寓意的な意味を担うフェルメール晩年の作品。地球儀に足をかけ天を仰ぎ見る女性は「信仰」を表し、聖杯や聖書、十字架などが、その信仰がカトリックのものであることを示しています。齧られたりんごは原罪を象徴し、石に潰される蛇は、悪に対する正義の勝利を意味しているそうです。

Allegory of the Catholic Faith

フェルメール作品の展示場所

広大なメトロポリタン美術館のどこでフェルメール作品に出会えるのでしょうか。普段は他の17世紀オランダ絵画とともに展示してある5作品ですが、2018年から始まった改修工事によって、展示場所が変更されています。

美術館の各作品の解説ページ下部には、展示している部屋番号が記載されていますので、訪問前にチェックしてみてください。

ニューヨーク近郊で見られるその他のフェルメール作品

メトロポリタン美術館からも徒歩圏内のフリック・コレクションでは、「稽古の中断」と「婦人と召使い」の2点を見ることができます。コレクターの豪華な邸宅をそのまま展示施設とした同館は、フェルメール・ファンならずとも是非訪れたい場所です。

さらに、列車やバスで数時間の首都ワシントンD.Cにあるナショナル・ギャラリーは、何と4点ものフェルメール作品を所蔵。ニューヨークと合わせて11点、全作品の約3分の1が網羅できてしまいます。フェルメール作品がお好きなら、是非、足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

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