プニプニと肉厚の葉や茎、ユニークな形状が特徴の多肉植物は、なぜか眺めているだけで癒されますよね。水やりのコツや置き場所などに注意すれば、初心者でも多肉植物の魅力を存分に楽しめます。育て方について解説します。
多肉植物はとても育てやすい植物
「観葉植物や花の苗木など、あっという間に枯らしてしまった」という悲しい経験を持つ人でも、育てやすい植物として知られているのが『多肉植物』です。そんな多肉植物とは、どんな植物なのかを知っておきましょう。
多肉植物とは?
アフリカ大陸などの熱帯地方を中心に世界中に分布している多肉植物は、2万種以上もあると言われ、強い乾燥にも耐えられるタフな植物です。
ぷっくりふっくらとした肉厚な葉や茎の中に、水分をたっぷりと含んでいるため、乾燥に強いのです。
その形状もさまざまで、丸みをおびているものや、角のようにツンツンと尖ったもの、細かい葉や茎が長く伸びるものまで実にバリエーションが豊富です。共通して言えるのは葉や茎が『肉厚』であるということです。
色も緑色や赤紫色、白っぽいものなどがあり、単色ではなく模様のあるものやグラデーションを描いているもあります。
種類によって生育期が3つある
独特な葉の形が特徴的な多肉植物は、種類によって生育期が違い、『夏型・冬型・春秋型』の3つに分けられます。生育期と特徴は次の通りです。
- 夏型:3月~11月が生育期。冬は休眠期。乾燥にとても強い
- 冬型:9月~5月が生育期。夏は休眠期。比較的耐寒性が強い
- 春秋型:2月~6月の春、9月~11月の秋が生育期。過ごしやすい気候を好む
生育期というのは、多肉植物がもっとも元気に成長する時期のことで、この時期がもっとも水を必要としています。自生地によって生育期や休眠期が違ってくるため注意が必要です。
逆に休眠期には水やりはほぼ不要ですが、育てている環境(気温、湿度)によって変える必要があります。
多肉植物とサボテンとの違いは
サボテンとは『サボテン科』に属する植物の総称で、南北アメリカに生息しています。
『多肉植物=サボテン』と思っている人も多いのですが、分類的には多肉植物の中の一種がサボテンというとらえ方になります。
そして多肉植物とサボテンにはその『見た目』にもはっきりとした違いがあります。
サボテンの場合、『刺座(しざ)』と呼ばれるトゲがあります。別名アレオーレとも呼ばれており、トゲの生え際には細かい綿毛を持っています。
トゲが退化してなくなっているサボテンもありますが、よく見るとアレオーレが残っているので違いがわかります。
また、多肉植物は世界中に分布しているのに対して、サボテンは南北アメリカに生息しているという違いがあります。
初心者におすすめの多肉植物4選
多肉植物は、観葉植物を育てることに自信の持てなかった初心者にも、比較的育てやすい植物です。
なかでも次に紹介する4つは『特に丈夫で育てやすい』という特徴があります。ファースト多肉植物としてぜひ選ぶ参考にしてみてください。
セダム属 虹の玉
ぶりっとしてつやつやの立体的な小さな葉は、まるで木の実のような美味しそうな見た目が特徴です。
『日当たりのよい場所に乾燥気味で育てる』と葉が赤く紅葉して、さらに木の実っぽさが強くなります。
落ち着いた色の多肉植物が多い中では珍しい、はっきりとした色合いが魅力です。寄せ植えのメンバーとしても欠かせない存在感です。
『根挿しで簡単に増やすことができる』のでとても人気があります。
- 御置き場所:日当たりの良い乾燥気味の場所(高温多湿は避ける)
- 水やりのコツ:春・夏はたっぷりと夏・冬はほぼ断水
クラッスラ属 金のなる木
古くから栽培されているので、名前を聞いたことのある人も多い多肉植物です。葉も茎も多肉質で寒さに強い品種です。晩秋ごろには花が咲くこともあります。
さまざまな品種があり、ゴーラム・黄金花月・桜花月などが代表的な金のなる木です。
水は土が乾いたら与え、冬は乾燥気味に育てましょう。
- 置き場所:季節を問わず日当たりの良い場所
- 水やりのコツ:土が乾いたら与える
ハオルチア属 十二の巻
縞々の模様が特徴で、アロエに似たような細長い葉の形をしています。独特の縞柄は単体でも存在感がありますが、単色が多い多肉植物の中に柄物である十二の巻が入ることによってアクセントになります。
葉がしっかりと硬い『硬葉系』で、成長がゆっくりな多肉植物なので、あまり増えたり伸びすぎたりするタイプが苦手…コンパクトに育てたいという人にピッタリです。
- 置き場所:春・秋は午前中だけ日光浴、夏は風通しの良い半日陰に
- 水やりのコツ:土がちょっと湿る程度の水を3週間~1カ月に一回程度
グラプトペタルム属 ブロンズ姫
日当たりの良い場所で乾燥気味に育てます。秋にはきれいな赤銅色(暗い赤味の黄)に紅葉しますが、季節や育つ環境によっては色がぼやけて緑色になります。
暑さに強く『日当たり命』の多肉植物で、葉がツンツンと先端が上に突き出しているのが特徴です。日光不足だと茎がだらんとして葉が痩せ、先端も垂れ下がってきてしまいます。
寒さにも強く休眠期でも0℃まで耐えられる種類です。低温の環境にいると、葉がブロンズ色に染まります。
- 置き場所:乾燥して風通しのよい屋外に置く。高い耐寒性があるが冬は軒下に移動する
- 水やりのコツ:夏は控えめ、冬は基本水なし。乾いていたらその日から数日後にあげる
水やりのタイミングと肥料の与え方
多肉植物は手間のかからない植物とはいうものの、水やりのタイミングを間違えてしまうと根腐れを起こし、枯れてしまいます。また、肥料の与え方についても紹介します。
水やりは土ではなく、葉の状態で判断
多肉植物の育て方を紹介しているサイトなどを見ていると、『土が乾いたらたっぷりの水を与えましょう』と書いてあるところがほとんどです。
そして、鉢植えの底にたまった水を根腐れ防止のために捨てるという流れです。
しかし、実際には土の乾燥具合だけでは、ベストな水やりのタイミングを誤ってしまうこともあります。
土の表面が乾燥していても、中にはたっぷりと水がある場合も多く、そのうえから水やりをすると当然、根腐れを起こしてしまいます。
そのため、健康な時に水をたっぷりと蓄えている『葉の健康状態』を確認することが大切です。
本来プニプニしているはずの葉のハリがなくなって痩せてきているのであれば、確実に水分が足りない状態になっていることがわかります。
生育期と休眠期であげる水の量を変える
生育期は多肉植物がもっとも成長する時期のため、基本的に水やりが必須です。対する休眠期には、根が土の水を吸い上げない時期なので、断水もしくは水の量には注意が必要です。
しかし、生育期だからと必ずたっぷりと水をあげ、休眠期には絶対にあげてはいけないというのではなく、育てている環境によっても調整が必要です。
生育期には比較的たっぷりと、休眠期でもしっかりと乾燥しているようであれば『葉水』をあげたり、『少な目』に水を与えたりするなどの対応が必要です。
肥料は基本的の必要なし
多肉植物を育てるにあたって、基本的には肥料は必要ありません。肥料よりも植え替えを適切に行うことによって成長はスムースに行くからです。
初心者が肥料を使うことによって多肉植物を育てることに失敗するケースも多いのです。
しかし、成長を早めたい場合には肥料を使うのもよいでしょう。その場合は効き目がゆっくりのタイプを選ぶようにして、肥料の与えすぎに注意してください。
多肉植物を置く最適の場所
多肉植物を元気に育てていくためには、鉢植えを置く環境にも気を配りたいものです。最適な場所で育てれば、葉ツヤもよく、生き生きと順調に成長していく様子を楽しむことができるのです。
日当たりと風通しの良い場所を好む
多肉植物は適度な日光浴が大好きです。あくまでも『適度』なものです。そのためには日光だけが当たっていればよいというものではなく、『風通しの良さ』もセットになっています。
多肉植物を置いている環境がどうしても風通しが悪いのであれば、サーキュレーターなどを置いて風を循環させるなどの工夫が必要です。
季節によって置く場所を移動
『多肉植物を置くのはココ』というように場所を固定している人がいますが、多肉植物は生きています。季節によって気温や湿度が変動する中で、『ベストな環境に移動』して育てることが必要なのです。
夏の直射日光を避けて室内に入れても、窓を閉め切っていては高温多湿の悪環境になってしまいます。その場合、ベランダで『すだれ』などを使って日陰を作ってあげた方がよい場合もあります。
冬は基本的に室内に入れて育てますが、日中の日差しがちょうどよい日などは屋外で日光に当てる時間があってもよいのです。
夏は直射日光を避け、明るい日陰へ
多肉植物は基本的に『適度な日光浴』を好みます。夏型の多肉植物であっても太陽がガンガン降りそそぐ直射日光は避けましょう。
直射日光に当てていると葉が日焼けしてしまい、黄色くなってしまいます。
逆に、日当たりが悪いと『徒長』というヒョロヒョロに伸びる不健康な状態になってしまいます。
夏場で日差しが強すぎる時には屋外の場合なら木陰に、室内に置く場合は、カーテン越しなどの明るいけれど日陰である『半日陰』に置きましょう
寒い冬は屋外に置かず室内で管理
冬も多肉植物の置き場所には注意が必要です。元々熱帯地域で生まれ育った多肉植物は、雪が降ったり、霜が降りたりするような過酷な寒さは苦手です。
冬型と呼ばれる比較的耐寒性の強い多肉植物でも5~10℃を下回った時には室内で育てるようにしましょう。
多肉植物の増やし方3つ
多肉植物を育てることの楽しみとして『増やす』ということがあります。多肉植物の子どもを増やすような感じで、より多肉に親しみを感じられるでしょう。
他の植物に比べて増やしやすいので、寄せ植えのバリエーションを増やしたり、友達にプレゼントしたりするのもおすすめです。
多肉植物の増やし方には、3つの方法があります。
葉を取って土に置く、葉挿し
『葉挿しをするのは春か秋』が適しています。夏は葉を取った傷口から病気が入りやすく、冬は生育が遅いため増やすことに向きません。
『葉挿し』は次のように行ないます。
- 葉の付け根からもぎ取り、明るい日陰で切り口を乾燥させる(一週間程度)
- 鉢に清潔な小粒の土を置き、その上に葉を並べる
- 直射日光の当たらない明るい日陰で管理する
- 半月~1カ月で発根し新芽が発生
- 土に軽く植え付けて完成
葉挿ししたすべてが発根するとはかぎりません。ので、複数枚の葉を用意して行いましょう。
剪定した部分を土に挿す、挿し木
成長して伸びてしまったものや、脇芽が伸びているものは、多肉植物の持つ本来の魅力的なフォルムが崩れて、見た目が残念になってしまいます。
また、鉢が倒れて壊れてしまうなどの被害にもつながるので、株の一部を切り取って発根させて増やす『挿し木』をおすすめします。
『挿し木』は次のように行ないます。
- 芽や株を切り取った一部の『切り口』を3~4日乾燥させる
- 水はけのよい土に挿す
- 水はすぐにあげず、一週間から10日後に与える
根からカットする、株分け
葉刺しや挿し木と違い、『根ごと』取って使うのが株分けです。鉢植えの根が込み合い過ぎるのを防ぐためにもおすすめの方法です。
株分けは、必ず土が乾いている状態で行うことが大切です。湿った土の状態の時は避けましょう。
『株分け』のやり方は次のようにします。
- 土を乾いた状態にするため、1~2週間前から水やりを控える
- 水はけのよい土と、消毒したハサミを用意する
- ハサミでカットしたものを清潔な新しい土に植え付ける
- 水は4~5日後くらいにたっぷりと与える
多肉植物につく害虫と予防方法
手入れが簡単だと言われている多肉植物にも、害虫がついてしまうことがあります。多肉植物に付きやすいと言われている主な害虫と、予防方法について紹介します。
主な害虫
多肉植物に付きやすい害虫は、『乾燥しているところ(土)が好きで水が苦手』なものと『じめじめした湿気の多い場所が好き』なものに分けられます。
乾燥を好む害虫は、カイガラムシ・ハダニ・ネジラミなどです。多肉植物の成長のためには乾燥した環境にすることが多いのですが、その反面でこれらの害虫に狙われることがあります。
逆に、じめじめと湿気があって通気性の悪い場所に多く発生するのが、ナメクジやアブラムシです。
これらは多肉植物を置いている環境が締め切った風通しの悪い高温多湿状態などになっていると登場します。
予防と対策
乾燥している土(場所)が好きな害虫とじめじめが好きな害虫とでは、予防も対策も違ってきます。主な害虫別に対処法を紹介します。
まずは予防策から紹介します。
- カイガラムシ:通気性を良くし、水分も与える。
- ハダニ:雑草からハダニが発生しやすいので雑草を除去。灌水して湿度を保つ。
- ネジラミ:成長期なのに成長が止まっていないかチェック。灌水してみる。
- ナメクジ:コーヒー殻を撒く、竹酢酸や木酢酸を撒く、椿油粕を土に混ぜる
次に対策です。基本的に『見つけたら即退治』が鉄則です。カイガラムシなどは消毒用アルコールを塗布したピンセットやブラシなどで取り除きます。専用のスプレーも発売されています。
ハダニやアブラムシは水にとても弱く流されやすい性質があることから『水攻撃』で解決することも多いですが、ハダニはダニ専用スプレーなどでしっかり駆除してしまうのもよいでしょう。
ナメクジはビールが好物なので、ビールに殺虫剤を混ぜたもので誘引&捕殺しましょう。
男性の部屋にも合わせやすい鉢
多肉植物を部屋に置くのはよいけれど、ファンシーな雰囲気のものや、女子っぽいデザインの鉢は男性の部屋では浮いてしまいます。シンプルでスタイリッシュなものや、無骨な雰囲気もあわせもつ、ナチュラルな鉢がおすすめです。
陶器ミニ植木鉢 スプライス六角形
陶器製の六角形で作られた、艶消し仕上げのマットなカラーがおしゃれでスタイリッシュなミニ植木鉢です。
安定感に優れた六角形の底面で、大きさは使いやすい小ぶりなものの、廊下や窓台、庭にもすんなりとマッチします。白・黒・灰・灰緑色の4色セットで、捨て色のないシックで使いやすいラインナップです。
- 陶器 ミニ植木鉢 スプライス六角形
- 価格:3293円(税込)
- Amazon:商品ページ
イタリア生まれのテラコッタ鉢をホワイト・グリーン・ベージュ・ブラウンに塗装したミニサイズの鉢の4色セットです。
鉢には『庭師』を意味する『LE JARDINIER』や、『1935年設立の庭』を意味する『Jardin est.1935』、『自然への愛』を意味する『PAR AMOR DE LA NATURE』と書かれています。
通気性が良く水はけのよいテラコッタ素材は、根腐れを起こしにくいので多肉植物を快適に育てやすいでしょう。80mm×80mmという手ごろサイズで棚にもお洒落に収まります。
- GREEN HOUSE Petit Terracotta 3366-A
- 価格:1426円(税込)
- Amazon:商品ページ
ブリキ缶等を使って自作も楽しい
おしゃれなカフェなどで見かける、ブリキ缶に入った多肉植物は無骨でナチュラルな雰囲気が男性からも人気です。このブリキ缶の鉢植えは、自分で手作りすることができるのです。
『ブリキ缶の鉢植え』を作るときのポイントは、売られているままのピカピカの状態ではなく、あえて傷をつけたりお酢を薄めた水にブリキ缶を漬けたりして輝きを抑えて『シャビー』な印象にすることです。
ブリキ缶の底には、釘や千枚通しを使って数か所、水はけのための穴を空けてから使うことを忘れないようにしましょう。
屋外に置いて使ううちに錆やダメージが進んでいきますが、それもまた味わいが出て楽しいものです。
観葉植物を置いて部屋を癒し空間に
個性的な色や形、質感が楽しい多肉植物は、とても育てやすい観葉植物です。忙しくて観葉植物どころじゃないという人にこそ、インテリアとしておすすめなのが多肉植物です。
水やりもほとんどいらず、通気性などに気を付ければ毎日生き生きとした姿が見られます。好きなデザインの鉢植えを置いて、いつもの見慣れた部屋を『癒しの空間』に変えてみませんか?