ノーベル賞とは?今さら聞けない基礎知識や日本人受賞者を徹底解説

2019.06.05

毎年ニュースになるノーベル賞ですが、いつ頃始まったもので、どのような人に賞が与えられているのでしょうか?今さら人に聞けないノーベル賞について、また日本人受賞者について解説します。改めてノーベル賞や受賞者の素晴らしさに触れましょう。

ノーベル賞とは

ノーベル賞の基本的な知識について解説します。世界的なニュースにもなるノーベル賞とは、一体どのような賞なのでしょうか。

ノーベルの遺言に基づいた賞

ノーベル賞は、アルフレッド・ノーベル氏の遺言によって創設されました。アルフレッド・ノーベルは、ダイナマイトを発明したことで有名なスウェーデン人で、それによって土木工事などが安全で簡単に行えるようになりました。

しかしながら、ダイナマイトの威力は大きく、開発までに弟などたくさんの人を亡くし、また戦争でも使われたため、多くの人の命を奪ってしまったのです。

自分の発明によって多くの命が失われたことを悲しんだノーベルは、ダイナマイトの発明で得た財産を、平和や科学の発展のために使って欲しいと考え、ノーベル賞を創設しました。

ノーベルが亡くなった5年後の1901年に授与されたのが始まりで、それ以後は毎年12月10日16時30分、ノーベルが亡くなった日時に合わせて行われています。

ノーベル賞の分野は本来5種類

1901年、ノーベルの遺志によりノーベル賞が贈られるようになりましたが、当初は『物理学』『化学』『医学生理学』『文学』『平和』の5部門でした。

遺言によると、前年に人類に最大の貢献をもたらした人物に賞金を贈るというもので、5つの部門もノーベルの遺言によります。

しかし、実際は前年の貢献だけでなく、数十年前からの功績や成果によって授与されることもあります。

経済学賞が新設され6種類に

1968年に、スウェーデン銀行によって『経済学賞』が加えられましたが、ノーベルの遺言にはない賞であるため、ノーベル賞として認めないという意見もあったようです。

しかしながら、ノーベル賞を運営しているノーベル財団は、ノーベル賞と同等の価値があるとし、今では経済学賞を加えた6部門がノーベル賞の部門となっています。

過去のノーベル賞受賞者

記念すべき第1回の受賞者は、X線を発見したビルヘルム・レントゲン氏です。ドイツの物理学者であり、彼が発見したX線は現在でも病院や空港検査などで『レントゲン』として使われています。

また、世界の偉人としても有名なキュリー夫人(マリー・キュリー)は、放射線の研究で夫ピエール氏と一緒に物理学賞を受賞しました。夫が亡くなった後も研究を続け、ラジムを発見したことによって化学賞も受賞しており、『女性初』『初の2度受賞』という偉業を成し遂げています。

さらには『相対性理論』で有名なアルベルト・アインシュタインもノーベル賞受賞者です。意外にも物理学賞を受賞したのは、相対性理論ではなく、光電効果の発見等となっており、そこには人種差別の壁もあったとされています。

ノーベル賞の選考

毎年行われる世界的なイベントであるノーベル賞ですが、誰がどのように選んでいるのでしょうか?詳しく紹介します。

各分野と選考組織

ノーベル賞6部門の各分野で、先行する組織は違います。こちらもノーベル氏の遺志によってあらかじめ決められており、部門別にそれぞれ選考組織が存在しているのです。

  • 物理学賞…スウェーデン王立科学アカデミー
  • 化学賞…スウェーデン王立科学アカデミー
  • 医学生理学賞…カロリンスカ研究所
  • 文学賞…スウェーデンアカデミー
  • 平和賞…ノルウェー・ノーベル委員会
  • 経済学賞…スウェーデン王立科学アカデミー

ノーベル賞選考の大まかな流れ

ノーベル賞を運営しているのは『ノーベル財団』ですが、選考は上記各組織によって行われます。しかし、選考過程は受賞後50年は明かさないため、大まかな流れしかわかっていないのが事実です。

おおまかには、以下のような流れでノーベル賞の選考がされています。

  1. 前年9月…各部門の専門家や過去の受賞者などに来年の受賞者候補の推薦依頼状を発送
  2. 1月末…推薦状を締め切り
  3. 2月〜…同じ内容で成果をあげた研究者がいないか?推薦された者が本当に最初の成果をあげた人なのか?などの調査開始。候補者の絞り込み
  4. 10月中旬〜下旬…受賞者を発表
  5. 12月10日…スウェーデンのストックホルムとノルウェーのオスロ(平和賞のみ)で授賞式

ノーベル賞の賞金は?

気になるノーベル賞の賞金はどのくらいでしょうか?100年以上続くノーベル賞ですが、賞金に変化はあるのでしょうか?

賞金額は年によって変わる

賞金はノーベル賞を運営する『ノーベル財団』から支払われており、経済状況や時代によって賞金が変わっています。

近年の賞金額は、2001年〜2011年までがそれぞれ1000万スウェーデン・クローナ(約1億2600万円)、2012年〜2016年までは800万スウェーデン・クローナ(約1億円)であり、変化するとはいえ大きな金額です。

一旦下がった賞金ですが、2017年からは900万スウェーデン・クローナ(約1億1300万円)に上がり、今後も財団の経済状態によっては賞金が上がる可能性があります。

ノーベル賞の賞金には税金がかからない

大きな金額を手にするとなると、気になるのが税金ですが、ノーベル賞の賞金の場合はどうなるのでしょうか?日本人が受賞した場合は、日本の所得税法によって定められている法律に則って税金が決まります。

日本の所得税法第9条によれば、『ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品は非課税』となっていますので、賞金には税金がかかりません。これは日本人で初めて湯川秀樹氏がノーベル賞を受賞した際に定められました。

ただし、後から追加された『経済学賞』は、スウェーデン国立銀行から賞金が搬出されており、上記の所得税法第9条の賞金が出る機関が違うことになります。よって、経済学賞だけは課税される可能性があります。

現在までに日本人で経済学賞を受賞した人はおらず、まだ課税された例はありませんが、今後受賞者が出た場合どう公平性を保つのか疑問が残ります。

ノーベル賞を受賞した日本人

日本人でノーベル賞を受賞した人はどのくらいいるのでしょうか?すべての日本人受賞者をご紹介します。

日本人の受賞者は26人

日本人初の受賞者は、前述したように所得税法改正のきっかけとなった湯川秀樹氏です。その後も日本人受賞者は続々と輩出され、今までに26人が受賞しています。

受賞した部門ごとの人数は、経済学賞を除く5つの分野で、『物理学賞』が11人、『化学賞』が7人、『医学生理学賞』が5人、『文学賞』が2人、『平和賞』が1人となっています。

受賞者の年表

以下がすべての日本人受賞者の年表となります。どれだけの受賞者をご存知ですか?受賞年、氏名、()内は当時の年齢、部門、対象研究の順で記しています。

受賞年 部門 受賞者名(年齢)※敬称略 詳細
1949年 物理学賞 湯川秀樹(42) 原子核における中間子の実在を予想
1965年 物理学賞 朝永振一郎(59) 量子電磁力学における基礎研究と素粒子物理学
1968年 文学賞 川端康成(69) 『伊豆の踊子』『雪国』が代表作
1973年 物理学賞 江崎玲於奈(48) 半導体におけるトンネル効果の実験的発見
1974年 平和賞 佐藤栄作(73) 非核三原則などで太平洋地域の平和に貢献
1981年 化学賞 福井謙一(63) フロンティア電子理論
1987年 医学生理学賞 利根川進(48) 抗体の多様性生成の遺伝的原理
1994年 文学賞 大江健三郎(59) 代表作に『飼育』『個人的な体験』
2000年 化学賞 白川英樹(64) ポリアセチレンの発見
2001年 化学賞 野依良治(63)  ルテニウム錯体触媒による不斉合成反応の研究
2002年 物理学賞 小柴昌俊(76) 『カミオカンデ』によりニュートリノを観測
2002年 物理学賞 田中耕一(43) 生体高分子の同定および構造解析のための手法開発
2008年 物理学賞 南部陽一郎(87) 自発的対称性の破れを発見
2008年 物理学賞 小林誠(64)

益川敏英(68)

『CP対称性の破れ』を理論的に提唱
2008年 化学賞 下村脩(80) 緑色蛍光タンパク質の発見、開発
2010年 化学賞 根岸英一(75)

鈴木章(80)

有機合成におけるパラジウム触媒を用いたクロスカップリングに成功
2012年 医学生理学賞 山中伸弥(50) iPS細胞の開発成功
2014年 物理学賞 赤崎勇(85)

中村修二

天野浩(54)

青色発光ダイオードの開発成功
2015年 医学生理学賞 大村智(80) 熱帯地域の寄生虫病の特効薬開発に成功
2015年 物理学賞 梶田隆章(56) ニュートリノ振動の発見
2016年 医学生理学賞 大隅良典(71) オートファジー(自食作用)の存在解明
2018年 医学生理学賞 本庶佑(76) 免疫を抑える働きを阻害することでガン治療の方法を発見

受賞者の多い国ランキング

ノーベル賞はスウェーデンを本拠地としていますが、受賞者の多い国はあるのでしょうか?ランキングにしてみました。

日本は世界6位

1901年からこれまで900人にものぼるノーベル賞受賞者がいますが、どの国の出身者が多いのでしょうか?歴代上位10位の受賞国をご紹介します。尚、受賞者の国籍ではなく、出身国でランキングしています。

  • 1位 アメリカ 271人
  • 2位 イギリス 87人
  • 3位 ドイツ 82人
  • 4位 フランス 55人
  • 5位 スウェーデン 29人
  • 6位 日本 26人
  • 6位 ロシア 26人
  • 8位 イタリア 19人
  • 9位 カナダ 19人
  • 10位 オランダ 18人

日本はロシアと同率6位にランクインしています。欧米の国が多い中、アジアでは唯一のランクインです。

国別の詳細

ノーベル賞各部門の受賞を、ベスト10にランクインした国別で見てみましょう。

アメリカ

物理学賞 69人
化学賞 57人
生理学・医学賞 71人
文学賞 9人
経済学賞 46人
平和賞  19人

イギリス

物理学賞 22人
化学賞 24人
生理学・医学賞 23人
文学賞 6人
経済学賞 7人
平和賞  5人

ドイツ

物理学賞 25人
化学賞 25人
生理学・医学賞 18人
文学賞 8人
経済学賞 1人
平和賞  5人

フランス

物理学賞 10人
化学賞 9人
生理学・医学賞 12人
文学賞 11人
経済学賞 3人
平和賞  10人

スウェーデン

物理学賞 4人
化学賞 4人
生理学・医学賞 7人
文学賞 7人
経済学賞 2人
平和賞  5人

ロシア

物理学賞 10人
化学賞 4人
生理学・医学賞 2人
文学賞 5人
経済学賞 3人
平和賞  2人

イタリア

物理学賞 5人
化学賞 1人
生理学・医学賞 5人
文学賞 6人
経済学賞 1人
平和賞  1人

カナダ

物理学賞 5人
化学賞 4人
生理学・医学賞 4人
文学賞 2人
経済学賞 1人
平和賞  3人

オランダ

物理学賞 9人
化学賞 4人
生理学・医学賞 2人
経済学賞 2人
文学賞 0人
平和賞  1人

ノーベル賞の豆知識

ノーベル賞について様々な角度から解説してきましたが、この項ではノーベル賞の豆知識をご紹介します。知っているとノーベル賞をさらに楽しむことができるでしょう。

最年少や最高齢の受賞者

ノーベル賞最年少受賞者は、2014年当時17歳だったパキスタンの『マララ・ユスフザイ』氏です。子どもたちや若者の権利を守る活動が評価され、平和賞を受賞しました。日本でもコマーシャルに出演したりと、話題になりました。

最高齢受賞者は、アメリカの経済学者『レオニド・ハーウィニック』氏で、2007年当時90歳でした。ハーウィニック氏は、共同研究者2名と情報や物資の流れをできるだけ平等に行き届かせ、同じ条件下で競争ができるような仕組みや制度が必要だとする理論を提唱し、経済学賞を受賞しています。

受賞者の平均年齢

ノーベル賞を受賞した方の平均年齢は『59歳』です。文部科学省などが分析した結果によると、1940年代以降、受賞した対象研究を開始した年齢の平均は37.1歳ですから、受賞までにかかる歳月は22年ということになります。

この統計は『物理学賞』『化学賞』『医学生理学賞』の自然科学系に限った統計ですが、近年は受賞年齢が上がってきており、2010年以降は平均年齢が『65.8歳』となっています。若い頃の研究が、年月を経て受賞するケースが増えていることも平均年齢が上がっている理由のひとつです。

女性の受賞者は少ない

これまでのノーベル賞の歴史の中で、900を超える個人および団体がノーベル賞各賞を受賞していますが、その中で女性受賞者は48人です。特に自然科学系では599人中18人と極端に少なくなっています。

物理学賞と化学賞のダブル受賞をしたキュリー夫人は、特筆すべき人物でしょう。

ノーベル賞を辞退した人

ノーベル賞に選定された後、辞退をした人も過去に何人かいます。中でも有名なのは、フランスの哲学者であり小説家でもあるサルトル氏で、文学賞に選ばれましたが辞退しました。

南北が統一される以前の北ベトナム指導者レ・ドゥク・トはパリ協定締結に尽力したとしてノーベル平和賞に選ばれましたが、真の平和はまだ実現していないとして受賞を固辞したと言われています。

平和賞のみ授賞式の会場が違う

ノーベル賞の授賞式は、スウェーデンの首都、ストックホルムで行われるのですが、実は平和賞だけはノルウェー・オスロで行われています。

それは、ノーベル氏が存命中、当時スウェーデンとノルウェーは敵対状態にありました。平和を愛し、両国の和解を願ったノーベル氏の遺志を継いで、平和賞をノルウェーで行うことにしているのです。

2018年のノーベル賞

2018年のノーベル賞受賞者の中には、日本人もいたことで大きな話題となりました。どのような内容だったのでしょうか?

日本からは本庶佑氏が受賞

2018年は京都大学名誉教授である本庶佑氏がノーベル医学生理学賞を受賞しました。アメリカ・テキサス大学のジェームズ・アリソン氏との共同研究で、免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を発見し、ガンの免疫治療薬開発に尽力した功績が称えられました。

医学生理学賞は、2015年、2016年に続いて4年で3人の日本人が受賞するという快挙です。今後も日本人の活躍が期待されます。

そのほかの受賞者

日本人が受賞したことで大きく注目されましたが、2018年の他の部門の受賞者は以下のようになっています。

経済学賞はウィリアム・ノードハウス氏(アメリカ)、ポール・ローマー氏(アメリカ)が受賞されました。技術革新と気候変動を経済成長の理論に組み込んだ研究が評価され、国際的な交渉、各国の政策にも影響を与えたとされています。

平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲ氏(コンゴ民主共和国)は、性的暴力を受けた女性の治療にあたった医師であり、ナディア・ムラド氏(イラク)は性的暴力の被害を受けつつ、実態を訴え続けた女性人権活動家です。いずれも戦争や武力紛争における女性の性的暴力被害に尽力したことが評価されました。

物理学賞ではレーシック手術に応用されるレーザー開発をしたアーサー・アシュキン氏(アメリカ)、高強度・極短パルスレーザーを開発したジェラール・ムールー氏(フランス)とドナ・ストリックランド氏(カナダ)がそれぞれ医療や産業に大きく貢献したと評価されました。

毎年話題になる村上春樹氏は?

毎年ノーベル文学賞の候補と言われている村上春樹氏ですが、2018年は選考するスウェーデン・アカデミー関係者の性的暴行事件というスキャンダルのため、文学賞の発表自体が見送られました。

その代わりに創設された新文学賞の最終候補4人に選出されていた村上氏ですが、執筆活動に専念したいとしてノミネートに感謝しつつ辞退されています。

ノーベル賞は世界で認められる権威

誰もが知っているノーベル賞ですが、100年以上の歴史があり、世界で認められる権威ある賞なのです。これまでに900の個人や団体がノーベル賞を受賞していますが、日本は受賞者数が世界第6位と、ベスト10に入っています。

賞金も1億円を超す大きな賞であり、受賞は世界に誇れる名誉でもあります。毎年のノーベル賞発表の際には、ノーベル賞の知識があるとより楽しむことができるでしょう。

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