鉄道時計の繊細な世界へ。日本と海外の鉄道歴史をたどろう

2019.04.24

鉄道が事故なく安全に運行されるためには、正確で使いやすい鉄道時計の存在が不可欠です。鉄道ファンだけでなく、時計愛好家にも人気の高い鉄道時計は、鉄道の歴史とどう関わっているのでしょうか。鉄道時計の歴史と魅力について探っていきましょう。

鉄道時計の基礎知識

早速、鉄道時計について知識を掘り下げていきましょう。鉄道と時計の関係性から、アートとも言えるその魅力に迫ります。

懐中時計の一種

懐中時計と聞くと、山高帽に仕立てのよいスーツを着たイギリス紳士が、胸ポケットから出して見るイメージがある人も多いのではないでしょうか?チェーンが付いていて、フタを開けて時間を見る仕草は、映画などでもよく使われています。

鉄道時計も懐中時計の一種として位置づけられており、強い磁気に対する強靱さや視認性の高さから、鉄道員に愛用されてきました。

鉄道時計というだけあって、秒単位で狂いのない時間合わせができます。

鉄道時計の部品の名前

一般的な鉄道時計は、実用性を高めるためにフタは付いていません。見やすいアラビア数字ではっきり表示され、長針・短針・秒針があります。

文字盤『12』の上に付いている突起が『竜頭(リュウズ)』で、時刻を合わせる場合には上に引っ張ることで長針が動くようになります。ゼンマイ式の場合は、この竜頭を巻いて時計の動力にします。

現在は、より正確さを求めるために現場ではクォーツ時計が採用されていますが、コレクションとしては手巻きのゼンマイ式もたまらない魅力があります。

トップレベルの日本の鉄道を支える時計

年間13万本の運行をしている東海道新幹線では、1年間の平均遅れが1分以下だといいます。世界に誇る時間の正確さを、一体どのように支えているのでしょうか。

なぜこんなに時間に正確なのか

元来、まじめで時間に正確な日本人ではありますが、鉄道の運行がここまで正確なのは、時計の技術と無関係ではないようです。

ことの起こりは1891年、アメリカ・オハイオ州で鉄道員の時計が4分遅れていたことが原因で列車の正面衝突事故が起きたことです。死者11名を出す大事故を機に、鉄道時計に統一性と正確さを求めるようになったのです。

日本でも初めはアメリカ製の鉄道時計を採用していましたが、1929年セイコーの懐中時計が発表されたことで日本製へと変わり、シンプルで狂いの少ない時計は現在においても運転士に愛用されています。

鉄道時計は鉄道員の相棒

旧国鉄時代から80年にわたり、鉄道の安全運行のために受け継がれてきた鉄道時計は、より誤差のないものにするため、現在はクォーツ式が採用されていますが、すべてをそぎ落とした無駄のないデザインはほとんど変わっていません。

運転士や駅員が持つ鉄道時計が、狂うことなく同じ時刻を示すことで、事故なく安全に、時刻表通りに多くの運行が行われているのです。

そんな鉄道員のなくてはならない相棒とも言うべきものが鉄道時計で、世界一の正確さを誇る日本の鉄道を長きにわたって支えています。

鉄道ファンに愛されるシチズン ホーマー

『国鉄モデル』『国鉄ホーマー』とも呼ばれるシチズンの鉄道時計も、国鉄職員に配られたもので、こちらは腕時計でした。

市販品と違うのは、時刻合わせをする際に秒針が止まる『ハック』機能です。

1秒の狂いもない運行は、この鉄道員全員が秒までまったく同じ時刻を指す鉄道時計のおかげなのです。

国鉄から支給されたものには、裏に製造年や管理局の刻印があり、鉄道ファンを萌えさせています。

中には、オークションで落札して自分でオーバーホールしてしまうという鉄道ファンもいて、奥の深さが伺えます。

海外の鉄道時計事情

鉄道とともに、時計技術も欧米が先進国でした。海外の鉄道時計事情を紹介します。

アメリカの歴史と時計精度の関係

1850年代、アメリカの時計産業は懐中時計の一時代を築きました。日本ではあまり知られていませんが、アメリカの懐中時計の品質の高さと様式の美しさは、スイスの高級ブランドにもひけをとりません。

このアメリカの懐中時計のレベルの高さは、鉄道と深い関係があります。

当時アメリカ全土に張り巡らされていた鉄道は、産業や生活の基盤であり、前述した1891年のオハイオ州で起きた鉄道事故によって鉄道時計の厳しい規格が定められたのです。

それは、視認性を上げるためにオープンフェイス(フタなし)にし、白い文字盤に黒で太いアラビア数字を使用、針は太く黒いものを使用しました。

機能面では、1週間に30秒以内の誤差、秒単位調整が可能なこと、竜頭の位置は12時など、これまでの規格からするとかなり細かく厳しいものでした。

以後規格は変化しましたが、『レイルロードグレード(鉄道時計のグレード)』といえば、精度の高い時計を意味するようになりました。

スイスの鉄道のSTOP to GOとは

時計と言えば『SWISS MADE』というくらい、スイスの時計は性能、デザインともに評価されています。

スイスの駅構内にも備え付けられている鉄道時計は、秒針の先が赤い丸になっているのが特徴的です。秒針は、1周ごとに12の位置で約2秒止まり、その間に分針が1分進むのです。

これは『STOP to GO』と呼ばれるもので、秒針がストップしている間に時間の補正を行っているのです。毎分行うことによって、時間の正確さを保ちつつ、人の目をも楽しませる演出といってもよいでしょう。

機能性とデザイン性を両立させたスイスの鉄道時計は、現在に至るまで世界中の鉄道時計に大きな影響を与えました。

時計ファンが集うセイコーミュージアム

日本の時計を語るのに、セイコーはなくてはならない存在です。創業から続くセイコーの歴史と、アメリカの鉄道時計が見られるセイコーミュージアムを紹介します。

アメリカの鉄道時計が見られる

日本の鉄道時計として最初に採用されたのはアメリカ製でした。スイス製に勝るとも劣らないアメリカ製の鉄道時計は、1891年の大事故をきっかけに厳しい規格基準を設け、そのためにアメリカの鉄道時計の精度は非常に高くなったのです。

セイコーミュージアムでは、貴重な二つのアメリカの鉄道時計を見ることができます。

ハミルトン社の鉄道時計

ハミルトン社のルーツは、1874年アダムス&ペリーウォッチ時計製造会社でした。その後、1892年にハミルトン社になりました。

同年の大事故により規格が厳しくなり、ハミルトン社はいち早くその規格をクリアして鉄道時計として広く愛用されました。

視認性や精度の高さもさることながら、その耐久性で鉄道時計の歴史を刻んできたハミルトン社の逸品をご覧ください。裏面の彫刻にも注目です。

ウォルサム社の鉄道時計

ウォルサム社も、厳しい規格を早くクリアした鉄道時計の一つです。

日本でも1897年から旧国鉄の作業局に鉄道時計として採用され、1929年にセイコーが採用されるまで日本の鉄道時計として使われていました。

1860年に当時のアメリカ大統領ブキャナンから日本の使節団にウォルサム社の懐中時計が寄贈され、知られるようになりました。

  • 施設名:セイコーミュージアム
  • 電話番号:03-3610-6248
  • 住所:東京都墨田区東向島3-9-7
  • 開館時間:10:00〜16:00
  • 休館日:毎週月曜日(祝日・年末年始を除く)
  • 公式HP

鉄道時計はどこで販売している?

シンプルで精度が高く、信頼性の高い鉄道時計は、今でも鉄道員に実用されています。時計愛好家にも人気が高い鉄道時計は、どこで販売されているのでしょうか?

セイコー取り扱い店

セイコーの直営店、ウォッチサロンなどの正規販売店でセイコーの鉄道時計が販売されています。

重さや大きさ、持った感じなど、やはり実物に触れてみるのがよいでしょう。

鉄道時計によっては扱いのない店舗もあるため、自分の欲しい時計の扱いがあるのかあらかじめ確認しておくことをおすすめします。

中古ショップやオークション

鉄道ファンなら、国鉄で支給されていた刻印入りのアンティークが欲しいと思うことでしょう。

ネットオークションでもときどき販売されていますし、中古ショップやアンティークショップのサイトでも鉄道時計は取り扱われています。

これらのサイトでは、時計愛好家や鉄道時計ファンが綴った、鉄道時計に関する情報も読むことができるので、鉄道時計の知識を増やしながら、掘り出し物を見つける醍醐味も味わえます。

鉄道時計はどのように使う?

鉄道時計に魅せられ、入手した後の使い方を考えるのも楽しいものです。持ち歩いて実際に使うのか、コレクションとして収集するのかによって鉄道時計の選び方も変わってきます。

持ち歩く

その昔、懐中時計は『持ち歩くことができる時計』として画期的なものでした。

しかしながら、それなりの大きさがあるため、部屋の壁や馬車の中に吊して使っていたこともあるようです。

鉄道時計を持ち歩き、実用的に使いたいのであれば、懐中時計として内ポケットのある服を常に着る、バックの中に入れておく、など使うシチュエーションを考慮してみましょう。

シチズン製のアンティークであれば、腕時計なので持ち歩きには心配ありません。

置き台に飾る

鉄道時計を部屋に飾り、コレクションとして眺めるのもファンとしては最高のひと時です。しかし、正確無比な鉄道時計だからこそ、部屋に置いて本来の時計としての役割を担ってもらうのはいかがでしょうか?

まるで電車の運転台のような、鉄道時計がピッタリ収まる置き台に飾れば、ちょうどよい角度で視認性もバッチリです。

飾りながら時計としても使うことで、鉄道時計をより一層身近に感じることでしょう。

鉄道と時の世界に魅せられて

日本の鉄道が時刻表に正確に運行されているのは、時計の歴史と切っても切れない関係がありました。

鉄道時計に支えられた日本の鉄道の正確さは、今日もわたしたちに快適で安全な暮らしを与えてくれています。

鉄道員が実際に使った鉄道時計に魅せられ、狂いのない正確さを求めて鉄道時計を手にする人もいるでしょう。

120年以上も受け継がれてきた鉄道時計は、鉄道ファンのみならず、時計愛好家をも魅了してやみません。

これからも鉄道時計は、無骨なまでにチクタクと、その正確な時を刻んでいくことでしょう。

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