ノーベル文学賞を受賞した日本人は?歴代の受賞者と今後の候補

2019.06.21

最高の文学賞とも言われるノーベル文学賞は、文学の分野で大きな功績を残した人物に贈られる賞です。これまでに多くの作家が受賞しており、中には日本人の受賞者もいます。日本人のノーベル文学賞受賞者について解説します。

日本人のノーベル賞受賞者

ノーベル賞は『物理学化学・生理学・医学・文学・平和』の5分野において顕著な功績を残した人に贈られる賞です。日本人のノーベル賞受賞者にはどのような人がいるのか紹介します。

全体で26人

日本人のノーベル賞受賞者は2018年10月時点で26人です。そのうち文学賞受賞者を除く24人を紹介します(敬称略)。

  • 湯川秀樹:1949年(ノーベル物理学賞)
  • 朝永振一郎:1965年(ノーベル物理学賞)
  • 江崎玲於奈:1973年(ノーベル物理学賞)
  • 佐藤栄作:1974年(ノーベル平和賞)
  • 福井謙一:1981年(ノーベル化学賞)
  • 利根川進:1987年(ノーベル生理学・医学賞)
  • 白川英樹:2000年(ノーベル化学賞)
  • 野依良治:2001年(ノーベル化学賞)
  • 小柴昌俊:2002年(ノーベル物理学賞)
  • 田中耕一:2002年(ノーベル物理学賞)
  • 南部陽一郎:2008年(ノーベル物理学賞)
  • 小林誠:2008年(ノーベル物理学賞)
  • 益川敏英2008年(ノーベル物理学賞)
  • 下村脩:2008年(ノーベル化学賞)
  • 根岸英一:2010年(ノーベル化学賞)
  • 鈴木章:2010年(ノーベル化学賞)
  • 山中伸弥:2012年(ノーベル生理学・医学賞)
  • 中村修二:2014年(ノーベル物理学賞)
  • 赤崎勇:2014年(ノーベル物理学賞)
  • 天野浩:2014年(ノーベル物理学賞)
  • 大村智:2015年(ノーベル生理学・医学賞)
  • 梶田隆章:2015年(ノーベル物理学賞)
  • 大隅良典:2016年(ノーベル生理学・医学賞)
  • 本庶佑:2018年(ノーベル生理学・医学賞)

日本人の文学賞受賞者

ノーベル文学賞を受賞した日本人は以下の通りです。(敬称略)。

  • 川端康成:1968年
  • 大江健三郎:1994年
  • カズオ・イシグロ:2017年

このうち、カズオ・イシグロ氏は長崎県出身ですが、28歳のときに国籍を日本からイギリスに移しています。

受賞時はイギリス国籍の日系人であったため、日本人のノーベル文学賞受賞者に数えないことがほとんどです。したがって、ノーベル文学賞受賞した日本人は正確には2人ということになります。

日本人初の文学賞受賞者は川端康成

日本人初のノーベル文学賞受賞者は1968年受賞の川端康成です。川端康成はどんな作家だったのか、また代表作について紹介します。

川端康成はどんな作家?

川端康成は1899年、大阪に生まれました。両親を早くに亡くしてしまい、父方の祖父母によって育てられますが、小学生のときには祖母が、中学3年生のときには祖父も亡くなり、若くして天涯孤独の身となってしまいます。この経験が後の作品に少なからず影響を与えているそうです。

川端康成は高校2年生のときに旅行で伊豆を訪れており、名作『伊豆の踊子』は、このときの経験が元となっています。

高校卒業後は東京帝国大学へ進学し、仲間とともに文学活動を開始しました。この頃から菊池寛や太宰治、三島由紀夫などさまざまな文人と交流を始め、文壇への道を進んでいきます。

川端康成の代表作

『伊豆の踊子』は、孤独に悩み伊豆へ一人旅に出かけた主人公が、途中で出会った旅芸人の踊子に心惹かれます。踊子の無邪気な姿に、主人公の孤独な心が癒やされていく姿を描いた短編小説です。

『雪国』は、東京で気ままな生活を送る主人公が、雪国の温泉宿で芸者として働く女性を訪れる話です。東京という現実世界と、どこか非現実的な雪国というトンネルで結ばれた2つの世界を舞台に、登場人物の心情が美しく、そして哀しく描かれいる本作は、まさに川端康成の代表作だと言えます。

『古都』は、幼い頃に生き別れとなっていた双子の姉妹が、祇園祭の夜に出会うところから始まります。京都を舞台に、古都の持つ文化や四季の移り変わりなどの情景が描かれており、国内のみならず海外でも評価の高い作品です。

受賞記念講演は後に書籍化も

ノーベル文学賞を受賞した川端康成は、『美しい日本の私―その序説―』という受賞記念講演を行いました。

この講演で川端康成は日本の古典文学や芸術、さらにその奥底にある日本人の持つ独特な思想や死生観などに触れており、名文として後に書籍化もされています。

川端康成は文学だけでなく、古典や芸術、宗教などにも造詣が深かったことが伺い知れる講演です。

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2人目の受賞者は大江健三郎

日本人のノーベル文学賞受賞者2人目は1994年受賞の大江健三郎です。大江健三郎はどんな作家で、どのような代表作があるのか紹介します。

大江健三郎はどんな作家?

大江健三郎は1935年愛媛県生まれです。東京大学文学部在学中の23歳で芥川賞を受賞しており、これは当時の石原慎太郎氏と並んで最年少タイの受賞となりました。

学生時代の大江健三郎は特に海外文学を多く愛読し、そこから独特な文体を作り上げていったと言われています。また、これらの文学知識を核兵器などの人類的な問題や、知的障害を持つ長男についての個人的な体験などと組み合わせることで、特徴的な世界観を作っていきました。

1995年に自身の最後の小説としていた『燃えあがる緑の木』を完結させた大江健三郎ですが、親友の武満徹の告別式において弔辞で新作を捧げることを発表し、1999年の『宙返り』で執筆活動を再開しました。

大江健三郎の代表作

『万延元年のフットボール』は、親友の自殺で学生運動に挫折した主人公と、アメリカから帰国した弟が四国の故郷へ帰るところから始まります。万延元年に四国で起こった一揆と、1960年代の安保闘争という二つの暴力を重ね合わせて描き、大きな反響を呼びました。

『ピンチランナー調書』は、知的障害を持つ息子(作曲家の大江光)との交流をきっかけに生み出された作品の一つです。

障害を持つ子どもの父親である主人公が、子どもと同じ養護学校に通う父子の父親にインタビューし、ゴーストライターとして文章を代筆するところから始まります。核兵器や学生運動という深刻なテーマを喜劇調に描いた作品です。

カズオ・イシグロは2017年に受賞

前述のとおり、カズオ・イシグロはイギリス国籍の日系人です。正確には日本人受賞者ではありませんが、日本にゆかりのある人物ということで紹介します。

カズオ・イシグロはどんな作家?

カズオ・イシグロは1954年長崎県生まれの作家です。5歳のときからイギリスに住み、28歳でイギリスに帰化し、以来日系イギリス人としてロンドンで生活をしています。

デビュー作『遠い山なみの光』で1982年に王立文学協会賞を受賞し、その後も『浮世の画家』(1986年)でウィットブレッド賞、『日の名残り』(1989年)でブッカー賞を受賞しています。ブッカー賞はイギリス文学界における最も権威のある賞です。

その後、映画化された『わたしを離さないで』(2005年)、『忘れられた巨人』(2015年)など、多くの作品を世に送り出しています。

カズオ・イシグロの代表作

ブッカー賞を受賞した『日の名残り』は、富豪に仕える執事が、前の主人と過ごした過去を回顧する話です。執事は1956年の現在と1920~30年代の過去を行き来しながら、かつての主人のことや淡い恋について回想していきます。

1993年には映画化もされており、カズオ・イシグロの代表作の1つだといえる作品です。

『わたしを離さないで』は、1990年代のイギリスを舞台に、介護者である主人公は提供者と呼ばれる人たちの介護を引き受けます。介護士の引退を機に自分の人生を整理する主人公は、自分も提供者として育った施設での奇妙な日々について回想していくというストーリーです。

施設とは何なのか、提供者とは何なのか、意外な真実が明らかになるとともに、生きることについて改めて考えさせられる作品であり、カズオ・イシグロの最高傑作とも言われている作品です。

元々はミュージシャンを目指していた

実はカズオ・イシグロは、元々は作家ではなくミュージシャンを目指していたそうです。

10代の頃からボブ・ディランやニール・ヤングのようなロックスターに憧れており、レコード会社にデモテープを送ったり、音楽関係の友人と熱く語り合ったりと音楽にはかなり真剣に取り組んでいました。

大学院での創作コース専攻をきっかけに作家への道を進み始めたカズオ・イシグロですが、今でも音楽好きは変わらないそうです。ピアノやギターといった楽器の演奏を楽しんだり、ミュージシャンに歌詞の提供をしたりと、音楽に関する活動を続けています。

次の候補は村上春樹

毎年ノーベル文学賞受賞が期待される村上春樹はどんな作家で、どのような代表作があるのか紹介します。

村上春樹はどんな作家?

村上春樹は1949年、京都府に生まれました。少年時代から海外文学をよく読んでいたそうです。大学は早稲田大学文学部に進み、映画を年間200本観たり、ジャズクラブに通ったりといった学生時代を過ごします。

25歳のときに学生結婚、さらにジャズ喫茶を開店し、大学卒業後もしばらくはジャズ喫茶の経営をしていました。

そんなある日、神宮球場でプロ野球を観ながら小説を書くことを思いたち、デビュー作『風の歌を聴け』を執筆します。同作品は第22回群像新人文学賞を受賞しました。その後も『羊をめぐる冒険』で第4回野間文芸新人賞、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』で谷崎潤一郎賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。

また、小説家だけでなく翻訳家としても活動しており、スコット・フィッツジェラルドの『マイ・ロスト・シティー』や、JDサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の翻訳を手がけています。

村上春樹の代表作

『ノルウェイの森』は、村上春樹の作品の中でも特に人気が高く、初心者でも読みやすい小説です。物語は飛行機でビートルズの『ノルウェーの森』を聴いた主人公が学生時代を回想するところから始まります。

1960~70年代の学生運動を背景に親友の自殺、親友の彼女だった女性との再会、そして恋愛など、独特の死生観とセックスをテーマにした本作品は、各国で翻訳されただけでなく、2010年にトラン・アン・ユン監督によって映画化もされ大きな話題となりました。

『1Q84』は、幼少期に離れ離れになった青豆と天吾の2人が、1984年とは異なる1Q84年の世界で新興カルト宗教組織を巡って再び接近するというストーリーです。宗教と暴力をテーマにした長編小説である本作品は発売とともに大きな話題となり、3冊全巻がミリオンセラーを達成しました。

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は村上春樹初期の長編小説で、第21回谷崎潤一郎賞を受賞した作品です。『ハードボイルド・ワンダーランド』と『世界の終わり』の章からなり、それぞれの章が交互に進行していきます。独特の世界観が評価され、いまだに人気の高い小説です。

2018年には代替えの賞を辞退

村上春樹のノーベル文学賞受賞は毎年期待を集めていましたが、2018年のノーベル文学賞は選考委員の性的スキャンダルを原因に発表が見送られるという異例の事態になりました。

ノーベル文学賞の代替えとして、新たにニューアカデミー文学賞が創設され、村上春樹は最終候補の4人に選ばれていたものの、執筆活動に専念したいという意向を述べてノミネートを辞退しました。

村上春樹が2019年のノーベル文学賞を受賞するのか、今から期待が高まります。

ノーベル賞を受賞した日本人作家は2人

過去にノーベル文学賞を受賞した日本人作家は2人(イギリス国籍のカズオ・イシグロをのぞく)です。

それぞれが素晴らしい作品を世に送り出していますので、この機会に一度読んでみてはいかがでしょうか?

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