ジャズの主役となる楽器は、サックスとピアノと並びトランペットが挙げられます。その魅力を知れば、ますますジャズをお楽しみ頂けるのではないでしょうか。本記事ではそんなトランペットの魅力をご紹介します。
ジャズの主役、トランペット
トランペットの最大の魅力といえば、なんといっても華やかなサウンドです。
サックスより音域が高く響き渡る音色、演奏者の情熱をダイレクトに表現するパワフルさには、ジャズのアンサンブルを先頭で引っ張る存在感があります。
まずは、そんなトランペットという楽器の基礎を知っていきましょう。
トランペットはたくさんの種類がある?
トランペットでは、3つのバルブを押さえることで音を作り、唇の使い方と息の吹き方で音の質感を操ります。他の楽器のように音程が順に並んでいるわけではないので、演奏者の技術とセンスが強く表れる楽器です。
そんなトランペットですが、実は多くの種類があります。
キーとなる音階や用途よって種類が分類されていて、ジャズやポップスなどで最もよく使われる一般的なトランペットは、基準の音がB♭になっている「B♭管トランペット」です。
他には、クラシックなどでよく使われる「C管トランペット」、バラードなどに向いている「フリューゲルホルン」、B♭管トランペットより1オクターブ高い「ピッコロ・トランペット」などが有名です。
ジャズではコルネットも使われる
トランペットと見た目も構造もほぼ同じな一方で、音色はトランペットより柔らかい楽器に「コルネット」があります。
オーケストラや吹奏楽などでは一般的な楽器で、トランペットとはまた違ったニュアンスを表現できるのが特徴です。
このコルネットですが、ジャズでもよく使われることで知られています。場面によってコルネットに持ち替えるプレイヤーや、あえてコルネットで演奏することを好むプレイヤーも多く、トランペットに並ぶ花形楽器のひとつとして注目です。
トランペットが主役のおすすめジャズ
ジャズにおけるトランペットの魅力を知るには、トランペットが印象的な名曲を実際に聴いてみるのが一番です。トランペットが主役の、おすすめのジャズをご紹介していきます。
名曲の中の名曲。この素晴らしき世界
ジャズトランペットの魅力を知る上で真っ先に聴いておきたいのが、ルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界(What a Wonderful World)」です。歌唱曲として有名な一方で、トランペットの主旋律が光る曲としても知られています。
ジャズの世界では知らない人はいない有名曲で、日本でも映画音楽やCMソングとして広く人気を集めてきました。ポップスやロックにアレンジされて多くのアーティストにカバーされてきた、名曲中の名曲です。
「平和を願う曲」として作られたというこの曲では、優しく背中を支えてくれるようなメロディが、ゆったりとしたリズムの中で心地よく響きます。
あたたかい言葉を語りかけてくれるような主旋律には、トランペットの魅力である「歌心」がしっかりと詰まっています。
エディ・ヘンダーソンのインサイド・ユー
エディ・ヘンダーソンは、医師として働く傍らでプロのトランペット奏者としても活動するという、異色のジャズミュージシャン。伝説的なジャズピアニストのハービー・ハンコックのバンドに参加していたこともあり、ジャズファンの間では有名な実力派奏者です。
そんなエディ・ヘンダーソンの代表曲「インサイド・ユー」は、重厚なグルーヴの中で緊張感あふれるトランペットの演奏がくり広げられる名曲です。地に足をつけながらも予想外の展開を見せるベースとドラムを軸に、エディの自由なプレイングが響き渡ります。
ブルースなどブラックミュージックの要素も色濃く感じさせるナンバーで、ジャズトランペットのスリリングな一面を体感するにはぴったりです。
収録アルバムは「Heritage」で、ジャズの名門レーベルとして知られるブルーノート・レコードから発表されています。
じっくり聴きたいスターダスト
トランペットが光るバラードナンバーとして注目したいのが、「スターダスト(Stardust)」です。1927年に発表されて以来、ジャズの定番曲(ジャズスタンダード)のひとつとして、さまざまなジャズミュージシャンに演奏されてきました。
タイトル通りたくさんの星が瞬くような情景の浮かぶアンサンブルが特徴で、優しくゆったりとしたサウンドの中にも、荘厳な自然を感じさせる力強さのある名曲です。
トランペット奏者やサックス奏者として知られるベニー・カーターのアルバム「Tea for Two」に収録されたバージョンが、トランペットによる「スターダスト」の魅力を知るにはおすすめです。
渋さのあるラウンド・ミッド・ナイト
「ラウンド・ミッドナイト(’Round Midnight)」は、ジャズトランペットのさまざまな表情が見られる名曲として知られています。
元々はジャズピアニストのセロニアス・モンクによって作曲されたピアノ主体のジャズスタンダードですが、「モダンジャズの帝王」と称されたトランペット奏者のマイルス・デイヴィスによってカバーされたことで、トランペットが光るナンバーとしても有名です。
マイルスによるバージョンではどこか寂しげで感情的に鳴るサウンドが特徴で、艶やかな歌のようにも、悲しみ嘆く声のようにも聞こえます。
曲名の表記としては他にも「ラウンド・アバウト・ミッドナイト(’Round About Midnight)」があり、こちらの表記でマイルスの同名アルバムに収録されています。
ジャズにトランペットは欠かせない
さまざまな音楽ジャンルで活躍するトランペット。特にジャズでは、演奏者のセンスが生む「歌心」をダイレクトに伝えてアンサンブルを盛り上げてくれる主役になっています。数々の名曲や、偉大なジャズトランペット奏者の名演を通して、トランペットの魅力をぜひ体感してみてください。