ルネサンスは何をもたらしたのか。イタリアからの展開と著名な作品

2018.07.31

14~16世紀より、イタリアを始めとした各地で芸術的な作品や、創造的な人々が活躍した時代『ルネサンス』とは何か知っていますか?ルネサンスについて、また代表作品や歴史概要についても紹介していきます。

ルネサンスとは

14〜16世紀にイタリアから始まり、ヨーロッパ諸国に広がっていった文化運動である『ルネサンス』ですが、その誕生や意味はどのようなものだったのでしょうか?

フランス語で再生を意味する

『ルネサンス(Renaissance)』はフランス語で『再生』を意味する言葉です。この言葉は、16世紀のイタリアの美術家ジョルジョ・ヴァザーリが、この時代に活躍した芸術家たちの伝記である『画家・彫刻家・建築家列伝』を書いたときに使用したものです。

ジョルジョ・ヴァザーリは、様々な分野の『天才たちが活躍した時代』を、かつてのギリシア・ローマ時代(古典古代)に生まれた芸術の『再生』や『復活』と捉えたのです。

ヒューマニズムの誕生

ヨーロッパの諸国で展開されていった、人々の精神の全面的な改革を目指すこのルネサンス運動は、芸術面だけではなく、人々の生き方をも変えていきました。

ギリシア・ローマの古典文化の再生により、人々の自らの品性を高め、人間らしい生き方を追求する『ヒューマニズム(人文主義)』が誕生します。

これにより、現実主義が広まり、中世の支配的観念だった『カトリック思想』を打破することとなりました。

ルネサンスの解釈の多様性

ルネサンスは人間精神を開放した時代 であり、個人の自由が認められ、世界とそれぞれの人間について近代的な理解が得られ始めた時代と言われています。

しかし、これは数ある解釈の内の1つで、歴史学研究の中ではルネサンスの概念に否定的な意見もありました。

  • ルネサンスの起源は中世にまで遡り、14~16世紀と近代とで区別することはできない
  • 中世から現代までの連続性に位置づけられる
  • ルネサンスは中世的なものと近代的なものが調和を保っていた時代である
  • ルネサンスは中世の範囲内に入れることが出来る

このように、ルネサンスの概念は多様に解釈されることがあるのです。

世界史としてのルネサンス

それでは、世界史としてのルネサンスとはどのようなものだったのでしょうか?

イタリアから展開したルネサンス

ルネサンスの始まりはイタリアの都市と言われています。当時のイタリアは、数多くの都市国家や小君主国に分かれており、国家としてのまとまりはありませんでした。

地中海貿易に関わっていた『ヴェネツィア共和国』・『ジェノヴァ共和国』・『ピサ』等は海港都市と呼ばれ、13世紀頃から東地中海に進出します。

東ローマ帝国(現トルコ共和国)やイスラーム商人(イスラーム教徒で商業に従事する人々)と取引を行いました。取引では香辛料や当時の贅沢品をヨーロッパに輸入し、莫大な富を蓄えていたのです。

また、その他の都市も貿易が盛んに行われていました。

  • 毛織物工業が中心であった『フィレンツェ』
  • 金属加工業が有名な『ミラノ』
  • 絹織物で有名な『ジェノヴァ』
  • ガラス加工の『ヴェネツィア』

このように、それぞれが特徴ある貿易を行っていた為、貿易国家としてルネサンス期にイタリアは栄ました。

更に、フィレンツェ『メディチ家』の『銀行業』のように、イタリアはヨーロッパ全体を相手として活躍していました。その為、15〜16世紀のイタリアは、ヨーロッパの中で最も都市化した地域だったのです。

イタリアの都市内部では権力をめぐる争いが絶えず、外国勢力の介入を招きました。こういった政治情勢により、ルネサンス文化に大きな影響を与えたと言われています。

その他の地域のルネサンス芸術

イタリアと並び、北ヨーロッパ諸国でもルネサンス芸術が生まれました。ネーデルランドの『フランドル地方』では、毛織物工業や貿易によって生まれた豊かな経済力を背景に優れた文化を生み出していきます。

ドイツでも、ルネサンスの芸術を代表する画家が活躍していました。独特の官能性を表現した『ルーカス・クラナッハ』、銅版画などに多くの傑作を残した『アルブレヒト・デューラー』が代表的な画家として有名です。

イギリスでは、国民文学の開拓者と言われた『ジェフリー・チョーサー』が、大聖堂を訪れる人々の個性を『カンタベリー物語』で描きました。

スペインでは、時代遅れの騎士道を夢見て世界を旅する騎士の物語『ドン・キホーテ』を書いた『ゲル・デ・セルバンテス』が有名です。

代表的なルネサンス期の文学

ルネサンス期には、多くの芸術家たちや学者などが現れ、権力者だけではなく市民の中でも個性的な人物が活躍しました。それぞれの個性や、その人自身の価値が自覚されたことがルネサンスの特徴と言われています。

神曲

中世の神学の教えである、煉獄や地獄に落ちた人々の『生』を記した作品が、ダンテ・アリギエーリの『神曲』です。地獄篇、煉獄篇、天国篇の3部構成の長編の叙事詩で、イタリア文学最大の古典といわれています。

中世で、文章を記載する際に一般的であった『ラテン語』ではなく、俗語であったイタリアの『トスカナ語』で書かれた、当時では珍しい書物です。

デカメロン

ギリシア古代研究科であった、近代小説の祖とされるジョヴァンニ・ボッカッチョはこの『デカメロン』の執筆により一躍有名となりました。この作品では、世に生きる人間の姿を生き生きと面白く描かれています。

カンツォニエーレ

フランチェスコ・ペトラルカが、ラウラという女性への恋愛を謳った叙事詩集である『カンツォニエーレ』は、ラテンの文学に傾倒していたペトラルカの学識と文才を世に認めさせました。

ラウラという女性については、現在でも実在していたのかは明らかにされていません。ですが、この作品以降もこのラウラという女性について、ベトラルカは数多くの作品を執筆しています。

ペトラルカのように古典研究の学者であリ、人間やその生きる世界についての観察や洞察を行っていた人々は『ヒューマニスト(人文主義者)』と呼ばれました。

君主論

フィレンツェの外交官であったニッコロ・マキャヴェリが書いたのが『君主論』です。混乱していたイタリアの政治世界に生きていたマキャヴェリは、人間や政治の本質を見極めるべくローマの歴史を研究し、更に現実を冷静に分析しました。

近代政治学の祖とも言われているマキャヴェリですが、その一方で目的の為には手段を選ばないという意味の『マキャヴェリズム』という言葉としても、彼の名は用いられています。

代表的なルネサンス期の建築物

イタリアといえば有名な建築物が数多く存在しますが、ルネサンス期の建造物がどれなのか皆さんはご存知でしょうか?代表的なルネサンス期の建造物を紹介します。

サンタ・マリア大聖堂

イタリアのフィレンツェのシンボルといわれている『サンタ・マリア大聖堂(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)』は、ルネサンス期の代表的なゴシック建築の建造物の1つで、石積み建設のドームとしては現在でも世界最大の建造物です。

この大聖堂の、巨大な円蓋の屋根を設計したフィリッポ・ブルネレスキは、ルネサンスを代表する建築家でした。

また、サンタ・マリア大聖堂付属の洗礼堂である『フィレンツェ洗礼堂』の聖堂門扉の浮彫を行ったロレンツォ・ギベルティは、 遠近法を使用した構図でルネサンス彫刻を推し進めました。

サン・ピエトロ大聖堂

キリスト教の教会建築の中では世界最大級の大きさである『サン・ピエトロ大聖堂』は、当時の第一級の芸術家たちが携わりました。

主任建築家であったドナト・ブラマンテは、画家として修業したのち、建築家となりました。これはブラマンテに限ったことではありません。当時は芸術家と職人は別の職業ではなく、建築・絵画・彫刻のどれもに携わるのが当たり前だったのです。

サン・ピエトロ大聖堂は、当時ローマ帝国の皇帝であったコンスタンティヌス1世により、聖ペテロのものとされる墓を参拝するための殉教者記念教会堂として建設されたものであるとカトリック教会の伝承では言われています。

代表的なルネサンス絵画

ルネサンスの絵画といえば、誰もが1度は聞いたことがあるであろう有名な作品が存在します。ルネサンス期ならではの個性豊かで人間性溢れる作品が多いのが特徴です。

モナ・リザ

『モナ・リザ』の作者であり、ルネサンスを代表する芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチは、画家であり、科学者でもありました。彼の作品は数多く残されており、そのほとんどが人間や自然を観察した素描でした。

また、解剖学や諸科学の分野の観察、更には応用を行い、その技法は彼の探究心を表しています。ルネサンスの典型的な万能人であると言えるでしょう。

サンタ・マリア大聖堂にある絵画、『最後の晩餐』もレオナルド・ダ・ヴィンチの有名な代表作の1つです。

最後の審判

最も栄えていたルネサンス期の代表、ルネサンスの象徴とも言えるこの『最後の審判』は、ミケランジェロ・ブオナローティが描いた作品です。この作品はバチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂の祭壇に描かれたフレスコ画です。

ミケランジェロは、ローマ教皇に仕えていた彫刻家です。彼はその多才さから、レオナルド・ダ・ヴィンチと並んで、ルネサンス期の典型的な『万能人』といわれています。

さらには画家・建築家でもあります。彼の個性、そして強い意志、あふれる才能は、彼が残した作品に彩り豊かに表現されています。

アテネの学堂

ラファエロ・サンティが作成したこの『アテネの学堂(アテナイの学堂)』は、有名な古代ギリシアの哲学者達を描いた作品です。

ラファエロ・サンティは、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの芸術を学び、天才的技法、そして完成された調和を表す作品を多く生み出しました。

多数の優美で繊細な聖母画、バチカン宮殿にある壁画などを残し、ダヴィンチやミケランジェロと並びルネサンスの『三大巨匠』のうちの1人として数えられています。

代表的なルネサンス期の美術作品

ルネサンス期には、数多くの有名な彫刻も残されています。中でも有名で印象的な作品を紹介します。

ガッタメラータ騎馬像

ルネサンスの伝統であるゴシック様式を打ち破る『実写主義』を導入したドナテッロが市政府により委託されて制作したのが『ガッタメラータ騎馬像』です。

この作品は、ルネサンス期最初の青銅騎馬像の傑作といわれています。イタリア、パドバのピアッツァ・デル・サントにこの立っているこの彫刻は、傭兵隊長エラスモ・ダ・ナルニ将軍の記念像です。

ダヴィデ像

フィレンツェのアカデミア美術館に展示されている『ダヴィデ像』は、ミケランジェロが1501年から制作を開始し、1504年9月8日に公開した彫刻作品です。

ルネサンス期の中でも最も卓越した作品の1つといわれており、人物の力強さ、美しさの象徴とも言われる作品です。現代でも芸術の歴史における最も有名な作品の1つとされています。

また、銅像の瞳がハート型に彫られていること、イスラエル民の証といわれる割礼の痕がないことがルネサンスならではの表現として使用されています。

イサクの犠牲

旧約聖書の『創世記』22章1節から19節にかけて記述されているアブラハムの逸話で、彼の前に立ちはだかった試練の物語を題材にして制作された彫刻である『イサクの犠牲』。

この作者は鋳造技術においては並ぶ者のない腕前であったロレンツォ・ギベルティが作ったものです。

アブラハムが不妊の妻サラとの間に、年老いてからやっと授かった愛おしい存在である一人息子イサクを、生贄に捧げるよう、彼が信じる神によって命じられるという悲劇の瞬間を生々しく表現した作品です。門扉見本競技で争った末、ロレンツォ・ギベルティが門扉製作依頼の契約を交わしました。

代表的なルネサンス音楽

ルネサンスの音楽とは、15世紀~16世紀ごろの音楽のことです。中世の音楽は『単旋律無伴奏(モノフォニー)』でしたが、ルネサンスの音楽は『複旋律無伴奏(ポリフォニー)』の音楽が主でした。

また、中世の音楽とルネサンスの音楽を合わせ、『アーリーミュージック』と呼ばれることもあります。代表的なルネサンス音楽を紹介します。

ピアノとフォルテのソナタ

音楽史的に非常に重要で、現代でも演奏頻度が高い『ピアノとフォルテのソナタ』は、ガブリエーリの作品です。ルネサンス音楽であるこの楽曲は、16世紀のイタリアの教会で演奏されていたものでした。

当時は音楽的な強弱の効果を考えるということが少なく、この作品は強弱のもたらす効果を示した、ごく初期の作品です。題名にある通り、曲の中での強弱が明確に表れています。

楽譜は読める人からしたら一見簡単そうに見えますが、強弱の切り替えが難しく、トランペットなどではコンテストの課題曲になることも多い作品です。

教皇マルチェルスのミサ

イタリア・ルネサンス後期の音楽家であるジョヴァンニ・ダ・パレストリーナが作曲したカトリック教会のミサに使用される楽曲が『教皇マルチェルスのミサ』です。

パレストリーナは、賛美歌や聖歌、祭礼などに用いられる曲(カトリックの宗教曲)を多く残していることから、『教会音楽の父』ともいわれています。彼が作曲した作品は、ミサ曲は100以上も残されています。

『教皇マルチェルスのミサ』は、多くのミサ曲と同じく6声体の合唱曲で、16世紀の典型的な声部進行による作品と評価を受けています。今日まで多くの合唱団に歌い継がれている有名な曲で、トリエント公会議の中で定めらた、ミサや音楽に関する厳しい条件ですらもパスしたパレストリーナの代表作です。

アヴェ・レジーナ・チェロールム

ブルゴーニュ楽派の作曲家『ギョーム・デュファイ』が作曲したのがアヴァ・レジーナ・チェロールムです。

この作品は、『めでたし天の女王』という意味で、聖務日課(毎日のお参り)の『終課』で歌われる 4つの聖母マリアのためのアンティフォナの内の一つです。アンティフォナとは、聖歌などで合唱を2つに分けて交互に歌う歌い方のことです。

中世の音楽からルネサンスの音楽への転換のかなめともいえる音楽史上で極めて重要な作曲家であるギョーム・デュファイは、ミサ曲で同一のテーマを使って全曲を統一する『循環ミサ』という形式を確立させたことが大きな業績です。

知識があると観賞の深みが増す

ルネサンスは何をもたらしたのかについてと、ルネサンス期の代表的な作品をいくつか紹介しました。

ルネサンス期には数多くの有名で美しい作品が存在します。もちろん時代背景や作品の背景を知らなくても、それらの作品はとても魅力的に見える物です。芸術作品が好きな方ならそれはなおさらですね。

しかし、歴史や作品の詳細などの知識が事前にあるのとないのでは、感動も大きく違います。より観賞を楽しむためにも、ルネサンスについて理解を深めましょう。

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