冬にバイクに乗るときに使う機会が増えるのが、『チョーク』です。なぜ寒い時期にエンジンをかける際にチョークが必要なのか、どのような仕組みになっているのか、冬にバイクに乗るなら、チョークの基本的な知識と正しい使い方を覚えておきましょう。
まずは知っておきたいチョークの基本
最初に、バイクにおけるチョークとはどのようなものなのか、仕組みや利用するシーンをまとめました。
チョークとは?
バイクのチョークとは、正式には『チョーク弁』と呼ばれるバイクにおける装置の一種です。英語で塞ぐ、窒息させるなどの意味を持つ『choke』から来ている名称なので、『chalk』と表記する黒板のチョークとはまったく異なります。
チョークはエンジンに接続されている『キャブレター』に付属されており、エンジンで燃焼させるガソリンと空気の割合を調節できるものです。
たいていの場合、チョークはバイクの左側にありますが、車種によってチョークの場所は異なるので、あらかじめ自分のバイクのどこにチョークがあるのかを確認しておきましょう。
チョークの仕組み
チョークがあるキャブレターは、ガソリンと空気を吸い込んで混ざった混合気をエンジンへ送り出します。バイクのエンジンは、点火プラグによって飛ばした火花でキャブレターから送り込まれた混合気をエネルギーに変える仕組みとなっています。
しかし、キャブレターが吸い込むガソリンと空気は混合比率が常に一定であるため、環境に応じてガソリンの濃度を自動的に調整ができません。そんなときにガソリン濃度を変えるのが、チョークの役割です。
チョークを使えば、キャブレターに送る空気量を変えることができます。その結果、ガソリンの濃度を一時的に高くした混合気をエンジンへ送り出せるのです。
チョークを利用するシーン
ガソリンの濃度を上げる必要が出てくるケースとして代表的なのは、冬場の寒い時期です。外気温が低いとき、エンジンがかかりにくかった経験があるライダーは多いでしょう。その理由は、低温時の空気の密度にあります。
低温時は、高温時よりも空気が薄いため、同じ量の空気でもガソリンの割合が少なくなってしまいます。また、寒い中ではガソリンが気化しづらいため、エンジンが点火しづらくなってしまいます。
そのようなケースで、チョークを利用します。チョークでキャブレターに送る空気量を増やせば、空気の薄さを解消して気化できる量を増やせるので、エンジンがかかりやすくなるというわけです。
チョークの使用法をおさらい
では、実際に寒いときなどエンジンがかかりづらい場合にどのようにチョークを使うのか、詳しい使用方法を紹介します。
チョークを引いてエンジンをかける
まず、チョークがどこにあるかを確認しましょう。たいていのバイクでは、ハンドルレバーもしくはキャブレター近くに付いています。
チョークには矢印が描かれているので、チョークを引く際は矢印の方向へ動かします。このとき、チョークをいっぱいまで引きましょう。これでチョークがONの状態になり、ガソリンの濃度が上がります。
チョークを戻す
チョークを引いてからは、セルかキックでエンジンをかけると、だんだんとエンジンが動いてきます。エンジンが暖まったら、ゆっくりとチョークを戻します。
アイドリングで調整しながら暖機
チョークを引いてエンジンを動かした後は、すぐに走り出すのではなく、アイドリングで調整をしながら暖機します。このとき、必ずチョークは引きっぱなしにせずに、戻しておくのがポイントです。
チョーク使用時に注意したいポイント
冬場にバイクに乗る前にエンジンをかかりやすくしてくれるチョークですが、使い方を誤ると逆効果になる場合もあります。
効果的にチョークを使用するためにも、事前に以下のポイントをチェックしておきましょう。
プラグがかぶるためアクセルは回さない
チョークを引いたままの状態でアクセルを回すと、ガソリンが濃い状態が続きます。すると、エンジンに濃いガソリンが送り続けられることとなり、エンジンの点火プラグがガソリンで濡れてしまいます。このような状態を、『プラグかぶり』と呼びます。
点火プラグが濡れてしまうと、エンジンをかけるのに必要な火花が飛びづらくなるため、逆にエンジンがかかりにくくなることが考えられます。
このことから、アクセルを回すときは必ずチョークを戻したことを確認しなければなりません。
チョークを引いた状態のアイドリングはNG
チョークを引いたままの状態でアイドリングを行うことも、チョーク使用時のNG項目の1つです。エンジン内で燃えたガソリンの燃え残りであるカーボンは、走行しているうちにエンジン内に溜まっていきます。
カーボンはバイクに乗っていれば溜まってしまうものですが、チョークを引いたままでアイドリングを続けていると、このカーボンが溜まりやすくなってしまいます。
カーボンはエンジンのパフォーマンス低下につながるので、チョークを引いたままでのアイドリングは避けましょう。
また、長時間チョークを引いたままで走行することも、濃いガソリンがエンジンへ供給され続ける状態となるため、エンジンに悪影響を及ぼす可能性があり、避けることをおすすめします。
チョークを引いてもエンストする場合
チョークはなかなかエンジンがかからないときに使用するものですが、チョークを引いてもエンジンがからなかったり、エンストしたりしてしまうこともあります。
チョークを使用してもエンジンをかからない場合、ガソリン濃度とは別の問題が考えられます。そんなときは、以下の3点を確認してみましょう。
ガソリンやスイッチのオンオフ確認
まず確認しておきたいのが、ガソリンやスイッチの状態です。当然のことですが、バイクはガソリンがないと動かないので、ガソリン量のチェックは必須です。
ガソリンが入っているけれど長期間乗っていないバイクのエンジンがかからない、という場合は、ガソリンの状態が悪くなっている可能性も考えられます。
また、スイッチ類は、オンにしたはずでも何かしらの衝撃などでオフになっていることもあります。必ずオンにしたはず、という場合でも、チョークを引いてもエンジンがかからないときはもう一度確認しましょう。
バッテリーやプラグなど電気系統の確認
バッテリーやスイッチには問題がないという場合は、バッテリーが上がっている可能性もあります。特に、長期間乗っていないバイクはバッテリーが上がっていることもあるので確認してみましょう。
エンジンがかからないときは、バイクの電気系統に問題が発生していることもあります。たとえば、ヒューズが飛んでいるとエンジンをかけることができません。ヒューズボックスを開け、切れていないかどうかの確認が必要です。
プラグも、エンジンに問題があるときに確認しておきたいポイントです。先述のように、プラグはガソリンで濡れてしまうと火花を飛ばしづらくなり、チョークを引いてガソリン濃度を変えたとしても、エンジンが点火しにくくなります。
このような、プラグがガソリンで濡れたプラグかぶりの状態が見られた場合は、プラグの清掃または交換が必要です。
キャブレター内部の詰まりの確認
チョークを引いてもエンジンがかからない原因として多く挙げられるのが、キャブレター内部が詰まっているケースです。
キャブレター内部は小さく、ガソリンに含まれる不純物が詰まりやすい部分です。特に、長く使用していないバイクはエンジンを動かしていない状態であることも多く、詰まりが発生しやすくなっています。
キャブレターの詰まりによってエンジンがかからないときは、分解して内部の詰まりを解消しなければなりません。
チョークが引けないときの原因と対策
エンジンがかからないときにチョークを使いたい、しかしそもそもチョークを引けない、という事態も起こり得ます。チョークがなぜ引けなくなってしまうのか、その原因とチョークを引けないときの対策をまとめました。
チョークワイヤーの固着
チョークが引けないときは、まずチョークとキャブレターをつなぐチョークワイヤーを確認します。ワイヤーが固まっているために、動かないことがあるからです。このような場合は、チョークワイヤーに注油を行って様子を見ます。
また、チョークワイヤーがどこかに引っかかっていないか、取り回しもチェックしましょう。ワイヤーの取り回しを直すだけでチョークが引けるようになる場合もあります。
その他サビや劣化による固着など
チョークワイヤーに付いたサビが、ワイヤー固着の原因となっているケースも少なくありません。
バイクが雨水にさらされることにより、チョークワイヤーが錆びることもあります。チョークワイヤーにサビが見られる場合は、ワイヤー交換をしましょう。
サビ以外にも、ワイヤーそのものが劣化していることもあります。ワイヤーの劣化を確認するには、ハンドルからキャブレターの間のワイヤーを軽く手でもんでみます。このときチョークが引ける場合は、ワイヤーの劣化が考えられます。
その他にも、キャブレターのリンクやスターターバルブの固着も原因の可能性があるでしょう。
判断が難しい場合はバイクの専門店へ
チョークが引けない原因は、素人では自己判断が難しいものです。バイクのどの部分が原因なのかを判断しづらい場合は、専門店で見てもらうことをおすすめします。
専門店でのチェックは有料ですが、その代わりにバイクのプロがチェックしてくれるので、正しい判断でチョークの問題を解消してくれるはずです。
チョークを正しく使いこなそう
なかなかエンジンをかけられないときに、チョークはガソリンの濃度を調節してエンジンをかかりやすくしてくれるので、冬の寒い時期に特に使う機会が増えるものです。
また、エンジンが始動しづらいときにも使用するものなので、バイクに乗るのであれば、チョークの使用方法はしっかり覚えておくべきでしょう。