モダンでカジュアルな大人の音楽として人気の「ジャズ」。これからジャズの世界に入るときの入り口として知っておきたいのが、その界隈では誰もが知っている有名プレイヤーや、代表的な名曲ですよね。そんな、ジャズ界の「有名人」「有名曲」を紹介していきます。
ジャズ界の有名人は?
世界中で親しまれているジャズ音楽。もちろん、ファンから広く知られている、有名なジャズプレイヤーも大勢います。その中でも、特に有名な人物に焦点を絞って見てみましょう。
有名なジャズサックスプレイヤー
「サックス」といえば、ジャズ演奏の中でも主役となる楽器です。温かい音色は心地よさを感じさせてくれる一方で、プレイヤーの感情をよりエモーショナルに表現し、スリルを感じさせてくれる一面もあります。
そんなサックスの名プレイヤーとして知られる代表的なジャズミュージシャンを、ベテランと若手それぞれ紹介します。
生きる伝説、ウェイン・ショーター
ウェイン・ショーターは、1933年生まれのアメリカ出身のサックスプレイヤーです。
20代の頃からプロのサックスプレイヤーとして活動し、「モダン・ジャズの帝王」と呼ばれるマイルス・デイヴィスのグループにも参加。1970年からは現代的なジャズ・フュージョンの先駆けとなった「ウェザー・リポート」を結成するなど、ジャズの歴史に残る功績をいくつも残しました。
これまでにグラミー賞を9度受賞するなど、批評的にも圧倒的な記録を作り、また作曲家としても数々のジャズ・スタンダードを生み出してきました。
その後もソロのプレイヤーとして活躍し、80歳を超えた現在でもライブや作品制作など、精力的な活動を続けています。
モダン・ジャズの発展期、黄金期を支え続けて今に至る、まさに「生きる伝説」と呼ぶにふさわしいベテランジャズミュージシャンです。
若手天才プレイヤー、寺久保エレナ
北海道出身のサックスプレイヤー、寺久保エレナ。1992年生まれとまだまだ若手ながら、既に天才的なセンスを持ったジャズミュージシャンとして、世界的な注目を集めています。
高校在学中に日本でCDデビューを果たし、その後は名門 バークリー音楽院に進学。ワシントンDCやハリウッドの大型イベントで演奏の機会を得て、期待の新星として知名度を高めていきました。
2012年に北米デビューを果たして2015年には拠点をニューヨークに移し、日本だけでなく世界的に活躍する新世代のサックスプレイヤーとなっています。
一方で、これまで5枚のアルバムをリリースし、地元の北海道テレビ放送のテーマソング「ハイタッチ」を手がけるなど、国内音楽シーンでも活躍してきました。
今の、そしてこれからのジャズ界を見ていく上で、欠かせない存在です。
有名なジャズピアニスト
両手でソロフレーズとコードを同時に奏で、よりテクニカルで重厚なサウンドをくり出すピアノも、ジャズにおいては花形のひとつです。
優美なクラシックやキャッチーなポップスとはまた違った、ダイナミックで自由なジャズピアノ。現在進行形で活躍する名プレイヤーを、海外・国内それぞれ紹介します。
新しいジャズ?ハービー・ハンコック
1960年にプロのジャズピアニストとしてデビューし、以来ジャズシーンを最前線で支え続けているハービー・ハンコック。現代的なモダン・ジャズをはじめ、フュージョンやエレクトロ、ヒップホップなどの要素も織り交ぜた先進的なサウンドで注目を集めてきました。
ジャズの可能性をさらに広げ、「新しいジャズ」を作り上げる挑戦的な表現でときに賛否両論も呼びながら、王道のジャズピアニストとしてもバンドやソロで活躍。ジャズイベント「東京JAZZ」で総合プロデュースを務めるなど、日本ともかかわりを持っています。
70歳を超えてからも第一線で活躍を続ける、ジャズピアニスト界の代表的なプレイヤーです。
世界トッププレイヤー上原ひろみ
バークリー音楽大学を首席で卒業するなど輝かしい経歴を持ち、ニューヨークを拠点に世界的ジャズピアニストとして活躍する上原ひろみ。地上波テレビで絢香と共演するなど、日本でも広く知られていますね。
これまでにチック・コリアやスタンリー・クラーク、矢野顕子、DREAMS COME TRUEなどのアーティストとコラボ。参加したバンドでグラミー賞も受賞するなど、若手ながら世界トップクラスのプレイヤーとして評価されてきました。
ソロでの作品も多数リリースし、アルバム「SPARK」では全米ビルボードチャートのジャズ部門で1位を記録するなど、人気も圧倒的です。
日本が誇る屈指のジャズピアニストとして、一度はその演奏を聴いておくべき名プレイヤーと言えるでしょう。
ジャズ初心者に聴いてほしい有名な曲
有名プレイヤーだけでなく、楽曲にも注目です。ジャズには定番とされるスタンダード・ナンバーがいくつもあり、長年親しまれてきました。
その中でも特に有名な、ジャズを知る上で必聴の名曲を紹介していきます。
シング・シング・シング
「シング・シング・シング」は、ジャズ・スタンダートの中でも定番中の定番です。1936年に「スウィンガーの王様」と称されるトランぺッターのルイ・プリマによって発表され、以来スウィング・ジャズの名曲として、演奏され続けてきました。
大人数によるビッグバンド編成を特徴とする、昔ながらのスウィング・ジャズ。その魅力を最大限に活かした壮大なアンサンブルや大胆なドラムソロ、艶やかで味のあるメロディで、「シング・シング・シング」はジャズの歴史に残る名曲として愛されています。
上野樹里が主演の映画「スウィングガールズ」でもメインナンバーのひとつとして演奏され、吹奏楽部でも定番曲となっているので、日本でも広く知られているのではないでしょうか。
A列車で行こう
「シング・シング・シング」と並んで超定番ジャズ・スタンダードとして知られているのが「A列車で行こう」です。
タイトルはジャズ文化の中心地であるハーレムを通る「ニューヨーク市地下鉄A線」からとられていて、まるで列車が走るようなリズミカルで軽快な曲展開が魅力となっています。
ジャズナンバーとしてだけでなく歌唱曲としても人気で、美空ひばりのアルバムにカバーが収録されたほか、1964年には「NHK紅白歌合戦」でデューク・エイセスによって披露されました。
また、日本では同名のシミュレーションゲームシリーズがありますが、初期作品はアメリカが舞台になっていたりと、この楽曲の世界観を連想させるものになっています。そんな意外なつながりにも注目です。
ムーンライト・セレナーデ
1939年にグレン・ミラーによって発表された「ムーンライト・セレナーデ」。ゆったりとしたリズムと幻想的なサウンドが特徴の、心安らぐバラードナンバーです。印象的なメインテーマのメロディは、誰もが一度は聴いたことがあるでしょう。
原曲はビッグバンド編成のスウィング・ジャズ楽曲で、柔らかく繊細なクラリネットの音色が目を引きます。さらに、ここからバリエーション豊かなアレンジが加えられ、発表から70年以上が経っても広く親しまれています。
歌唱曲バージョンも有名で、日本でもCMソングとして、何度も起用されてきました。「ジャズ・スタンダード」という枠を超えて、世界中で口ずさまれてきた名曲です。
ルパン三世のテーマ
アニソンの名曲としても人気の高い「ルパン三世のテーマ」も、よくよく聴いてみると、ジャズの要素が色濃いナンバーですね。
作曲者は国内ジャズシーンを代表するピアニスト・大野雄二で、アニソンとしては異色のインストゥルメンタル楽曲でありながら、日本中の誰もが知っている有名曲となりました。
スリリングでワクワクさせられるメインフレーズ、緩急のついたダイナミックな展開は、「ルパン三世」のアクションアドベンチャーとしての雰囲気にもぴったりです。その一方で、キャッチーなジャズ・スタンダードとしても、しっかり聴きごたえがあります。
高校野球の応援歌としても定番で、東京スカパラダイスオーケストラや熱帯JAZZ楽団といったジャズバンドからもカバーされるなど、まさに国民的ジャズ・スタンダードと言えるでしょう。
ジャズ初心者は有名曲から聴いてみよう
ジャズを聴くのは初めてで、何から手をつけていいか分からない……そんなときは、ジャズ・スタンダートとされる有名曲から聴いてみましょう。また、有名プレイヤーに注目して、その作品を手に取ってみるのもいいのではないでしょうか。
今回紹介したのはジャズ・スタンダートの中でも特に代表的なナンバーばかりなので、ぜひ一度聴いてみてくださいね。