ピンめがけて投球し、倒した数にしたがって得点を競うボウリングは、単純なスポーツに思えます。しかし、上級者になるとさまざまな計算が必要になる奥の深いゲームです。安定してハイスコアを出すために重要な要素について説明します。
まずはボウリングレーンの基本情報を知る
レーン上でボールを投げ、ピンを倒すことがボウリングのプレイスタイルです。ボウリングの技術を上げ、常にハイスコアを狙うためには、レーンに関する基本的な情報と知識を得ておくことが、とても重要でしょう。
レーンの名称を知っておく
はじめに、レーン各部の名称を知っておきましょう。「そんな知識が得点と関係あるの?」そう思う人もいるかもしれません。しかし、技術を高めていく過程においては、レーンへの深い知識は不可欠です。
投球にあたって、ボールを持ってスタンバイするエリアを『アプローチ』といいます。そして、アプローチとレーンを区切る線を『ファールライン』と呼びます。投球者は、このラインを踏み出してはいけません。
レーンの両側には、半円の溝があり、これを『ガター』といいます。よくガーターと発音する人がいますが、正しくはガターです。
以下、アプローチおよびレーン各部に記されているマークについて、いくつか続けて説明します。アプローチの入口付近に、横一列で続く丸いマークが2列並んでいますが、これは『スタンスドット』と言います。
ファールラインの手前に並ぶ丸いマークは、『リリースドット』です。そして、ファールラインから約4.57mのところで、三角のマークが矢印型に並んでいますが、これを『スパット(スポット)』と呼びます。
位置的にはアプローチエリアの方に戻りますが、スパットとファールラインの間にあって、左右のガター寄りにそれぞれ5つの丸印が計10個マーキングされています。これは『テンアングルスドット』と呼ばれるものです。
最後に、ピンが配置されているエリアを『ピンデッキ』、それぞれのピンの位置を示すマークを『ピンスポット』とあらわします。これらは、日ごろボウリングに親しんでいれば苦労なく覚えられるので、ぜひ知っておきましょう。
レーンの長さや幅など規格を知っておく
レーンの全長は、アプローチを含めて、約23.72mあります。ファールラインから1番ピンスポットまでの距離は約18.28mで、これは野球のピッチャーマウンドからホームベースまでとほぼ同じ距離です。
アプローチの長さは、最低でも4.57mを確保する必要があり、それ以下では公式基準を満たせません。
1番ピンを置く位置は、レーンエンドから約0.87mの距離にあるレーンの中央部です。会場によってレーンの長さが若干異なるケースがありますが、1番ピンは、ファールラインからではなく、レーンエンドからの距離で測ることを知っておきましょう。
次に、ファールラインからスパットまでの距離ですが、約4.57mです。また、レーンの幅は、約1.066mと定められています。
さらに、レーンとアプローチには、水平度の範囲が定められています。微妙なボールコントロールが大きく得点に影響するためです。レーンでは約1mm以内、アプローチでは約6mm以内が、それぞれの水平度の許容範囲です。
レーンは、1枚の板ではなく、39枚の細い板を縦に貼り合わせて作られています。この1枚1枚を板目と言い、先述のスパットは、5枚間隔の板目に記されるものです。
レーンは材質にも違いがある
レーンの多くは、メイプル(楓)とパイン(松)で作られています。ファールラインからスパットまでのエリアとピンデッキのエリアは、ボールの衝撃が強い範囲です。ですから、この部分にはとても堅い素材のメイプルを使用します。
メイプルは、衝撃に強いことと合わせて、高い復元力も持っています。そのため衝撃でヘコんでも、しばらくすると元に戻ります。それ以外のエリアでは、メイプルと比べて柔らかいパインを使用しています。
他方で、『アーマーレーン』『アンビレーン』『シンセティックレーン』『プレスティックレーン』そして『ミラクルレーン』など、人口素材を使用したレーンもあります。天然素材と比較して、耐久性が高いことがメリットです。
レーンのオイルの塗られ方
レーンにオイルが塗られていることを知っている人は多いでしょう。しかし、オイルの『塗られ方』まで意識しているプレイヤーは少ないのではないでしょうか。実は、ただ一面的に塗られているわけではないのです。
基本的に中央に行くほどオイルの量が多い
ボウリングのレーンには、なぜオイルが塗られているのでしょうか。もともとは、レーンの表面を保護する目的でオイルが塗られるようになりました。
その後、ボウリングの技術が上がり、ボールが曲がる度合いやフッキング(技術的にボールをカーブさせる)ポイントなどを調整する目的も大きくなってきました。オイルが塗られていないレーンでは、驚くほどボールが大きく曲がっていきます。
レーン上では、両端から中央に向かって、オイルの量が多くなっていきます。詳しくは後述しますが、それは、ボールを投げ始める位置と関係しているのです。
このように、レーンの全面にたいしてオイルの量が均一でないのは、オイルの量とプレイに密接な関係があるからです。だからこそ、ハイスコアを安定して出すためには、オイルの状態を念頭においてプレイすることが大切でしょう。
奥に行くほどオイルの量は少なくなる
レーンを縦に見た時に、ファールラインから奥に向かって行くほど、塗られるオイルの量は少なくなっていきます。
投球直後に摩擦が大きいと、ボールの曲がりが大きくなります。それだと、コントロールが効かせにくくなってしまいます。そのため、ファールライン付近はオイルを多く塗り、軌道をまず安定させ、奥でカーブしやすい状況にしているのです。
塗り方はボウリング場によって異なる
一般的なオイルの塗り方について説明してきましたが、オイルについては、ルール上、厳密な決まりはありません。ボウリング場によって、またオイルを塗る機械によって、オイルの塗り方は異なります。
ボウリング場のスタッフは、レーンへのオイルの塗り方を把握しています。ですから、初めてプレイするボウリング場では、オイルの塗り方について、スタッフに尋ねてみることをおすすめします。
レーンコンディションでスコアに差が出る?
ボウリング場によって、レーンのコンディションはまちまちです。板の状態、水平度の違い、空気の湿度や気温の変化など、さまざまな面がプレイに関係しています。そして中でも大きな影響を与えるものが、オイルでしょう。
オイルの量でボールの曲がり方に違いが出る
ハイスコアに向けて、投球とオイルの関係をプレイに生かすには、摩擦について理解しておくことが必要です。
オイルの量が多い場所では、ボールとレーンとの摩擦が小さくなります。すると、ボールはあまり曲がりません。反対に、オイルが少ないと摩擦力が大きくなり、ボールはよく曲がるようになります。
レーン上では、両端から中央に向かってオイルの量が多いと先述しました。右利き・左利きのいずれにしても端の方から投球します。投球直後での球の曲がりをコントロールし、ピンに近づくにつれてボールの軌道を安定させることがその理由です。
オイルの量とボールの曲がり方には、このような理由で違いが生じること知っておきましょう。
ハイスコアを出すためにはオイル読みが重要
オイルは、天候などさまざまな要因で、そのコンディションが違ってきます。しかし、そのような面があるからこそ繊細な判断力が求められ、ボウリングを奥の深いゲームにしているのでしょう。
一つのボウリング場が同じマシンを使い、同じオイルを塗っても、その日の湿度や気温によって、プレイへの影響は異なります。その日、その時のオイルの状態を読むことが、ハイスコアを出すためには重要です。
レーンコンディションの見方
オイルの塗られ方などを含めて、レーンはその都度、コンディションが違うことは理解していただけたでしょう。それでは、目の前のあるレーンのコンディションの見方について説明します。
オイルが塗られている距離
オイルは、レーンの奥に進むほど、塗られている量は少なくなっていきます。それでは、どれくらいの距離で変わってくるのでしょうか。
ファールライン寄りと奥でのオイルの塗り分けについて、『ショート』『ミディアム』『ロング』と、大きく3つのパターンがあります。
レーン上でオイルが多く塗られている距離は、ショートでは10~11.3m、ミディアムでは11.6~12.8m、ロングでは13m~14.3mが目安です。ボウリング場でショート・ミディアム・ロングのどれかを尋ね、この数字を当てはめると分かりやすいでしょう。
オイルが塗られている総量
プレイに大きく影響するオイルですが、1レーンに塗られている総量は15~30mm、大さじ1~2杯程度と、意外に少ないのです。
オイルの量が少ない順に『ドライ』『ミディアム』『ヘビー』とあらわします。ドライでは15ml、ミディアムでは15〜30ml、ヘビーだと30ml超のオイルを塗ることもあります。ドライであるほうが、ボールの曲がりは大きくなるでしょう。
オイルが塗られている厚さ
先述の通り、レーンの表面にオイルが塗られている厚さは、均一ではありません。横に見て、両端は少なく、中央に向かって厚くなります。また、ファールライン付近は厚く、ピンに向かってオイルは薄くなっていきます。
子ども用の滑り台を横から見たイメージで考えると、わかりやすいでしょう。最初は高く(オイルが厚く)、ゴールに向かって低く(オイルが薄く)なっていきます。
レーンコンディションの注意点
ボウリング場ごとに整備方法が異なり、同じボウリング場であっても天候などによって違いが生じるので、レーンコンディションの見極めは難しいものです。レーンを読むときの注意点について見てみましょう。
投げる度にコンディションは変化する
オイルの量は、常に一定ではありません。マシンでオイルが塗られたレーンも、ゲームが進むにつれ、転がるボールの影響でオイルが消耗され、少なくなっていきます。ボールによってオイルが少なくなることを、『枯れる』と表現します。
ゲーム後半ではレーンが枯れていき、最初に比べてボールの曲がりが大きくなります。このように、同じ日の一つのゲームにおいても、レーンのコンディションは一刻一刻と変化するのです。このことを頭に入れてプレイしましょう。
レーンやボールの材質などでも変化は異なる
その他にも、オイルとの関係において、ボウリングのプレイに影響をあたえる要素があります。
例えば、レーンの材質にもいろいろあることをお話ししましたが、オイルとの相性もそれぞれ異なるため、ボールの曲がり方の違いなどにも現れます。
また、ボールの材質も多様です。ラバー製・プラスチック製・ウレタン製、さらにリアクティブ系やテクスチャー系など、幅広い種類があります。そして、材質ごとに、ボールの変化の仕方は違うのです。
ハイスコアを常に狙い続けるには、さまざまな点を考慮することが求められます。
レーンコンディションを見極めてスコアを伸ばす
ボウリングは、オイルの量をはじめとして、あらゆる環境を把握しながら行う、奥の深いスポーツです。その時々のレーンコンディションを見極め、それを自分のプレイスタイルと照らし合わせることで、さらに高いスコアを目指せるでしょう。