初めてでも楽しめる。能の基礎知識と鑑賞方法を詳しく解説

2019.05.19

独特な面と優美な舞。「能」は日本が世界に誇る伝統的な舞台芸術です。その美しさと厳格さは、近年のオリンピックムードにも押されて新たな世代にも再注目がなされています。しかしひとくちに「能」といってもその詳しい内容が理解できる人は、少ないのではないでしょうか。そこで本記事では今後さらに注目が集まっていくであろう「能」について詳しく解説していきます。

能とは

日本の伝統芸能は全体的に厳格なイメージが漂っています。その中でも格式高さが飛び抜けている能は、初めて観にいく際のハードルも高いのではないでしょうか。さらに狂言とともにユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、今まで高かったハードルがさらに上がってしまったかもしれません。しかしその実態を詳しく知れば、「能」の魅力を感じて貰えるはずです。まずは能の基本的な知識をご紹介します。

能は能面を使った演劇

能は、専用の仮面である能面を使用した「ストーリー仕立ての演劇」です。ストーリーの中には様々な人物が登場し、その役割の違いをわかりやすくするためにつけるのが能面です。またその内容は歌などの音楽的要素も多いことから、演目ではなく曲目と呼称されます。

能と狂言との違い

能とセットで語られる「狂言」。実はこの2つは切っても切れない関係にあります。能と同時期の室町時代に成立した狂言は、それから約600年後の現在に至るまで同じ舞台の上で演じられ、親しまれてきました。

能と狂言の厳密な違いは、能が歴史上の人物などを題材にした悲劇であるのに対し、狂言は庶民の日常を題材にした喜劇となっていることにあります。さらに音楽がメインの能に対し、狂言は会話劇がメインであり、同じ舞台で演じられるものですが内容は異なります。

そして基本的に能と狂言は交互に演じられますが、その理由は、悲劇である能の間に親しみやすい喜劇の狂言を挟むことで、観客を飽きさせないようにするためです。この2つの同時公演を総称して「能楽」と呼ばれています。

能の歴史

能の成立は室町時代と非常に古く、今なおその時代の曲目が演じられています。能が持つ独特の雅な雰囲気は、当時の一般的な光景を現代に伝えています。しかし、その長い歴史は時代の動乱などに巻き込まれるなど、安定したものではありませんでした。能がどのような歴史を辿ってきたのか、その道筋を知れば、より能について理解を深めることができるでしょう。ここからはそんな能の歴史について詳しく解説していきます。

能の起源

能の起源は、室町時代の成立からさらに600年前の奈良時代に遡ります。当時は唐(現在の中国)と盛んに交流が行われていました。その最中、使節団が持ち帰った文化の中にあったのが舞やコメディなどの総合的な大道芸「散楽」です。散楽の素晴らしさは当時の国の重鎮達にも認められ、養成機関の発足などが行われました。その後、養成機関で学んだ演者たちは国中に散らばり、各地で盛んな興行を行なっていきます。

それから時代が流れた平安時代に目覚ましい発展を遂げていた散楽は「悲劇と喜劇」に別れて総称を「猿楽」に変えました。この猿楽がのちの能楽の前身となるのです。

能の崩壊の危機

江戸時代に入り、能は狂言とともに権力者によってその価値を見出され、幕府公認の芸能である「式楽」に認定され、手厚く支援されていました。これにより能は現在にも残る流派が誕生するなど黄金期を迎えると同時に、一般庶民には見ることができない「高貴なもの」として成立したのです。

しかしその後、幕末の動乱期に幕府の後ろ盾を失い、能と狂言は崩壊の危機を迎えます。また時期には数多くの流派が断絶してしまいました。まさに能楽界最大の危機だったといえるでしょう。しかし明治維新後に自国の芸術保護を目的とした運動が時の権力者によって行われ、能は崩壊の危機を免れました。この時呼称が「猿楽」から現在の「能楽」に変更しています。

現代の能

明治維新の崩壊の危機を脱した能。その後は一般人向けの興行を行うようになり屋内の舞台「能楽堂」が作られ、流派の保存を安定させるために流派内の家元制度を導入するなど、現在繋がる能の世界の基盤が築かれました。

そして現代の能は、能楽として親しまれる一方で狂言と切り離された単体での価値が認められ、能と狂言それぞれが独立した興行を行うようになっています。後継者の育成にも注力しており、少数ながら一般人の入門も受け付けています。

能を観る方法

ここまでは能の基本的な知識と歴史について解説してきました。興味が湧いて能を観たくなった方もいるのではないでしょうか。そこでここからは初めて能を観る方に向けて事前チェックポイントやチケットの購入方法など具体的にご紹介します。

能が公演している場所と演目をチェック

まず能を観るためには、近場の能の舞台や能を見ることができる施設「能楽堂」を探してみましょう。能楽堂は私立から公立まで様々な運営形態があるため、近所にもある可能性もあります。能楽堂の所在地は関連サイトでマッピングされているため簡単に見つけることができます。気になる方はチェックしてみてください。

関連サイト:http://www.the-noh.com/jp/theater/index.html

初心者におすすめの演目

能は複雑な曲目も多く存在し、初めて能を観に行く際に難解な曲目を選んでしまうと内容がわかりづらく、舞台の世界に入り込めない可能性があります。そのため、なるべく初心者向けの簡単な曲目を選ぶことをおすすめします。一般的に初心者向けと言われている曲目は以下の通りです。

  • 土蜘蛛(つちぐも)
  • 舎利(しゃり)
  • 金輪(かなわ)
  • 義経(よしつね)
  • 船弁慶(ふなべんけい)

気になる方はぜひチェックしてみてください。

チケットの取得

能のチケットは、電話、インターネット、売り場など様々な方法があります。しかし購入方法の詳細は、主催者側が指定している場合が多く、一律ではありませんので注意が必要です。またチケットの販売開始は、公演当日の数ヶ月前から行われることが多いので、日程の確認は早めに行いましょう。

座席は基本的に3種類で、舞台の正面、斜め前の中正面、真横の脇正面があります。料金は正面が1番高く、柱の影になりやすい脇正面が1番安くなっています。初めてチケットを購入するのであれば、料金ではなく観やすさを優先して座席を選ぶことをおすすめします。

能の楽しみ方

前述にもある通り、能は少々難解な作品が多くあります。そのため、初めて能を観に行く際はある程度の準備をすると楽しめます。ここからは能の鑑賞を楽しむための事前準備やポイントについてご紹介します。

演目事典であらすじを予習

能の初心者が能を楽しむためにおすすめしたいのが、あらかじめストーリーを把握しておくことです。関連webサイトや書籍などでは演目全てのあらすじや見所などが紹介されているため、ストーリーの本筋を知ることができます。

また能は流派などによって同じ演目でも特色などが変わってくるため、聞いたことがある演目でも、予習なしに実際に観に行くと全くわからない場合があります。初めて見る方は、事前に予習をしていくようにしましょう。

能面の表情の変化を楽しむ

能面は能のストーリーを理解する上で重要な役割を担ってます。登場人物をわかりやすくすることや、感情の表現に使用されます。この違いを楽しむのも能の醍醐味といえるでしょう。

能の装束に注目する

能の装束は能面と同じく登場人物の立場を明確にするものです。「女性であればきらびやかに、男性であればシックに」など人物それぞれで装いが大きく変わってきます。この違いを楽しむことも能面同様に見所です。

気軽に能を楽しんでみよう

日本の伝統芸能である能は敷居が高いイメージがありますが、一度楽しみ方を知ってしまえば、また観たくなるのが能の魅力です。ぜひ日本が世界に誇る伝統芸能の一端に触れてみてはいかがでしょうか。

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