落語は親しみやすい伝統芸能?気軽に寄席に行ってみよう

2018.07.31

江戸時代から始まった落語は、今も尚多くの人に愛されている日本の伝統文化です。近年は、寄席へ足を運ぶ若者も増えつつあり、その魅力が再度見直されてきています。落語の楽しみ方や、歴史、見どころについて解説します。

落語とは

若い世代には、落語に古臭いといった印象を持つ人も少なくありません。また落語の内容がイメージしにくいのも足が遠のく理由の1つでしょう。

「落語とは何か?」という基本的な疑問について、様々な視点から解説します。

オチのある話

落語は、1人の演者が表情やしぐさなどを交え、時には声色を変えながら、臨場感たっぷりに物語を進行します。

しかし、単に話をしているだけでなく『マクラ→本題→オチ』という構造に沿って話を展開しています。

最初に導入部分(マクラ)があり、人々をひきつけながら本題に入ります。そして最後は必ずオチで締めくくるのが特徴です。オチがあることが落語の笑いを生む大きな魅力といえるでしょう。

ちなみに、落語ではストーリーのことを『噺(はなし)』といいます。

噺の種類

落語の主体となっている物語、すなわち『噺(はなし)』には、いくつかの種類があります。大きく分けて以下の3つです。

  • 滑稽噺
  • 人情噺
  • その他の噺

『滑稽噺』は、ばかばかしく面白可笑しい演題のことで、落語の演目でも圧倒的数を誇ります。『人情噺』は文字通り、親子や夫婦などの人情や情愛に重きが置かれ、ストーリーが長大になる傾向があります。

『その他の噺』は、滑稽でも人情でもないストーリーのことで、幽霊や死神が題材となった『怪談噺』などが挙げられます。

しかし、人情が途中で怪談へ展開するパターンや、怪談が滑稽噺で終わるパターンなども多く、聴き手は最後まで飽きることがありません。

落語の表現方法

落語は、大がかりな舞台演出をせず、演じ手の技巧が、観客を噺の世界に引き込んでいきます。落語は主に、言葉、仕草、小道具で表現されます。

演者は1名で、座布団の上に座るスタイルをとります。使用する小道具は基本的に『扇子』と『手拭い』のみですが、この2つの道具が噺の中で茶碗・箸・盃・刀・本・帳面など様々なものを表現します。

また演者は、声色や話し方、仕草を変え、1人で老若男女を演じ分けます。言葉のなまり・アクセントを変化させたり、声の高さや話すスピードを変えたり、顔の表情や向きを変えたりして、様々な人物を表現するのです。

こうしたことを考えると、落語は演劇的な要素も含んでいるといえるでしょう。また、聴き手の想像力をいかに膨らませることができるかが鍵となります。

落語の歴史

落語の歴史は歌舞伎と並ぶほど古いものです。落語のはじまりと全盛期、そして、現代の落語について解説します。

始まりは江戸時代

戦国時代には、諸国の噂話や、講釈話をする『御伽衆(おとぎしゅう)』とよばれる人々がいました。この御伽衆は落語とは少し異なりますが、落語の元となったと言われています。

江戸時代には『辻噺(つじばなし)』と呼ばれるもが起こり始めました。金銭をもらいながら路上で笑い話や芸を披露するというものです。

辻噺では噺以外の芸も披露されていましたが、オチをつけるなどの噺の形態は、今の落語とかなりの共通点があり、落語の始まりと言われています。

次第に料亭などを借りて行う形式に発展し、その後は料金を徴収する商売に変化していきます。江戸、京、大阪では落語で生計を立てる演者が増えていきました。

初期の落語は歌舞伎的要素が強い『芝居噺』でしたが、明治初めには、演者1名が扇と手ぬぐいのみで行う『素噺』へと転向を遂げます。

落語の黄金期

明治、大正、昭和と様々な紆余曲折を経て、戦後は『ラジオ&テレビ落語』の時代へと突入していきます。

これまでの寄席は次々と廃業し、それに変わって人々はテレビ、ラジオ、演芸ホールなどで落語を鑑賞するようになりました。昭和30年代~40年は、落語の人気はピークに達し、落語の名人が次々と活躍する時代に入ります。

上方では『上方落語四天王』と呼ばれる六代目笑福亭松鶴・三代目桂米朝・三代目桂春團治・五代目桂文枝の4人が活躍しました。

吉本興業にも落語家が所属するようになり、ラジオやテレビの司会者として活躍する落語家も増えていきます。このように、テレビやラジオの普及で、落語は黄金期を迎えます。

現代の落語

現代では、落語を楽しむ環境も変化を遂げ、インターネットの落語チャンネルや落語を題材にした漫画などを利用する若者も少なくありません。

カフェで行う出張スタイルなど、様々な落語会が開催されているという状況で、デジタル世代とされる若年層にも落語の魅力がどんどん浸透しています。

伝統的な落語の要素を残しながら、楽しみ方のバリエーションが増え、常に進化を遂げているのが現代の落語といえるでしょう。

落語家とは

落語のプロ『落語家』とはどんな職業で、どんな階級があるのでしょうか?落語家になるまでの道のりなどを紹介します。

弟子入り、前座見習いからスタート

落語家は、以下のような階級を経て、一人前になります。

  • 前座見習い
  • 前座
  • 二つ目
  • 真打ち

まずは、自分が尊敬する師匠を見つけ、そこに弟子入りすることから始まります。後に詳しく説明しますが、『真打ち』とよばれる師匠の下で修業を積むのです。基本的に、師匠を途中で変更することはできません。

弟子入りするには、自らが落語界の門を叩き、師匠に熱意を見せる必要があります。まずは師匠とコンタクトを取ることから始まります。コネなどがなければ、楽屋口で待って、師匠が楽屋から出てきたときに直接話しかけます。

前座

師匠が入門を許可すると、まずは『前座見習い』として修業をします。前座見習いはお客さんの前に出ることはできず、いわゆる『カバン持ち』的な仕事をこなします。

落語の稽古や鳴り物の稽古などを経て、やっと『前座』に上がることができます。前座になると落語会の協会に所属することになるので、楽屋に入れるようになります。

とはいえ、仕事の内容は、縁の下の力持ちで、楽屋の掃除や次の演芸の準備(高座返し)、開演前後の『二番太鼓』と『追い出し太鼓』などを行います。

空いている時間は、師匠方に稽古をつけてもらったり、地域寄席の手伝いをしたりと、忙しく動きます。

二つ目と真打ち

前座を終了すると、次は『二つ目』に昇級します。二つ目に上がると、楽屋での雑用や師匠のお世話などがなくなり、紋付・袴を着用するようになります。噺の稽古に本腰を入れる段階です。

寄席では二番目の出番となりますが、出番が少なくなり収入が減ってしまうので、仕事(高座)を自分で開拓する必要が出てきます。ライバルも多いため、技に磨きをかけなければなりません。

二ツ目になってから約10年で『真打ち』へと昇級します。真打ちは、寄席の番組で最後に出る資格を持ちます。また『師匠』とよばれ、弟子をとることができます。

昔は、真打ちになることがゴールとされていましたが、実際は真打ちになってからが本当のスタートだという人もいます。

落語協会と落語芸術協会

落語会には、『落語協会』と『落語芸術協会』の2つの組織が存在します。2つの組織では、担当する寄席の場所や期間、方針などが異なります。落語家の多くはこの2つのどちらかの組織に所属しています。

落語協会とは

落語協会は、四代目柳亭市馬が会長を務めています。

古典落語の継承・研究を主な目的としていますが、落語家だけでなく、漫才師や漫談・ものまね芸人なども所属していることから、大衆芸能の継承や研究なども積極的に行っています。

落語協会は、関東大震災後の1923年に東京落語界が団結して結成したといわれています。その後、会の分裂や休止などを繰り返し、2012年に現在の一般社団法人落語協会となります。

落語芸術協会とは

『落語芸術協会』は、もともと会長を桂歌丸、副会長を三遊亭小遊三が務めていました。桂歌丸さんが亡くなられた現在は、三遊亭小遊三さんが会長代行 兼 副会長となっています。

1930年に設立され、お笑い芸人が多く所属する『吉本興業』の後押しで成立したことでも知られています。

当時は、6代目春風亭柳橋と柳家金語楼がタッグを組み、『日本芸術協会』という名前で親しまれていました。落語、講談、漫才、ものまねなど、様々な芸術分野を実演するという意味が込められています。

現在は、東京の落語家や上方落語家が在籍しており、メディアで人気がある『新作派』が多いのが特徴です。

落語を気楽に楽しもう

落語が初めての方は、寄席を訪れる前に、テレビやオンラインなどでその雰囲気に触れてみましょう。落語を気軽に楽しめる方法を紹介します。

NHKの超入門!落語 THE MOVIE

演者1人が延々と語るだけの落語を敬遠する人もいるかもしれませんが、NHKの『落語THE MOVIE』はそんな人にもおすすめです。

演者の語りに合わせて役者が演じるという、落語を映像化した番組で、『見る落語』という新しいエンターテインメントになっています。

初心者はもちろんですが、落語に親しみなれた上級者にも、新たな落語の楽しみ方を教えてくれる番組です。

動画で楽しめるオンライン寄席

『ミッドナイトよせ太郎』という、日本初のオンライン寄席サービスがあります。200本以上の落語や講談の動画が月額980円で見放題です。

若手芸人中心の寄席番組で、時代を反映させた、様々なネタが披露され、落語初心者でも十分に楽しめるのが特徴です。次々と新たな番組がアップロードされるので、より多くの落語に触れたい人におすすめです。

ミッドナイトよせ太郎

英語落語

落語家『桂かい枝』が外国人に落語の面白さを伝えるためにはじめた『英語落語』は、外国人はもちろん、英語を習いたての子供達にも人気があります。

演目は、江戸・明治・大正時代に生まれた古典落語が中心で、日本人にも分かりやすい英訳がされています。日本語と英語を聴き比べるといった楽しみ方もできるでしょう。

全国の中学校で使われる英語の教科書に桂かい枝の話や動画が取り上げられるなど、英語をきっかけに落語を知る子供達も多いようです。全国、世界各地で、英語落語公演を行っており、公演依頼もできます。

英語落語

落語がテーマのアニメ、昭和元禄落語心中

「落語はやっぱり難しい…」と感じる人は、漫画やアニメから入ってみてはいかがでしょうか。

雲田はるこ原作のアニメ『昭和元禄落語心中』は、昭和の落語会を舞台に、落語を巡る愛憎劇が繰り広げられるストーリーです。

アニメ『昭和元禄落語心中』は、落語界や音楽業界からも絶賛されています。落語の歴史なども分かるため、落語初心者のよい勉強材料にもなるでしょう。

寄席に行ってみよう

落語の寄席は、年配の方が多いというイメージがあるかもしれませんが、近年は『平成の落語ブーム』といわれるほど、様々な年齢層の人々が集まります。寄席の魅力と、マナーを解説しましょう。

気軽に行けるのが寄席

落語が演じられる場所を『寄席(よせ)』といい、落語以外にも『色物(いろもの』とよばれる漫談や紙切り、曲芸などが演目に組み込まれています。

寄席は、好きなときに入り、好きなときに退出できるので、日本の伝統の芸能といっても、肩ひじを張らずに楽しめるといえるでしょう。またほとんどの寄席は、飲食も可とされています。

歌舞伎などと違い、チケットの予約も必要ありません。当日、思い立ったらふらりと立ち寄れるのが魅力です。

年中無休だが期間で番組が変わる

寄席は基本的に365日無休です。ただし、公演スケジュールがあるので、いつ行くかによって演目が異なります。

公演内容や興行時間については、寄席に直接電話をするか、各寄席のHPを見てチェックする必要があります。

また、寄席には、上席(かみせき)・中席(なかせき)・下席(しもせき)の3つがあります。

これは席のランクのことではなく、1カ月を10日ずつに区切った独自の表記です。上席は毎月1日から10日、中席は11日から20日、下席は21日から30日までの興行を指しています。

公開されるスケジュールには『〇月中席』や『〇月上席』などの形で予定が記載されます。

木戸銭と寄席でのマナー

寄席には、厳格なルールや決まりはありません。しかし、老若男女様々な人が集まる場ですので、和やかな雰囲気を壊さないためにも最低限のマナーは守る必要があります。

たとえば、他の人の鑑賞を邪魔しないように、入退場は演芸と演芸の間にする、携帯電話はマナーモードにする、音のする食べ物やアルコールは控える、などです。

また、寄席の料金は『木戸銭』とよばれ、チケット売り場や窓口に、木戸銭の金額が表示されています。木戸銭は3,000円前後のところが多いですが、中には500~1,000円ほどで格安の場合もあります。

初心者におすすめの落語

落語には大きく分けて、『古典落語』と『新作落語』があります。古典落語とは、過去に作られて代々演じられてきた噺で、新しく作家や落語家が作った噺を新作落語といいます。

幾度にわたり、多くの演者によって演じられてきた古典落語は、何度聴いても面白く、当時の情景なども知ることができます。初心者におすすめの名作古典落語を3つ紹介します。

くっしゃみ講釈

ある男が、犬のフンを踏んだ講釈師に逢い引きを邪魔され、女に振られてしまいます。

男は講釈師に復讐をしかけるため、講釈中にコショウを使ってくしゃみをさせようとするという滑稽噺です。

『のぞきからくり節』などが盛り込まれ、初心者でも楽しく鑑賞できる演目の1つです。様々な演者によるくっしゃみ講釈を比較するのも楽しみ方のひとつでしょう。

寿限無

『寿限無』は非常に有名な古典落語で、早口言葉と言葉遊びが聴きどころです。

内容は、幸福で長生きできるようにという願いを込めて、悩んだ挙句、縁起の良い言葉を全てつけて、とんでもなく長い名前をつけてしまったというオチの噺です。

演者によって様々なアレンジが加えられるところも楽しみの1つといえるでしょう。また、テンポの良い早口言葉は、子供にも受け入れられやすく、親子で鑑賞するのもおすすめです。

皿屋敷

皿屋敷で、家宝の皿を割った濡れ衣を着せられ、井戸に沈められたお菊の噺(お菊の皿)です。毎晩、幽霊となってあらわれ、皿を数える情景は、昔話としても有名です。

一見、怪談噺のようですが、最後のオチが演者によって工夫され、抱腹絶倒で終わるところが魅力です。皿を数えるお菊の表情や声色の変化などにも注目しましょう。

笑いの力は今も昔も変わらない

落語は演じ手の技巧が試されますが、同様に、聴き手の想像力も試されます。動作や話の1つ1つに集中し、落語の世界に没頭してみましょう。演者の表情や噺の滑稽さなど、見どころは沢山あります。

江戸時代に端を発する落語が現在でも受け継がれ、多くの人に愛されていることは、笑いの力は今も昔も変わらないということを教えてくれます。

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