哲学とは何かを知る。歴史と思想家から学ぶ大人の哲学入門

2018.07.31

哲学は、古くから多くの人が探求している学問です。現代においてもその価値は色あせず、その知識はビジネスの武器になることもあります。哲学とはどんなものかを、哲学の歴史や有名な哲学者とともに解説します。哲学をよく理解できる、初心者におすすめの本も紹介します。

哲学とは物事の本質を論理的に追及すること

そもそも、哲学とは何なのでしょうか。『哲学』という言葉を知っていても、身近に感じたことがない人も多いかもしれません。

哲学を端的にいえば、『物事の本質を論理的に追求すること』だと言えます。

たとえば『人はなぜ争うのか』とか、『人はなぜ生きるのか』などの質問に対する答えを模索することが哲学です。愛や正義など、簡単には定義できないものの本質を見極める学問です。

物事を疑うことから哲学が始まる

哲学の第一歩は、物事を疑うことです。

『正義』という言葉を辞書で調べれば、言葉の意味や定義はわかります。しかしそれを鵜呑みにせず「本当にそうなのか」、「それで正しいのか」と自分に問いかけるのが、『哲学する』ということです。

ただ、哲学はただ何かを否定することが目的なのではありません。物事を疑ってみて、その本質を追求するのが哲学です。

常識を超えて本質を問い続けるのが哲学

本質を追求するという性質上、哲学ではこれまで正しいとされている常識や当たり前の価値観すら疑います。

例えば、『なぜ人を殺してはいけないのか』というのも、非常に哲学的テーマと言えるでしょう。

常識的に考えれば、「悲しむ人がいるから」とか、「法律で禁止されているから」などの答えが出てきます。しかし哲学ではそういった従来の考え方にとらわれない自由な思考をすることが許されます。

本質を問い続けることが、哲学の醍醐味なのです。

哲学は思考を鍛え、問題解決力を高める

では、哲学をすることによってどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリットの1つは、哲学することによって思考力を鍛え、それにより問題解決能力を高められるということです。

哲学では、客観的データや事実のような根拠よりも、どれだけその考え方が論理的なのかが重視されます。自分の考えをしっかりと整理して、それを理論的に組み上げる力がつくのです。

さらに、思考力を鍛えることによって、問題に対して解決策を導き出すことも得意になります。

西洋哲学の歴史をひも解く

哲学は主に、西洋で発達した学問です。哲学はより豊かな人生や社会を目指したものでもあるので、哲学者の生まれた国や生まれた時代によって、考え方が大きく異なります。

西洋哲学の歴史に触れ、哲学がどのように発展していったのかをチェックしましょう。

神話から始まった古代ギリシャ哲学

哲学は、古代ギリシャで始まったとされています。

古代ギリシャには、現代でも有名なギリシャ神話が根付いていました。ギリシャ神話というのは、世界の成り立ちや神々と人間の関係性を綴った物語です。

神話が指し示しているのは、『そもそも人間とはどういう存在なのか』とか、『人間はどのように生きるべきなのか』などの疑問に対する答えです。

このような疑問に対して、神話とは別の方法で答えを出そうとして始まったのが哲学だといわれています。

そこには、自由と平等の精神のもと、論理的に批判することが許されていた古代ギリシャの風潮も大きく影響しています。

神学化された中世哲学とスコラ学

西ローマ帝国の崩壊からルネッサンスまでの間に起こった哲学は、『中世哲学』と呼ばれています。

この時代の主なテーマは、『神が本当に存在するのかどうか』や『信仰と理性の関係』という、宗教に大きく関わる性質ものでした。

この時代に発達した学問に『スコラ学』と呼ばれる学問があります。スコラ学は哲学だけでなく神学、法学や自然学を含む学問です。

スコラ学は、当時主流であった、伝統にこだわる修道院の教えの矛盾を理性的に解決することを重視していました。その最大とテーマとして挙げられるのが、『信仰と理性』です。スコラ学は神学と深い関わりを持った学問だと言えます。

ルネサンス期に発達した近代哲学

ルネサンスとは『再生・復活』という意味を持つ言葉です。古代ギリシャ・ローマの文化を再生・復活させようという運動で、14世紀頃に始まりました。

この時代は数学や幾何学とともに、近代哲学(近世哲学)が発達しました。それまでは神が世界の中心にいると考えられていたのに対し、近代哲学ではその中心を人間に据えて、人間の理性によって真理を追究しようという考えに移行していきました。

神を中心としていた神学からの脱却への動きが活発になった結果、国家としての在り方が盛んに議論されるようになりました。現在にも通じる近代国家の理念は、こうして発展していったのです。

トマス・ホッブスやジョン・ロック、『永遠平和のために』を記したイマヌエル・カントのような有名な哲学者の多くも、この時代に生きた人々です。

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多大なる影響を与えた著名な哲学者

「哲学は身近ではない」と思っている人が多いかもしれませんが、実は、だれもが知っている有名な哲学者はたくさんいます。

これを機に、後世に多大なる影響を与えた著名な3人の哲学者と、その哲学の内容について、くわしく学んでおきましょう。

哲学の礎を築いた アリストテレス

アリストテレスは紀元前の古代ギリシャに生きた人物で、『西洋最大の哲学者』のひとりに数えられています。

アリストテレスはプラトンの弟子で、アレクサンドロス大王の家庭教師を務めたことでも知られています。

アリストテレスは『万学の祖』とも呼ばれています。アリストテレスは、倫理学や政治学、天文学や気象学、さらには詩学や心理学など様々な学問において、大きな功績を残しました。

アリストテレスの考えでは、人間の本性とは知(ギリシャ語:ソフィア)と、愛すること(ギリシャ語:フィロ)とされています。

ギリシャ語ではそれらを組み合わせ『フィロソフィア』と呼び、それが現代でも、英語の哲学『philosophy』(フィロソフィー)という言葉の語源となっています。

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近代哲学の祖 デカルト

ルネサンス期フランスの哲学者であるルネ・デカルトは、『近代哲学の祖』としてその名を歴史に刻みました。

信仰ではなく人間がもっている理性によって真理を模索していくことを目的とした近代哲学の出発点を明確にした人物で、『方法序説』という有名な本も残しています。

デカルトは先入観を全て否定し全てを疑い、物事の定義や意義を明確にすることを目的としたため、その影響でフランス文学は物事を明らかにすることに重きに置いた性質のものが多いとまで言われています。

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批判哲学 カント

イマヌエル・カントは18世紀のドイツ、当時のプロイセン王国の哲学者で、ドイツの古典主義哲学を導いた存在です。

カントは『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の3つの有名な著書は三批判書と呼ばれ、そのため彼の哲学は『批判哲学』と呼ばれています。

カントが歴史にその名を残したのは、『理性だけでも経験だけでも真理に到達することはできず、批判的に世界を問い直すことこそ重要である』と主張したことと、『人々は共通の認識構造をもっているので、同じ認識に到達することが可能だ』と示した点です。

そのほかにも『コペルニクス的転回』や『超越論哲学』などの概念を提唱し、のちの西洋哲学に大きな影響を与えました。

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心に残る哲学の名言集

上記で紹介した3人の哲学者が残した名言から、彼らの哲学にもっと触れていきましょう。名言を知ることによって、彼らがどんな考えをしていたのか理解しやすくなるでしょう。

アリストテレスが残した名言集

万学の祖であるアリストテレスが残した言葉は、2000年以上経った現在までしっかりと語り継がれています。

  • 教育の根は苦いが、その果実は甘い。
  • 目標へ到達するために努力することによってのみ、人生が意味あるものとなる
  • 働く喜びが、仕事を完璧なものにする。
  • 不幸は、本当の友人でない者を明らかにする。

現代に生きる私たちにも勇気を与えてくれる言葉が並んでいますね。言葉が明快でわかりやすいものが多いのも特徴です。

デカルトが残した名言集

『近代哲学の祖』と言われたデカルトの名言として、一番に紹介しなくてはいけないのが、『我思う、故に我あり』という言葉です。

これはデカルトの哲学を知るために重要な言葉であり、哲学史のなかでも最も有名な命題のひとつに数えられています。

ほかにも、デカルトは以下のような名言を残しています。

  • 世界ではなく自分自身を征服せよ。
  • 人の考えを本当に理解するには、彼らの言葉ではなく、彼らの行動に注意を払え。
  • 賛成の数が多いからと言って、何一つ価値のある証拠にはならない。
  • 思考を除いて、我々の力の中で絶対的なものなど存在しない。
  • 真理を探求する前に、疑えるだけ疑う必要がある。
  • 不決断こそ最大の害悪である。

カントが残した名言集

西洋哲学において重要な人物の一人であるカントもまた、以下に挙げるような多くの名言を残しています。

  • 我は孤独である、我は自由である、我は我みずからの王である。
  • 大自然の秩序は宇宙の建築家の存在を立証する。
  • 動物に対して残酷な人は、人間関係においても容赦ない。我々は動物の扱い方によって、その人の心を判断することができる。
  • 宗教とは我々の義務の全てを、神の命令とみなすことである。
  • 努力によって得られる習慣だけが善である。

実はカントの著作は、哲学者が残したものの中でも特に難解で分かりづらいものが多く、ここでは解説しきれないほど深い内容のものもあります。

カントについて興味を持った人は、その著書や解説本を読んでみることをおすすめします。

哲学者の名言は人生の指針に

哲学者が残した名言は、深く明晰な思考に裏打ちされた「重要な示唆」を人生に与えてくれます。人生に行き詰ったときや悩みを抱えているときなどは、哲学者の名言を参考にしてみるのをおすすめします。

知の巨人たちも所詮人間、私たちと同じような悩みを抱えていたはず。彼らがどのように考えたのかを知ることで、人生の指針となるかもしれません。

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最初に読んでほしい哲学の本

本格的に哲学に触れたいと思った時に手にとって欲しい、おすすめの哲学の本を3冊紹介します。

嫌われる勇気

2013年出版の『嫌われる勇気』は、「本が売れない」と言われているなかで累計発行部数が100万部を超えたうえ、ビジネス系自己啓発書では珍しくテレビドラマ化も果たした人気作です。

この本は、アルフレッド・アドラーが記した『アドラー心理学』という本を基にしています。この本を対話形式で誰にでもわかるように解説したのが、この『嫌われる勇気』です。

本書のなかでは、『劣等感との付き合い方』や『対人関係の悩み』、『承認欲求の扱い』についてなど、日常生活に応用できる考え方がたくさん詰まっています。

身近なことを哲学的に見直したいと思う人は、この『嫌われる勇気』という本をおすすめします。

嫌われる勇気

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人生の意味の哲学 時と意味の探究

佐藤透教授による『人生の意味の哲学 時と意味の探究』も、哲学を知るためにおすすめの本です。

哲学の永遠のテーマのひとつである『人はなぜ生きなければいけないのか』というテーマに対し、仏教やキリスト教の宗教的アプローチ、またトルストイやニーチェなどの著作を通じた哲学的アプローチにより答えを探していこうという内容です。

『人生の意味』は哲学のなかでもとても重要なテーマなので、哲学に興味を持っている人におすすめの本です。

人生の意味は、すべての人に関係があり、日常生活にも関係する大きなテーマですから、この本を通じて、一度自分なりに人生の意味について考えてみてはいかがでしょうか。

人生の意味の哲学 時と意味の探究

シュレディンガーの哲学する猫

哲学の入門書としておすすめなのが、『シュレディンガーの哲学する猫』です。

その名の通り哲学者の言葉を語る猫が登場し、とある作家に対し、哲学的なテーマを投げかけます。

その問いと合わせてサルトルやハイデガーなどの哲学者の考えが解説されているので、哲学がどういうものなのか、大枠を理解することができます。

哲学書は、入門書でも専門用語が多用されていて抽象的でわかりづらいものが多いので、まずそこでつまずいてしまうかもしれません。

しかしこの『シュレディンガーの哲学する猫』は、とても読みやすく、理解しやすくまとまっています。

今まであまり哲学書に触れたことがなくどの入門書を買えばいいか悩んでいる人は、まずこの本を手に取ってみましょう。

シュレディンガーの哲学する猫

他にも哲学本を知りたいなら

哲学本は、他にも多く出版されており、砕けた口調で書かれた入門書から実践的なビジネス書まで幅広く存在しています。下の記事で、まずは読んでみてほしい哲学本8選をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。

[関連記事] 哲学本でおすすめはどれ?入門書や哲学の本質を知る人気の本8選

面白く独創的な哲学用語

哲学には、特徴的な専門用語がいくつか出てきます。そのなかでも特に興味深い、『イデオロギー』と『哲学的ゾンビ』という言葉について解説します。

イデオロギー

『イデオロギー』は高校の授業や、ニュースなどでしばしば使われる言葉です。しかし本当の意味を理解しようとすると、意外に難しいかもしれません。

イデオロギーは、『意識体系』や『観念形態』と訳すことができます。例えば『資本主義』や『社会主義』も、イデオロギーの一種です。

大まかに一言で説明すると、イデオロギーとは『物の考え方の体系』です。世の中には、社会的な立場や政治思想によって様々に異なる観念や信条があり、それらが『イデオロギー』です。

哲学的ゾンビ

また、『哲学的ゾンビ』という面白い哲学用語もあります。

これはデイヴィッド・チャーマーズによって提起された思考実験のひとつで、見た目も行動も完全に人間であっても、自己意識が欠如し、内面的な経験(クオリア)を持っていない人間のことを指します。つまり、物理的にはわれわれ人間と全く同じ要素からなっているにもかかわらず、精神的には意識やクオリアが欠如した存在という意味で『ゾンビ』という表現をしています。

誤解されがちですが、これは自己意識の欠如したゾンビのような人間を批判するという意味合いで用いられたのではありません。『哲学的ゾンビ』が実際に存在する、といった議論をする哲学者はほとんどいないのが現状です。

『哲学的ゾンビ』の存在を仮定したときに、われわれ人間と『哲学的ゾンビ』を区別するものは、目に見えず物理現象に還元されない”何か”であるはずです。一体それは何なのか、あるいはそもそも『哲学的ゾンビ』は存在可能なのか、といった様々な哲学的考察をする思考実験のための用語であると考えるのが正確でしょう。

ただ、こうした言葉は意味を知っていても使う機会がなく、あまり興味をそそられないという人も中にはいるかもしれません。そんなあなたに、日常でも使いやすそうな「かっこいい」哲学用語を下の記事でご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

[関連記事] 哲学用語はかっこいい。明日から使える哲学用語を紹介します

哲学カフェで個々の思想に触れる

哲学に興味はあるものの、周りに同じように哲学について語れる人がいない、という人は、哲学カフェに足を運んでみることをおすすめします。

哲学カフェとは

哲学カフェとは、哲学的なテーマに対し、参加者がコーヒーを片手に自由に語り合うことができるカフェのことです。

哲学カフェとはいっても必ずしも難しいテーマばかりを扱うわけではなく、身近なことや時事テーマなどについて語り合うこともあります。

基本的なルール

哲学カフェは、リラックスした雰囲気のなかで哲学的なテーマについて語り会うことができる場です。

自由に発言できますが、より深く交流を楽しむために、テーマが事前にわかっていればあらかじめ自分の考えを整理しておくといいでしょう。

哲学カフェの目的は、哲学を通じて人と交流することです。相手を論破したり、自分の意見を押し付けたりすることは避けるのがマナーです。

カフェフィロが主催する哲学カフェ

日本ではまだあまり哲学カフェは根付いていませんが、社会の中で生きる哲学を探求している『カフェフィロ』という任意団体があります。

このカフェフィロは定期的に各地で哲学カフェのイベントを開催しているので、哲学カフェに行ってみたいという人は、カフェフィロのホームページを定期的にチェックしておきましょう。

あまり聞きなじみのない『哲学カフェ』については、こちらの記事で詳しく解説しています。

[関連記事] 哲学カフェの魅力に迫る。スキル向上から心のケアまで

哲学は自分を成長させるツールである

哲学は本質を徹底して問い続けるところに醍醐味があり、”あたりまえ”を疑うところから始まります。

そのような思考を続けることにより、多角的な物の見方や形式にとらわれない思考が生まれ、ふだんの生活やビジネスの場において役立ちます。哲学を通じて、自分をどんどん成長させていきましょう。

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