時計の革ベルトは、経年変化によるさまざまな表情が楽しめます。さらに、ファッションに合わせたベルト交換ができるのも特徴です。革ベルトの種類や日々のメンテナンス方法、臭いの消し方なども覚えておきましょう。
時計の革ベルトの魅力
時計のベルトは、金属・革・ファブリックなどいくつかの種類があります。中でも革ベルトは最もオーソドックスなタイプの一つで、老若男女問わず使えるのが特徴です。世代を超えて愛される革ベルトの魅力はどこにあるのでしょうか。
上品さを演出する大人なベルト
革ベルトは、牛革や爬虫類などの『動物の革』が素材です。クールで無機質な金属バンドと違い、天然皮革からは温かみや落ち着きが感じられます。同じ商品でも、同じ模様の皮は一つとしてなく、特別感があるのも魅力でしょう。
革ベルトというと、大人・シック・落ち着き・知的・クラシカルなどのイメージを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
とりわけ男性の革ベルトは、正統派高級時計の印象が強く、いつものファッションを上品に見せてくれる不思議な力があります。
気分に合わせて使い分けられる
革ベルトは、『替えベルト』の種類が豊富で、気分に合わせて、またはその日のファッションに合わせて使い分けられるのがメリットです。
金属ベルトの時計はベルト交換ができないタイプも多いですが、革ベルトは消耗品なので、どのメーカーでも『替えベルト』を取り扱っています。
ほとんどの時計は、『純正ベルト』と『市販のベルト』の両方に対応しており、ベルトの選択肢はかなり広いと言えるでしょう。
時計のベルト交換を修理店などに依頼すると1000円~の工賃がかかります。しかし『バネ棒外し』という専用工具を購入し、自分で取り外し方法をマスターすれば、コストが安く済むうえ、いつでも気軽にベルト交換が楽しめるでしょう。
使い続けるほど味わいが出る
合成皮革や化学繊維の混じったものは、時間が経つと劣化するだけですが、革ベルトは使い続けるほどに色合いに深みが出て、革本来のよさが表れてくるのが特徴です。
次第に質感も柔らかくなり、しっとりと手に馴染むようになります。汚れを落としたり、油分を補給したりとお手入れにはやや手間がかかりますが、どんな風合いに変化していくのかが楽しみでもあるでしょう。
同じ素材でも使う人の手入れ具合や使用頻度によって、数年後には大きな差が表れます。
革ベルトの素材の種類
革製品の元になるのは牛や馬、爬虫類などの動物の皮です。同じ動物からとれた革でもなめし方によって名前が変わるため、革の種類はとても多くなります。時計の革ベルトに使われる代表的な素材を紹介します。
革ベルトの定番 カーフレザー
『カーフ』は生後6カ月ぐらいまでの仔牛で、ベビーカーフに次ぐ『高級牛革』とされています。
若い仔牛は繊維が柔らかく傷が少ないのが特徴で、革製品にすると滑らかな質感と美しい肌目が楽しめるでしょう。一方で、ちょっと引っかいただけで傷になってしまうため、扱い方に注意する必要があります。
カーフよりも等級は劣りますが、値段が手頃で、かつ耐久性と美しさを兼ね備えた『キップ(生後6~24カ月の牛)』も人気があります。
耐久性がある 爬虫類の革
耐久性があり、時計にも多く用いられている革といえば『爬虫類の革』です。エキゾチックレザーとも称され、つやつやと輝くウロコの美しさは人々を魅了します。
ワニ革を代表する『クロコダイル』は、加工方法やなめし方にもよりますが、牛革の約10倍の強度があると言われています。水中生物だけあって水や汗への耐久性も強く、経年による色合いの変化も楽しめるでしょう。
『リザート(とかげ)』も時計ベルトや革製品に多く用いられるポピュラーな素材で、軽量で耐久性があり、かつワニ革より値段が手頃なのが人気の秘密です。
その他の素材
牛革と爬虫類革が定番ですが、その他にもさまざまな動物の革が用いられています。
- オーストリッチ(ダチョウ):独特の模様、水濡れに弱くシミになりやすい
- コードバン(馬のお尻部分):硬く、強靭できめ細かい
- ディアスキン(鹿):細かい繊維束を有し、通気性がよい
- ピッグスキン(豚):軽くて薄く、通気性がよい
- ゴートスキン(やぎ):軽くて柔らかく、適度な強度もある
- シープスキン(羊):薄くて柔らかく、強度はやや弱め
- ガルーシャ(エイ):強度が高く、独特の模様とツヤがある
革ベルトの長さを調整するには?
革ベルトの場合、腕まわりのフィット感はベルトに付いた『小穴』によって調節が可能です。小穴で調節してもサイズが合わない場合はどう対処すればよいのでしょうか?
納得できる装着感に調整しよう
革ベルトがきつすぎると腕に跡がついてしまうだけでなく、革に負荷がかかったり、蒸れたりして劣化が進みます。逆に緩すぎれば、革が腕に擦れる上、見た目もよくないでしょう。
革ベルトは小穴でサイズ調節できますが、ちょうどよいベルトの穴がない場合は、革に直接穴を開けるのが一般的です。
革ベルトの場合、一度開いた穴は修正がききません。しっかりと採寸し、『ジャストフィット』の位置を見つけましょう。
革の場合は穴あけペンチを使う
革ベルトの穴あけには、専用の『ペンチ』を使います。開けたい所にパンチの刃を当て、革ベルトを挟み込むように握る仕組みです。通販では1000円前後で購入でき、布以外のあらゆるものに応用できます。
一般的な小穴の形は小さな丸ですが、中にはワイドタイプの形状もあるため、購入時は刃の形状やサイズを確認してください。
素材によっては、開けた穴のまわりに亀裂が入る場合もあります。穴あけに自信がない人は、時計修理店や時計を購入したショップに相談してみましょう。
革ベルトのメンテナンスの必要性
天然の革ベルトは経年変化による風合いが楽しめるのがメリットですが、ケアをするかしないかで、劣化の度合いが大きく変わってくるものです。日々の手入れと定期的なメンテナンスの必要性を解説します。
汗や汚れは黒ずみの原因に
肌と密着する革ベルトは、皮脂・汗・垢などを吸収する性質があります。ケアをせずに放置しておくと、『変色や黒ずみ』の原因になるでしょう。
夏場は汗の量が増え、ベルトが湿り気を帯びた状態になります。通気性が悪ければカビや細菌が大発生し、嫌な臭いを発生することも珍しくはありません。
気軽に水洗いできるファブリックや金属よりも、革ベルトは『手入れに手間がかかる』と言えます。
革は経年劣化しやすい
手入れを怠れば金属も錆びつきや変色は起こりますが、革に比べると寿命が長く、比較的綺麗な状態が保てます。一方、天然の革は経年による劣化が目立ちやすく、一度劣化した部分は自分での修復は困難です。
革は、極度な『低温・高温・直射日光・湿気・乾燥』が苦手な上、負荷をかけすぎると繊維が破損し、亀裂が入ります。
経年による劣化を防ぐコツは、こうした環境からできるだけ革を遠ざけることです。保管場所などにも気を使うとよいでしょう。また、革の素材によっては、乾燥防止のために、2カ月に1回ほど『オイル』を吸わせておく必要があります。
定期的な交換やお手入れで長く愛用できる
革ベルトは消耗品ですが、日々のお手入れを怠らなければ2~4年は使用できます。時計本体の寿命は革ベルトよりも長いため、革ベルトの定期的な交換を続ければ、時計自体長く愛用できるでしょう。
もし、以下のサインが目立つようになったら、そろそろ『交換の時期』がきています。
- 黒ずみや汚れ、シミが目立つ
- ベルトの小穴、ベルト全体に亀裂がある
- 変色・退色が激しい
- 革がぽろぽろと剥がれ落ちてくる、剥げている部分が多い
- 洗っても臭いが消えない
見た目を重視して、1年ごとに革ベルトを取り替える人もいます。使用頻度と劣化状況は人それぞれなので、タイミングを見極めましょう。
革ベルトの交換方法
革ベルトの交換は専用の工具があれば自分でも比較的簡単にできます。ワンタッチで革ベルトの交換ができるアベル式もありますが、ここではごく一般的なタイプの交換方法を紹介します。
必要な準備物
革時計のベルトの交換に必要な工具は『バネ棒外し』です。棒の外端が、それぞれ『I字型』と『Y字型』になっているのが特徴で、I字型はケースサイドに穴があるもの、Y字型は穴がないものに対応しています。
バネ棒外しは、Amazonなどの通販で1000円前後で購入できます。
ベルトの取り付け部分の幅を『ラグ幅』と言いますが、新しいベルトを購入するときは、ベルトの幅とラグ幅が同じものを選びましょう。ラグ幅サイズごとに商品を並べているショップもあります。
基本的な交換方法
『I字型』と『Y型』の基本的な交換方法は以下の通りです。
『I字型』の場合、ケースサイドの穴にバネ棒外し(I型)を差し込み、下に押し込みます。時計とベルトを繋いでいるバネ棒が外れるので、同じ要領でもう片方のバネ棒も外してください。
新しいベルトをセットし、バネ棒を下の穴に差し込み、バネ棒外しでバネ棒の先端を少し下げるようにして押し込みます。
『Y型』の場合は、時計とバンドの間にバネ棒外しを差し込み、バネ棒の溝に引っ掛けて、下に押し込むようにするとバネ棒が外れます。
そのままバネ棒を下げたままベルトを動かすとベルトも一緒に外れます。新しいベルトの取り付け方はI字型と同様です。
自信がないときはお店に依頼を
革ベルト交換の難易度はそれほど高くないものの、作業時に工具で時計本体を傷つけてしまったり、小さな部品を紛失してしまったりすることも少なくありません。
特に、高級時計の場合は、傷がつくと見た目が悪いだけでなく、時計としての価値も下がってしまいます。ベルト交換に自信がない人は、時計修理店やショップに依頼するのがおすすめです。
ベルト交換の工賃は1000~3000円が相場です。時計メーカーで『純正ベルト購入とベルト交換』を行うと、数万円かかる場合があります。
革ベルトの手入れ方法
前述したように、革ベルトは『日々の手入れ』と『メンテナンス』が欠かせません。時計を使い終えた時の基本のケアと、匂いが気になる時の対策方法を覚えておきましょう。
乾いた布で汚れを拭き取る
腕時計を1日していると、革ベルトに汗や皮脂などが付着します。『その日付いた汚れはその日のうちに落とす』のが基本なので、使い終わるごとに手入れを行いましょう。
通常は、乾いた柔らかい布で、革ベルトについた汚れを優しく拭きとるだけでOKです。
毎回行う必要はありませんが、専用のトリートメントクリームを使い、革に油分と栄養を与えましょう。牛革と爬虫類革では使用する『ケア用品が異なる』点に注意してください。
濡れたときは陰干しする
基本的に革は水濡れに弱く、湿った状態で放置すると劣化の原因になります。雨や水しぶきで濡れたときは、タオルで表面の水分を拭きとり、風通しのよい場所で『陰干し』を行います。
直射日光に当てると、変色やひび割れの原因になるので、外に干す時は太陽の位置に注意する必要があるでしょう。
水に濡れた部分は油分が不足しているので、乾燥を防ぐためのクリームを塗布しておきます。
臭いが気になる場合は専用スプレーで除去
毎日しっかりとケアを行っていれば、臭いはさほど気になりません。しかし、蒸れやすい夏場に四六時中同じ時計ばかりを身につけていると、汗や皮脂が蓄積し、臭いを放つことも考えられます。
すぐにでも臭いを除去したい場合は、臭いをとるための『専用スプレー』を吹きかけ、しっかりと乾かしておくとよいでしょう。
もし、専用スプレーでも除去できない場合は、時計本体からベルトを外し、30分ほど水に浸けて置くという方法も有効です。
複数の時計でローテーションする
革製品は、毎日立て続けに使わずに、1日か2日の間隔を空けて使用するのが理想です。腕時計は肌に密着しているので、時には湿気を開放し、革を休ませてあげることが必要なのです。
2本以上の時計をローテーションで使う、革ベルトを2本用意して交互で使う、夏場は革ベルト以外の時計を使うなどの工夫を考えてみましょう。
革ベルトの人気のブランド
交換できる革ベルトは時計メーカーの『純正ベルト』だけではありません。
皮革専門メーカーでは種類豊富な革ベルトを取り扱っており、クオリティは純正ベルトに負けず劣らずです。何よりコストパフォーマンスが高いので、一度覗いてみる価値はあるでしょう。
イタリアの極上ブランド モレラート
『モレラート』は1930年代に北イタリアで誕生した時計ストラップメーカーで、イタリア国内はもちろん、ヨーロッパ全土で高いシェアを誇ります。日本にも取り扱い店舗が多数あり、時計愛好家にとってはもはや『定番』と言えるでしょう。
モレラートの魅力は、イタリア独特の色使いと高いデザイン性、そして伝統工芸技術から生まれた優れた加工技術などが挙げられます。
モレラートの中枢となる『CLASSICO1930』はクラシックながら個性的が光る逸品ばかりで、1本また1本とコレクションしたくなるでしょう。
その他にも、細部のディティールにこだわった『MANUFATTI』やカジュアルなファッションにぴったりの『SPORTS』など、さまざまなシリーズがあります。
モレラート公式サイト – MORELLATO | 時計バンド・時計ベルト
最高級革ブランド カミーユ・フォルネ
『カミーユ・フォルネ』は伝統とトレンドの両方を兼ね備えた最高級の革製品を扱うブランドです。
元・馬具職人だったカミーユ・フォルネによって1945年に創設され、1980年以降は数多くのブランドに時計の革ベルトを供給し続けた輝かしい歴史があります。
製品はフランスのピカルディ地方にある自社工場で200人以上の職人によって丁寧に製作されています。アリゲーターなどのエキゾチックレザーへのこだわりが強く、どれも『息をのむような美しさと輝き』を放っています。
『レギュラーコレクション』だけでもかなりの種類があるので、ワクワクした気持ちでアイテム選びができるでしょう。
CAMILLE FOURNET カミーユ・フォルネ 公式サイト
老舗の国産ブランド バンビ
『バンビ(BANBI)』は1930年に創立した日本の時計ベルトメーカーです。海外有名老舗ブランドのOEMも手掛けたメイドインジャパンの安定したクオリティと高いセンスが高評価されています。
『取り替える』という消耗品の概念から、ファッションの一部として『着替える』ことを提案しており、アイテムはリーズナブルで種類も豊富です。
優れた撥水性と耐久性を備えた『スコッチガードレザー』やかぶれの原因になる化学物質を使わない植物性の染料の『エコピュアラ』など、「これが欲しかった!」と思わせる商品のラインナップが魅力です。
おしゃれな革ベルトを長く愛用しよう
革ベルトの時計は、大人の手元を上品に彩ります。実用面だけでなく、お気に入りの革ベルトでおしゃれを楽しんでみてはいかがでしょうか。
革ベルトは丁寧にケアすることで、経年による美しい変化が表れますが、手入れを怠ると、変色・黒ずみ・臭いが発生します。長く愛用するためにも、「その日の汚れはその日に落とす」という習慣をつけましょう。