歌舞伎役者のメイクの意味とは。隈取の種類や体験方法をご紹介

2018.07.31

日本の伝統芸能・歌舞伎には『隈取(くまどり)』と呼ばれる独特のメイク方法があります。一見同じように見えますが、隈取には舞台観覧に必要な色々な情報が含まれています。ここでは隈取の種類や体験方法を紹介します。

歌舞伎のメイクの意味とは

歌舞伎の独特のメイクを目にすれば、歌舞伎ファンでなくとも「歌舞伎だな」とすぐにわかるでしょう。

このメイク法は、江戸時代・元禄期より歌舞伎の伝統として大切に受け継がれてきたもので、色や線のひき方にはそれぞれ意味があります。歌舞伎メイクの意味を知ることで歌舞伎への興味や理解が深まるので、ぜひ注目してみましょう。

独特の化粧は「隈取」という名前

歌舞伎と聞いて誰もがすぐにイメージする独特の化粧は『隈取(くまどり)』と呼ばれています。白い顔に、赤や青のラインは目立ちますし、一度見ると忘れられないインパクトがあります。

しかし、隈取はインパクトを与えるためのメイクではなく、舞台を見ている観客に表情や感情の変化を伝えるために施されているのです。

隈取が施された顔は、表情の動きが大きく、遠くからでも舞台上の人物の表情やシチュエーションがわかりやすくなるというメリットがあります。

隈取は『描く』とは言わずに『取る』と言います。これは、隈取が顔料をぬりたくって本来の顔を隠すメイクではなく、顔の筋や血管をなぞり取って、表情を『強調』するために行われるメイクだということを示しています。

人の感情を表現するメイク方法

隈取を見る際に、注目したいのが種類です。顔にとられた筋の数や配置で、人間の色々な感情が伝わるようになっています。

例えば、人間は怒ると眉間にしわがより、顔の血管や筋が浮き出てきます。このことから、怒りを表す隈取では使われる線が増え、より複雑でエネルギッシュな印象になるように取られています。

隈取の使われ方がわかれば、舞台上で展開される場面ごとの感情が読み取りやすくなり、より一層舞台を楽しむ事ができるでしょう。

色にもそれぞれ意味がある

隈取というとベースは必ず白塗りですが、ラインの色は赤を思い浮かべる方も多いでしょう。ですが、実は隈取に使われる色は3つあり、色によって異なる意味を持っています。

  • 赤:隈取では一番ポピュラー 正義、勇気、強さを示す
  • 青:冷酷さ、悪を示す
  • 茶色:不気味さを示す

ポジティブなイメージの赤は主に善人、主人公に使われています。対して青は悪人や敵役に使われ、茶色は人間ではない妖怪などに見られます。

メイクは1種類だけではない

隈取メイクは、様々な感情を示すために使われるため、当然1種類だけではありません。実際には100通りほどもあると言われ、バリエーションはかなり豊富と言えるでしょう。ここでは、隈取メイクの種類について紹介します。

役割で変化を見せる隈取化粧

演じられる演目や役割によっても隈取化粧は変わってきます。よく知られている隈取のパターンをいくつか見てみましょう。

隈取 配色 意味 演目・役柄
筋隈 赤一色 『荒事』の代表的な隈 『暫(しばらく)』鎌倉 五郎
景清の隈 上に赤、下に青 不遇を受けて体が衰えていることを示す 『景清(かげきよ)』 藤原 景清
時平の隈 青一色 身分の高い敵役であることを示す『公家荒れ』の隈 『菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)』藤原 時平

元禄時代から改良を加えながら受け継がれてきた隈取は、それぞれの演目にふさわしいパターンが定着しています。

隈取を理解すれば、その人物が善人か悪人かがわかり、すんなり舞台に溶け込めるようになるでしょう。

むきみ隈は若々しさや正義感などを表す

隈取の中でも『むきみ隈』は美しい若者に使われることが多く、若々しさや正義感などを表しています。特に有名なのが『助六』の助六や『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』の曽我五郎です。

どちらも正義感が強く美しい若者として描かれており、ヒーロー的な人物です。その隈取は、目じりと目頭を縦に結ぶようにまっすぐに取った隈が特徴です。

すっきりとしたシンプルなラインなので、ひと目でその役の強さや凛々しさを感じることができるでしょう。

むきみ隈のアレンジバージョンとしては『菅原伝授手習鏡(すがわらでんじゅてならいかがみ)』の桜丸があります。

こちらも凛々しいむきみ隈が使用されていますが、一文字眉という部分が異なります。色々な役を見比べてみると、微妙な違いを楽しめるかもしれません。

それぞれの種類については、こちらの記事で図解付きで分かりやすく解説されています。

歌舞伎メイクの隈取の種類は?それぞれ解説付きで紹介します

隈取化粧に必要な道具

真っ白な顔に迫力のあるラインが基本の隈取ですが、どのようにして化粧しているか気になっている人もいるでしょう。ここでは、隈取化粧に使われている道具について紹介します。

重要なベースの鬢付け油と白粉、隈取用の紅

隈取化粧で欠かせないのは、『鬢付け油』と『白粉』・『隈取用の紅』です。鬢付け油というのはお相撲さんの髪結いなどでも使われている、古くから日本で使われてきた油です。

また、白粉は粉を水で溶いて使用するもので、通常の白粉とは異なります。隈取を取る紅も、白粉と同様に古くから使われてきたままに固形を水に溶かして使います。

刷毛や隈取を描く筆

美しい隈取に仕上げるためには、きちんとしたメイク道具も必要になります。まず、白粉をまんべんなくつけるための『刷毛』、隈取を取るための『筆』は必須アイテムです。

白粉は顔だけではなく首や背中にまで塗るので、広い面を塗りやすい板刷毛が使用されています。隈取のラインを入れる筆は、ラインの太さに合わせて数種類用意しておく必要があります。

洗顔料などのメイク落としも忘れずに

歌舞伎役者はすぐに次の舞台があるため、化粧を落としてすぐにまた化粧する、というローテーションなので、肌への負担が非常に大きいとされています。

隈取化粧で使った白粉や紅は、水や普通の石鹸では落とすことができません。歌舞伎役者たちはクレンジングクリームをたっぷり使い、綺麗にメイクを落とすことで肌を傷めないよう注意しているのです。

メイクをオフした後の洗顔も必須なので、肌に優しい成分の洗顔料も用意しておくと良いでしょう。

隈取化粧のやり方

道具さえ揃えれば、すぐにでも隈取化粧にチャレンジすることができます。ここでは隈取化粧の手順をわかりやすく紹介します。

下地として鬢付け油を塗る

隈取化粧では、まず下地として『鬢付け油』を顔、首、背中や肩などに塗っていきます。古くは、髪を固定するために使われていたほどなので、それなりに固さがあり、肌にまんべんなくのせるにはしっかりと柔らかくしなければなりません。

この鬢付け油を下地にすることで肌の状態を整え、続くメイクのノリを良くする効果があります。また、メイクし通しの歌舞伎役者にとっては、鬢付け油は肌を保護するために、欠かすことのできないアイテムです。

刷毛で白粉を全体に塗る

鬢付け油でベースを整えたら、次は『白粉』をくまなく塗っていきます。隈取化粧で使われる白粉は、粉を水で溶かして適度な硬さに仕上げます。『板刷毛』で顔だけではなく首や肩、背など見えるところは綺麗に真っ白にしなければなりません。

眉毛も見えないように

板刷毛で白粉を塗る時は、顔全体が真っ白になるように仕上げなければなりません。隈取のラインを際立たせる必要があるので、ベースとなる顔には眉毛さえ残さないようにします。

刷毛に白粉をたっぷりとふくませ、顔や体を何度も往復させると、均一の白さになります。

隈取を描き上げる

顔を真っ白に仕上げたら、最後は『隈取』です。赤い隈を取る場合は紅を使いますが、これも白粉と同様に固形のものを使用するので、塗りやすい適度な柔らかさにしておかなければなりません。

やり方としては、筆で綺麗に隈を取ったら、指で線をぼかして仕上げます。基本的に隈取の型は決まっていますが、役者によって線の太さや長さには個性が表れるそうです。

見栄えの良い隈取をしたい人は、同じ役を演じた歌舞伎役者を比べて、好みの隈取を真似てみてはいかがでしょうか。

隈取化粧が東京で体験できる

隈取化粧の道具や方法がわかっても、いざ自分でやるとなると大変ですし、やる意義を見出しにくいでしょう。

ちょっと体験してみたいだけ、という人は観光ついでに隈取体験ができるスタジオを訪れてみてはいかがでしょうか。

観光体験の一環としての隈取なら楽しそうですし、プロに化粧してもらえるのならSNSなどにもアップしがいがあります。ここでは東京で隈取化粧が体験できるスタジオを紹介します。

浅草でメイクと写真撮影

下町の風情が楽しめる浅草にあり、隈取メイクで写真撮影ができるフォトスタジオが『COCOMO東京』です。

隈取化粧に見合った衣装も貸してくれるので、本格的な歌舞伎写真に仕上がります。事前に予約が必要なので、電話や予約フォームで手続きをしてください。

所要時間はヘアメイク・着付けに40~60分、撮影に10分~20分ほどです。自由撮影の時間もあるので、手持ちのカメラや携帯で変身した自分を撮ることもできます。

すべて終わると、シャワー付き洗面台でメイクをオフしてくれるので、安心して撮影に臨みましょう。撮影した写真は基本的にその日にもらえます。

  • 店舗名:COCOMO東京
  • 住所:東京都台東区浅草1-29-8 2F
  • 電話:03-3847-0763
  • 営業時間:平日10:00~19:00/土日祝日9:00~19:00
  • 定休日:不定休
  • 公式サイト

隈取化粧を知ることで更に歌舞伎が楽しめる

歌舞伎の化粧『隈取』には色やデザインなど様々な種類があります。日本に住んでいれば、歌舞伎の隈取デザインを目にする機会も多いでしょうが、隈取の意味ややり方までは知らない人が多いのではないでしょうか。

歌舞伎に興味があるのなら、代表的な隈取のいくつかを覚えておくと、舞台の状況や役者の感情がわかりやすくなるので、歌舞伎の面白さや内容をより深く楽しめるようになるでしょう。隈取化粧に親しんで、もっと歌舞伎を身近に感じてください。

その他のテーマ

ART

CULTURE

CRAFT

FOOD

TIME