俳句といえば季語がつきものです。しかし、中には季語を使わない俳句もあるようです。今回は、季語に関するルールや季語の種類、季語を使った名句などを紹介します。この記事を読めば、少しだけ俳句の季語に詳しくなれるでしょう。
俳句作りに欠かせない季語のルールは?
俳句に必要な季語ですが、とにかく季節感のある言葉を入れておけばいい、というものではありません。
ルールを知らずに作るとせっかくの俳句が台無しになったり、意図したこととは異なった伝わり方をしたりする可能性があります。
季語は何個入れられる?
俳句の中の季語は基本的に1つまでとされています。季語はそれだけで季節感や情景を描くものですから、2つ以上あるとそれぞれの良さを消してしまったり、趣が無くなったりする恐れがあります。
しかし、季語が2つ以上用いられる場合もあり、同じ季節の季語を使う場合は「季重なり」、異なる季節の季語を使う場合を「季違い」と呼びます。
強い意味の季語と弱い意味の季語を重ねる場合や、それぞれに引き立たせ合う場合は2つ以上の季語も効果的ですが、初心者がするのはかなり難しいでしょう。
ひとまず、季語は1つまでと覚えておきましょう。
俳句の季語は旧暦
俳句の季語は旧暦で考えられています。旧暦とは新月の日を一日とし、満月の日を十五日として数えるものです。旧暦の春夏秋冬の分かれ方は、季節それぞれが始まる日を知ることでわかります。
- 立春(春が始まる日)…1月
- 立夏(夏が始まる日)…4月
- 立秋(秋が始まる日)…7月
- 立冬(冬が始まる日)…10月
つまり春は1~3月、夏は4~6月、秋は7~9月、冬は10~12月を示します。現在使われている新暦とは異なる部分もあるので注意しましょう。また、春夏秋冬以外にも分類される物がありますが、それは「季語の種類は?」で説明していきます。
季語なしの俳句を作ってもいい?
俳句の基本的なルールは、季語を含む五七五の十七音という有季定型とされています。しかし、これは絶対ではありません。
俳句は季語を含まなければならない、というルールに疑問を呈し、無季俳句を作った作者もいます。いくつか例を見てみましょう。
しんしんと肺碧きまで海の旅 篠原鳳作
兵隊がゆくまつ黒い汽車に乗り 西東三鬼
海に降る雨や恋しき浮身宿 松尾芭蕉
どれも季語は使っていませんが、その場面や心情などが伝わってくる俳句です。季語の持つ情景よりもっと伝えたいことがある場合には無季俳句にするのも良いでしょう。
しかし、まずは基本ルールの有季定型で俳句に慣れ親しむのがおすすめです。
季語を使った有名な俳句
先ほどは無季俳句を見ましたが、今度は季語を使った有名は俳句です。無季俳句よりも数が多く、耳にしたことがある俳句も多いでしょう。
今回は有名な作者である小林一茶と松尾芭蕉の俳句を例に見ていきます。それぞれ、季語がどのような効果をもたらしているか、どのように感じるかを考えながら詠むと季語に関する理解が深まるでしょう。
小林一茶
小林一茶は1763年に長野県の農家に生まれました。15歳の春に江戸に奉公に出され、20歳を過ぎた頃から俳句の道を志すようになりました。
「一茶発句集」や「おらが春」などの俳句集が有名で、日常の風景や動物・子どもなどを主題にすえた俳句を多く残しています。
雀の子そこのけそこのけお馬が通る
(季節:春 季語:雀の子)
雪とけて村いっぱいの子どもかな
(季節:春 季語:雪とけて)
名月をとってくれろと泣く子かな
(季節:秋 季語:名月)
初夢に故郷を見て涙かな
(季節:新年 季語:初夢)
梅が香やどなたが来ても欠け茶碗
(季節:春 季語:梅が香)
松尾芭蕉
俳句といえば松尾芭蕉を外すことはできないでしょう。1644年に三重県の農家に生まれました。19歳の頃から俳句を嗜んでおり、俳句を詠みながら旅をした紀行文「おくの細道」が特に有名です。
古池や蛙飛びこむ水の音
(季節:春 季語:蛙)
閑さや岩にしみ入る蝉の声
(季節:夏 季語:蝉)
五月雨をあつめて早し最上川
(季節:夏 季語:五月雨)
初雪や水仙の葉のたわむまで
(季節:冬 季語:初雪)
夏草や兵どもが夢の跡
(季節:夏 季語:夏草)
季語の種類は?
季語には種類があります。どの季節を表すものかというだけでなく、その事柄によっても項目が分かれていますので、知っておくと良いでしょう。意外な季語もあるかもしれません。
季節は春夏秋冬、そして新年の5種類
季語は春夏秋冬だけでなく新年という季節も表す語です。それぞれの季節の季語をいくつか挙げますので見てみましょう。
- 春…初春、暖か、麗か、淡雪、雪崩、花見、花祭、梅、鶯、白魚など
- 夏…夏至、夜の秋、雷、氷河、帰省、祭、こいのぼり、葉桜、金魚、穴子など
- 秋…秋彼岸、肌寒、月、不知火、夜なべ、紅葉狩、七夕、鈴虫、彼岸花、秋刀魚など
- 冬…師走、冷たし、三寒四温、北風、霰、山眠る、足袋、大根、兎、河豚など
- 新年…正月、三が日、初日、初富士、門松、成人の日、参賀、七草、雑煮、伊勢海老など
わかりやすい季語もあれば「この季節の季語なの?」と思うような季語もあったのではないでしょうか。これは俳句を作りながらどんどん覚えていくと良いでしょう。
季節ごとに時候、天文など9項目
季語は季節による分類以外にも項目ができます。これを知ることで季語を使った俳句の幅が広がるでしょう。
- 時候…季節や月の名称など。
例)春分、梅雨明け、仲秋、神無月、元旦など
- 天文…天文や気象などに関すること。
例)春風、夕焼け、稲妻、初雪、初凪など
- 地理…山・海・川・陸地などの地理に関すること。
例)残雪、赤富士、高潮、山眠る、初景色など
- 人事…人々の暮らし、生活に関すること。
例)春日傘、団扇、月見、こたつ、年賀状など
- 行事…年中行事を主とした行事全般。
例)入学式、祇園際、文化の日、除夜の鐘、初詣など
- 忌日…著名人の忌日(命日)など。
例)節忌(2月8日)、四迷忌(5月10日)、敗戦忌(8月15日)、漱石忌(12月9日)など
- 動物…その季節に姿を現す動物や昆虫など。
例)蜂、閑古鳥、蜩、鶴、初鴬など※食べ物の印象が強いものは食物としても分類される
- 植物…その季節に姿を現す植物。
例)桜、向日葵、萩、山茶花、若菜など
- 食物…その季節に旬になる食べ物。
例)春菊、冷汁、南瓜、おでん、数の子など
それぞれ、春、夏、秋、冬、新年の順に書き記しました。季語だと思っていなかったものも、実は季語だったとういこともあるかもしれません。
俳句の季語がわかるおすすめの本
季語を知るにはそれについて書かれている本を読むのがわかりやすいでしょう。読みやすく、季語について楽しく学べる本を2冊紹介します。
夏井いつきの365日季語手帖
有名なテレビ番組「プレバト!!」で俳句の査定員を努める夏井いつき先生の書籍です。毎日1つずつ名句と共に季語を知ることができるので、普段読書をしない、俳句をあまり知らない人でも読みやすいでしょう。
また、毎週その週に知った季語を使って作った俳句を書き込むことができるので、実践もできます。
毎日の習慣にすることで、俳句の勉強をするだけでなくその季節を感じることができ、今まで以上に四季を感じることができるでしょう。
型で学ぶはじめての俳句ドリル
先ほど紹介した夏井いつき先生と、NHK俳句や角川俳句賞など様々な選考に携わっている岸本尚毅先生の共著。2人の掛け合い問答で読みやすい俳句入門編になっています。
10のレッスンと30のドリルでステップを踏んで俳句を学ぶことができます。「俳句を作ってみたいけど何から始めたらいいかわからない」という初心者から「自分の作る俳句に納得がいかない」という人にもおすすめです。
これを読んで実践すれば、スラスラと俳句が作れるようになったり、賞に選ばれるようになったりするでしょう。
季語がわかると俳句がさらに楽しい
季語がわかると一気に俳句のプロになれたような気がします。季語をマスターして素敵な俳句を作りましょう。さらに深く俳句を学びたい人は本も読んでみてはいかがでしょうか?