レストランではソムリエがワインを注いでくれますが、自宅にお客様を招く時はあなたがホストとしてワインを注ぐことになります。ただワイン好きでも正しい注ぎ方を意外と知らないもの。そこでお客様をスマートにもてなす正しい注ぎ方とマナーをご紹介します。
ラベルの向き、量は?注ぎ方の基礎知識
ワインはデリケートな飲み物。注ぎ方によって、味や風味が微妙に変化することもあります。あまり堅苦しく考え過ぎる必要はありませんが、せっかくのワインをおいしく飲むために、正しい注ぎ方の基本を知っておいて損はありません。ワインを注ぐ際のラベルの向きや量、作法にはそれぞれ意味があるので、そこをちゃんと理解しておけばスマートに振る舞うことができます。
ワインボトルの正しい持ち方
ワインのプロであるソムリエは片手でボトルを扱いますが、開けたばかりのワインは1.5kg近くもあるので、無理に片手で持つ必要はありません。利き手でボトルの底近くを持ち、もう一方の手を下から添えて支えましょう。
両手で持ってもマナーとして問題はありません。何よりボトルを落としたり、中身をこぼしたりしないことの方が大事だからです。どうしても片手で持ちたい場合は、ボトルの底をしっかり持つか、底のくぼみに指を入れて安定させるようにしましょう。
そしてボトルを持つときは、必ずラベルを上に向けるのがマナー。そこには「確かにこのワインを注いでいます」という意思表示とともに、しずくが垂れてラベルを汚すのを防ぐという意味もあります。
注ぐときの適切な量は?
注ぐときの適切な量は、ワイングラスの3分目辺りが基本。ワインは香りを楽しむ飲み物でもあるので、良かれと思ってたっぷりと注ぎ過ぎると、グラスの中で香りが膨らむ余地がなくなってしまうからです。
ただし量が少な過ぎるとすぐにワインの温度が上がってしまい、味と香りに影響するので注意しましょう。
目安はグラスによって変わる
注ぐ量の目安はグラスによっても変わります。世の中には様々な形状や大きさのワイングラスがありますが、チューリップのように飲み口がすぼまり、真ん中辺りがふっくらと丸みを帯びた形が一般的なので、その最もふくらんだところまで注ぐのが一つの目安です。
トーションとは?用語と正しいマナーを紹介
基本的な注ぎ方を知るだけでなく、いっそソムリエ気分で本格的に注ぎたいという方なら、ぜひ用意しておきたいのがトーションです。トーションとは、レストランなどでソムリエが腕に掛けている白いナプキンのこと。トーションが一枚あれば、ワインを注ぐ場面で何かと重宝します。
トーションの使い方
トーションが最も活躍するのは、ワインを注ぎ終えるときです。注いだ後にトーションで注ぎ口を軽く拭うと、液だれもなく見た目もスマート。万一テーブルにワインをこぼした際にも、すぐに拭き取ることができるので安心です。
よく冷えた白ワインを注ぐとき、トーションの上からボトルを持つようにすると、手の熱がワインに伝わらないので味わいを損ねることがありません。
スパークリングワインの栓を抜くときも、ボトルの口をトーションで覆いながら留め金を外すとコルクが飛ばず、吹きこぼれた際もスムーズに対処できます。また、泡が落ち着くのを待つ間に注ぎ口をトーションで拭えば、液だれを防いで注ぎやすくなります。
女性が注ぐのはマナー違反?
ワインのマナーでは、原則として女性はワインを注がないとされています。古くはワインは男性から女性へ注ぐものであり、女性が注ぐのはマナー違反と考えている人もいます。ヨーロッパでは、女性でワインを注ぐのは娼婦だけ、という古風な考え方をする人もいるほどです。
とはいえもちろん現代においては、そのルールはあまり厳格ではありません。高級レストランなど厳格なマナーを要求されるシーンを除き、注ぎ慣れていれば女性でも注いでOKです。注ぎ慣れていなくて不安、という方は、下の方法を参考にしてみてください。
レストランの場合
高級レストランでは女性に限らず、ワインの扱いはソムリエかお店の方に任せましょう。グラスが空になったら、手を挙げて「注いでください」とお願いすればOKです。
ただし気軽なビストロなどでは、一杯目だけをお店の人が注いでくれて、二杯目からは客にお任せという場合もよくあります。そんなときは男性がソムリエ役となり、女性のワイングラスが空のままにならないよう、きめ細かく目配りすることが必要です。
なお注ぎ足すタイミングは、グラスが空になった後でも構わないのですが、できれば少量残っているタイミングで注ぎ足すのが理想的です。
パーティの場合
気心の知れた相手とのホームパーティでも、ホスト役が夫婦やカップルの場合は、できるだけ男性が注ぐように配慮しましょう。もちろん、ホスト役が女性しかいない場合は仕方がないので、手の小さい女性はボトルの取り扱いにくれぐれも注意してください。
また男女を問わず、ワインに関してはビールや日本酒のように注ぎ合ったり、手酌をしたりするのはマナー違反なので、やめておく方が無難です。
泡はどうする?ワインの正しい注ぎ方
テーブルに複数の男女がいる場合、注ぐ順序はレディーファーストとなります。
そして、ワインはグラスをテーブルに置いたまま注ぐのが正しいマナーなので、ついグラスを手に取ろうとした方がいれば、「置いたままで構いませんよ」とさりげなく伝えてあげましょう。
赤ワイン、白ワイン
赤ワインも白ワインも注ぎ方は同じ。注ぎ口をグラスから1〜3cm程度離した状態でボトルを少しずつ傾けながら、泡が立ったり滓(おり)が舞い上がったりしないよう静かにゆっくりと注ぎましょう。そうすることで、しずくがグラスに伝わらずきれいに注ぐことができます。
そしてテーブルの上にグラスが大小二つ用意されている場合は、大きめのグラスが赤ワイン用、小さめの方が白ワイン用です。
赤ワインのグラスが大きめなのは、空気に触れる面積を増やして香りを楽しみやすくするため。一方白ワインは冷やして飲むものなので、小さめのグラスにすることで冷たい温度が保ちやすくなります。
スパークリングワイン
泡のあるスパークリングワインは、細長く背の高いフルート型のグラスを使うのが一般的で、グラス6分目の位置が注ぐ目安となります。
上手に注ぐためのコツは「2回」に分けること。一気に注ぐ泡が立ち過ぎて、結果的に少量しかグラスに残らないからです。1回目でグラス8分目辺りまで注ぎ、泡が収まった頃に2回目を静かに注げば上手く適量に収まります。
こぼさないようにするコツは?
勢いよく注ぎ過ぎると、中身が泡立ったり飛び散ったりするので要注意。軽くボトルを回しながら少しずつ注げば、音が立たず静かに注ぐことができます。
そして注ぎ終わってボトルをグラスから離す際は、少しひねるようにして持ち上げてください。そうすることで、ボトルからしずくが垂れるのを防ぐことができます。
こぼしたときの対処法
どれほど慎重に振舞っても、テーブルにワインをこぼしてしまうことはあるでしょう。ただ、テーブルクロスは、そもそも汚れからテーブルを守る役目なので、そこは割り切って深く気にしないこと。ただし時間が経つとシミになって落ちにくくなるので、濡れたティッシュでワインを取り除くなど早めに処置をするようにしましょう。
正しいマナーとコツを理解すれば簡単に実践できる
ワインの注ぎ方は一見難しそうに思うかもしれませんが、正しい知識とマナー、コツを理解すれば誰でも簡単に実践することができます。この記事をぜひ参考にして、注ぎ方に迷うことなく、スマートな立ち居振る舞いをしてください。