複数の選手が入り乱れるラグビーですが、それぞれの選手はポジションごとに分かれていて、その役割を果たしています。ラグビーのポジションは、どのように分かれているのでしょうか? 各ポジションの役割や選手を紹介していきます。
そもそもラグビーって?
そもそも、ラグビーはどのようなスポーツなのでしょうか? ラグビーはよく、『陣取りゲームだ』といわれます。どのような点が陣取りゲームだといわれる要因なのでしょうか。
まずは、ラグビーの基本的なルールや知識についてまとめていきます。ルールが難しいイメージがあるラグビーですが、ポイントをおさえれば楽しく観戦することができます。
ラグビーというスポーツについて、予備知識を増やしていきましょう。
15対15で争う激しいスポーツ
ラグビーは、1チーム15人で試合を行います。攻撃側のチームは味方同士でボールをつなぎ、相手陣地の1番端に位置しているゴールラインに向かいます。
ゴールラインを越えたスペース(インゴール)にボールをタッチできれば、得点が加算され、これを『トライ』と呼びます。
防御側のチームは、相手選手を止めることでトライを防ぎます。野球やサッカーに比べて選手同士の体のぶつかり合いが激しく、迫力ある試合展開を楽しむことができるスポーツです。
ポジションは大きく分けて二つ
ラグビーのポジションは、簡単に分けると二つに分類できます。『フォワード(FW)』と『バックス(BK)』です。フォワードとバックスは、それぞれに役目が異なり、得意としているプレーにも違いがあります。
二つのポジションごとの役割を知っていると、試合をよりわかりやすく観戦できます。各ポジションについて、それぞれの役割をまとめたのでチェックしてみましょう。
力勝負のフォワード
敵の選手と特に体を激しくぶつけ合うのが、『フォワード』の選手です。スクラムを組むときなど、密集している中で戦うポジションなので、力勝負になるポジションとされています。そのため、選手の体格も屈強で大きいのが特徴です。
背番号は1〜8番をつけているので、選手が入り乱れていても背番号でポジションを判別できます。
スクラムは、プレーが止まった後のセットプレーで使われますが、このようなプレー再開のときは、フォワードの選手からはじまることが多いです。
相手チームのディフェンスをものともせず、力押しでトライを奪いにいくこともあるので、豪快なプレーはラグビーの力強さを体現しているともいえます。
得点をとる仕事のバックス
フォワードの選手が体を張ってキープしたボールを前進させ、トライを狙うポジションが『バックス』です。バックスの選手は、9〜15番の背番号をつけています。
フォワードの選手がメインでプレーするのが密集している場所だとしたら、バックスの選手は、広域なフィールド全体で戦います。パスやラン、キックなど、スキルが必要とされるプレーを駆使して、ボールをトライにつなげます。
フォワードに比べると、スピードやテクニックがある選手が任されることが多いポジションです。
各ポジションの背番号とエリア
大きく分けた二つのポジションについてまとめてきましたが、この二つの中でも、さらに詳細にポジションと担当するエリアが分かれています。
それぞれのポジションには背番号が振られていて、守るエリアにも基本があります。背番号がどう割り振られていて、どのエリアを守っているのか見ていきましょう。
フォワードの各ポジション
フォワードのポジションを任される選手は8人です。そのため、背番号も1〜8までが振られています。
1番と3番の選手はプロップ(PR)、2番の選手をフッカーと呼び、フッカーの選手を真ん中にして横に並びます。この三つのポジションが、相手陣地に向き合ったときの最前列で、ポジションエリアを『フロントロー』と呼びます。
二列目にくる選手はロック(LO)言い、4番と5番の背番号が振られます。ロックは2人で、エリアは『セカンドロー』と呼ばれます。
三列目のポジションエリアを『バックロー』と呼び、フランカー(FL)の二名とナンバーエイト(NO.8)一名の計3人です。フランカーに6番と7番が、ナンバーエイトに8番が振られます。
バックスの各ポジション
フォワード以外の7人がバックスを担当します。付ける背番号は、9〜15です。
フォワードのナンバーナインの後ろ、バックスの中では一番前に位置するのがスクラムハーフ(SH)で、9番をつけます。そのすぐ後ろになるのがスタンドオフ(SO)で背番号は10番です。この二名のポジションエリアを『ハーフバック』と呼びます。
ハーフバックの後ろにくるのが、ウイング(WTB)とセンター(CTB)です。ウィングの選手は2人で、11番と14番をつけます。センターは12番と13番で、この2名を挟む形で位置するのがウィングの2人です。計4人が位置するエリアが『スリークォーターバック』と呼ばれます。
すべてのポジションの一番後ろに位置する選手がフルバック(FB)で、15番を背負います。この選手がいるポジションエリアは、そのまま『フルバック』と呼ばれます。
フォワードの各ポジションと役割
それぞれのフィールド上でのエリアと背番号について見てきたところで、より具体的なポジションごとの役割をまとめていきます。
同じエリアに分類されていても、各ポジションで役割やプレースタイルが異なるので、どのような分担がされているのかチェックしておきましょう。観戦するときにさらにコアな目線でプレーを見ることができます。
プロップ PR
1番と3番の背番号を背負うのが『プロップ(PR)』です。このポジションの選手は、最前列でスクラムを組む、非常に屈強な選手です。スクラムが強いかどうかは、プロップの強さ次第といわれることもあります。
強靭な体の中でも、相手と組み合うときに必要とされる首の筋肉が重要とされており、相手とのぶつかり合いが激しいため、身長も高く、体重もトップ選手の平均は100〜120kgほどに至ります。
どんなシーンでも相手と激しくぶつかるため、強靭な体だけでなく、相手に負けない精神力も求められるポジションです。
フッカー HO
最前列の真ん中でスクラムのコントロールをとるのが『フッカー(HO)』です。ラインアウトした際にボールを投げ入れる役割も果たします。
フッカーは、状況に応じてさまざまな役割を担うため、足の速さと判断力が必要なポジションだとされています。体格はプロップより少し小さいくらいですが、手先の器用さも求められるポジションとなっています。
セットプレーにおいてキーマンになりますが、バックスと同じエリアでプレーに参加する可能性もあるため、近年では、幅広く役割を果たせる能力が必要とされてきています。
ロック LO
ラグビー大国のニュージーランドで、子どもが一番やりたがる人気のポジションが『ロック(LO)』です。ロックのポジションでは高身長が求められ、スクラムを組むプロップよりも、平均的に体の大きい選手が多いです。
ロックと呼ばれる理由は、スクラムを後ろから押し込み、固定させる(ロックする)というプレースタイルからきています。キックオフやラインアウトの際は、その高身長を生かしてボールをキャッチし、大きな体でボールを敵陣へと運びます。
高身長と屈強な体が必要とされる、パワフルなポジションです。
フランカー FL
フォワードのポジションで花形とされているのが『フランカー(FL)』です。フランカーの選手は、相手のボールを強烈なタックルで奪い取ったり、チームメイトが相手に捕まってしまった所へすぐにフォローに行ったりという役割も果たします。
スピードと体の強さ、そして精神面の気の強さが必要とされるフランカーですが、相手からボールを奪う姿は、人々の視線を集めます。
ナンバーエイト NO8
フォワードの選手たちを後ろからまとめる、リーダー的な役割を果たすのが『ナンバーエイト (NO.8)』です。チームでも1、2を争う体格が必要なため、日本代表でも外国出身の選手が務めることが多いです。
フォワードに必要な激しいタックル力のほかにも、バックスの選手に劣らないボールハンドリングとスピードが必要とされるため、オールマイティーに仕事をこなせる技術と体格が必要とされます。
バックスの各ポジションと役割
次は、バックスの選手について、各ポジションの役割とプレースタイルについてまとめていきます。フォワードとは違ったプレーが求められるバックスの選手は、どのようなプレーで試合を進めていくのでしょうか?
バックスのポジションについて、より詳細にみていきましょう。
スクラムハーフ SH
ラグビーにおけるポジションの中で最も多くパスをするのが『スクラムハーフ(SH)』です。スクラムハーフの選手は、スクラムから出てくるボールをはじめに拾い上げ、パスをつなげるスタート地点の役割を果たします。
チームの中でパスの起点となるポジションのため、必然的に走る距離も長くなります。そのため、卓越したパススキルと体力が必要とされるポジションです。
スタンドオフ SO
密集地帯から少し離れたところで、試合全体の流れを把握しながらプレーするのが『スタンドオフ SO』です。そのためスタンドオフは、ゲームをコントロールする司令塔の役割を果たします。
スクラムハーフが確保したボールを受け取り、その後のプレーを組み立てます。あらかじめ決めておいたサインによりプレーを組み立てたり、その場の判断に合わせたプレーをしたりと、臨機応変にプレーを作り上げるセンスと技量が必要になります。
ウィング WTB
相手のディフェンスをかいくぐり、ひたすらトライを狙い続けるのが『ウィング(WTB)』です。ウィングのポジションには、相手に捕まらないスピードとキレのあるステップが求められます。
抜群のスピードが求められるほかにも、相手にタックルされても倒れない肉体と体感が必要なため、近年では、体の大きいウィングの選手も増えてきています。
ラグビーでは、基本的にウィングの選手にボールを集めてトライを狙います。そのため、スピード以外に決定力が必要とされるポジションです。
センター CTB
チームの中で縁の下の力持ち的な役割を果たすのが『センター(CTB)』です。センターの選手は、攻撃の際はウィングのトライをアシストすることが多く、ディフェンスの際は、タックルで相手を止めます。
ボールを確実にキープしながら前進できるフィジカルの強さと、状況によってはトライを狙う判断力も必要です。突破力とディフェンス力、その両方が求められる、万能に仕事を任せられるポジションです。
フルバック FB
チームの最後尾からゲームを立て直すのが『フルバック(FB)』です。フルバックの選手は、ディフェンスの際は防御ラインの最後の要となるため、サッカーのゴールキーパーのような役割を果たします。
自分のチームの陣地を挽回するためにも、キックをするケースが多いので、正確なキック力も必要とされるポジションです。
日本代表選手のポジションは?
2019年、ラグビーワールードカップが日本にて開催されます。この大会では、開催国である国として日本代表に注目が集まります。
そんな日本代表について、19年2月時点での代表選手の中でも、特に注目されている選手について紹介していきます。日本代表で期待されている選手に注目して、大会でも日本の活躍を応援しましょう。
フォワードの選手
フォワードのポジションでも特に注目を集めている選手が、トヨタ自動車ヴェルブリッツに所属している『姫野和樹』選手です。
姫野選手のポジションは、フォワードとバックスをつなぐ位置にいるナンバーエイトですが、状況によってはロックのポジションもこなす強靭な体が特徴です。
相手選手のディフェンスを打ち破るハードなランプレーが魅力で、ワールドカップでの活躍も期待されています。
バックスの選手
日本代表不動のスタンドオフとして人気を集めているのが『田村優』選手です。フィールド全体を巧みに操るスペース感覚と優れたスキルに定評があります。
パス・ラン・キック、あらゆるスキルが高く、いろいろな方法で日本代表の攻撃を組み立てながら敵陣に向かいます。その安定感と信頼度から、2019年のワールドカップでも注目しておきたい選手です。
15人制以外のラグビーでは?
15人で行うラグビーについてまとめてきましたが、ラグビーには、15人制以外のルールで試合をするものもあります。
15人制以外のラグビーには、オリンピック種目に認定されているものもあるため、どのようなルールのもと試合が行われるのか、その詳細をチェックしていきましょう。
オリンピック種目の7人制ラグビー
15人制ラグビーと同じフィールドですが、7人でラグビーの試合を行うスポーツを『セブンズ』と呼びます。セブンズでは、通常のラグビーと同じフィールドで試合が行われます。
試合時間は、約7分〜10分ハーフで、その他のルールは基本的に15人制のラグビーと同じものが適用されます。
広いフィールドを少ない人数でプレーするため、15人制に比べるとボースの移動が激しくなります。そのため、選手にもスピードとボールハンドリングが必要とされています。
15人制のラグビーに比べるとスピーディーな試合展開を観ることができるのが特徴です。
12人で行うジュニアラグビー
フォワード5人・ハーフバック2人・バックス5人の計12人で行うのが『ジュニアラグビー』です。ジュニアラグビーとは、中学生に適応されるラグビーのことをいいます。
試合時間は20分ハーフで、合計40分以内とされており、得点方法や試合の進め方は、15人制のラグビーと基本的に同じです。
日本ではなじみのない13人制ラグビー
ニュージーランドではメジャーなラグビーとして『13人制』のラグビーもあります。13人制ラグビーでは、15人制に比べるとボールがよく回るので、観ていてより楽しめるという特徴があります。
15人制のラグビーを『ラグビーユニオン』、13人制のものを『ラグビーリーグ』と呼ぶこともあります。
ニュージーランドでは、ユニオンとリーグどちらの人気も高いため、ユニオンからリーグの選手に転向する選手も少なくありません。
ユニオンとの違いで最もわかりやすいのは、スクラムを組むがボールを奪わないという点です。形式的に組まれるスクラムは不要なのではないかという議論も繰り広げられています。
ポジションを覚えてラグビーを楽しもう
日本では、野球やサッカーに比べるとまだ認知度の低いラグビーですが、ルールやポジションを覚えてしまえば、誰でも楽しく観戦することができます。
2019年のラグビーワールドカップに備え、ポジションを覚えて試合を観戦できるようにしてみてはいかがでしょうか?