大人のための音楽鑑賞術。聴くだけから卒業してさらに深く味わおう

2019.03.02

最近はスマートフォンで音楽鑑賞できるなど、今や時間も場所も選ばずに音楽が楽しめる時代となりました。どうせなら聴き流して楽しむだけではなく、もっと深く音楽を味わいたいものです。『聴くだけ』を卒業した次の段階の、楽しみ方を紹介します。

趣味の定番、音楽鑑賞

老いも若きも多くの人たちが、日常的に音楽を楽しんでいます。趣味の定番と言える音楽について、一歩突っ込んで考えてみましょう。

2016年の統計では日本人の趣味第2位

国が実施する『社会生活基本調査』の中には、『趣味・娯楽活動』に関する項目があります。

2016年に全国約9万世帯の10歳以上、約20万人を対象に実施した調査によると、趣味・娯楽の第2位が『CD・スマートフォンなどによる音楽鑑賞』という結果が出ています。

ひと昔と違うところは、自宅でじっくりオーディオで聴くだけでなく、スマートフォンなどで、いつでもどこでも音楽を楽しむのが当たり前になっていることです。

多くの人が、常に音楽を楽しんでいることが統計によっても明らかにされています。

出典:「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)

音楽は感情を動かしてくれる

人間の感情は音楽によって動かされることがあります。

たとえば悲しい曲を聴いたら物悲しくなり、元気な曲を聴けば気持ちが明るくなったりします。また、美しい旋律を聴けば癒され、スリリングな演奏を聴けば興奮します。

このように、音楽によって感情が変化したという経験は、誰しも大なり小なりあるでしょう。

これを逆手に取ると、悲しいときこそパワフルな曲を聴いて自分も元気になることも、疲れたときにゆったりした音楽で癒されることも可能なわけです。

試合直前のアスリートが、自分にとって元気が出る曲を聴いているという話を聞いたこともあるでしょう。

始めやすいのも魅力

音楽鑑賞を趣味にしようと考えた場合、どうやって始めたらよいかなどと、とりたてて構える必要はありません。持っているスマートフォンなどで、『気になる音楽をダウンロード』するのが簡単な始め方です。

ダウンロードしなくてもYouTubeなどの動画配信サービスでアーティストの公式MV(ミュージックビデオ)がストリーミングで楽しめます。

費用をかけて音楽機材を購入するというアプローチもよいのですが、防音の問題やジャンルによっては費用対効果が感じられないケースもあります。

自宅で楽しむのなら、スマートフォンに簡単に接続できるヘッドホンやスピーカーなどがあれば、音質的にも音量的にも十分に楽しめるでしょう。

音楽鑑賞は平凡な趣味なのか?

音楽鑑賞という言葉だけでいうと、多くの人が趣味の1つとして当てはまるものではないでしょうか。

それ故、もしかすると『平凡』であるという誤解を招くこともあるかもしれません。しかし音楽鑑賞は深いものです。

たとえば履歴書に音楽鑑賞を趣味として記入するのであれば、ただ単に音楽を聴いているだけではなく、『なんらかの差別化ができるぐらいのもの』を書けるようにしましょう。

例えば、お気に入りのアーティストのライブにどれぐらいの頻度で行くかなどの内容を含めておきます。職務とは一見関係ないようなことでも、面接官との会話の糸口になることもあるでしょう。

ただ聴くだけでは真の音楽鑑賞ではない

ただ聴いて楽しむだけで終わっては、『鑑賞』と言うには少々軽すぎます。

もちろんそれが悪いことではありません。とはいえせっかく音楽鑑賞を趣味と言うのなら、本当の意味で音楽を『鑑賞』するようにしましょう。そもそも鑑賞という言葉にはどのような意味があるのでしょうか。

鑑賞とは深く味わい、そして理解すること

鑑賞の『鑑』の字の持つ意味は、よく見て品定めをするというものです。つまり、対象を深く理解して味わうことが『鑑賞』という言葉の本当の意味なのです。

音楽をただ聴いて、好きとか嫌いなどの単純な感想を持つだけにとどまらず、なぜ好きなのかなど、深く分析して味わい、理解するのが『鑑賞』です。

さらに深い音楽鑑賞法で人と差をつけよう

私たちの日常に溶け込んでいる音楽ですが、多くの人が表面的にしかとらえておらず、単純に何度も何度も聴き流していることがほとんどです。

音楽をただ聴くことと音楽鑑賞には、深さの違いがあります。気軽に楽しむのもよいですが、『音楽の内側まで入り込んで』その曲を、そのアーティストの作品を深く味わい、心ゆくまで楽しみましょう。

音楽鑑賞をする際は、その楽曲に意識を集中します。じっくりと奏でられるあらゆる音を感じ取り、味わおうとする姿勢が大切です。

本気の音楽鑑賞術への第一歩は

音楽鑑賞には批評眼が必要だと言われます。『根拠に基づいて自分なりに批評する力』を求められるのです。

他者に理解してもらうためには、客観的な理由を基に、自分にとってはどういう価値があるのかという評価をすることが重要となります。

根拠を示して批評することはクリエイティブなことであり、漠然とした感想を述べることとは異なります。

素晴らしい・素敵だ・楽しい・悲しい・美しいといったようなコメントは、感想であっても鑑賞とは言えないのです。

好きな曲のどこが好きなのかよく考える

自分が好きな曲(あるいは好きなアーティスト・好きな音楽のジャンル)の『一体どこが好きなのか』を、深く考えてみましょう。

楽曲1つとっても、メロディやリズム、音色・曲調・構成・編曲・楽器の演奏の特徴など、さまざまな要素が盛り込まれています。

その中には、1つもしくは複数の項目で好きなところがあるはずです。まずはそれを突き詰めてみましょう。

曲から感じたことを具体的な言葉にする

曲のどこが好きなのかが分かってきたら、なぜそこに惹かれるのかということをさらに深堀りしてみましょう。

そのためには、その曲に感じていることを『具体的な言葉』にする必要があります。心で感じることなので、結構難しい作業です。

自分に対しては言葉で説明する必要はありませんが、それを何らかの言葉に『置き換えて』表現するようにします。客観的に他の人にも伝えてこそ、初めて『鑑賞』だと胸を張れるのです。

ノートに書き留めておくのもおすすめ

言葉にする練習になるのが、曲を聴いて好きな部分、素晴らしいと感じた部分を『ノートに書き留める』という作業です。どう感じたかを含めて書き残しましょう。

自分の心が感じたことを最初は無理やりでもよいので、何とか言葉に置き換えてみます。それを続けるうちに、ある程度自然に感じていることが言葉として紡ぎ出せるようになってくるはずです。

具体的なやり方をまとめた書籍もあるので、参考にしてみるとよいでしょう。

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もっと集中して音を聴いてみよう

音楽には色々な聴き方があります。何も考えずに、聞こえてくるものをただ聞くのもよいでしょう。とはいえ質の高い音楽は、細部に至るまで『配慮や工夫』がなされています。それに気づかずして聞き流すのは、もったいないのです。

もっと集中して音楽を聴いたほうが、同じ『聴く』のでも価値が上がります。それでは、どういう風に聴けばよいのかを具体的に解説します。

ベースラインに注目して聴く

楽曲の『ベースライン』に注目して、音楽を聴いてみましょう。ベースラインは楽曲の基盤を支える音の流れです。それはクラシックでもロックでも、ジャズでも同じと言ってよいでしょう。

ベースは和音の基底部分であると同時に、ときとしてメインのメロディに対してのカウンターメロディ(オブリガート)として働く場合もあり、あなどれません。

なんかこの箇所がカッコいいとか、心地良いなどと感じる部分をよくよく聴き込んだら、ベースが絶妙なカウンターメロディを弾いていたなんてこともあるのです。

たとえば『ビートルズ』の楽曲の中のポール・マッカートニーのベースラインに注目して聴くと、凝ったベースアレンジとセンスのよさに驚かされます。

何度も聴いた曲でも、そういう新発見があると新鮮でさらに素晴らしく感じるでしょう。

裏メロディに注目して聴く

前述のベースラインと通じるところもありますが、『裏メロディ』(サブメロディ)に注目して聴いてみましょう。

裏メロディはメロディ(主役)以外の、決して前面に出て目立ったりしないもう1つのメロディです。

ヴォーカルのバックで、ある楽器が別のメロディを奏でつつ主役を引き立たせる脇役に徹するのです。それが楽器でなくバックコーラスの場合もあり、ジャンルによっても必ずしも脇役とは言い切れません。

たとえばロックなどでは、ギターをしっかり聴かせるためにヴォーカルと同等かそれ以上に前に出ることもしばしば見受けられます。

基本的に裏メロディは主役ほど目立たず、音色・音域・音量・音の動きなどがメインのメロディよりも控えめになっています。

そして、良い編曲ほど心地良い裏メロディが流れていることが多く、結果的に聴きどころが多くて飽きない曲になります。

目を閉じて聴くと集中しやすい

簡単にできることで、音楽に集中して聴ける方法があります。それは『目を閉じて聴く』ということです。たったこれだけでも、かなり音楽の味わい方が深くなり、より一層楽しめるでしょう。

実は、人間の目は普段からとてつもなく膨大な情報を集めています。一般的に『人間は情報の80%を視覚から得ている』と言われ、一方の聴覚は7%程度です。

ということは、目を開けて音楽を聴いていても、脳が感じることの8割は目からの情報が占めているのです。逆に目を閉じさえすれば、聴覚が研ぎ澄まされます。

今まで認識していなかった音が聴こえるようになるので、ぜひ試してみましょう。

背景を知ると音楽はもっと面白くなる

たとえば小説などもそうですが、それが書かれた背景や事情などの関連情報を知っているほうが、より深くその作品を理解できます。音楽も同じように、知識があるとより作品を楽しめるということです。

作曲者の心情に思いを馳せてみよう

その曲を作った作者(アーティスト・作詞家・作曲家)の心情に思いを馳せてみるのも、深く楽曲を鑑賞するための1つの有効なアプローチです。

作者のことを知ることで、『どのような境遇や状態で何を考え、誰のためにその曲を作ったのか』などを分析できます。もちろん、それで100%その作者のことが分かるわけではありません。

しかし、その人の真実に迫ろうとするアプローチは、楽曲に耳を傾ける姿勢にも何らかの変化を与えます。結果として、より深く聴き込むことにつながるのです。

曲が作られた時代の世相や文化を知ろう

その楽曲の『成り立ち』、つまりそれが生み出された時代の世相、文化を知るのもおすすめです。

その上で聴き込むと、まさにその作品を理屈だけでなく肌で、心で感じて理解できることにつながります。

もちろん、名曲と呼ばれるものは何の予備知識もないまま初めて聴いても、素晴らしい曲だと気づくでしょう。それでも数回聴くと、徐々に感動は薄れるかもしれません。

しかし『予備知識』を得ることで、飽きることなく何度聴いても深く味わえるのです。

作曲家やアーティストの伝記を読んでみよう

さまざまなジャンルの音楽の中でも、自分が好きな音楽の作曲家やアーティストのことを深く知るために、伝記などを読んでみましょう。

『クラッシックの作曲家たち』は、モーツァルトやベートーヴェンといった有名どころから、伝記の少ないマイナー作曲家まで50人について、コンパクトにまとまった1冊です。

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音楽を最大限に味わうには音質も重要

音楽を味わう方法はいろいろありますが、やはり『音質』の良い方法を選ぶことが重要です。最大限にその楽曲を味わいたいのであれば、なおさらではないでしょうか。

音質重視ならやはりCDが有利

CDを用いた音楽鑑賞には、『音質が良好』『レンタルで安く借りて聴ける』『友人や家族と貸し借りができる』などといった優れた点があります。

音楽鑑賞にこだわる人たちには、特に『音質が良好』という点でCDの評価が高いようです。

音楽をデータとして販売する形式では、ある程度の圧縮が必要なため、厳密に言うと音質は劣化しています。

CDならそのままの情報量で収録されているため、データ音楽と比べて全然違うということで、一旦データ派になった人がCDに戻ってくることもあります。

しかし、価格が高いことや持ち運び・保管の手間がネックではあります。データによる音楽配信が完全に市民権を得ている今、CDは『嗜好品』『贅沢品』という位置づけになっていくでしょう。

ちょっといいヘッドホンを使おう

高価なヘッドホンもありますが、安価なものでも十分楽しめます。とはいえ、1000円以下のものだと真剣に鑑賞するには少々物足りません。

もちろん、高ければそれだけ高音質になりますが、ある程度の水準を超えてくると、価格のアップに対する音質向上の割合が鈍ります。

5万円のヘッドホンと10万円のそれの音質の違いなど、なかなか聴き分けられません。最近話題のハイレゾも音質はすごく良いですが、再生機器や音源を一から用意しなければならず、コストがかかります。

音質とコスパの両方を考えると、1万円前後のヘッドホンがちょうどよいでしょう。

スピーカーの置き方でも聴こえ方は変わる

スピーカーの置き方を変えるだけでも、高音質で音楽を楽しめます。スピーカーを置く際は、次の4つのことを意識してみましょう。

1つ目は、『左右のスピーカーと耳の位置が正三角形になるようにセッティングする』ことです。これで、音源本来のステレオ感を得られます。

2つ目は、『スピーカーの位置を壁から最低30cm以上離す』ことです。反射音を軽減でき、音の輪郭が際立ちます。これは隣室への音漏れの緩和にもなり、集合住宅では特に意識してみるとよいでしょう。

3つ目は、より音の輪郭を感じられるように『スピーカーの高さを耳と同じ高さに合わせる』ことです。

4つ目は音のブレを防止のために『重量があるどっしりした台の上に置く』ということです。これらの点に気をつけるだけで、臨場感のある音源を楽しめるでしょう。

最高の鑑賞を体験したいならコンサートへ

やはり生演奏は最高の音楽鑑賞といえるでしょう。生演奏のよさは音質だけではありません。

生演奏にまさる高音質はない

まず、音質に関してですが、CDなどの一旦録音されたものを再生するのと、今まさに目の前で『リアルタイム』で演奏されているのとでは天地の差があります。

ここでいう音質とは単に物理的な音質にとどまりません。ノリやグルーブといった現代音楽の要素が、余すところなく感じられるのも生演奏のよいところです。

体全体で音楽を感じられる

生で音楽の演奏を聴くと、耳だけで聞くのとは違って『体全体』で音を感じることができます。

会場のうねり、聴衆の反応、アーティストの動きなどを同じ空間で感じられる機会はコンサートやライブでしかあり得ません。

自宅でオーディオで聴いたり外出時にスマートフォンで楽しんだりするのとはまったく別物の、迫力ある『臨場そのもの』の演奏を聴けるということです。

同じ曲でも違った音楽表現を楽しめる

さらには、いつもCDやスマートフォンで聴いている楽曲であっても、全く同じアレンジとは限りません。

多くのアーティストやバンドは、曲によってはライブ用のアレンジに変えたり、アドリブ(即興演奏)の要素を盛り込んだりします。

つまり、通常の音源では決して聴くことのできないバージョンが聴けるのも、コンサートやライブならではの素晴らしいメリットなのです。

感性と知識を駆使してもっと音楽を楽しもう

音楽を本当に『鑑賞』するために、それが作られた背景などを学ぶことで、より深く音楽を楽しめます。

深い音楽鑑賞ができるようになったうえでコンサートやライブに行けば、まさに最高の音楽体験ができるのです。自分の感性と知識を総動員して、もっと音楽をダイナミックに楽しみましょう。

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