能面の種類は約250!代表的な面とそれぞれの特徴とは?

2019.05.16

日本きっての伝統芸能である能。そんな能に欠かせない小道具が能面です。能に興味がある方でも、能面についての詳細を知る方は少ないはずです。本稿ではそんな方のために、少し不気味ながらも奥深い、能面の種類について掘り下げていきます。

役者と同等?演出を左右する能面とは

能面は日本の伝統芸能である能の小道具でありながら、1つの芸術品でもあります。その芸術的価値は世界でも認められているほどです。能面にはあらゆる演目に対応するために様々な表情があり、その種類はなんと約250種類にのぼります。

そんな能面の魅力に迫っていくために、まずは基本的な知識から学ぶ必要があるでしょう。ここからは能面そのものについて詳しく解説していきます。

能面の歴史

日本最古の仮面文化は飛鳥時代のものとなっています。しかしこれは能面に直接的なつながりがありません。能面の最初のルーツとなったのは平安時代に登場した『翁面』(おきなめん)です。

翁面は主に神へ奉納する舞である『神楽』を行うときに用いられました。この翁面は飛鳥時代の仮面にはなかった「角度によって複数の表情を見せる」という特徴を持ち合わせており、後の能面作りの基本となっていきます。

その後、時代が鎌倉、室町と移り変わるとともに能面は様々な面職人の創作によってバリエーションを増やし、当時人気があった猿楽(能、狂言)に用いられるようになっていきます。

そしてさらに時代が進み安土桃山時代になると、現在使われている能面の形式が成立しました。能面の歴史は能の歴史とともに発展してきたのです。

能面の表情が表す意味

能面の表情は登場人物を隠喩的に表現しています。能は1つの演目中、さまざな役になりきって物語を進行されていきます。特に定番とされる「5番立」と呼ばれる進行では「神→男→女→狂→鬼」の順番で能面を変えていきます。

それぞれの能面には表情が与えられており、神であれば豊かな実りや健康など/男であれば悲運/女であれば恋/狂であれば力/鬼であれば怨念と、物語の進行に準じて、そのときに最適な能面を使用して登場人物を表現するのです。

見るものを魅了する。能面の代表的な種類と特徴

数多くの表情、表現をもつ能面。その美しい無表情は見るもの全てを魅了します。能面を詳しく知っていくならば約250種類ある能面の種類を覚えておきたいところですが、流石にそれは難しいはずです。

しかし例外をのぞいて能面は、大きく6つの系統に分類することができます。その6つの分類を覚えておけば、初めて見る能面の表現もある程度は読み取ることができるでしょう。ここからは代表的な能面の種類とそれらの特徴について解説します。

翁系

翁系の面は前述にもある通り、能面の中ではもっとも古くから使用されてきたものです。全ての能面の祖であると言っても過言ではありません。それゆえか全体的に作りが他の系統とは違い、口元から上下のパーツで別れた2枚作りとなっています。

神の役を演じる際に使われるゆえに、とても人間とは思えない見ている側も自然と微笑んでしまうような、優雅な笑みを浮かべているものが多くあります。また当時信仰されていた神を模した豊かな髭、眉に加えて顔つきがふっくらとしており、額には贅沢な装飾が施されているものもあります。

怨霊系

怨霊系は能面の中でもっとも恐ろしい表情の系統です。落ちくぼんだ目にむき出しの牙はまさに彼岸の世界の住人といったところでしょう。表情が表しているのは嫉妬や妬みなど人間くさい部分が多く、幽霊や生き霊としての役割を果たすのに適しています。

その恐ろしい見た目とは裏腹に、この系統は性別が女性となっている場合が多く、有名な『般若面』も女性の怨霊とされています。怨霊系の特徴である大きな角は、1つの木材から切り出して作る能面としては珍しい後付けパーツとなっています。

女系

女系は能面に詳しくない方でも見たことがあるであろう、もっともポピュラーな系統です。「能面」と聞いてまず思い浮かぶ真っ白い肌にうっすらとたたえた笑みをもつ女性の面『小面』も、これにあたります。引眉にお歯黒と当時の女性を意識した化粧を施された顔には、表情を読み取ることができない不思議な力があります。

しかしこの意味深な無表情は角度によってその印象を大きく変えるようになっているのです。上に向ければ『テル(明るい表情)』下に向ければ『クモル(暗い表情)』と器用な使い方ができ、能楽師の腕前にかかれば1枚の能面で多種多様な表現が可能となるのです。

男系

男系はその名の通り男役に使われる能面です。能における男役は、基本的に貴族や帝など身分の高い人物が多く、そのためか女性と見まがうほどの端正な顔立ちをした面が多くあります。

また男系の役として武将を演じる際には、汎用的なものではなくそのキャラクター専用の能面を使う場合があります。人気の武将などであれば、同じキャラクターでも流派ごとに違う顔つきの能面を見ることができるため、注目してみるとまた違った楽しみ方ができるかもしれません。

尉系

尉系は、前述にある翁系に近い顔つきの能面です。能面の中では特にシワ深く、生身の人間に近い質感が特徴となっています。女面同様に複数の表情を感じ取れる作りになっているものが多く、人間に近い顔つきも相まって、演能中は見ている側が能面をつけていることを忘れてしまうほどリアルな躍動感を楽しむことができます。

翁系に近い余裕ある老人から小汚い貧しい顔まで様々な表情があるため、主に神霊などの神に近い存在から漁師や農民などの低い身分の役まで演じたりと、レパートリーは豊かです。翁系よりも人間味溢れるキャラクターにぴったりの能面と言えるでしょう。

鬼神系

鬼神系は無表情が多い能面の中でも、猛々しさや危険さなどをストレートに感じることができます。その顔つきは怨霊系などよりも彫りの深さに丸みがあり、化け物というよりは大男などの実在する存在に近いイメージを感じます。これは当時の文化としての「鬼は身近な自然の中に潜んでいる」という考え方の表れです。

色味が金や赤など派手なものが多く、激しい表情も相まって、『静』の攻撃性をもつ怨霊系と比べて鬼神系は『動』の攻撃性を持っているようにも見えます。また『鬼神』とはいうものの、角などは生えておらず、人間味を感じさせる要因ともなっています。

環境が重要!能面を保存する時の注意点

ここまで多くの能面について詳しく紹介、解説をしてきました。ここからは予備知識として今後、能面を手に入れるような機会が合った時のために、能面の保存に関する注意点を学んでいきましょう。

能面はど箱に入れて保存

能面は主にヒノキなどの木材から作られています。そのため湿気の増減にコンディションを左右されやすくなってしまいます。もしも展示などをせず長期間使うこともない場合は桐箱に湿度調整剤などと一緒に保管しておくようにしましょう。

能面への直射日光は厳禁

能面の装飾には胡粉などの自然由来の塗料が使用されています。そのため長期間、直射日光に晒され続けると日焼けや不自然な変色の原因ともなりかねません。箱から出して飾っておく場合はなるべく日光が当たらない場所にスペースを設けるようにしましょう。

能面には心が宿る

約250種類以上が存在する能面。その全てが様々な表情を覗かせ、見るものを魅了する珠玉の逸品です。「能面には心が宿る」という逸話があるほど、丁重に扱うべきものであり、能楽師たちはとても厳重に保管しています。海外でも人気のある能はこれからも多くの人を魅了し、見るたびに能面の不思議な力に惹きつけられていくことでしょう。

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