ジャズの世界を知るために、まず聴いておきたいのが「名盤」ですよね。ジャズシーンを代表する名盤の数々は、ジャズそのものを理解する上でとても重要です。ジャズ入門にぴったりな名盤をご紹介していきます。
初心者向けのジャズの名盤
まず最初に抑えておきたいのが、ジャズの歴史に残る、特に有名な名盤の数々です。「これだけは聴いておきたい」という名盤の中の名盤を見ていきましょう。
定番のジャズの名盤3選
初めてジャズを聴く方におすすめの名盤はこちらの3枚です。
- ビル・エヴァンス 「Waltz for Debby」
- マイルス・デイヴィス 「Kind of Blue」
- ジョン・コルトレーンの「Blue Train」
ビル・エヴァンスはジャズピアノ、マイルス・デイヴィスはジャズトランぺッター、ジョン・コルトレーンはジャズサックスの世界でそれぞれ伝説的な演奏者として知られていて、この3枚のアルバムは、彼らの代表作となっています。
ジャズの中心的な存在として今も愛され続ける3人による名盤は、どれも「ジャズとはどういう音楽か」を知る上で最適です。
クラシック好き向けのジャズの名盤3選
20世紀に誕生した新しいジャンルであるジャズは、歴史の長いクラシックからの影響も受けています。
クラシックの要素が色濃いおすすめの名盤はこちらの3枚です。
- ジャック・ルーシェ 「Plays Bach」
- オイゲン・キケロ 「Rokoko Jazz」
- ジョヴァンニ・ミラバッシ 「Avanti!」
ジャック・ルーシェとオイゲン・キケロはクラシック音楽をジャズ化させた第一人者として知られていて、「Plays Bach」はタイトルどおりバッハの名曲を中心に、「Rokoko Jazz」は主にロココ音楽時代の名曲をジャズとしてアレンジした作品になっています。
「Avanti!」は反戦歌や革命歌をピアノソロアレンジしたメッセー性の強い一枚で、優美なクラシックとスリリングなジャズの要素が融合した傑作です。
雰囲気がおしゃれなジャズの名盤3選
ジャズといえば「大人っぽくておしゃれな雰囲気」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
そんなおしゃれなジャズのおすすめの名盤はこちらの3枚です。
- ジョン・コルトレーン 「Ballads」
- 二コラ・コンテ 「Rituals」
- テノーリオ・ジュニオール 「embalo」
先にも紹介したジョン・コルトレーンによるバラード集「Ballads」は、優しく聴きやすい初心者向けの名盤として広く語られてきました。
イタリアのジャズミュージシャンである二コラ・コンテはより現代的で優雅な響きのジャズを追求するアーティストで、「Rituals」はその代表作として知られています。
テノーリオ・ジュリオールは1960年代ブラジルで流行した「ジャズサンバ」の第一人者で、スリリングでエキゾチックなピアノ演奏が、異国情緒あふれるおしゃれさを演出しています。
有名どころから。グラミー賞受賞ジャズ名盤
世界最大級の音楽賞であるグラミー賞にはジャズの部門もあり、受賞作は現代ジャズシーンで知られる一流作品ばかりです。そんな、グラミー賞受賞のジャズの名盤をご紹介します。
ジャズアルバム賞(楽器)受賞の名盤
ボーカルを使わず楽器のみで演奏されたインストゥルメンタル作品のグラミー賞受賞作でおすすめなのが、2017年のジョン・スコフィールドのアルバム「Country for Old Men」です。
アメリカの大衆音楽として広く親しまれてきたカントリーとジャズを融合させたこの作品は、ジャズらしいおしゃれさはそのままに、より聴きやすく牧歌的な雰囲気を味わうことができます。
ジャズの新境地を見せる作品として必見です。
ジャズ・アドリブ賞受賞の名盤
ジャズの醍醐味と言えば、プレイヤーが個性とセンス、インスピレーションを駆使してくり広げる「アドリブ演奏」でしょう。グラミー賞にはそんなアドリブの名演に贈られる賞もあり、アルバムではなく曲単位で選ばれます。
近年のアドリブ賞の中でも注目なのが、ジャズピアニストのチック・コリアが2016年に受賞した「Fingerprints」です。アルバム「TRILOGY」に収録されているこの曲では、キャッチーさの中に情熱を込めたチック・コリアの名演を体感できます。
ジャズ・アンサンブル・アルバム賞受賞の名盤
バンドスタイルの「アンサンブル」に重きを置いたジャズ・アンサンブル・アルバム賞の中で特におすすめなのが、2018年の受賞作、クリスチャン・マクブライド・ビッグバンドの「Bringin’ It」です。
近年のジャズシーンを代表するベーシストのクリスチャン・マクブライドは、これまでに何度もグラミー賞を受賞した名プレイヤーとして知られています。そんなマクブライドが率いるこのバンドのアルバムは、ダイナミックさと繊細さを併せ持った演奏が魅力です。
ジャズアルバム(ボーカル)賞受賞の名盤
エモーショナルな歌唱を織り交ぜたボーカル曲も、ジャズの魅力のひとつ。そんなジャズボーカルの世界で近年特に注目を集めているのが、セシル・マクロリン・サルヴァントです。
第58回グラミー賞ではアルバム「For One To Love」でボーカル賞を受賞し、第60回グラミー賞でもアルバム「Dreams & Daggers」で同賞を受賞するなど、圧倒的な評価を受けています。
力強く、それでいて上品な歌声がサルヴァントの最大の魅力で、軽快なモダン・ジャズのサウンドと合わさって、大人の色気を感じさせてくれます。どちらのアルバムも、王道のジャズボーカルを聴くことができる現代の名盤です。
好きな楽器のジャズを。楽器別ジャズの名盤
それぞれの楽器にフォーカスを当てた名盤も、ジャズを知る上で押さえておきたいですね。個性的なプレイヤーの名演が光るアルバムを、楽器ごとにご紹介していきます。
ジャズピアノの名盤3選
ピアノが魅力的なジャズの名盤として知っておきたいのが、こちらの3枚です。
- バド・パウエル 「Jazz Giant」
- アート・テイタム 「Hold That Tiger!」
- オスカー・ピーターソン 「WE GETS REQUESTS(邦題:プリーズ・リクエスト)」
それぞれジャズピアノ界を代表する名プレイヤーとして知られていて、バド・パウエルは古き良きビバップスタイルのサウンドが、アート・テイタムは遊び心あふれる大胆な演奏が、オスカー・ピーターソンは「鍵盤の皇帝」と称されるほどの超絶技巧が魅力となっています。
さまざまなタイプのジャズピアノの名演を知るには、この3枚で間違いありません。
ジャズギターの名盤3選
ロックやポップスでおなじみのギターは、ジャズの世界でも大活躍してきました。そんなジャズギターのサウンドが印象的な名盤が、こちらの3枚。
- バーニー・ケッセル 「The Poll Winners」
- ジョー・パス 「Virtuoso」
- ビル・フリーゼル 「When You Wish Upon A Star」
「The Poll Winners」では「これぞジャズギター」という王道の聴きやすいプレイを、「Virtuoso」では全編ソロギターによる圧倒的なテクニックを、「When You Wish Upon A Star」では往年の大衆音楽をジャズアレンジしたセンスを体感できます。
この3枚を聴けば、ジャズギターを多角的な視点から知ることができます。
ジャズサックスの名盤3選
サックスと言えば、ジャズバンドの中では花形ともいえる楽器です。
そんなサックスが主役となっている名盤の中でも一押しなのがこちらの3枚。
- チャーリー・パーカー 「Bird on 52nd Street」
- キャノンボール・アダレイ 「Somethin’ Else」
- ポール・デズモンド 「Time Out」
チャーリー・パーカーはモダンジャズにおけるサックスの元祖とも言える存在で、「Bird on 52nd Street」はその全盛期の作品のひとつです。
キャノンボール・アダレイはファンキーで破天荒なプレイヤーとして知られていて、「Somethin’ Else」はジャズの歴史に残る名盤として高く評価されています。
ポール・デズモンドは同時期に活躍したパーカーやアダレイとはまた違った繊細なプレイングで話題を集めたサックス奏者で、「Time Out」はその最大の代表作として知られています。
どのアルバムも、現代ジャズにおけるサックスの基礎を築いた名盤です。
ジャズドラムの名盤3選
ジャズのリズムの要となるドラムにも、名盤とされる作品がいくつもあります。その中でも必見なのが、伝説的なドラマーとして知られるアート・ブレイキーの「Night in Tunisia」です。緩急のついたフレーズ展開で圧倒的なパワーを感じさせるドラムサウンドは、「これがジャズドラムの力だ」と見せつけられるようなインパクトがあります。
他にも、ケニー・クラークの「BOHEMIA AFTER DARK」もおすすめです。落ち着いた空気の中にもセンスが光るドラムプレイが披露されていて、渋く色気のある大人のジャズドラムを聴くことができます。
さらに、ジャズドラムを語る上で欠かせないのが、バディ・リッチの「Big Swing Face」です。鬼気迫るほどの超絶技巧で聴き手を圧倒するバディ・リッチのプレイスタイルが、このアルバムでは惜しみなく発揮されています。
ここで紹介した3枚を聴けば、ジャズドラムの力強さ、渋さ、速さをそれぞれ体感できるでしょう。
国内にもある。日本人ジャズの名盤
日本人にも、一流ジャズプレイヤーとして世界中で活躍しているミュージシャンは大勢います。その中でも特に有名なのが、ジャズピアニストの上原ひろみではないでしょうか。
独創的で自由な演奏スタイルが印象的な上原ひろみは、現代のジャズシーンを支える天才プレイヤーとして話題を集めてきました。
そんな上原ひろみの代表作が、アルバム「MOVE」です。上原の大胆なプレイングが惜しみなく披露されていて、さらにリズムを支えるアンソニー・ジャクソンとサイモン・フィリップスのグルーヴも大きな魅力となっています。
日本人の手から生まれたジャズの名盤として、必見です。
好きなようにジャズを楽しもう
ジャズの世界には「歴史に残る有名作から聴く」「グラミー賞を受賞した近年の話題作から聴く」「各パートごとに名演が光る名盤を聴く」など、さまざまな視点から入ることができます。
幅広い入り口からジャズに触れることで、自分に合ったジャズのタイプ、自分好みのサウンドがきっと見つかります。
名盤として広く知られる作品を手に取って、ジャズライフをスタートさせましょう。