ブレーキ時に金属音のような音が聞こえたら、ブレーキパッドがすり減っている可能性があります。バイクのブレーキパッドは消耗品なので定期的に点検・交換を行いましょう。セルフで交換する際の手順と注意点を解説します。
ブレーキパッドの交換タイミングは?
ブレーキパッドは、安全にかかわる重要な役目を担っています。異音がする、動きが重いという場合は、ブレーキパッドの交換時期がきている証拠です。ブレーキの効きの悪さは事故につながるため、定期的な点検と交換が必要でしょう。
交換する時期や距離の目安
最初に、ブレーキパッドの仕組みを簡単に説明しましょう。
ブレーキパッドを踏むと、ブレーキオイルによってブレーキパッドが押し出されます。このブレーキパッドがディスクローターに押し付けられることで摩擦が起こり、車が止まる仕組みになっています。
このように、ブレーキパッドもブレーキオイルも時間が経つにつれ磨耗していく『消耗品』であることが分かるでしょう。
ブレーキパッドの交換時期は、一般的に5000~1万kmと言われています。しかし、どんな道をどんな走り方でどんな道を走るかでも状態は異なるので、自分の目で確認するのが確実です。
ブレーキフルードの量を確認
油圧式ブレーキにおいて、油圧系統内に充填されているオイルを『ブレーキフルード』または『ブレーキオイル』と言います。
ブレーキフルードが劣化したり、量が減ったりするとブレーキの力が弱まってしまうため、定期的に交換しなければなりません。
また、ブレーキオイルの残量が少なければ、それだけブレーキパッドも使われているということです。パッド交換の1つの目安にしましょう。
車両にもよりますが、ブレーキオイルは2年に1回の車検時に交換するのが理想です。
金属音がしたら交換時期
ブレーキパッドが正常な場合、ブレーキを踏んだときにスーッというかすかな摩擦音がします。
しかし、ブレーキパッドに異常があると、「キーッ」という甲高い金属音や、「ゴゴゴゴ」「グギギギ」という耳障りな音を立てることがあります。
これらの音は、ブレーキパッドがすり減り、パッドウェアインジケーターがディスクローターに触れているために発生します。
この場合、構造自体に問題があるわけではないので、ブレーキパッドを交換すればすぐに解決されるでしょう。聞きなれない音がしたら早めに対処することをおすすめします。
放置するとローター自体がどんどん削られていき、高い修理代を支払う羽目になってしまいます。
最も確実なのはブレーキパッドの溝を確認
ブレーキパッドの溝を見れば、交換時期が明確に分かります。
バイクの前にしゃがんで前輪を見るとブレーキキャリパーの中にブレーキパッドが入っているのが見えるでしょう。ブレーキパッドには溝があり、パットの厚みが確認できるようになっています。
新品のブレーキパッドは、溝がしっかり見える状態です。溝が見えなくなっていたら、交換時期はすでに過ぎているので早急な対処が必要です。
ブレーキパッド交換に必要なもの
ブレーキパッドをお店で交換すると、1キャリパーにつき工賃が2000円~かかります。ブレーキパッド交換はそれほど難易度は高くないため、セルフでのブレーキパッド交換に挑戦してみましょう。
作業用の工具類
作業に必要な物は以下の通りです。大きく分けて、ブレーキパッド本体・部品のクリーナー用具・取り付け工具・液状潤滑油類に分けられます。
ボルトやナット類は車種によって規格が異なるため、それぞれに適合した工具を揃えましょう。このほかに、外したブレーキキャリパーを吊り下げるためのワイヤーなどがあると便利です。
- フロントブレーキパッド一式
- ボックスレンチまたはメガネレンチ・ヘキサゴンレンチ
- プラスとマイナスのドライバー
- シリコングリス
- パーツクリーナー
- ウエスや不要なタオルなど
- 小さなブラシ(歯ブラシでも可)
グリスはシリコングリスを使う
グリスは潤滑油に増調剤を混ぜ、クリームのような硬さに仕上げたものです。
液体状の油では対応しにくい部位にも使えるのが特徴で、機械の円滑な動きをサポートし、故障頻度を軽減する役目を持っています。各パーツを取り付けるときは、グリスを薄く塗布して、部品の可動性を高めます。
グリスにはいろいろな種類がありますが、ここでは『シリコングリス』を使いましょう。
シリコングリスは、基油にシリコンオイルが使用されたもので、耐熱性・耐寒性に優れています。-50度から250度までの温度に耐えられ、かつ、プラスチックやゴムなどを劣化させることがありません。
人によっては、ラバーグリスやパッドグリスを使い分ける人もいるようですが、シリコングリス1本で対応して問題ないでしょう。
フロントとリアブレーキパッドの交換方法
工具を用意したら、さっそくブレーキパッドの交換をはじめましょう。取り外し・清掃・グリスアップ・取り付けの4ステップに分けて解説します。
各ステップでは、部品の取り扱いに注意しましょう。
ブレーキキャリパーを取り外す
まず、ブレーキ部分を固定している太いピンネジを外します。このネジにはカバーが付いているので、マイナスドライバーを使ってゆっくりと回していきます。
次に、ブレーキキャリパーを外しましょう。ブレーキパッドはブレーキキャリパーの中に格納されており、フロントフォークに2本のボルトで留めてあることがほとんどです。
ネジは約12mmと太めなので、大きめのレンチを使いましょう。一気に力を入れず、じわじわと回すのがポイントです。
このとき、キャリパーやホイールをウエスで覆っておくと、傷がつくのを防げます。
キャリパーの清掃
キャリパーを外すと、ブレーキパッドもすぐに外すことができます。このとき、ブレーキパッドの減り具合に偏り(偏摩耗)が起きていないかを確認します。異常な偏りがあれば、専門業者に見てもらった方がいいでしょう。
キャリパーは錆びつきや汚れが目立つので、小さなブラシとパーツクリーナーを使って綺麗に磨きます。スライドピン・パッドピンはサンドペーパーを使って錆びを落としておきましょう。
パッド裏とパッドピンにグリスを塗布
新しいブレーキパッドに変える前に、パッド裏、パッドピン、キャリパーピストン回りにシリコングリスを薄く塗布します。たくさん塗ってしまうと、雨水でグリスが流れ出し、制動力を低下させる恐れがあります。
キャリパーピストンにシリコングリスを塗布し、キャリパー内を出し入れする『揉みだし作業』も行っておくといいでしょう。
新しいブレーキパッドの取り付け
外したときとは逆の順番で、新しいブレーキパッドを取り付けます。ブレーキパッドの内側に手を触れないようにしてキャリパーに入れ、ピンネジで固定して終了です。
ピンネジは固着しやすいので、取り付け前にグリスを塗布しておくことをおすすめします。
交換作業時の注意ポイント
作業中によく起こりがちなトラブルと、トラブルを未然に防ぐポイントを紹介します。ブレーキパッドまわりの部品は非常にデリケートなので、くれぐれも粗い扱いは禁物です。
ネジ頭を潰さない
キャリパーおよびブレーキパッドを固定しているピンネジは、固着して動かないことがあります。力を入れて無理やり回すとネジ頭がつぶれ、自力では外せない状態になってしまうでしょう。もちろん、ハンマーでたたくのはNGです。
上から押しつけるように力を加えながら、ゆっくりと回すのがポイントです。ネジ頭がつぶれそうな場合はためらわずバイクショップにお願いしましょう。
取り外しでブレーキホースに負担をかけない
キャリパーを固定しているピンネジは2本あります。これを一気に外すと、ブレーキホースに重量のあるキャリパーがぶら下がり、ブレーキホースに負荷がかかってしまうのです。
ピンネジを外すときは、キャリパーを支えながら下から順番に外します。作業時は針金やハンガーを使い、キャリパーをフロントスタンドに吊るして作業をする人もいるようですね。
キャリパーをはじめ、ブレーキまわりの部品はデリケートなので負担がかからない方法で作業を行いましょう。
交換後の引きずりが出た場合は?
ブレーキパッドを交換したばかりなのにもかかわらず、引きずりなどの不具合が出た場合は、キャリパーを外し、再度中を確認してみましょう。交換時に見逃していた問題が発覚するかもしれません。
ブレーキレバーを離しても戻らない現象
ブレーキパッドを交換した後、「走行中バイクが重い」「軽くブレーキがかかっている感じがする」と感じたら、何らかの原因で『引きずり』が起きている可能性を疑いましょう。
『引きずり』とは、ブレーキレバーを離しても戻らず、常に軽くブレーキがかかっている状態のことです。
スライドピンの固着やサビなどが原因
ブレーキの引きずりの原因はさまざまですが、キャリパー上部のスライドピンが錆びや汚れで固着しかけているケースはよくあります。
再度キャリパーを取り外し、スライドピンを手で動かしてスムーズさを確認してみましょう。もし、スライドピンが動きにくい場合は固着している証拠です。
スライドピンを引き抜き、錆びや汚れをサンドペーパーで取り除いてからグリスを塗布します。スライドピンが楽に動くのを確認してキャリパーを取り付けましょう。
部品の状態確認は、ブレーキパッドの交換時に全て行っておけば二度手間になりません。
適切なブレーキメンテナンスを
ブレーキは命にかかわる重要な部分です。重く感じたり、異音が聞こえたりした場合は、ブレーキパッドの状況が悪化していることが考えられるでしょう。
ブレーキパッドはキャリパーに格納されています。定期的に減り具合を確認し、少なくとも3mm以下になる前に取り換えることをおすすめします。
セルフでの交換作業に自信がない人は、バイクショップに依頼しましょう。