大相撲の取り組みはだれが・どう決める?取り組み前の儀式も解説

2019.04.04

神聖かつ厳格な相撲の世界。力士同士の対決は「取り組み」と呼称されます。相撲好きならばその日の取り組みをチェックして気になる力士の一番を見逃さないようにしたいものです。ところで「取り組み」はどのようにして決められているのでしょうか?本稿ではそんな大相撲の取り組みについて詳しく解説します。

大相撲の取り組みとは

相撲業界最大の興行である大相撲。冒頭でも述べた通り、相撲同士の試合は「取り組み」と呼称されています。

相撲は歴史長く、奥が深い競技です。試合の組み合わせを決めるだけでも、様々なルールが存在しているのです。そのルールを把握することで相撲の取り組みの捉え方も大きく変わってくるはずでしょう。

ここからはそんな大相撲における取り組みについて詳しく解説します。

「本割」とは本場所の取り組み

大相撲の取り組みをあらわすときによく使われる表現に「本割(ほんわり)」というものがあります。

この言葉は、「取り組み」とほとんど同義といってもよいのですが、「本割」といったときには特に『大相撲本場所における、正規の取り組み』といったニュアンスが含まれます。後々に力士の番付における出世降格を決定する会議ではこの本割の成績が加味されます。

本割を決定することを「割(わり)を組む」と言います。相撲業界では「本割」とは呼称せず「割」とだけ呼称するのが一般的です。単純にいうならば、本割は相撲、ひいては力士にとって最も重要な取り組みを示す言葉なのです。

「割を壊す」「割り返し」とは?

大相撲において本割の関連用語として使われる「割を壊す」や「割り返し」とはどういう意味なのでしょうか?

重要な取り組みの場である本場所は、同時に重要な興行の場でもあります。毎場所の終盤には、横綱や大関といった番付上位者同士の取り組みが行われるのが通例になっており、この一番を楽しみにしているという客も多いでしょう。

しかし例外的に、この慣習を崩し、番付上位同士の対決が消滅することがあります。どういう場合かというと、『格下である力士が勝ち越し続けて優勝争いに参戦してきている場合』がこれにあたります。このような措置を「割を壊す(崩す)」と言います。

なぜ割を壊す?

なぜ「割を壊す(崩す)」必要があるかというと、たとえば割の関係上、横綱や大関と戦わずして勝ち星を積み重ねた格下力士が優勝してしまったらどうでしょう?

ほかの横綱や大関たちはトップクラスの相手と戦っているにもかかわらず、格下力士はそうした戦いを経ずして優勝してしまうことになります。これではどうもしっくりこないですよね。

こうした状況を避けるために、格下力士が勝ち星を積み重ねている場合は割を崩し、横綱や大関といった強敵との取り組みを設定することで、すっきりと気持ちのいい優勝争いができるようにするのです。

また、一度決まった本割を力士の事情によって組み替える事態のことを「割り返し」と呼びます。かつては滅多にないものでしたが、選手生命を第一に考えるようになった現代の相撲業界では時折起こる事態です。

大相撲の取り組みの決め方

取り組みのことが詳しくわかってきたところで、次に気になるのがその『決め方』でしょう。

力士一人ひとりの命運を分ける対戦カードの組み合わせは、力士はもちろんのこと、観戦する相撲ファンにとっても本場所の見方を大きく分ける要因の1つとなります。

この取り組みの決め方をある程度把握できればその場所ごとに自分だけの観戦スケジュールを組むことができるようにもなるため、相撲ファンにとっては必須の知識となります。ここからはそんな大相撲における取り組みの決め方について解説します。

だれが・いつ決めている?

重要な本場所の取り組み。これを決定しているのが日本相撲協会の審判部です。審判部は本場所ごとに設置される「取り組み編成会議」において取り組みの編成を決定しています。

いつ決まるかですが、実は場所が始まった時点で組み合わせは決定していません。初日と2日目までは事前に決めているのですが、3日目以降の取り組みについては、日程に並行しながらその都度取り組みの編成を行なっているのです。

そのため、その日・その場所においての力士のコンディションと兼ね合いを見ながら、面白い一番になるであろう編成を行うことができるのです。

どのように決めている?

次に重要なのは、どのような基準で決めているかでしょう。前述したように面白くなるであろう一番を組むのもその1つですが、基本的には協会によって定められた『取り組み編成要領』をベースにしています。

編成要領は本場所における総当たり戦に関する記述から、親戚同士の取り組みを避ける(出世がかかっている一番などで当たると八百長を疑われやすいため)などの理にかなった取り決めが記載されており、編成会議ではこのような事柄を踏まえながら進行します。そのため取り組み1つを決めるのにも長丁場になる場合があるのです。

本場所15日間の流れ

本場所は15日間の日程で行われます。1日の流れは初日から千秋楽(最終日)まで開始が朝8時となっており、その後番付が下の順から取り組みが行われていきます。

横綱の取り組みが終了後、最後の一番の勝者が弓取式(演武のようなもの)を行なって終了です。15日間全体の主要な流れは以下のようになっています。

  • 1日目(初日)優勝旗返還、1月場所のみ最優秀力士表彰式、必ず日曜日
  • 8日目(中日)
  • 15日目(千秋楽)幕内最高優勝表彰式

目立った行事が行われるのは初日と千秋楽のみで、他の日は時間調節のための幕内の取り組みの紹介が入る以外は通常の日程です。

また、場所の終盤には横綱や大関同士の対決が組まれることが通常となっており、特に千秋楽の結びの大一番は、横綱同士の対決など、相撲界の最高峰を見ることができます。

幕下下位の力士が優勝争いの場合

先ほど説明した通り、幕下の下位の力士が優勝争いに参戦してきた場合は、割を崩して番付上位者との取り組みが行われます。この場合、番付上位者同士の対決はなくなることがあります。

ただし、横綱同士の対決に限っては、割を崩したとしてもなくなることは通常ありません。

休場があった場合

前述にもあるように取り組みが決定した後で力士が怪我などで休場を余儀なくされる場合、その都度編成会議が行われて取り組みの決め直しが行われます。これが「割り返し」です。

割り返しが行われると、もともとの予想とは大きく違った取り組みになる可能性があるため、本場所の中でも大きなアクシデントといえます。

大相撲の取り組み前の儀式について

相撲と聞いてパッと思い浮かぶイメージの中で、力士が塩をまくシーンがあると思います。

もともと神前の競技であった相撲は、取り組みの前に神聖な土俵の上でさまざまな『儀式』を行うものなのです。ここからはそんな取り組み前の儀式について紹介します。

力水(ちからみず)をつける

力水は神聖な土俵に登る際に力士が自身を清めるために使う水のことを指します。

作法としては土俵際にいる直前の取り組みで勝った力士が柄杓で力水を渡し、受け取った力士は口をすすいで吐き出す際は専用の力紙を使って口元を隠します。

なお最初の取り組みにおいては、次の取り組みを行う力士が力水を渡す役目を担うことになっています。

塩をまく

よくニュースなどで相撲がとりあげられる力士が塩を撒くシーンが流れます。これはいわゆる『清めの塩』であり、主に力士の安全祈願と土俵自体を清めるために行われているのです。

飲食店の出入り口にある盛り塩や葬式の帰りなどで行う塩まきも同様のニュアンスで使用されています。また仮に土俵で力士が怪我を負ってしまった場合においても、邪気を払うために土俵に塩が撒かれることになっています。

塵(ちり)を切る

「塵(ちり)を切る」とは、「塵手水(ちりちょうず)」とも呼称される土俵入りの作法の1つです。

土俵に入り力士の基本姿勢である蹲踞(※そんきょ。足を開いてしゃがみ込む姿勢のこと)をとった状態で、揉み手をしてから拍手をして最後に大きく腕を開いて手のひらを返すというものです。

文字にするとわかりづらいですが、力士が土俵入り前に行う一連の動作を思い浮かべればイメージがつかみやすいと思います。

この一連の動作は、体の塵を落とすと同時に空気を揉んで清めるという意味があり、その初出は江戸時代の神前で行われていたものに由来しています。

 

取り組みの決め方を知れば予想もできる

本稿では大相撲における取り組みの決め方と、取り組み前の儀式について解説しました。

取り組みの決め方を知ることで翌日の取り組みはおそらくこうだろう、千秋楽にはこんな取り組みがあるだろうと予想することもできます。これもまた大相撲観戦の醍醐味です。ぜひ本稿で解説した内容を参考に相撲の楽しみ方を開拓していってください。

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