バイクは、乗っているうちにパーツの汚れや劣化、傷みが生じます。これらを放置しているとバイクの劣化や危険な事故につながりかねないため、定期的なメンテナンスが必要です。そんなメンテナンスに使用するフロントスタンドの特徴と使い方を紹介します。
フロントスタンドを使うメリット
フロントスタンドは、ヘルメットのようにバイクに乗るために必ず持っておかなければならないアイテム、というわけではありません。
しかし以下に挙げるように、バイク乗りならフロントスタンドを持っているとさまざまなメリットを実感できるものです。
メンテナンスが容易になる
フロントスタンドは、『メンテナンススタンド』という別称があることからも分かるように、バイクのメンテナンス時に便利なアイテムです。
バイクは定期的な点検やメンテナンスが必要な乗り物で、一定期間ごとにある程度のチェックをすることになります。
ショップでプロにチェックを依頼することも可能ですが、走行距離や期間ごとにメンテを行うとなると、自分自身でチェックできるようになりたいものです。
自身でチェックや整備を行う場合、タイヤを浮かせて回転させる必要も出てきます。そんなときに、車体を垂直に立てて浮かせることができるフロントスタンドを利用すれば、バイクを取り扱いやすくなり、整備もしやすくなります。
特に、前輪やフロントフォークを脱着するときには車体を浮かせなければならないため、フロントスタンドが必須アイテムとなります。
しかも、フロントスタンドを使うと少ない力でバイクの上げ下ろしができるため、バイク初心者や女性でも無理なくメンテナンスができるメリットもあります。
バイクの洗浄時にも役に立つ
点検やメンテナンスよりも頻繁に行う機会があるのが、バイクの洗浄です。バイク洗浄時は、フロントスタンドを利用してタイヤを浮かせるとホイールを回しやすくなり、効率的に洗浄できます。
このように、洗浄時にもフロントスタンドを利用すれば、通常時のように地面に置いた状態で洗浄するよりも、フロントホイールをきれいにしやすくなるでしょう。
バイクの保管時にも最適
長期間バイクに乗らないとき、そのままサイドスタンドに立てるなどして保管することが多いのではないでしょうか。バイクをしばらく保管しておくときにも、フロントスタンドを使うのがおすすめです。
先ほども紹介したように、フロントスタンドを使うとタイヤを浮かせた状態で垂直にバイクを立て他状態で保管ができます。車体の重みでタイヤへダメージを与えるリスクを減らせることから、保管中のタイヤの空気圧低下や変形を防げます。
つまり、ただ単にバイクを地面に置いて保管するよりも、タイヤへのダメージを抑えられるというわけです。
フロントスタンド選びのポイント
フロントスタンドを購入したいというときには、いくつかのポイントと注意点があります。特に、以下のポイントをしっかりとチェックしておきましょう。
フロントスタンド単体での使用はNG
フロントタイヤのみをチェックしたい、という場合、フロントスタンドだけがあればいい、と考えてはいないでしょうか?しかし、フロントスタンドを使う上でまず必ず覚えておきたいことは、単体で使ってはいけない、ということです。
なぜフロントスタンドを単体で使用してはいけないのかというと、その理由はフロントタイヤの不安定さにあります。
固定されているリアタイヤに対し、フロントタイヤはハンドル側にあり、左右に動くために不安定です。そのフロントタイヤのみを浮かせようとすると、上げたときにバイクが横転する可能性が高く危険だからです。
リアスタンドとセットで使う
メンテナンススタンドと呼ばれるアイテムには、フロントスタンドと対になる、リアタイヤ部分に使う『リアスタンド』があります。
フロントスタンドは、上記のように単独での使用は横転の危険があるので、必ずリアスタンドとセットで使わなければなりません。
そして、フロントスタンドを使うときの手順として、先に必ずリアスタンドでリアタイヤを上げてから使用します。なお、リアスタンドはフロントスタンドと異なり、固定されているリア部分に使うものなので、単独での使用が可能です。
バイクの受け部の種類を確認
フロントスタンドを使うときは、最初にバイクのボトムケース周辺を確認して『受け部』の種類を確認します。
もしボトムケースの下部付近に平らな部分がある場合、『ラジアル式フロントスタンド』が利用できます。一方、ボトムケース下部に差し込み穴があるバイクには、『差込み式フロントスタンド』が使用可能です。
中には、この2点が確認できるバイクもありますが、その場合はラジアル式、差込み式どちらのフロントスタンドも使用できます。
ただし、ラジアル式は差込み式よりも安定感が劣るため、両方が利用できる場合は、どちらかと言えば差込み式の方がおすすめです。
フロントスタンドによるバイクの上げ方
フロントスタンドを使ったバイクの上げ方の詳しい手順を、以下で紹介します。先ほども触れましたが、フロントスタンドは必ずリアスタンドとセットで使うようにしましょう。
まずリアスタンドを先に上げる
先述のように、フロントスタンドは単独での使用やフロントタイヤから上げることは危険です。フロントスタンドを使う前に、まずリアスタンドでリアタイヤを先に上げる必要があります。
リアスタンドを上げるときは、最初にブレーキを使います。ハンドルとブレーキレバーを輪ゴムなどで結んで固定してから、ハンドルを左に切ります。その後サイドスタンドを立てておくと、バイクが横転する危険性が減ります。
この状態でリアスタンドのフックに仮掛けをしてから、車体を起こします。バイクの左側に立ってリアスタンドを踏みながら、車体を垂直にします。最後に、リアスタンドの上部を真下に踏めば、リアスタンドが上がります。
カラーをバイクに取り付け
フロントスタンドの先端に取り付けられているカラーは、車種によってサイズを変更する必要があるので、フロントスタンドを使う前に、カラー選択をします。
バイクにフィットするカラーを確認し、必要であればカラーを付け替えます。カラーはボルトで固定されているので、先端部分のボルトを外し、バイクに合ったカラーを付け替えて装着します。
フロントスタンドを上げる
カラーを確認した後は、ハンドル下部にあるフォークとハンドルをつなぐステムとアンダーブラケットにある穴にカラーを差し込みます。
このとき、フロントスタンドがフロントフォークやカウルに触れると傷が付くことがあります。愛車に傷が付くのを予防するために、手やタオルで覆いながら作業をするのがおすすめです。
カラーを差し込んだら、あとはリアスタンドと同様にスタンド上部をテコの原理で押さえれば、フロントタイヤを上げられます。リア・フロント両方を上げた後は、車体が水平状態になっているかを確認しましょう。
もし車体を持ち上げられない場合は、バイクの中で強度が高い場所を探します。そこを持ちながら上方向へ力を加えて、フロントスタンドを踏んでみましょう。スタンドの高さが足らない場合は、一旦外してスタンドそのものの長さ調整を行いましょう。
フロントスタンドを下げる方法
フロントスタンドを使った後は、必ず下げる必要が出てきます。下げるときの手順を守らないと、バイクが転倒する恐れがあるため、以下の方法をしっかり押さえておきましょう。
サイドスタンドを出す
フロントスタンドを下げたときにバイクの転倒を防ぐため、最初にサイドスタンドを出しておきます。
フロントスタンドを持ち上げる
バイクの前に立ち、中腰の状態で持ち手を両手でゆっくりと持ち上げます。タイヤが地面に着いたら、左ハンドルを押さえながらサイドスタンドの方向に傾けます。
このとき、座った状態で行っているとフロントスタンドを持ち上げにくく、力が足りずにフロント部分が落下する恐れがあるので注意しましょう。
フロントスタンドの取り外し
フロントスタンド取り付け時と同様に、不用意に傷を付けるのを予防するため、最初に取り付けたカラー部分を手やタオルで覆いながらフロントスタンドを取り外します。
おすすめのフロントスタンド
フロントスタンドは多数の商品が市販されています。その中でも、多くのバイクに対応する以下の2種類がおすすめです。
ジェイトリップ フロントスタンド ホワイト
メンテナンススタンドを多数販売する日本のメーカー『ジェイトリップ』のこちらのフロントスタンドは、アメリカンバイクやオフロードバイク以外のほぼすべてのバイクに対応し、安定したリフトアップができます。
大型カウル車でもたいていの場合はリフトアップが可能で、特殊な工具いらずで12段階の調整ができます。5種類のカラーが付属しており、さらにオプションとして大きいカラーも用意し、手持ちのバイクに最適なフィッティングが可能です。
- 商品名:ジェイトリップ フロントスタンド ホワイト
- 価格:2万3948円(税込)
- Amazon:商品ページ
アストロプロダクツ モーターサイクルフロントスタンド
自動車工具を販売する『アストロプロダクツ(AP)』のフロントスタンドは、4段階のスタンドの高さ調整機能搭載で、バイクに合わせて使用しやすいアイテムです。
6種類のアダプターが付属されており、付け替えることによって異なるバイクにも対応可能なので、複数のバイクを持っている人にも便利に使用できるでしょう。
- 商品名:アストロプロダクツ モーターサイクルフロントスタンド
- 価格:9800円(税抜)
- 公式HP:商品ページ
フロントスタンドを効果的に使いこなそう
愛車を長く走らせるには、定期的なチェックや整備が必要です。フロントスタンドがあれば、面倒なバイクの洗浄や整備も楽にしてくれます。
バイクの扱いに慣れていない初心者や女性でも、少ない力で車体を持ち上げやすくしてくれるフロントスタンドは、日々のメンテナンス時にぜひ用意しておきたいものです。
ただし、使用の際には、リアスタンドも必要だということを忘れないようにしましょう。